2021年2月28日 (日)

テレワークの生産性

内閣官房と経産省が取りまとめた資料がネット上に公開されていました(『こちら』)。

31枚のスライドですが、私の興味を引いたのは:

(1)米国では在宅勤務の生産性は職場と同じか、むしろ在宅の方が生産性が高いと考えられている(下図)。

(なお、図は全てクリックすると大きくなり読めるようになります)。

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(2)一方、日本では在宅の方が生産性が低いと考えられている(下図)。

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(3)なぜ日本では在宅の生産性が低いと考えられているのか、その理由は(下図):

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(4)米国で在宅勤務をしている人の割合が高く、しかも年収の高い人ほど在宅勤務の割合が高い(下図)

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(5)いちばん興味深かったのは次のスライドです。

米国での調査結果なのですが、コロナが収束するであろうと考えられる2022年に、在宅勤務はどの程度の頻度になっているだろうかとの問いに対する答え。

週5日(要するに毎日)との答えが27%。

全体の64%が(コロナが収束するであろう2022年に)週2日以上は在宅勤務になるだろう(もしくは、そうなることを希望する)と答えています。

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新型コロナを契機に働き方改革に取り組み、生産性の向上を図る企業と、在宅は取り入れつつも生産性向上に結びつくことが出来ない企業。

この両者の格差が広がっていってしまうような気がします。

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2021年2月23日 (火)

米国長期金利の上昇

米国の長期金利がじわじわと上がっている。

ここ1ヶ月間の動き(10年もの国債のイールド)。

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さらに、先週水曜日以降の動き。

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こうした動きはS&P500を売ることに繋がる。

S&P500のここ5日間の動き。

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S&P500 と言っても、アップル、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、フェイスブック、テスラの上位6社がS&P500全体の24%くらいを占める。

結局、これら6社は軒並み下落。

ひとつの切っ掛けはイエレン財務長官が先週木曜日CNBCの「Closing Bell」という番組でインタビュアーのサラ・アイゼンに対して次のように発言したことにある(『こちら』)。

『新型コロナの経済対策は大規模な方がいい。

規模を抑えることのマイナスの影響の方が(大規模政策によるマイナスの影響よりも)、はるかに大きい』

政府による大規模経済対策によって、市場がインフレリスクを意識するのは、ある意味、当然。

金利の調整機能が働き、株価が下落するのは、市場が健全に機能しているからでもある。

なお市場はイエレン氏のコメント(22日、月曜日にもスピーチ;『こちら』)のみならず、パウエルFRB議長にも注目。

パウエル氏は23日に上院銀行委員会で、翌24日には下院金融委員会で半年に1度の議会証言を行う。

話は変わるが、昨日はテスラの下げもきつかった。

先週末は781ドルだったが66ドル(8.6%)下落。

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アフターマーケットでは更に下がり、710ドルになっている。

市場が期待していたモデルY。

コンパクトSUVで価格も4万1990ドルと、ガルフウィングのモデルX(10万ドルを超えるものが多い)に比べると購入しやすい。

そのモデルYのエントリータイプ(ベースタイプ)の注文画面がこっそりと消えた(『こちら』)。

「なぜだ」と騒がれたが、イーロンマスクは、「It is still available off menu, but I don’t think the range, in many drive conditions, yet meets the Tesla standard of excellence」とツイート(『こちら』)。

無理して販売するよりもテスラとしてのスタンダードをしっかり維持したいとのことのようだ。

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2021年2月 5日 (金)

米国株インデックス投資の勧め

放っておけば格差はどんどん広がる傾向にある。

これは7年前にトマ・ピケティが著書『21世紀の資本』で指摘したことだ。

彼が調べたところ、

「資本収益率」>「経済成長率」。

つまり資産(とくに株式)を持っている人に、この世の中、有利に働く。

『21世紀の資本』に出てくる世界1位(当時)の女性資産家、リリアンヌ・ベタンクール。

ピケティによれば、彼女は化粧品ロレアルの創業者から遺産を継いだだけで生涯に一日たりとも働いたことはない。

しかし彼女の資産は1990年の20億ドルから2010年には250億ドル(2兆6000億円)へと年率13%超で増加した。

そんな社会で良いのかどうか、といった本質的な問題はある。

ここではその点には触れない。

ただ、一般の人もこうした世の中を前提とすれば、資産を出来るだけ株式に投資しておいた方がいい。

しかし何にどう投資したらいいのだろう。

投資の初心者は取りあえず「米国株のインデックス」(具体的にはS&P500、もしくはダウ平均に連動するETF)に投資すると良いと思う。

これはあくまでも私の個人的見解なのだが、

「なぜ米国株なのか」と疑問に思う人も多いだろう。

なぜ日経平均やTOPIXではないのか?

