2020年2月16日 (日)

社会的に責任のある役割を選ぶ(choosing a socially responsible role)

最近のスタンフォード大学ビジネススクールの卒業生たちの進路はどのような状況なのでしょうか。

ビジネススクールの就職報告書(『こちら』および『こちら』)によると、

2019年に卒業した409人のうち、企業などに就職したのは70%。

    Stanford

残りの30%は、

(1)自分で起業した(15%)、

(2)企業派遣でビジネススクールに来たため元の会社に戻った(8%)、

(3)博士課程に進むなど、引き続き学問を続けることにした(3%)など。

 

企業などに就職した人たち(70%)の就職先は:

・プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、投資顧問などの Finance(金融系)(33%)

・グーグルなど Technology (テクノロジー系)(24%)

・マッキンゼーなどコンサルタント(18%)

・ヘルスケア(医療、医薬)(6%)

・運輸(4%)

私が卒業した1980年には進路先として投資銀行が多かったのですが、今では1%しかありません。

企業などに就職することを選んだ人たちの初任給の平均は:

2,720万円(基本給1,680万円、入社契約金310万円、賞与730万円)。

これは平均であって、年収の高い人は初任給でも9,900万円に達します。

 

特筆すべきは、18%の卒業生が、たとえ年収は低くとも、社会的に責任のある役割を選んだ(choosing a socially responsible role)。

この18%には、(1)就職先としてNPOなどを選んだ(2)自分で社会的に責任のある役割を果たすべく起業した

といったケースなども含まれます。

社会的に責任のある役割と言っても、イメージが掴みにくいかもしれません。

スタンフォード大学ビジネススクールの就職報告書(『こちら』および『こちら』)では、卒業生の一人、アビオドゥン・ブアリ(Abiodun Buari)さんの例を挙げています。

ブアリさんは、ナイジェリア、ラゴスの貧しい地域からやってきました。

(そもそもスタンフォードビジネススクールでは学生の41%が米国外の出身です)。

ブアリさんは、母国ナイジェリアで苦学して、最優秀とされる大学をひじょうに優れた成績(with distinction)で卒業。

しかし彼は多くの人に支えられて大学まで行けたことをけっして忘れなかったといいます。

ビジネススクールを卒業するにあたって、ブアリさんは次の3つを重視して進路を決めることにしました。

(1)貧しい人たちの生活の為に役に立つ仕事につくこと

(2)商品であれサービスであれ、アフリカに大きな足跡を残すものであること

(3)テクノロジー系の組織であること

「アフリカをもっと良くしたい。

アフリカの未来はテクノロジーにある。

アフリカにおいては、金融、農業、ヘルスケアの分野でテクノロジーが大きな役割をはたしているんだ」

ブアリさんはこう語ります。

そして職場として、Remitly Inc.という会社(『こちら』)を選びました。

   Remitly

    (Remitly のウェブサイトより)

Remitlyは、モバイル・テクノロジーを使って海外送金を安価に、しかも安全・迅速に提供する会社です。

アフリカなどの途上国から先進国に出稼ぎや移民で来ている人たちがいます。

彼らの多くは、故郷の家族や親せきを養うために祖国へ送金をします。

こうした人たちにRemitlyのサービスを提供することで、いまなお貧しい国で生活する人たちや移民の人たちの生活を根本から変えたい(transformしたい)。

ブアリさんはこう考えて卒業後はRemitlyで働くことにしたのです。

「そもそも何故スタンフォードのビジネススクールに来ることにしたのですか」

こう質問する記者に、ブアリさんはこう答えたといいます。

「スタンフォードビジネススクールのキャッチフレーズ(tagline)にほれ込んだんですよ。

生活を変えよ、組織を変えよ、世界を変えよ

(Change Lives, Change Organizations, Change the World)

とのフレーズに、ね」

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2020年2月 2日 (日)

創造の論理はあるか

『伊東俊太郎先生をお招きして“創造の論理はあるか”とのテーマでサロン的な小規模勉強会を開きます』

紺野登多摩大学大学院教授からこんな誘いを受け、昨日、勉強会(セミナー)に出席してきました。

      Seminar

        (セミナーの模様;紺野登教授撮影)

伊東先生は日本を代表する科学史家・文明史家。

1991年に定年退官するまで東京大学教授を務め、かつて東宮家の科学方面の教師を務められていました(Wikipediaより)。

以下、昨日の伊東先生の話のエッセンス

【1】創造の論理は無いとする意見

科学哲学者であり、論理経験主義の代表的主唱者であるハンス・ライヘンバッハ(Hans Reichenbach, 1891年ー1953年)は、『科学哲学の勃興(The rise of scientific philosophy 1951)』の中で、『科学的発見の論理(logic of discovery)は無い』と述べている。

いわく、『科学的発見を説明することは論理学者のすることではない』。

つまりライヘンバッハによれば、『創造の論理は無い』ということになる。

カール・ポパー(1902年ー1994年)は純粋な科学的言説の必要条件としての反証可能性を提唱したことで有名だ。

彼もまた『どんな発見も非合理的要素を持つ』とし、発見の論理に否定的だった。

【2】創造の論理は有るとする意見

しかし私(注:伊東先生)は、科学的発見は合理的プロセスの結果でもあり、創造の論理は有るのではないかと考えている。

そもそも論理的思考とはどういったものか。

(1)演繹法(deduction)

一般的・普遍的な前提から、より個別的・特殊的な結論を得る論理的推論の方法。

演繹の代表例として三段論法がある。

「人は必ず死ぬ」という大前提、「ソクラテスは人である」という小前提から

「ソクラテスは必ず死ぬ」という結論を導き出す。 

(2)帰納法(induction)

 個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとする論理的推論の方法。

「人であるソクラテスは死んだ。人であるプラトンは死んだ。人であるアリストテレスは死んだ。したがって人は全て死ぬ」 

と一般化させる。

演繹においては前提が真であれば結論も必然的に真であるが、帰納においては前提が真であるからといって結論が真であることは保証されない。 

これら2つの論理的思考よりも更に発見の論理に近いものとして、次の「アブダクション」がある。

(3)アブダクション(abduction)

