2020年9月21日 (月)

ドルが覇権を手放す日

1960年代、フランスの経済財政相だったジスカール・デスタン(当時;のちにフランスの大統領)は米ドルが支配する体制について、こう不満を漏らしました。

「米ドル支配は米国に法外な特権を与えている。これにより米国は他国から安い資金を調達でき、米国民は分不相応の生活水準を謳歌できるようになっている」(『こちら』)。

同じような話ですが1990年代。

当時のアメリカ財務長官のルービンは、クリントン大統領(当時)に対して、こう助言しました。

「大統領としていろいろとやりたいことがあるのでしょうが、歴史に名を残したいのなら、ドル高政策を進めることです」。

財務長官に就任する前の四半世紀をウォール街のゴールドマン・サックスで過ごしたルービンは、ドル高にすることで世界の資金を米国に集めることができると考えました。

輸出入といった「もの」の動きよりも、「お金」の動きを重視すべきだと考えたのです。

世界中から集まる資金をテコにして、アメリカの企業が積極果敢に投資を行い、経済を成長させていく・・・彼はこうしたダイナミックな資本主義のモデルが成功すると信じていました(『こちら』)。

* * *

さてこうした考え方がもはや違ってきているとの論評が米外交問題評議会が発行するサイト、FOREIGN AFFAIRSに載りました(『こちら』)。

いったいこれから先、どうなっていくのでしょうか。

今日発売された日経ヴェリタスではその辺のところを探っています。

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同紙48面は、「投資力を磨こう」のコーナーです(下記)。

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2020年9月18日 (金)

秘伝「スタンフォード流の成長株投資術」

株は、「買ったら、値上がりしたところで、売るべきもの」。

こう考えている人は多い。

事実、日本で発行されている株式投資本の多くにもそう書かれている。

「売らなければ、利益は確定しない」。

「売らないままの利益は絵に描いた餅だ」。

しかしスタンフォード大学ビジネススクールで株式投資論を教えたフィリップ・フィッシャー(1907-2004年)はそう考えなかった。

フィッシャーの教えに感銘を受け、彼の後に株式投資論の教授に就いたジャック・マクドナルド教授(1937–2018年)もフィッシャーと同じように考えた。

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(Professor Jack McDonald; From the site of Stanford Business School)

優良な成長株に投資すれば、売るべきタイミングというのはほぼ永遠に来ない(逆にダメな株はさっさと売ってしまうべきだ)。

フィッシャーがモトローラの株式を購入したのは1955年、48歳の時だった。

当時のモトローラは警察(パトカー)やタクシー会社が利用する無線通信の分野でトップを走っていた。

フィッシャーは48歳の時に買ったこの株を、96歳で亡くなるまで50年近く保有し続けた。

その間、モトローラの資本勘定は238倍にもなった。

A、B、C、D、Eという5つの株に10万円ずつ投資したとしよう。

1年後、次のように変化するとした場合、あなたはどうするか。

A:23万円(+13万円)

B:15万円(+5万円)

C:10万円(+-ゼロ)

D:8万円(-2万円)

E:5万円(-5万円)

フィッシャーの教えを貫くならば、C、D、E の株は売ってしまい、そこで得た23万円を投じて、Aの株を買い増す。

たとえ損失を計上するようになっても、ダメな株はさっさと売ってしまい、優良な成長株を買い増すべきなのだ。

過去10年間でアップルの株価は17倍になり、アマゾンは28倍になった。

1997年に上場してからアマゾンの株価は2,000倍以上になった。

 「じゅうぶん高くなった」というのは売る理由にならない。

同様に「こんなに高くなってしまった」というのは、買いを控える理由にはならない。

96歳で亡くなるまでモトローラ株を持ち続けたフィッシャーはこう考えたのである。

* * *

さて、こうした「スタンフォード流の成長株投資術」をもう少し詳しく知りたい方は、私が寄稿した本日の日経新聞電子版記事をご覧ください。

『こちら』(←クリック)です(注:日経新聞電子版のメンバーでなくとも、登録すれば無料でご覧になれます)。

なおフィッシャーの書いた本はこちら(↓)です(クリックすればアマゾンのサイトに飛びます)。

『Common Stocks and Uncommon Profits and Other Writings』

下記の通り翻訳本も出ていますが(翻訳本の方は、私は読んでいないので何とも言えませんが)アマゾンの書評を読む限り、2冊目の方は訳の出来がイマイチかもしれません。

『株式投資で普通でない利益を得る』

『投資哲学を作り上げるー保守的な投資家ほどよく眠る』

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2020年9月14日 (月)

バブルの足音

日本がバブルだった1988~90年の頃、私は日本興業銀行にいた。

取引先との接待は2次会、3次会になることも多く、都心ではタクシーがなかなか捕まらない。

やっとのことで空車を見つけて、行き先(比較的近い場所)を告げると、運転手さんの殺気を感じた。

「この時間帯、若い女性は絶対に乗せないんだよ。夜の店で働く女性に当たってしまうことが多く、彼女たちは近くに住んでいるからな」。

「お客さんを見たとき、こいつは千葉、もしくは横浜に違いないと思って乗せたんだが、何だってんだよー」。

「これじゃあ今晩は台無しだ」。

企業はワラント債などでゼロコストで資金を調達し、その資金で他社の株式を買って儲けていた。

株価は上昇を続け、平均株価指数のPERは60を超え、瞬間的には80を付けた。

バブルの特徴は、

(1)渦中では誰もがハッピーである(とくに傷つく人はいない)

