2018年10月15日 (月)

シアーズ猫事件

シアーズといえば米国シカゴに本社を置く小売大手。

1893年(明治26年)の設立。

つまり日清戦争の前年です。

歴史ある会社なのですが、革新性にも富み、世界の民間企業の中で、最初に円建て外債(サムライ債)を発行したのもシアーズ。

これは1979年のことです。

私が興銀のシカゴ駐在員をやっていた時も、シアーズは重要な取引先でした。

当時私はまだ20代。

シアーズのAT(Assistant Treasurer)とは、一緒にリグリーフィールドにカブス戦を見に行ったりしました。

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        (シアーズタワー;出所:Wikimedia Commons)

このときマスコミを賑わせていたのはシアーズ猫事件。

アメリカでは、飼っている猫が雨に濡れると,洗濯の乾燥機(ドライヤー)に入れてやる人が結構多くいました。

いつもは飼い猫を乾燥機に入れていたAさんは、どういうわけか、

『乾燥機じゃなくて、電子レンジでもいいんじゃないか』

と考えて、濡れた猫を電子レンジに入れて、チン。

恐ろしいことです。

猫は電子レンジの中で爆発したようになってしまい、亡くなってしまった・・・。

そこで彼女は電子レンジの製造販売元のシアーズを訴えました(その電子レンジは、今でいうところのシアーズのプライベートブランドでした)。

「責任はシアーズにある」

「猫を入れるなとは使用説明書に書いていない」

結果、シアーズは訴訟に負け、多額の賠償金を払うことに。

それだけでなく、以降の使用説明書には「猫を入れるな」と書かされるようになったと言います。

シアーズのATからこの話を聞いて、私は「アメリカという国は恐ろしい国だ」と思いました。

弁護士がたくさんいて、何でも訴訟にしてしまうからです。

さて、そんな思い出のあるシアーズ。

そのシアーズが経営破綻して、本日(15日)、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しました。

怖いのは訴訟だけではない。

アマゾン恐るべしです。

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2018年10月11日 (木)

大統領のイライラ

ダウは800ドル以上(3%)も下げ、NVIDIA、ネットフリックス、アマゾンなどのテック株も総崩れ。

アマゾンはAfter Hours で1737ドルに。

ピーク時(2050ドル)に比して、15%安。

中間選挙を控え、大統領のイライラ感が伝わってきます。

『こちら』 のWSJ記事。

   Wsj

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2018年10月10日 (水)

ヘイリー米国連大使が辞任

ヘイリー米国連大使(46歳)による突然の辞任発表。

「年末までに辞任する」とのことです。

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       (From Wikimedia Commons)

インド系米国人で、国連大使になる前はサウスカロライナ州知事。

全米50州のうちでも最年少の州知事として注目されていた人です。

メディアでは早くも次の大統領選に立候補するのではないかと噂されていますが、本人は一応、否定(『こちら』)。

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2018年10月 8日 (月)

NHKスペシャル マネー・ワールド~資本主義の未来~(2)仕事がなくなる!?

昨晩放送された『NHKスペシャル マネー・ワールド~資本主義の未来~(2)仕事がなくなる!?』。

ご覧になった方も多かったと思いますが、孫正義さんが出演していたこともあって、面白かったです。

新井紀子さん(国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授)が、鋭い突っ込みを(2度ほど)入れて、孫さんがタジタジとする一幕も。

再放送は10月11日(木) 午前2時34分とのこと(『こちら』)なので、興味ある方は、録画予約をしておいても良いかもしれません。

それにしてもたとえば『変なホテル』

ホテルのフロント業務、クローク業務、ポーター業務などをロボットにやらせることで注目を浴びたホテルですが、いつの間にか全国で9ヵ所にも展開しているんですね。

海外を行き来するときのパスポートコントロールもかなりの程度、自動化されてきています。

日本の例は『こちら』

EUなどでも自動化が急速に普及してきています(『こちら』のビデオではEUのパスポートが対象とありますが、日本のパスポートでも利用できるケースが多くなっています)。

これまでは人間の目で「この人はパスポートの写真の人と同一人物かどうか」を判断していました。

それがディープラーニング(深層学習)による画像認識度の向上で、機械の方が人間よりも効率的、そしてより正確に判断出来るようになってきました。

結果として、たとえば出入国管理官の業務のかなりの部分が機械に置き換わってしまうようになってきています。

ロボットが人間以上の目を持つことが当たり前になってきた昨今。

グーグル(ジェフ・ディーン博士)とスタンフォード大学(アンドリュー・ング准教授)が共同で、大量のデータをコンピューターに解析させ、猫を認識させたのが、2012年6月(『こちら』)。