飛躍的な直観的推論。

アメリカの哲学者、チャールズ・サンダース・パース(Charles Sanders Peirce、1839年―1914年)は、演繹、帰納に対する第三の方法としてアブダクションを強調。

結論b に規則「a ならばb である」を当てはめて仮定a を推論する。

帰納が仮定と結論から規則を推論するのに対し、アブダクションは結論と規則から仮定を推論する。

ここでの問題は a という仮定、仮説をどう立てるかにある。

(4)帰納法(induction)も発見につながるのではないか

例えば、ボイルの法則、すなわち気体の圧力(P)と体積(V)を掛け合わせたものは一定である(PV=constant)は、帰納から導かれたものではないだろうか。

さらに、

(5)演繹法(deduction)も発見につながるのではないだろうか

 ロバート・フック(Robert Hooke、1635年ー1703年)は、移動する物体は何らかの力を受けない限りそのまま直進する(慣性の法則)とし、更に引力は距離が近いほど強くなると述べた。

アイザック・ニュートン(Isaac Newton、1642年ー1727年)はフックの考えを発展させ、逆二乗の法則にたどりついたが、

これなども演繹と言えるかもしれない。

〔岩崎注:ちなみにニュートンは、どうしてそんなにたくさんの発見を出来るのかと聞かれたとき「問題の解決は、突然のひらめきによってなされたのではなく、たゆまぬ継続的な思考の結果である」と述べた(『こちら』)。〕

ピタゴラスの定理も補助線を加えれば証明できるもの。

つまり演繹法で発見できるものだ。

それでもこの発見は驚きに値する。

  Photo_20200202202901

(6)アブダクション(abduction)についてもう少し詳しく説明したい

アブダクションは発見そのものの論理だ。

「新しい理論の創造はアナロジー、類推から生まれることが多い。(略)発見的思考法にはアナロジーが大切で、私は発想の“グノーモン構造”(gnomonic structure)と呼んでいる」(『こちら』)。

      Gnomon

 グノーモン構造は洞察力に近い概念で、デザインや幾何学に通じるものでもある。

(7)このほか発見の論理学としては、integration(統合)や、極限化も重要だ。

(8)またシステム化(Systemization)についても述べておきたい

ドミトリ・メンデレーエフ(Dmitri Mendeleev、1834年ー1907年)が提唱した元素の周期表が良い例だろう。

        Photo_20200202212701  

         (出所:Wikimedia Commons;CC-BY-SA-4.0)

ある一定の規則に従って、元素を並べていき、先に周期表が出来た。

その時には、埋まらない空欄も多くあったが、これらはいずれ発見されるはずだと考え、事実、人類はその後、これらの空欄を埋めるべく、新しい元素を発見していくことになる。

これなどは、Systemization が発見に結び付いた例だ。

【3】湯川さんによる中間子理論(1934年)について

最後に湯川さんによる中間子理論(1934年)を考えてみる。

1932年にジェームズ・チャドウィック(James Chadwick、1891年ー1974年)が中性子を発見する。

すると直ちにヴェルナー・ハイゼンベルク(Werner Heisenberg、1901年ー1976年)らが「原子核は陽子と中性子から 構成されている」 との考えを提唱。

ここで電気的にニュートラルな中性子とポジティブな陽子がなぜ結びつくのか、いわゆる核力の問題が浮上した。

この問題に対しては当初ベータ崩壊を使った理論での説明が試みられたが、上手くいかない。

湯川さんは,ベータ崩壊のように電子やニュートリノが放出されるのではなく、中性子が陽子と未知の粒子に分かれ、その粒子が陽子に受け取られ中性子になる、と考えた。

この間に力が働き、原子核をつくる結合力になると、この粒子の交換により中性子は陽子に、陽子は中性子に絶えず変化していく。

この未知の粒子が中間子である。

媒介の役を担うので、中間子は中国語では介子(バイシ)と言っている。

中間子の理論的発見にはモデルがあった。

それはハイゼンベルクやパウリによる「場の量子論」である。

ハイゼンベルグによれば「陽子と電子の間に電気力が働くのは、陽子から光量子が出て電子に吸収され、そして電子からまた光量子が出て陽子に吸収される、このキャッチボールにより力が働く」と電磁場の力(電気力)を説明した。