あるいはなぜMSCIコクサイ(先進22ヵ国の株式に連動)ではないのか?

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こうした点を記事にしてみた(本日の日経新聞『こちら』)。

紙で読みたい方は7日の日経ヴェリタス紙に掲載されます。

(画像は出版権の関係で敢えて判読できないようにしています。すみません。)

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2021年1月31日 (日)

何が起こっている? 米国市場

2010年にまで遡る。

スタンフォード大学で数学を専攻し、ルームメートだったバイジュ・バットとブラド・テネブ。

彼らはニューヨークへ行き、HFT(high-frequency trading;高速トレード)ソフトの会社、Celerisを立ち上げる。

さらに翌年には Chronos Researchを創業。

ニューヨークのヘッジファンドに彼らのソフトを販売するうちに、2人はあることに気づく。

「ウォール街の大手の会社は自分たちのトレーディングにほとんど手数料を払っていない。だけど個人投資家は株式の売買に1件、1件、手数料を払わされている!」

そこで彼らはカリフォルニアに戻り、2013年、ロビンフッドを立ち上げる。

これはネット証券の一種だが、売買手数料が無料。

しかもスマホで気軽に取引できるのが特徴。

モバイルゲームのような感覚で、株式やオプションを取引でき、単元未満での売買も可能。

ここで少々解説を加えると、たとえ手数料が無料であっても、個人投資家は株式売買の為に一定の現金を置いている。

ロビンフッドとしては、そこで金利収入を得ることが可能だし、PFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)と呼ばれる取引で収益を得ることも出来る。

PFOFとは、顧客の注文データをマーケットメーカー(値付け業者)に流すときに受け取る一種のリベート。

マーケットメーカーたちは小口取引の方が注文を履行しやすいので好む傾向にあり、慣行としてリベートが支払われてきた(注:現在問題化している。『こちら』及び『こちら』)。

CNBCによると、ロビンフッドのユーザーは1300万人もいるらしい(『こちら』)。

さて、ここまでが、今回起きた米国の個人投資家の「乱」の背景と言うか、舞台装置だ。

* * *

ロビンフッドというプラットフォームを使い、スマホのゲーム感覚で株式売買を行う個人投資家たちが1300万人にも上った。

これら個人投資家たちの中には、Reddit(レディット)と称されるサイト(とくに WallStreetBets と称されるコミュニティ)で情報交換をする人たちが出てくるようになる。