今からたった6年前のことです。

それが、あっという間に、コンピューターは人間の目を追い越してしまいました。

はたして我々の仕事の多くはこれから先、機械に代替されてしまうのでしょうか。

NHKの番組は比較的軽いタッチで編集されていましたが、投げかけている問題はひじょうに重いように感じました。

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写真は新井紀子さんの番組の中での説明。世界富豪トップ8人の持つ資産は、貧困層36億人分と同じとのこと(『こちら』の記事も参照)。

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2018年10月 3日 (水)

経営することの面白さ

久しぶりに面白い本を読みました。

『破天荒フェニックス』

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読み終わっての感想は、

「この本はテレビドラマ化されるのではないか」。

たとえば堺雅人さんに主人公を演じさせれば、半沢直樹以上のヒットも夢ではないような気がします。

著者の言によれば、この本は「起こった事実をもとにしながらも、一つのフィクション、パラレルワールドの物語として書き連ねた」とのこと。

要は、銀行名など差し障りある箇所を適当に変えたと理解しました。

とは言いつつも、本書に出てくる穂積銀行とは、なんとなくどこの銀行か、想像がつきます。

しかも、三井住友銀行に至っては、実名で登場するし・・。

まぁ、こう書くと、なんだか暴露本のように思われるかもしれませんが、そうではありません。

著者は経営者であって、小説家ではない。

しかし事実が小説よりも面白いので、事実をたんたんと書こうとした。

そうすると迷惑をかける人もいるかもしれないので、一部デフォルメ化した、ということなのでしょう。

結果、本書は、普通の小説とはまったく違ったものに仕上がっています。

単に事実を綴ったものなのですが、そこには圧倒的なリアリティがあり、このリアリティこそが読者を引きつけます。

それゆえ、この本はビジネス書を読むよりも数十倍もためになりそうです。

若い人には学校などでビジネスを学ぶよりもまずは本書を読んでみることをお勧めします。

読み終わって、きっとこう思うはずです。

会社を経営するって、すごく面白そうだ。

そうなのです。

会社を経営するということは、努力をすること、そして何かを成し遂げるということであり、達成感を味わえることなのです。

それも半端でない達成感を味わえます。

さて、この本の舞台は、経営破綻しかけた眼鏡の小売り「オンデーズ」。

これは、実際にある会社で、ウィキペディアによると、現在では、10ヶ国で200店舗以上を展開しているとのこと。

著者は、この本の主人公で、ふとしたことから、この会社をたった(!)3千万円で買うことになります。

30歳の青年社長です。

当時の「オンデーズ」は、日本全国に約60店舗を展開する眼鏡のチェーン店。

しかし赤字で倒産寸前でした。

この本は、著者がこの会社を再生していく過程を綴ったものなのですが、まさにハラハラ、ドキドキの連続。

冒険物語を読むような感じで、小気味よくストーリーが展開していきます。

繰り返しますが、当時の「オンデーズ」は、日本全国に約60店舗を展開する眼鏡のチェーン店。

それをたった3千万円で買収したということなのですが、実は、このとき会社が背負っていた銀行借入金が14億円。

会社を買収したのですから、彼は、この借金もいきなり抱え込むことになります。

つまり、会社の借入金に対して銀行は社長の個人保証を求めてきます。

当然と言えば当然なのですが・・・。

会社が借金を返せなくなれば、著者である30歳の青年社長が保証履行(会社に代って返済)せざるをえず、

しかしそれは絶対に不可能ですから、

彼は自己破産を強いられてしまいます。

しかも14億円の借金はすべて短期の銀行借入金。

このため、毎月の銀行に対する約定返済額は8千万円から1億円。

それなのに買収した会社は営業赤字で、それも、なんと・・・!