湯川さんは、これと同じで、今度は陽子と中性子の間に重量子=中間子のやりとりがあるとし、核力を説明した。

つまり「場の量子論」のアナロジーである。

ここで、原子核をつくる陽子と中性子の二つの粒子はある距離の間は強い力が働くが、ある距離以上離れると全然働かなくなる。

この特別な性質を説明しなければならない。

ハイゼンベルクの不確定性理論を用いて、中間子(重量子)の質量を計算すると、100MeV、電子の質量の約200倍になる。

それくらいの質量の新しい粒子が見いだせれば、核力を説明できることになる。

湯川さんはこの200倍という数字を頭の中で繰り返していたという。

湯川さんが原子核の核力を媒介する新しい粒子は電子の200倍であるという、中間子の存在の理論予測の結果を得たのは1934年10月。

室戸台風が去った後だと鮮明に記憶しているという。

もしかすると、台風一過が創造性にも作用したのかもしれない。

なぜ湯川さんは、世界に先駆けて、この核力の理論、中間子の理論を創り出し得たのか。

ハイゼンベルクは湯川さんにとって先生であり先輩に当たる競争相手だが、なぜハイゼンベルクではなく湯川だったのか。

湯川さんの中間子理論は、ハイゼンベルクの「場の量子論」を核力の場にアナロジカルに適用したわけだが、ハイゼンベルクと湯川さんの間ではっきりと異なる点がある。

「場の量子論」は、陽子と電子の間で光量子のやり取りがあり、電気力が生じる場合は交換されるが、陽子は陽子、電子は電子で実体の変化はない。

一方、中間子理論の場合、陽子と中性子の間で中間子のやり取りがあり、核力が生じるが、その中間子の交換により陽子は中性子に変わり、中性子は陽子に変わる。

たえず実体が交互に変化し、千変万化の中で核力が働くとする。

ヨーロッパでは、実在の根底には不変な「実体」があるとする考え方の伝統がある。

これに対して東洋の伝統は、一切が諸行無常の縁起によって生じると考える。

東洋の伝統の中で育った湯川さんの中に「この考え方のモチーフが潜んでいた」と想定することも可能かもしれない。

かつて湯川さんは谷川徹三氏との対談で、

「素粒子というものはできたり消えたりするものですね。

これはむしろ“諸行無常”という言葉がピッタリとするものですね。

・・・あるものがなくなり、あらわれたり、また姿を変えるということが自然のあり方ですね」

と述べている。

実際ハイゼンベルク自身、「湯川が中間子を発見したのは、彼が東洋の伝統の下にあったから」という趣旨の言葉を残している。

今や素粒子の世界では、素粒子が千変万化し諸行無常だというのは物理学者の常識だが、

以前は違って、世界の根底をなす粒子は不変だと考えられていた。

このように変わった契機は湯川さんの中間子理論だった。

湯川さんは、核力の問題を解決した中間子理論だけでなく、そこから始まる素粒子論という領域を開拓し、その基本的パラダイムを作ったのである。

創造には二つあり、一つは既存の領域で新たな事実や法則を発見し定式化すること、

そして、もう一つは、新しい領域そのものを生み出すことだ。

思うに、本当の創造性とは、第一に、外のものをどん欲に取り入れることで生まれる。

と同時に、自分の伝統の中にあるものを生かすことで生まれてくる。

湯川さんによる中間子の発見は、この2つのポイントを教えてくれるように思う。

* * *

以上が、伊東先生によるレクチャーのエッセンス(なお、これをまとめるにあたり、一部、『こちら』を参考にさせて頂きました)。

【4】レクチャー後のセミナー参加者コメント、質問など

レクチャーの後のセミナー参加者の主な質問、コメントは次の通り。

・『本日の話は、科学の発見に関するもの。私は、イノベーションに論理があるか、つまりどういったプロセスなりロジックでイノベーションが生まれるかに興味ある。本日の話と同じように考えてよいか』

・『本日の先生の話、それ自体があくまでも仮説ではないか』

・『イノベーションの点で聞きたい。どうして日本企業は遅れをとってしまったのか』

・『若い研究者が研究に関する予算を獲得する際には、仮説をたて、それを研究することに対してのペーパーワークの提出が結構大変だ。自由な発想が行われにくい』

・『イノベーションのプロセスなりロジックを研究する国にイノベーションは生まれない。先月亡くなられたクリステンセン氏も日本で言われているほど米国ではメジャーに扱われてはいない。自分は東大の大学院で教えているが、教え子たちにはイノベーション学の研究などしないで、さっさと起業しろと発破をかけている』

* * *

なお昨日の勉強会の主催者である紺野先生の『イノベーション全書』が先週末、新しく刊行されています。

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2020年1月15日 (水)

トランプ vs. ブディジェッジ

昨晩は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

   Nikkei_20200115231201

トピックスは米国の大統領選挙。

現職のトランプに挑戦する民主党候補はいったい誰になるのでしょうか。

大方の予想はバイデン元副大統領。

世論調査では他の候補を引き離し、トップにたっています。

民主党中道派の重鎮で、2009年から17年にかけての8年間、副大統領としてオバマ大統領を支えました。

若いころに最初の奥さんと生後13か月の娘さんを交通事故で亡くすという悲劇を経験。

自身も45歳の時に脳動脈瘤が破裂し生死の境をさまようなど苦難に襲われています。

サンダースとウォーレンの両候補はかなり急進的。

サンダースは民主社会主義者を自称し、

ウォーレンは「大統領になれば法人税を21%から35%に戻す」と主張しています。

この2人が大統領候補になるのは恐らくは難しく、逆になったとすれば、それはトランプを喜ばすだけに終わるでしょう。

大富豪のブルームバーグは一番遅れて大統領候補として手を挙げました。

遅れて参戦したがゆえに、アイオワ州(2月3日に党員集会)とニューハンプシャー州(2月11日に予備選)は無視し、3月3日のスーパーチューズデーに全力を注ぐとしていますが、はたして上手くいくのかどうか。

逆にアイオワ州とニューハンプシャー州の両州に力を集中し、この両州で今のところトップを走っているのが、ブディジェッジ。

37歳の若さゆえ経験不足も指摘されていますが、なんと29歳のときからインディアナ州サウスベンド市の市長を務めてきています。

海軍に志願して、2014年には市長の職に就いたまま、7か月間休職してアフガニスタンで軍務に就きました。

   Buttigieg

    (アフガニスタン時代のブディジェッジ)

トランプとしては、ブディジェッジが民主党からの大統領候補となって彼の前に立ちはだかるのが、いちばん嫌なのではないでしょうか。

ハーバードとオックスフォードの両校を優秀な成績で卒業しただけあって、頭の回転は速く、スピーチも巧み。

アイオワとニューハンプシャーを制すれば、民主党候補の本命として彗星のように出現してくる可能性もあります。

それでも、やはり現職のトランプは強いというのが私の予想なのですが・・。

なお『こちら』をクリックすれば、昨日のテレビ放送の動画をご覧になれます(13分間です)。

 

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2020年1月13日 (月)

ベンガジの悲劇は繰り返さない

久しぶりに株式投資に関する記事を書きます。

と言っても、年末から年始にかけては、米国・イランの衝突によって相場が翻弄されました。

【1】米国・イランの衝突

何が起きたのか、時系列で記しますと:

12月27日、イラク北部の油田都市キルクーク駐留の米軍基地が、武装組織「カタイブ・ヒズボラ」からと思われるロケット砲の攻撃を受けました。

米国人1人が死亡。

攻撃をしかけたと思われる「カタイブ・ヒズボラ」はイラクやシリアで展開するシーア派・親イランの武装組織。

このため翌28日、米軍は「カタイブ・ヒズボラ」のイラクにある拠点3カ所とシリアの拠点2カ所をF15戦闘機で空爆。

このとき標的となったのは、「カタイブ・ヒズボラ」の武器庫や司令部でした。

「カタイブ・ヒズボラ」は、イラン革命防衛隊や「レバノンのヒズボラ」から資金や武器などの支援を受けていると言われています。

それでは「そもそもレバノンのヒズボラって何なのだ」という疑問も湧いてくると思いますが、

ヒズボラは、レバノンにおいて、イラン型のイスラム共和制を樹立しようとする組織で、今から40年近く前のレバノン内戦の最中に誕生。

1983年には首都ベイルートで米大使館(4月)、米仏海兵隊兵舎(10月)を相次いで自爆攻撃し、

2000年以降もイスラエルとの間で軍事的衝突を繰り返してきています。

話を元に戻します。

12月27日の米軍による空爆に抗議し、12月31日からイラク・バグダッドにある米国大使館へのデモが発生。

デモ隊は大使館の壁を放火したり、大使館内への侵入を試みたりするほど過激化しました。 

このとき、トランプ大統領が盛んに言っていた言葉が、

「ベンガジの悲劇は繰り返さない」(『こちら』)。

ベンガジの悲劇とは、リビアの第2の都市ベンガジの米国領事館が2012年に襲撃された事件。

人格者として現地リビアの人たちからも尊敬を集めていた米国のスティーブンス駐リビア大使ら4人が殺害されました。

このとき米国のヒラリー国務長官に不手際があったとして、前回の大統領選の際には、

トランプ陣営が執拗にこの点を攻撃。

ヒラリー敗北の一因となりました。

現在でも、ベンガジ領事館の襲撃を生き抜いて帰還した人たちは当時の民主党政権の不手際を追求、

「仮にトランプが当時指揮を執っていたとすれば悲劇は防げた」と主張しています(『こちら』)。

実際のところ、31日の在バグダッドの米国大使館への襲撃に対して、トランプは素早く対応しました。

直ちに100名以上の海兵隊を現地に派遣するとともに、アパッチと呼ばれる攻撃用ヘリコプターを2機投入、大使館を防衛したのです(『こちら』)。

そして1月2日、大使館襲撃の背後にソレイマニがいるとの報告を受け、トランプはソレイマニ殺害を指示、

3日、無人機を使ってソレイマニを殺害しました。

これに対して、イランは7日、イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃を行うことで報復。

イランの攻撃が限定的で人的被害も出なかったことから、

トランプは8日、

「イランによる昨日のミサイル攻撃に対しては、

軍事的な報復ではなく追加経済制裁で対応する」

旨の方針を表明しました。

これを受け、ダウ平均株価は8日、162ドル上昇。

10日には、取引時間中に一時的ですが、前人未踏とされていた29,000ドルの大台を突破しました。

【2】ベンガジの悲劇

トランプは10日、オハイオ州トレドで演説(『こちら』)。

民主党政権下で起きたベンガジの米大使館襲撃事件に再度言及し、

「ソレイマニはバグダッドのみならず各地の米国大使館を襲撃することを企図していた、自分はそれを未然に防いだ」

と自らの成果を誇示しました。

(注:ソレイマニに関しての日本のマスコミ報道がややおかしいという点については、『こちら』『こちら』『こちら』を参照)

実は、ベンガジの悲劇はマイケル・ベイ監督による映画になっています。

『13時間』と題する映画なのですが、これを見るとトランプが再三再四にわたってベンガジを例に引きながら民主党を攻撃する理由が分かります。

トランプは自分の政権下でベンガジの悲劇のようなことが起きることを決して許さない。

それは自らの首を絞め、再選が阻止されることに繋がるからです。

だからこそソレイマニ殺害を決断したと言えるのかもしれません。

別言すると、ソレイマニ殺害に対するイランの報復が、もし仮に弾道ミサイルによる在バグダッドの米国大使館攻撃であったとすれば、

米国はイランとの間で全面戦争に突入していた可能性が大でした。

イランもその辺のことを分かっていたので米軍基地攻撃に留めたのだと思います。

【3】大統領選挙と今後の相場見通し

年末・年始の米国・イラン衝突が連日のように相場を大きく乱高下させたように、

大統領選挙のある今年はトランプが例年以上に選挙を強く意識して行動する、

そしてそのことが相場を大きく動かすことに繋がりうることを覚悟しておく必要がありそうです。

ベンガジの悲劇は繰り返さないートランプは再三再四にわたってこう発言してきていますが、

大統領選を控えるトランプにとっては、もう一つの重要なポイントがあります。

それは「不景気にはしない。出来れば今以上に株価を上げる」

ということです。

アメリカの大統領選挙では現職が圧倒的に有利です。

私が今でもよく覚えているのが、1972年の大統領選挙。

当時私はアメリカの高校に通う高校生(AFS留学生)でした。

選挙に際し、現職のニクソン大統領が用意したバンパーステッカー(車のバンパーに貼る広告)は、単に「Re-elect the President」というもの。

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現職が強いということを熟知したニクソンは、自分の名前さえ出さない(対立候補と対等ではない、自分が上位ということを選挙民に印象付ける)という戦略を取ったのです。

実際のところ、過去100年の歴史において、現職が再選されなかったのは4回だけしかありません。

1992年のブッシュ(父)

1980年のカーター

1976年のフォード

1932年のフーバー

です。

そしてこれらの現職敗退に共通するキーワードは「リセッション」(景気後退;1992)もしくは「スタグフレーション」(景気後退下のインフレ;1980)といった経済関係の不振を示す言葉です(注:1976年の前年にはベトナム戦争後の不況がアメリカを襲い、失業率は9%に達しています)。

トランプはこのことを誰よりも強く意識しているはずですから、これから先、選挙のある11月にかけては、

景気のエンジンをふかし続けるように努力するはずです。

逆に民主党候補有利となれば、市場が一気に冷え込む可能性が大です。

「サンダース、ウォーレン、ブティジェッジの何れかが大統領になれば市場は3割から5割下落するだろう」

これはスティーブ・ギドゥマル氏の言葉です(『こちら』)が、このように占う人は少なくありません(ほかにもドラッケンミラーなど(『こちら』))。

もっとも現在の選挙情勢を見る限り、トランプに勝てそうな民主党候補は見当たりません・・。

マーケットにとってはそれが望ましいのでしょうが、米国にとって、あるいは世界にとってそれが望ましいのかどうかは、別の話です。

"How dare you!" 