そして彼らが目を付けたのがゲームストップという会社の株。

コンピュータゲームの小売店で、世界10ヵ国に販売店舗5000店を展開する会社だ。

いちおうFortune 500 という米国の売上高ランキング上位500社の一角を占める会社だが、本来はこれといった注目を集めるような会社ではなかった。

売上高65億ドル(2019年度)。

年間の損失額5億ドル。

この会社の株は今月12日までは20ドル前後だった(1年前の株価は3~4ドル)。

その会社の株価が今月13日から上がり始め28日には一時483ドルを付けた。

約10日間で20ドル→483ドルと24倍になってしまったのだ。

1月28日、このたった一日の間の値動きを見ても、安値112ドル~高値483ドルと4倍の振れ幅があった。

下図は5年間の株価の動き。

  Gamestop

さて、株価急騰によりこの会社は現在、時価総額227億ドル(2.4兆円)をつけている。

価格形成がおかしいと考えれば、空売りして利益を上げようとするのが相場のプロであるヘッジファンドの連中だ。

当然、ゲームストップ株にはヘッジファンドが空売りを仕掛けてきた。

しかしここから先の展開が通常とはまったく異なってしまった。

なんと、このヘッジファンドの動きに個人が立ち向かったのである。

「みんなで株を買って値を上げて、ウォール街の奴らを懲らしめよう」

こういった書き込みがReddit(レディット)に載り、個人の買いが集中。

とうとう個人が空売り勢に打ち勝ってしまったのだ。

ちなみに空売りとは、よそから株を借りてきていったん売り、一定期日までに買い戻して株を返す取引。

買い戻す際に予想通り株価が下がっていれば差額が利益になるが、予想に反して株価が上がれば損失はどんどん膨らむ。

株価はマイナスにはならないので、利益の額は有限だが、損失額の方は無限に広がり得る取引だ。

今回の騒ぎで、ヘッジファンド勢は総額でなんと190億ドル(約2兆円)の損失を被ったと報じられている(『こちら』および『こちら』)。

ヘッジファンドの中には損失を穴埋めするために、あるいは、顧客から換金を迫られた結果、GAFAなどの主力株を売却したところも出てきたようだ。

こうした動きは当然のことながら相場全体にとって売り圧力となって作用する。

ダウ平均株価は先週金曜日に、1か月半ぶりに3万ドルの大台を割り込んでしまった(29,982ドル)。

ダウ採用銘柄やGAFAの株を買っていた投資家は、とんだ「とばっちりを食らう」ことになってしまった訳だ。

しかも問題はこれでは終わらないことだ。

ゲームストップ株だけでなく、映画館運営のAMCエンターテイメント、シルバー(銀)なども個人投資家の関心を集めている。

また一方で、これは一種の「あおり行為」ではないかといった意見も出ている。

かつてSECのコミッショナーを務めたLaura UngerはCNBCのインタビューに答えて、

「当然のことながらSECでは何をなすべきかが検討されているだろう。

本件のポイントは、かげでこそこそと悪事が行われたということではなく、オープンで誰もが見れる掲示板での書き込みによって株価が高騰したということだ。

SECは必要と考えれば、ゲームストップ株の取引を停止することも出来る」

とコメントしている(『こちら』)。

こうした動きを知ってか知らずか、WallStreetBets には早速次のような書き込みが出現(『こちら』)。

「市場操作の証拠を探すべく、SECはWallStreetBets をモニターしているが、彼らが見つけたのは糞みたいな書き込み(shitposts )とミームだけだった」(注:ミームについては『こちら』を参照)。

* * *

マーケットが翻弄されるのはしばらく続くかもしれない。

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2021年1月24日 (日)

GAFAM

S&P500は昨年1年間で16.3%上昇した(3,230.78→3,756.07)。

これをGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトの5社)が上昇したことによる寄与分と、それ以外とに分解してみる。

5社の時価総額合計は昨年1年間で56%上昇(4.81T→7.51T)。

それ以外の495社の時価総額は1年間で10%上昇(21.95T→24.15T;『こちら』を使って算出)。

つまりS&P500が16.3%上がったと言っても、GAFAM5社の寄与分が圧倒的に大きかったことが分かる。

彼らが牽引することでマーケット全体が上がったのだ。

別の見方からすると、S&P500に投資するよりも、GAFAM5社の株を買った方が良かったということになる(少なくとも昨年1年間のパフォーマンスを見る限り)。

ちなみにGAFAM5社は、時価総額ベースでS&P500の24%を占める(昨年末ベース)。

* * * *

さてそのGAFAMが今週から来週にかけて決算を発表する。

まずはマイクロソフト。

発表は26日(火)。

市場はEPS 1.64ドル、売上40.18十億ドルを予想するが・・。

なお、この会社は過去4期連続で市場予測を上回る実績を上げてきている。

翌日、27日(水)にはアップル、フェイスブック、テスラが決算を発表。

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(写真はアップル本社ビル、総工費5000億円超。『こちら』

アップルについては、市場はEPS 1.40ドルを予想。

先週木曜日、モルスタの Katy Huberty はアップルの目標株価を144ドルから152ドルに引き上げた(『こちら』)。

先週末時点で株価は139.07ドル。

決算発表後、株価はどう動くだろうか・・。

フェイスブックについては、市場はEPS 3.15~3.20ドルを予想。

テスラもこの日が決算発表。

すでにテスラの時価総額はフェイスブックを抜き、米国で5番目に大きな会社となっている(世界で7位,『こちら』)。

さすがにここまで株価が高くなると、バリュエ―ション的に理解を超えてくる。

ということで、先週テスラを売却した。

持っていて、面白い株であっただけにちょっと名残惜しい。

安くなれば買い戻してもいいが、逆にこのまま高値を更新し続け、2度と買えないかもしれない。

なおグーグルとアマゾンは2月2日(火)に決算を発表する予定。

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2021年1月20日 (水)

米国は傷を癒せるか

日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました(昨晩9時30分)。

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『こちら』でご覧いただけます。

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2021年1月17日 (日)

アウトライヤーなのか?