毎月2千万円近くの営業赤字額を出している。

要はそれだけキャッシュがどんどん流出している。

案の定、買収してわずか数週間後には1千万円以上もの資金が足りないという、いきなりの緊急事態が発生します。

ということで、物語は冒頭からジェットコースターのような展開を辿ります。

そもそもこの30歳の新任社長が「オンデーズ」と関わることになったのは、初代社長との出会いが発端。

このとき会社の経営権は、当時の実質親会社であったRBS社が送り込んだ2代目社長に移っていました。

著者は、初代社長から「会社の経営権を取り戻したいので手伝ってほしい」と依頼されたのだとか。

しかし詳しく内情を聞いていくうちに、初代社長の我儘な態度や傲慢な自己主張、従業員の気持ちを無視した振る舞いなどに愛想を尽かして、さっさっと方針変換。

自らが買収して再生に乗り出すようになっていきます。

こうして、たった3千万円で買収して新しく社長になった著者は、

年齢30歳。

黒いジャケットに破れたデニム。

スニーカーに茶髪のロン毛。

ここまで書くと滅茶苦茶なようですが、人は外見ではありません。

とにかくこの社長、若いのに、考え方はしっかりしていて、経営の勘どころも押さえている。

破天荒なようで、実は人を見る目がしっかりしている。

そして失敗してもすぐに気づき、修正するという、修正能力にも長けている。

そして、なによりも仕事熱心、勉強熱心。

社長就任後2ヶ月で、全国に点在する店舗をすべて回ろうと決意。

デスクワークの合間を縫っては、私物の軽自動車に乗り込み、カプセルホテルに泊まりながら、北に南にと、全国各地に繰り出していきます。

初代社長も2代目社長も、たった60店舗なのに、自分の会社の店舗を回ることさえしなかったのだとか。

経営者が変わることで、会社はこんなにも変身しうる。

この本には、そんな実例が随所に散りばめられています。

東日本大震災の時の仙台(正確には多賀城市?)のお婆ちゃんとの出会いにちょっと涙腺を刺激され、

商品部の高橋部長のひとことでタバコをきっぱりと止め・・・

といった具合に、

この物語は単なる企業再生の域を超えた人間のドラマに仕上がっています。

これ以上はネタバレになってしまうので、止めますね。

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2018年10月 2日 (火)

やることが早い

昨日(日本時間)のメジャーリーグ最終戦では9回裏の逆転の口火となる大活躍。

そして、その翌日の今日には、大谷選手は、トミージョン(Tommy John)手術を受けて成功(『こちら』)。

やることが早いです。

読書家でも知られる大谷選手の愛読書の一つは『チーズはどこへ消えた?』 だと言います。

2匹のネズミと2人の小人は毎日同じ場所でチーズを見つけて食べていました。

しかし見つけられるチーズの量は、だんだんと減っていき、

ある日、突然!

「消えた!」

ネズミたちはチーズが毎日だんだんと少なくなっていくのに気づいていて、

いずれはなくなるだろうと覚悟していました。

したがってチーズがなくなると、すぐに新しいチーズを探しに飛び出しました。

小人たちは古き良き時代が忘れられません。

いずれまたチーズが同じ場所に戻ってくるかもしれないと信じ、

毎日同じ場所に行き、チーズが来るのを待っていた、

という話なのですが・・。

もはや今までの腕に頼れないと悟ると、すぐに行動に移し、次へと動き出す。

大谷選手が非凡なのは、その身体能力だけではないような気がします。

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2018年9月26日 (水)

米中貿易戦争の行方

昨晩の日経CNBCテレビ「日経ヴェリタストーク」ですが、『こちら』でご覧になれます。

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2018年9月25日 (火)

中国 落日の足音

今晩は、日経CNBCテレビ「日経ヴェリタストーク」に出演しました。

24日、トランプ政権は対中制裁関税第3弾を発動。

2,000億ドルに10%の追加関税を課しました。

すでに発動されていた第1弾(340億ドル)と第2弾(160億ドル)とをあわせて、合計2,500億ドルが追加関税の対象に。

米国が中国から輸入する5,000億ドルのうち、半分が対象となったことになります。

さらにマーケットでは、「残りの半分、すなわち追加で2,500億ドルにも制裁関税が課されるかもしれない」と囁かれるに至っています。

これに対抗する中国の方はどうでしょうか。

中国はもともと1,500億ドルしかアメリカから輸入していませんので、報復措置にも限度があります。

米国の一連の動きを受けて、中国株(上海総合)は年初来17%ほど下落。

為替も1ドル6.51元(年初)から6.86元の元安に。

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リーマンショック後には、4兆元の景気対策で世界経済を下支えした中国。