こう憤慨するグレタさんの声が聞こえてきそうです。

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2020年1月11日 (土)

被災した『福島の造り酒屋』を応援しよう!

私の高校時代のクラスメートが福島県で造り酒屋をやっています。

『大天狗酒造』という本宮市唯一の蔵元(『こちら』)。

昨年10月の台風19号で被災してしまいました。

阿武隈(あぶくま)川と、その支流の安達太良川が氾濫。

酒蔵の1階部分、約60センチが浸水してしまったのです。

下はその時の写真。

  1

本格的に仕込み作業をはじめるという大事な時期に、

洗瓶機や瓶詰め機が使えなくなってしまいました。

      2

      3

酒米の5分の4も失われました。

杜氏(とうじ;日本酒の醸造工程を行う職人のことです)の小針さんはこうコメントします。

『本来であれば、くじけそうになる状況でしたが、

蔵を閉めようとは一度も思わなかったのは、助けてくださった方々の存在です。

被災した翌日から地元の方々、酒蔵さんや取引先の方、常連さんなど、沢山の方が駆けつけてくださいました。

中には宮城や栃木、東京からお越しいただき掃除を手伝ってくれたり、

ラベルが汚れて売り物にならない日本酒を何本も購入していただいたり、

「駆けつけることができないから飲んで応援するよ」とメッセージをいただくなど、

さまざまなご支援をいただきました』

  5

そして、何とか、手作業や同業者から借り受けた簡易型の機械を使って、昨年11月には酒造りを細々と再開。

しかし被災前の生産力にはほど遠く、

もとに戻すための再建費用は5,000万円にも上ると言います(詳しくは本日の福島民報新聞記事(『こちら』)をご覧ください)。

 『大天狗酒造』は1872年(明治5年)の創業。

今年で創業147年を迎える蔵元です。

出来ることならば、伝統の灯を絶やさないで頂きたい・・。

そう願っています。

なお昨日より、再建費用捻出のためのクラウドファンディング(『こちら』)が始まりました。

(クラウドファンディングによる支援を経験されたことのない方でも5分もあれば手続きを完了できます)。

支援にはいろいろなコースが用意されていて、

たとえば3,000円で、お礼のメールと杜氏の小針さん特製の本宮マップが届きます。

10,000円で『大天狗酒造』の酒と本宮特産品セットが送られてきます。

下の写真は、『大天狗酒造』の方々。

   4    

真ん中がクラスメートの伊藤滋敏君です。

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2020年1月 2日 (木)

『きっと新しいことが始まる』

今から24年前。

1996年。

パリ在住のフランス人、カレンさんは、フランスのテレビ局に勤めていました。

当時26歳でしたが、すでに部下が8人もいる技術部長でした。

「カレン、ちょっといいかい?」

あるとき上司に呼び出されます。

上司の後をついて会社の休憩室に行ってみると、こう言われました。

 「カレン、バカンス(長期休暇)を取らないか? 有給休暇がたまってるだろ?」

そう言えば、カレンさんは入社以来、仕事に夢中でまとまった休みを取っていませんでした。

「局の立ち上げ以来、君が頑張ってくれたおかげで今はスタッフが育っている。

数週間、君が抜けても大丈夫だよ」

「分かりました」

「どこか海外、そうだな、ニューヨークにでも行って、羽を伸ばしてきたら、どうだ?」

「アメリカは嫌です」

そんなカレンさんが行き先として選んだのは日本。

5週間のバカンスでした。

しかしいきなり行ったわけではありません。

バカンスの取得は3か月後ということでアレンジし、その間、仕事の合間を縫って

パリにいる日本人と知り合いになったり、

彼らから日本語を教わったりして、

初めての日本渡航に備えました。

出来るだけ日本に親しむことにしたのです。

しかし、

そんな彼女でも、日本に向かう飛行機の中で、もう胸はドキドキ。

飛行機の中は日本人のキャビンアテンダント。

そして乗客のほとんど全員が日本人!

もうここはすでに日本だ!

覚えたての日本語で日本人キャビンアテンダントの質問に答えても

いっこうに通じず、

フランス語で返されてしまう始末。

10時間以上のフライトが終わりに近づきつつあるとき、

機内アナウンスが入ります。

「当機はまもなく成田国際空港に到着します」

これを聞いて、カレンさんは思います。

「いったい何と言っているんだろう?

日本ってどんな国なんだろう」

この後、カレンさんの身に起きたいろいろな出来事。

まだその時のカレンさんには、これから先、いったいどんなことが起こるのか、

まったく想像がつきませんでした。

全然!