アウトライヤー(outlier)とは、統計学でいう「外れ値(はずれち)」。

他の値から大きく外れた値のことを言う。

先週金曜日、Barron's に

『ジェレミー・グランサム氏のバブルに関する予想はアウトライヤーだ。さて彼は正しいのだろうか』

(Jeremy Grantham’s Bubble Forecast Is an Outlier. Is He Right?)

と題する記事が掲載された(全文は『こちら』)。

この記事の著者、Jack Hough氏は言う。

「グランサム氏の『現在はバブル。まもなく破裂する』との見解は、outlier だ」。

「アナリストの多数は、UBS の Keith Parker 氏(chief U.S. stock strategist)のように

『株価は今年の前半で更に 5% 程度上がる』

と考えている」。

* * *         

しかしジェレミー・グランサム氏と言えば、

(1)1980年代末期の日本のバブルとその崩壊を事前に指摘

(2)2000年のITバブル崩壊を予想

(3)2008年のリーマンショックについても事前に警鐘を鳴らした

として知られている。

とくに1980年代後半、当時の日本株は株価収益率(PE Ratio)で65倍以上にも達した。

これはおかしいと考えた彼のファンドは、日本株をいっさい組み入れなかった。

実は、彼が日本株バブルを指摘した後も、しばらくは日本株バブルが続いた。

このため、彼のファンドは、他のファンドに比べて、3年間、運用成績が劣後した。

しかし89年末をピークにして、90年初頭から日本株のバブルが崩壊し始める。

結果的に彼のファンドは、投資家に大きなメリットをもたらした。

これは今でも語られる有名な話だ。

* * *         

ところで、今回の Barron's の記事は、グランサム氏による今月5日付け寄稿文を受けて書かれたもの。

「 WAITING FOR THE LAST DANCE」

(最後のダンスが近づいている)

と題する寄稿文だ(全文は『こちら』)。

この中で、グランサム氏は、自身がテスラ車に乗っていることに触れながら、

テスラ車の販売台数1台あたりのテスラ時価総額(つまり『テスラの時価総額』を『テスラの年間販売台数』で割った数字)は

125万ドル(1億2900万円)になると指摘。

ちなみにGMの場合は、この数字は9000ドル(93万円)に過ぎないという。

* * *

さて、マーケットの参加者たちはグランサム氏の警鐘をどこまで受け入れるか。

現在ダウの株価収益率(PE Ratio)は25倍。

S&PのPE は、24倍(『こちら』)。

ちなみに日経平均の PE は26倍。

東証一部、28倍(『こちら』)。

株価収益率(PE Ratio)については、歴史的に見て、平均的には14倍程度だったと教えられてきている。

しかし最近の超低金利下では旧来の常識は通じず、20倍を超えることも正当化されてきている。

* * *

バブルの時にはアナリストたちは、何が起きても自分たちの好都合に解釈する。

たとえば、ジョージア州の上院議員投票(1月5日)で、2議席を1対1で共和党、民主党で分け合ったら、共和党が上院の過半を占める。

当初は、その方が株式市場にはプラスに働くと言われていた。

ところが、投票の結果は2議席とも民主党が獲得。

結果、上院は総勢で50対50となり、議案採決に際し可否同数の場合には、議長(=副大統領)が決裁票を投じることになった。

つまり上院でも民主が実質的に過半を占めることになったのだが、このことが判明すると、株価は(当初予想に反して)もう一段上昇した。

グランサム氏は日経ヴェリタス紙(本日付)のインタビューで次のように述べている。

『バブルの本質は究極のプラス思考だ。・・(ジョージアの件では)市場参加者は民主勝利によるネガティブな面を気にしなくなり、ポジティブな面を強調するコメントであふれた』。