しかしこの結果、過剰債務を抱えることになり、中国政府としては、過剰債務問題に取り組み始めた矢先に襲ってきたのが、今回の「トランプショック」です。

それだけに中国としては影響が甚大だと言えるでしょう。

さて、我々はこうした米国の動きをどう見れば良いのでしょうか。

これは「米国中間選挙に向けての政治的パフォーマンス」に違いない。

米国も返り血を浴びるから、いずれは中国との間で妥協点を見いだそうとするはずだ・・。

― もしこう解釈するのであれば、年内にも落ち着くところに落ち着きそうです。

しかし、どうやら話はそう簡単でもなさそう。

というのも、米国では、「いずれ中国が米国を抜いて世界一の経済大国になる」と囁かれているからです(『こちら』)。

つまりこの問題の背後にあるのは、「世界経済の覇権」を巡る争い。

だとすれば、この問題は長く尾を引きそうです。

それに、そもそも米国の貿易赤字は5,660億ドルにも上ります(2017年;対前年比+12%)。このうち対中国で、3,429億ドルもの赤字。

一方で、中国は4,225億ドルの貿易黒字。

一国が恒常的に赤字を続け、もう一国が恒常的に黒字というのは、世界貿易の健全な姿ではありません。

米国から見ると、5,660億ドルを産み出す雇用(日本のGDPの12%に相当)が、米国の外に移ってしまったと見ることも出来ます。

とすると、米国としては、中国との間で簡単には着地点を見つけ出すことが出来ないのかもしれません。

中国からすれば米国はいちばんの輸出先。

全体の19%を占めます(『こちら』)。

仮にこの部分すべてに追加関税をかけられてしまうというのであれば、影響はかなり大きいと言わざるをません。

取りあえず中国としては、米国以外、すなわちEUや日本との貿易を活発化させようとするのでしょう。

しかし欧州も米国同様に中国に対しては危機感を抱いています。

中国が行うべきは小手先の解決策を講ずることではありません。

まずは、①知的財産権の保護、②外資に対して閉鎖的な国内市場の開放など、WTOの求め(『こちら』)に従った形での「改革」を進めること。

このことこそが、複雑化しつつある問題を解決に導く第一歩であるような気がします。

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2018年9月16日 (日)

10年前の記憶

「えっ。全株ですか。」

「そうです。全株、売ってしまってください。」

私は日本の証券会社に電話でこう指示した。

世界中を震撼させたリーマン・ブラザーズの倒産(連邦破産法11条申請)が明らかになった2008年9月15日。

前週末に3ドル65セントを付けていたリーマンの株価は一気に下落し、何と21セントにまで落ち込んでいた。

「寄付きで売りますか。それとも20セントあたりで指値しておきますか。」

電話の向こう側で証券会社の営業マンの声が空虚に響く。

こうなってしまったらどうでも良かった。

リーマン・ブラザーズの株価は前年2月には86ドルを付けていた。

この高値に比べれば株価は99.8%下落したことになる。

言ってみれば1,000万円の金が僅か2万円になってしまった訳だ。

経営が破綻したのだから当たり前といえば当たり前だろう。

私がリーマン・ブラザーズの株を持っていたのは、5年前まで私がリーマンの幹部、すなわちマネージング・ダイレクターであったからだ。

投資銀行は年収が高いと言われているが、幹部クラスになると給与や賞与は現金で貰う分に比べて、自社株式の形で支給される割合が高くなっていく。

業界用語でいうペーパーマネー。

すぐには現金化出来ないカネという意味だ。  

もちろん退職後5年を経過した今、私がリーマン・ブラザーズの株式を売ることについての制約は無くなっていた。

単に「自分が勤めていた会社の株」ということで思い出や記念の意味合いを込めて持っていたに他ならない。

それがまさか紙くず同然になろうとは、正直言って思いもよらなかった。

しかし、私などはまだましな方だ。

テレビではニューヨークのリーマン本社から私物を詰め込んでダンボールを抱えて出てくる社員の姿を映し出していた。

テレビ局のインタビュアーがマイクを向けて「社員の方ですか」と尋ねる。

「今朝までは社員だったよ。」

憮然とした表情で20代後半の若者がこう答えていた。

日本でもリーマン・ブラザーズの日本法人が東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

負債総額3兆4千億円。

日本の経済史上2番目の大型破綻だ。

1,300人の従業員はどうなるのだろうか。

かつて一緒に働いていた同僚たちの顔が次から次へと目に浮かんでくる。

「岩崎さん、それでは今晩開くニューヨーク市場で売りの注文を出しておきます。」

証券マンの言葉に私は我にかえった。

これに続く一瞬の沈黙。

その間、証券マンは私に投げかける言葉を探していたのだろう。

私には余り適切な言葉とは思えなかったが、彼はこう言って電話を切った。

「それにしても随分と損をしましたね。」

受話器を置いて私は自分にとっての「一つの時代」が終わったように感じた。

退職後も私と投資銀行とを繋いできた目に見えない、ある種の結びつき。

それが株式の売却によって完全に無くなってしまったように感じたのだ。

      (以上、拙著『リーマン恐慌』17-18頁より)