でもカレンさんは、飛行機の中で、

日本に行くことが人生の転機になると、

なぜかはっきりと感じていました。

「きっと新しいことが始まる」

そう強く感じていたと言います。

* * *

そんなカレン(Karyn Nishi-Poupee)さんは、現在フランス最大の報道機関、AFP通信の東京特派員。

バカンスで初めて日本に行った後、日本とフランスの間を行き来するようになり、

勤めていたテレビ局もやがて辞めて、

フリーのジャーナリストとして活躍。

2004年にAFP通信東京特派員に就任。

2008年「LES JAPONAIS 日本人」を出版。

2009年に「渋沢・クローデル賞」を受賞。

翌2010年には「Histoire du Manga 日本漫画の歴史」出版。

同年、仏国家「功労勲章」を受章。

現在は日本人の夫(漫画家のじゃんぽーる西さん)と2人の息子さんと一緒に日本に住み、

日本の技術、経済、社会を海外に伝え続けています。

* * *

『私はカレン、日本に恋したフランス人』は、カレンさんの夫、じゃんぽーる西さんが著した漫画本。

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26歳のカレンさんがバカンスで日本に行こうと思いたち、それから現在までの足跡が漫画で綴られています。

* * *

ところで、話は若干それますが、昨年引退したイチローが、先月22日、小学生の子どもたちに次のような言葉を送っています(全文は『こちら』)。

「僕が27、28の歳にアメリカに渡って、(略)外に出て初めてわかること、

調べれば知識としては、わかることであっても、

行ってみてはじめて分かることってたくさんあって(略)、

やっぱり外に出て、傷つくことだってあるし、楽しいことももちろんいっぱいある、

勉強することはいっぱいありました。

それを知識として持っておくのではなくて、体験して感じてほしい。(略)

今まであった当たり前のものというのは、決して当たり前ではないというふうに気づく。

価値観が変わるような出来事を、みんなに体験してほしいというふうに思います」

* * *

 深くは考えずに、

しかし準備は出来るだけして、

思い切って外に出てみる。

そうすることで、

きっと新しいことが始まる。

今から24年前。

26歳のカレンさんはそう感じながら異国の地に向かって飛び出したのでした。

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2020年1月 1日 (水)

明けましておめでとうございます

Mt-fuji

              2020年元旦の富士(From Tokyo; 7:49AM)

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2019年12月23日 (月)

子どもを守るということ

安冨歩さん。

以下『#あなたを幸せにしたいんだ』より。

* * *

「私の両親は、私を立派に育てました。

誰よりも立派に育てたと思います。

彼らは必死で私を育てて立派な人間にしようとして、

そして(私は)京都大学に入って、住友銀行に入って2年半で辞めたんですけど、

で、大学院に入って博士号取って大学教授になって、最後、名古屋大学から東京大学の教授になるという、

立派なエリートコースを歩んで、両親は私を立派に育てたんですが、

でもその私は虐待のサバイバーだと思っています。

子どもを守るというのは、

私のような人間を作らないっていうことです。

私は、例えば京都大学に合格したときも、

私が34歳で最初に書いた博士号を取った論文を本にして、

日経・経済図書文化賞という賞を獲りました。

そういう賞のですね、受賞の連絡を受けたときも、

東大に職を得たときも、

これっぽっちも嬉しくなかったんです。

いつも私はそういったときには、ほっとしていました。

その日経賞っていう賞は大体、とっても功成り名遂げた立派な先生が受賞するような賞なんですけれども、

私は34歳のときにそれを受賞したんですが、

本を書いて出版したときに、

『この賞を獲らなかったら死ぬ』

って思ってました。

本当に怖くて、獲れなかったらどうなるんだろうと思ったときに電話がかかってかかってきてですね。

受賞したのでほっとしたんですね。

完全におかしいです。

成功する人間というのは、そういう人間です。

成果を上げなければ生きてる値打ちなんてないって、

心の底から思ってるから成果を上げられます。

東大や京大に合格するような勉強を、そんなことのために青春を捧げるのは、まともな人間には無理です。

合格しなかったら死ぬって思ってるから、合格するんです。

そんなふうに子どもを育てるのは虐待です。

考えてみてください。

この国はそういう学歴エリートによって指導されています。

私たちエリートは怯えています。

誰かに何かを言われるんじゃないかと思って、怯えています。

特に、自分に力を振るうことの出来る人に叱られるのに怯えています。

五十何歳にもなって、親から縁を切って十何年もたって、

東大教授で有名人なのに、

『あゆむ』という名前を呼ばれるだけで、

私は怯えるんです」(本書140-141頁)。

* * *

安冨さんは、「たびたび湧き起こる自殺衝動に

長らく悩まされてきたという」。

そんな安冨さんが「『解放』された転機のひとつが、離婚。

それと同時に両親とも絶縁すると、

自殺衝動は消えたという」(本書145頁)

* * *

以下、再び安冨さんの言葉。

「大人が好き好んで子どもに隠蔽された虐待を加えているわけではなく、

社会に適応できるように育てようとして、

やってしまっている。

つまり、社会システムの再生産のために誘導されて、

子どもに隠蔽された暴力を、

「良かれと思って」振るっているんです。(略)

恐ろしいことに、日本の子どもの自殺率は世界一です。

社会が隠蔽された暴力で満ちているので、

ガチで子どもを虐待する親も出てくる。

直接殴ったりせず、子どもを死に追いやる親もいる。

そういう恐ろしいことをやめないといけない。(略)

これからはインターネットの時代に合うような社会システムを考えないといけなくて、

それを子どもたちに考えてもらうしかない。

それに賭けるしかないので、子どもを叱るとか、ふざけんなと思うわけですよ。

なんで世界を救えない奴が、救うかもしれない人を叱ったりするんだよって(笑)。」(本書152-153頁)

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2019年12月14日 (土)

3年前に放映されたCBSニュースですが・・

Secret-santa

3年前の12月中旬に放映されたCBSニュースを紹介します。

「3年前の話を今さら・・」と思われるかもしれません。

しかし「クリスマスを控えたこの時期だからこそ」の動画です。

舞台は米国中西部のミズリー州。

私は昔、シカゴに5年ほど駐在していたことがあり、ミズリー州にも月に1~2度の頻度で出張していました。

カリフォルニアやニューヨークがどんどん変わるのに、ミズリー州は昔と比べてあまり変わっていません。

そんなミズリー州を舞台に、心温まるストーリーが・・。

実際にあった話です。

『こちら』をどうぞ。たった3分間の動画で、日本語の字幕付きです。

 

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2019年12月 8日 (日)

5,000万人という節目(マイルストーン)

ある商品なりサービスが提供され始めて、5,000万人の利用者を獲得するのに、どれくらいの時間がかかるんでしょうか。

Internet

実際にかかった年数を調べてみると:

自動車  62年

電話  50年

テレビ 22年

コンピューター 14年

携帯電話  12年

インターネット  7年

 iPod  4年

ユーチューブ  4年

フェイスブック  3年

ツイッター  2年

ポケモンGO   19日

Milestone

世の中のスピードがどんどんと速くなる。

こう説明するのはニュージャージー工科大学経営大学院Reggie J. Caudill教授。

教授のスピーチ(1分間の動画)は『こちら』でご覧いただけます。

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2019年12月 2日 (月)

Rebalancing Daytime and Nighttime Population

Google’s parent company, Alphabet, has a subsidiary for urban planning and innovation called “Sidewalk Labs”. Established in 2015, this company is headed by Dan Doctoroff, a former deputy mayor of New York City.