グランサム氏の言うように、いまがラストダンスを待っている状況ならば、ダンスが始まるのを待って、一緒になってダンスを踊り、それが終わる直前に全株売却するのが得策だ。

問題は、そうした神わざ的トレードは一般人には出来ないことだ。

19日(火曜日)の市場があまり動かなかったとした場合、大統領選の投票日(11月3日)から大統領の就任日(1月20日)まで株価(S&P500)は13%上がったことになる。

これは1952年以来、最大の上昇率となる。

それまでの記録はJFK(ケネディ大統領)の8.8%だった(『こちら』)。

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2020年12月10日 (木)

テスラがトヨタを買収する日

何を馬鹿なと思う人も多いと思います。

その昔、外資系投資銀行にいた時に、ダイムラーとクライスラーが合併しました。

このとき多くの市場関係者の反応は『そんな馬鹿な!』というものでした。

両社の合併は実現はしましたが、案の定、長続きはしませんでした。

M&Aの世界では、ダイムラー・クライスラーのように、時として、(1)あり得ないディール、(2)意味をなさない(make sense しない)ディールが生じてしまうこともあります。

* * *

こういった前提をもとにテスラとトヨタの関係を考えると・・

テスラがトヨタを買収することは、『まずあり得ない』ことです。

しかし頭の体操だけはしておく意味があるように思えます。

まず体力的にテスラはトヨタを買えるのか。

あるいはその逆で、トヨタはテスラを買えるのか。

トヨタの時価総額は現在24兆円。

一方、テスラの時価総額は64兆円。

これだけの差がついてしまうと、トヨタがテスラを買うのは無理ですが、その逆はあり得ます。

株式交換によってテスラがトヨタを買収すべくTOBをしかけてくる・・

こういうシナリオはいちおう成り立ち得ると言えるのです。

議決権を有するトヨタ株の発行済み総数は(第1回AA型種類株式を含め)、

2,803,681千株(今年3月末)。

トヨタが持つ自己株式は株主総会で議決権を持たなくなりますので除外して数えています。

このうち外国人が保有する株数は、

642,787千株。

個人が保有する株数は、

371,858千株。

両者を合わせると、全体の36%に達します。

仮にテスラが、トヨタの現在の株価をたとえば45%ほど上回る、1株=10,656円という値段でTOBをかけてきたら、いったいどうなるでしょう。

現在の株価よりも45%も高い株価であれば、これに応ずるという個人投資家や外国人投資家も相当数出てくると見ておいた方が良いかもしれません。

それでは・・

(1)テスラはトヨタを買収したいと思うか

答えは恐らくノーです。

テスラは実は1823億円のキャッシュしか有していません(今年9月末)。

ですから買収に際して現金を使うことは出来ず、もっぱら株式交換に頼らざるをえません。

自らの貴重な株式を使って、トヨタを買収しても、テスラの現株主はさほど評価せず、むしろ株価が下落してしまう可能性が大。

さらに株式交換によって自らの株式を(トヨタ株と引き換えに)トヨタの株主に渡しても、新しい株主に市場で売られてしまう可能性も大(この場合もテスラ株の下落に繋がる)。

つまり、買収して得るものと買収に伴うコストを比較すれば、テスラにとって、このディールはノーとなる蓋然性の方が大と言えます。

(2)テスラの株価は一時的に高いだけであって、すぐにこのバブルは弾けるのではないか(つまりテスラがトヨタを買収するというディールの想定は客観的にはあり得ない想定ではないか)