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      (写真はリーマンブラザーズの株券)

* * * *

世界中を震撼させたリーマン・ブラザーズの破綻から1ヶ月半ほどした2008年10月末。

私はニューヨークに来ていた。

10月末だというのに夏時間がまだ続いていて、ニューヨークの朝は7時になっても空がまだ薄暗い。

それでも街は出勤してくる人で賑わい、オフィスビルの8割以上には灯りがつき、中では出勤した社員が熱心にパソコンのモニターを見入っていた。

リーマン・ブラザーズの本社ビルに行ってみた。

ニューヨークの7番街745番地。

私がリーマンに在籍していた時に幾度となく訪れたビルだ。

あのころ、投資銀行はこの街の主役だった。

睡眠時間を削り、顧客とはげしくやりとりをし、大規模な案件をまとめあげていく中で、経済は拡大していき、社会は豊かになっていった。

そんな実感がたしかにわいてくる、刺激的な職場だった。

そんな一抹の感傷をあざ笑うかのように、ミッドタウンにあるこの高層ビルは、いつもと同じように朝コーヒーを片手に出勤してくる社員を次から次へと飲み込んでいた。

唯一の違いはビルの入り口の看板から「リーマン・ブラザーズ」の文字が消え、「バークレイズ・キャピタル」の文字に替わっていたことくらいだ。

     (以上、拙著『リーマン恐慌』4-5頁より)

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(写真はかつてのリーマンブラザーズのビル;08年10月撮影)

* * * *

リーマン破綻から10年。

当時書いた自分の本を読みなおしていました。

寝食忘れ、自分の寿命を削るような思いをして働いていた投資銀行時代。

そのとき得ていた報酬のかなりの部分はリーマンの株に置き換わっていたので、個人としてはかなりの経済的損失を被ってしまいました。

正直、10年前はショックだったのですが、今となっては、こうした経験は自分にとってプラスに働く面もあったように思えてきます。

リーマンショック前には見えなかったものが、見えるようになった、そんな気がしてくるのです。

あれから10年。

今年も東京で当時リーマンに勤めていた人たちの懇親会が開かれるとの連絡を受けました。

残念ながら私は出席できないのですが、幹事によれば200人近くが参加の予定とのことです。

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2018年9月 1日 (土)

先生の一言

『エッセイ風のこの文体は、とても高校生の書いたものとは思えない。清少納言が現代に来て書いたようだ』

作文の模試で採点員が書いたコメント。

このコメントが、ちびまる子ちゃんの著者、さくらももこさんの人生を変えたと言います(朝日新聞1日(夕刊))。

それまでのさくらさんは少女漫画を雑誌に投稿するも入賞せず、漫画家の夢を諦めていたのだとか・・。

ちょっとしたひとことが人生を良くも悪くも変えうる。

そう言った意味で、先生や先輩のひとことは重要です。

人生に限界はない(何歳になっても)。

ちびまる子ちゃんの何とも言えぬ穏やかな顔が好きでした。

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2018年8月26日 (日)

第2の敗戦

今から73年前。

1945年の敗戦が第1の敗戦であったならば、

平成の30年間は第2の敗戦、

それも経済的な意味での敗戦だったのではないか。

先週号の週刊ダイヤモンド『平成経済全史』を読んでいて、

ふとそうした思いが胸をよぎりました。

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上の表は上記のダイヤモンド誌45頁に掲載された表の一部。

平成元年(左)から平成30年(右側)までの30年間の変化です。

注意すべきは左側は「日本でのランキング」を示したものではないということ。

左側も「世界ランキング」なのです。

日本の若い人にはこの事実がショッキングなようで、

『えっ!日本勢が世界1位から5位までを独占していたのですか』

といった反応も少なくありません。

なかには

『このデータは信憑性があるんですか』

といった疑問を呈する人もいます。

しかし、この表は事実です

(もともとは米ビジネスウィーク誌1989年7月17日号「The Business Week Global 1000」に掲載されたデータをダイヤモンド社が引いたもの)。