Sidewalk Labs is now designing a district in Toronto’s Eastern Waterfront. This project has caused a big controversy over the use of data and privacy. Setting aside this important issue, as this article is not intended for discussing data and privacy, it has to be noted that Sidewalk’s master plan, submitted on June 17, 2019, reveals various ways to create a nearly carbon-neutral city that cuts greenhouse gases by 85 percent. These include relying on clean energy sources for heating and cooling; optimizing energy consumption using digital technology; designing energy-efficient buildings; providing residents, workers, and visitors with a full set of transportation options including “not-owning a car”.

Sidewalk
      (From Sidewalk’s “Master Plan” submitted on June 17, 2019)

Sidewalk’s ambitious plan is just one example. Today’s city planning has to cope with sustainability issues by striving to realize climate-positive urban developments through an innovative ecosystem.

Take a look at Tokyo from this perspective. The Tokyo Metropolitan Government (TMG), at the U20 Mayors Summit held in Tokyo in May 2019, declared that TMG will seek to realize a Zero Emission Tokyo to contribute to the goal of global net zero CO2 emissions by around 2050.

Tokyo’s energy-related CO2 emissions now amounts to 57 million tons, equivalent to the total emissions of Austria. One striking fact is that commercial buildings account for 45% of these emissions in Tokyo, whereas residential sector accounts for 30%, and transportation for 17%.

  Tky

(Tokyo Metropolitan Government: “CREATING A SUSTAINABLE CITYTOKYO’S ENVIRONMENTAL POLICY” SEPTEMBER 2019)

Tackling emissions produced by the Tokyo’s commercial sector is the key to success for Tokyo’s endeavor toward zero emission city. From the environmental viewpoint, Tokyo has already too many commercial buildings than it can afford, and this is evident from a fundamental problem Tokyo now faces; namely a huge gap between daytime and nighttime population.

According to Tokyo Metropolitan Government’s “Tokyo Toshi Hakusyo (City View Tokyo) 2013”, the ratio of daytime and night population in the three central wards (42 square kilometers) of Chiyoda, Chuo, and Minato is 6.2 to 1.0, with the daytime population of 2.31 million versus the nighttime of 0.37 million. This figure is 1.3 (daytime) to 1.0 (nighttime) in Manhattan (59 square kilometers), New York, with the daytime population of 2.09 million versus the nighttime of 1.60 million.

This ratio is outrageously skewed in Chiyoda ward (14.6 to 1.0), with its daytime population of 853,000 and nighttime of 58,000. Every morning, about 800,000 people commute to this district from the outside by the commuter trains, buses and cars.

Disproportionately large daytime Tokyo population causes more-than-manageable CO2 emissions in the commercial sector, which accounts for 45% of total emissions in Tokyo.

It has also significant negative impact on the CO2 emissions in the transportation sector. Every morning, numerous commuter trains arrive at Tokyo’s terminal stations at intervals of 2 minutes. This is often favorably noted for its efficiency from the viewpoint of emission control. However, we have to look at the fact that these trains have to go back to the suburbs every 2 minutes with almost no (or at least very few) passengers on board.

There are about 1,000 convenience stores in Tokyo's three central wards. Many office workers buy lunch boxes and snacks at these convenience stores in Tokyo. Large number of trucks leave factories in neighboring prefectures for Tokyo every morning to deliver the lunch boxes to the convenience stores in the Tokyo’s central districts. These trucks return to the factories afterwards with little load.

Some policy measures or guidelines are strongly encouraged to limit the total space for commercial buildings and offices in the Tokyo central district in order to correct the disproportionately large daytime population. Residential use of the buildings in the form of condominiums and apartments should, on the other hand, be encouraged.

Institute for Urban Strategies of the Mori Memorial Foundation issued Global Power City Index on November 19, 2019. According to this index, Tokyo was ranked 23rd out of 48 cities around the world in the area of environment taking into account of the following nine indicators: (1) commitment to climate action, (2) renewable energy rate, (3) waste recycle rate, (4) CO2 emissions, (5) SPM density, (6) SO2 and NO2 density, (7) water quality, (8) urban greenery, and (9) comfort level of temperature. This study shows that much has to be done to accomplish the Tokyo’s aggressive goals set forth in the area of environment.

Correction of the distorted population structure of daytime and nighttime should probably come to the top of TMG’s to-do list as it is the fundamental basis to enhance the Tokyo’s attractiveness in the area of environment, and therefore, it should be the key to sustainable growth of this city.