テスラの株価がバブルかどうかについては、いろんな意見があって正直よく分かりません。

ただテスラの株価がたとえ今の半分になっても、トヨタよりもまだ3割以上も時価総額が高いので、

トヨタとしては万が一のことを頭の片隅に入れておく必要があるように思います。

(3)トヨタは守り切れるか

もし万が一、テスラが買収を仕掛けてきたとき、トヨタは守り切れるでしょうか。

賢いトヨタのことでしょうから、その辺は抜かりないのでしょう。

しかし機を見るに敏な外国人投資家や個人投資家がすでに議決権の36%を握っていることに留意すべきです。

今後は、この率があまり増え過ぎないように気を付けておいた方が良いかもしれません。

そして、何よりも最大の買収防衛策は株価を上げること。

ゼロ・エミッションの時代はすぐそこまで来ています。

トヨタとしては、これに対する明確なメッセージをあげ、株価をさらにもう一段上げることが重要です。

* * *

いずれにせよ、この話はたんに頭の体操に過ぎません。

そしておそらくは上記(1)の理由により、実現可能性が1%もないような『意味のない』頭の体操に終わってしまうものです。

しかしそれは裏を返せば、トヨタがそれほど魅力ある存在とは思われていないということに繋がりかねず、日本人としてはちょっと面白くありません。

昨日発売になった「MIRAI」などは、初代を圧倒的に上回る操作性と居住空間を実現しているようです。

ゼロ・エミッションはなにも電気自動車だけの世界ではありません。

燃料電池車にも世界の市場で頑張って欲しいと思います。

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2020年12月 5日 (土)

柳の下の泥鰌

1年間で9倍になったテスラ株(1年前66ドル→昨日599ドル)。

柳の下の泥鰌を狙う投資家は米国にも多くいます。

彼らが注目するのは、米国に上場されている次の3社(いずれも中国の電気自動車メーカー)。

(1)Nio(蔚来汽車)2018年に NYSE に上場。創業者・李斌

(2)Li Auto(理想汽車)2020年7月にNasdaqに上場。創業者・李想

(3)Xpeng Motors(小鵬汽車)2020年8月にNYSEに上場。創業者・何小鵬

上場後、Nio は7.0倍、Li は2.5倍、Xpengは2.8倍になりましたが、ここに来て(ここ1週間で)これら3社とも続落。

理由は、Li が増資を発表。発行価格が29ドルと決まり、かなり低めの設定となったこと(11月24日の株価が43.96、昨日30.5ドル)。

これに引っ張られて他の2社も下落。

もっともゴールドマンは今週月曜日にLi の目標株価を20.6ドルから60ドルへと大幅改定(現状30.5ドル)。

同じ日、ゴールドマンはNio の目標株価を7.7ドルから59ドルへと改定(現状43ドル)。

目標株価を一気に7~8倍にするなど、ゴールドマンのアナリストがやっていることは意味不明ですが、株式市場が中国のEVマーケットに注目していることだけは事実。

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 (43万円のEV。朝日新聞の下記サイトより)

はたして中国で勝つのはテスラか、中国勢か。

恐らくはマーケットが大きく、両方とも勝者となるのでしょうが、中国勢はこれら3社だけではなく、たくさんの会社がEVマーケットに流れ込んでいます(従ってどの中国勢が勝ち組となるのか分かりにくい)。

7月には上汽GM五菱が4人乗りEV(電気自動車)を価格43万円で発売、9月の1ヶ月間で2万台以上も販売したのだとか(『こちら』)。

43万円なら1台EVがあっても良いかもしれない、こう思う日本人も多いかもしれません。

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2020年11月27日 (金)

産業の新陳代謝

これはS&P500に採用されている500の企業を産業別に区分したもの。

時価総額で見ると、IT関連の会社が全体の27.4%を占めていることが分かります。

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出所は『こちら』です。

S&P500に採用されている500社の時価総額は、米国で上場されている企業全体の時価総額総計の8割を占めます。

つまりこのグラフは米国全体の上場企業の時価総額ベースの構成比に概ね等しいことが分かります。

ITが全体の4分の1を上回るというのは、改めて米国の産業構造の変化に感嘆させられます。

ちなみに日本の場合、情報・通信業の東証1部に占めるシェアは13.5%(『こちら』)。

ただしおそらくは日米で産業区分の定義も違うかもしれませんし、両者を単純比較するのは正確性に欠けるかもしれません。

むしろ比べるべきは、時系列における変化です。

ここ10年間で、上記の米国の数字は下記のように変化してきました。

IT 18.5%(10年前)→ 27.4%(20年10月末)

エネルギー産業 10.9%(10年前)→ 2.0%

米国のおける凄まじいばかりの産業の新陳代謝。

本日の日経新聞コラム記事は、斯様な状況を念頭に書きました。

『こちら』です。

なお上記記事と同じものが29日に発売となる日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

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より以前の記事一覧