これを見て、

『あの頃はバブルだったから』

とか

『円高だったから』

とコメントする人がいます。

たしかに円高であったとすればドル換算の時価総額は

その分、高くなります。

しかし円高だったから、というのは事実ではありません。

実は、1989年は今よりもずっと円安でした(1年間の始値123.6円、高値 149.63円、安値123.6円、終値143.79円)。

バブルだった、というのは、その通りなのですが、

しかしそれでも、たとえばトヨタ自動車を見ると、

平成元年の時価総額541.7億ドルから

平成30年の時価総額1,939.8億ドルへと

3.6倍にも時価総額を高めています。

つまり元年がバブルだったからといって、

30年間もの長い間に時価総額を高められなかった言い訳にはなりにくい―

この間、3.6倍にも時価総額を高めた日本企業があるのですから。

この表にはいろいろな見方があるのでしょうが、一つ気がつくのは、

30年前には世界ランキング表には名前を見ることもなかった米国の西海岸の企業が

あっという間に躍進して世界のトップ1位から5位までを独占してしまった

という点です。

しかもこの5社のうち3社までが平成元年の時点では存在すらしていませんでした。

フェイスブックの創業者マーク・ザッカ―バーグ氏に至っては当時まだ5歳だったのです。

* * *

平成元年には世界のトップ30社のうち25社までが日本企業でした。

それが30年後、世界のトップ30社に入った日本企業は1社もありません。

でも、それがいったい何の意味を持つのでしょう。

そう思う人もいるかもしれません。

残念ながら、この30年間にわれわれの生活は少しずつ相対的に貧しくなっていきました。

たとえば世帯主が30代の世帯の平均年収はアメリカが990万円(注1)。

これに対して、日本はたったの560万円(注2)。

(注1)アメリカ合衆国国勢調査局「2016年:世帯の所得」(2017年8月10日)

  為替レートは昨年末のものを使用

(注2)平成28年 国民生活基礎調査の概況(平成29年6月27日、厚生労働省)11頁

* * *

いろいろな意味で日本は遅れをとってしまったのです。

なぜそうなったのか、どうしたら挽回できるのか。

これを考えないことにはますます差をつけられてしまいそうです。

公的セクターの力が強くなりすぎていないか、

あるいは民間の方も政府に頼り過ぎていないか・・・

世界のトップ1位から5位までが、いずれも首都ワシントンDCやニューヨークから遠く離れた西海岸の企業であることにも、何らかのヒントがあるのかもしれません。

いちばん避けなくてはいけないのは、『あの頃はバブルだったから』という言葉で片付けてしまうこと。

これは思考停止以外の何ものでもありません。

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2018年8月12日 (日)

太陽を創った少年

「14歳で核融合炉を作った少年がいる」と聞いて手にしたのが、この本。

『太陽を創った少年』(トム・クラインズ著)

「なにをバカな」と思う方は、まずはこの少年が2012年にTEDで講演した時の模様をご覧ください。

『こちら』です。

たった3分25秒。日本語の字幕付きです。

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写真はオバマ大統領(当時)に説明するこの少年(テイラー・ウィルソン君)。

どんな核融合炉を作ったのでしょうか。

『こちら』に日本語で解説する記事があります。

そんなテイラー君が2013年、再びTEDに登壇。

その時の動画が『こちら』です(今度は12分50秒;日本語字幕付き)。

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こちらの写真はテイラー君の個人サイト(『こちら』)から。

『太陽を創った少年』は、ジャーナリストのトム・クラインズが著したノンフィクション。

氏は、ナショナル・ジオグラフィックをはじめ、ガーディアン、ネイチャー、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等に寄稿し、ポピュラー・サイエンスの寄稿編集者としても知られています。

この本の序章には著者による次のような一節も。

『親としては、ケネスとティファニーが子どもの才能を伸ばすために取った、意外性にあふれたアプローチに刺激を受けた。

テイラーが恐ろしいことに興味を持って追いかけようとしていたときに、ふたりは―そしてふたりがテイラーの周回軌道に連れてきた教師や指導者は―テイラーを応援するために、ありとあらゆる手段を用いた。

個人的には、テイラーの才能そのものよりも、両親の支えのほうに感銘を受けた。

私はやがて、テイラーの成功は、彼の優れた頭脳の産物というだけではなく、とりわけ素晴らしい両親に恵まれたおかげなのだということを理解するようになる』

ということで、本書は、小学生~高校生のお子さんを持つ親にとくにお勧め。

誰ですか。

『自宅で子供が核融合炉を作り出したら大変だ』、と心配しているのは。

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