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2019年11月23日 (土)

昼間の人口と夜の人口

北米カナダのトロント市では、IT企業のグーグルがスマートシティの開発を進めています。

グーグルはレベル4の自動運転車を開発済みで、たとえばアリゾナ州フェニックスの郊外では600台以上もの自律走行車がすでに街中を走っています。

こうして培われた自動運転の技術と人工知能とを駆使して、グーグルはスマートシティを作ろうしているのです。

場所は、トロント市の中でもオンタリオ湖沿いの「ウォーターフロント地区」。

      Sidewalk-lab

        (Picture from Sidewalk Labs

このスマートシティでは、車が赤信号で待つことを極力なくし、温室効果ガスの排出を極限まで抑え込もうとしています。

具体的な数字を挙げますと、グーグルの当初計画によれば、温室効果ガスの排出は89%も削減できる、つまり従来を100とすると11で済むようにできるとのことです。

もっともグーグルのこの計画に対しては別な観点から批判が寄せられました。

「住民の顔を画像認識で把握すれば、プライバシーが損なわれる」だとか、「監視社会に繋がるのではないか」といった懸念です。

このためグーグルの計画は、現時点では当初に比べて、その規模がかなり縮小される見通しです。

こうした懸念や批判は重要で、グーグルとしては「プライバシーの遵守」に対して正面から答え、スマートシティが「監視社会」に繋がらないようにしていかなければなりません。

一方で、グーグルの計画のように(その実現の手段については今後さらに検討されるべきでしょうが)、世界のこれからの都市は、「環境負荷」に配慮し、「持続的成長」(Sustainable Growth)を目指すようなものになっていかなければなりません。

* * * *

こうした観点から日本の都市を見てみます。

例えば、日本の巨大都市「東京」。

ここは、はたして「環境負荷」に配慮し、「持続的成長」を目指すものになっているでしょうか。

公共交通機関が発達し、東京は「環境負荷」の観点から及第点を得られると主張する人もいます。

しかしそもそも東京の場合、「実際に住んでいる人口に比べて、昼間の人口があまりに多すぎる」というギャップの問題を抱えています。

この昼と夜の人口のギャップについて、具体的に数字を拾ってみます。

東京都がまとめた「東京都市白書2013-世界の諸都市と比較した東京の魅力」によりますと、千代田、中央、港の都心3区の昼間と夜の人口比率は、「夜1.0人に対して昼間6.2人」です。

一方で、この都心3区とほぼ面積が等しい(といっても1.4倍ほどになりますが)、ニューヨーク市マンハッタン区は「夜1.0人に対して昼間1.3人」です。

パリは夜、すなわち定住人口の方が多くて、「1.0人」対「0.8人」となっています。

ニューヨーク市マンハッタン区などに比べると、東京都心3区は5倍近くも昼間の人口が(定住人口との比較で)偏って多くなっていることが分かります。

都心3区の中でも、千代田区の昼間と夜間の人口比率は突出して歪になっています。

最近の国勢調査によりますと、千代田区は、「夜1.0人」に対して昼間はなんと「14.6人」です。

具体的には、千代田区に住む人、すなわち夜の人口は5万8000人。

これに対して、昼の人口は85万3000人。

毎朝、約80万人もの人が通勤電車や車などで、外部から千代田区にやってくるのです。

さて、昼と夜の人口が著しく違うと、「環境負荷」と「持続的成長」から、どうして問題となりうるのでしょうか。

温室効果ガスの排出などに関しては、具体的な数値を伴う調査結果を待たなければなりません。

しかしイメージ的にはこれが問題であることは容易に想像できると思います。

例えば東京都心部には毎朝、郊外から数多くの会社員が通勤してきます。

ターミナル駅には2分間隔で次から次へと、郊外から電車が到着し通勤客を吐き出していきます。

この電車は、今度は、次から次へと2分間隔で、ほとんどガラガラに近いような状態になって郊外へと帰っていきます。

人があまり乗っていない電車が列をなすようにして次から次へと走っていく光景は明らかに異様です。

しかしこのことは日本では意外にもあまり報じられていません。

昼間、東京のオフィス街で働く多くの人たちは、昼食時間になるとコンビニでお弁当やお握りを買い求めます。

東京都心3区だけでも、1,000店舗ものコンビニがあるのですが、昼食時にはこれらのコンビニはお弁当やお握りなどを買い求める会社員たちでごった返します。

当然のことながら、これらのお弁当は昼食時間に間に合うように、午前中には東京都心部にあるコンビニに届けられなくてはなりません。

毎朝、数多くのトラックが例えば茨木県や千葉県などの近隣県の工場でお弁当を積んで出発し、首都高を、列をなすようにして都心へと向かっていきます。

お弁当を届け終わった後のトラックは、多くの場合、帰りの積荷もあまりないままの状態で近隣県の工場へと戻っていきます。

住んでいる人に比べて、昼間の人口が突出して高いがゆえに、こうした現象が生じているのです。

さらに加えて、(環境負荷の問題とは直接リンクしませんが)昼間と夜の歪な人口構成は、ひとたび地震などで災害が起きると、東京の都心部が帰宅難民で溢れかえってしまうという問題も指摘しておかなければなりません。

* * *

現在、ニューヨーク、ロンドン、パリ、東京など、世界の主要都市は、より魅力ある都市になるべく努力しています。

A.T.カーニー、EIUシティグループ、Monocle、森記念財団などが、世界の主要都市を調査し、「世界の都市総合力ランキング」といったレポートを発信しています。

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   (出所:森記念財団「世界の都市総合力ランキング」

こうした調査機関は、都市を経済、文化交流、研究開発、居住性、環境、交通アクセスといった様々な諸点から評価しています。

このうち例えば、森記念財団が2019年11月19日に発表した「世界の都市総合力ランキング2019」によりますと、東京は「経済」、「文化交流」といった指標では世界4位となったものの、「環境」の指標では世界48都市中23位にとどまっています。

東京がこれから世界の主要都市と伍していくために、現在、各方面でいろいろな施策が講じられているとは思います。

その中の一つとして、現状あまり着目されていませんが、「昼間と夜の歪な人口構成を是正する」ための施策も検討されて然るべきであると考えます。

具体的には、都心部にも集合住宅を中心とする居住空間を今まで以上に設け、一方で、業務空間については抑制気味にするような政策的誘導を検討すべきだと思います。

ニューヨーク・マンハッタンの「アッパー・イースト・サイド」は豊かな居住空間を有することで知られています。このような街並みが東京にもあって良いと思いますし、何よりも居住空間と業務空間とが「心地よい比率」で存在していくことが、東京が都市として持続的に成長していくうえで必要であるように思います。

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