(2)誰もがおかしいと感じていても、それがバブルであると確信が持てない

ことにある。

1999年にはインターネットバブルが米国を襲った。

ドット・コムと名前がつけば、実態がさほど伴わなくとも、高い株価がついた。

1999年から2002年にかけて、NTTドコモは 総額1兆9000億円を投じて、AT&T Wireless など海外の携帯電話会社に次から次へとマイナー出資をしていった。

これらの投資に対して、2002年3月期と2003年3月期の二期だけで合計1兆6000億円の評価損を計上した(この損失を負担したのはドコモの株主であり、高い携帯電話料を払わされた利用者だった)。

さて次に起こったバブルといえば、2006年から07年にかけての証券化商品のバブルだろう。

回収の見込みが殆どないサブプライムローン債権を通常債権と混在させ、CDOなどの証券化商品に仕立て上げる。そして格付け会社の無知に付け込んでAAA格をつけさせる。これが世界中の金融機関にばらまかれた。

投資銀行は活況に沸き、債券部を中心に高額のボーナスが社員に支払われた。

歪な形のビジネスは長くは続かない。

07年6月の段階でベアー・スターンズ傘下のファンドが危機に瀕し、08年3月には本体に波及、J.P.モルガンに救済される形で買収された。

そして同年9月にはリーマン・ブラザーズが破綻した。

繰り返しになるが、バブルの渦中では、誰もがおかしいと感じる。こんなことが永遠に続くはずがないことが分かるからだ。しかしバブルの渦中ではとくに傷つく人はなく、誰もが潤う。

現在の日本の状況はどうなんだろう。

財政の赤字は日銀が国債を引き受ける(形式的にではなく実質的にという意味)ことによって面倒見てくれる。

政府が借金をして税収以上のものを国民に便益を与える目的で支出し続けることは「誰もが潤う」ことだ。

いまはコロナ禍で異常事態なので致し方ない面もある。

しかし時計の針をコロナ前に戻してみよう。

昨年12月閣議決定ベースの政府予算案(つまりコロナ以前)で見ると、

政府は収入(税収63.5兆円)の1.5倍以上の支出(歳出100.9兆円)を予算として計上。

税金の1.5倍もの金額を国民の為に支出してくれる政府。

そして、それを国債購入という形で支える日銀。

国民は「払う」以上のものを「貰える」形になっている。

しかし、こんなことが永遠に続くはずがないーと私は思う。

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2020年8月23日 (日)

テンバガー

本日の日経ヴェリタスはテンバガーの特集。

テンバガーとは株価が10倍になる(なった)株のこと。

記事ではクレジットカード会社のVISAが10年で時価総額が10倍を超えたと紹介されていました。

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記事の内容とは離れてしまいますが、10年前と比べて10倍になった株というのは、意外とたくさんあります。

まずはテスラ。

この株は10倍どころか、10年間で100倍以上になりました(19.1ドル→2049.98ドル;107倍)。

ネットフリックス:10年間で27倍

アマゾン:10年間で26倍

アップル:10年間で16倍

フェイスブック:8年間で14倍(上場したのは8年前)

マイクロソフト:10年間で11倍

* * *

しかしほんとうのポイントはこれから先をどう読むかです。

過去ではありません。

つまり「この株はじゅうぶんに高くなった、高くなり過ぎた」と過去を振り返らないこと。

3年前、アマゾンの株価は980ドルでした。

この時点(2017年8月)で、10年前の2007年8月に比べて、アマゾンの株価は12倍になっていました。

「12倍か・・。もう十分高くなった」ーそう思って売ってしまった人は、売ってしまった後で、(その後の3年間で)更に3.4倍になったのですから、後悔していると思います。

過去を振り返って、じゅうぶん高くなったかどうかを気にするのではなくて、あくまでもこれから先の10年間がどうなるかを考えるべき。

10年後、もしかするとアマゾンのドローンが荷物を運んでくれるようになっているかもしれません。

10年後、テスラの自動運転車はレベル2~3から、もっと高レベルになり完全自動運転に近づいているかもしれません。

そういった将来に思いを馳せ、将来時点での企業価値を予想し、それを現在の企業価値と比較してみる。

こうした作業がテンバガーを掴むうえでの第1歩となります。

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2020年8月16日 (日)

バッテリー・デイ

イーロン・マスクが最初にバッテリー・デイについて言及したのは、昨年7月。

“Yes, I think for Battery Day, we’re going to do a comprehensive review of cell chemistry, module and pack, architecture, and manufacturing plan that has a clear roadmap to a terawatt-hour per year.” 

マスクはこう述べて、バッテリー・デイは「2020年の2月か3月になる」とコメント。

その後、それが何回か延期されて、現在の見通しは9月22日開催の予定となっています。

はたして何が飛び出すのか。

実は株式市場ではバッテリー・デイを前にして、テスラ株の評価を巡って様々な動きが・・。

たとえばモルガンスタンレー。

6月12日にテスラ株の PT(price target; 目標株価)を680ドルから650ドルに引き下げ。

投資判断も「Equal-weight」(中立)から「Underweight」(アンダーウェイト)に引き下げました。

アンダーウェイトとは、「ポートフォリオ上で、この株の比率を落とせ」との意味で、つまり「売り」を推奨。

ちなみにこの時のテスラ株は970ドル近辺を行ったり来たりしていました。

それから1か月後。

7月10日にモルスタはテスラ株のPTを 650ドルから740ドルに引き上げ。

更に7月29日には、テスラ株の PTを740ドルから1050ドルへと再度引き上げました。

しかし2度にわたる PT 引き上げにもかかわらず、投資判断は「Underweight」(アンダーウェイト)を継続(ちなみに7月29日の段階でテスラ株は1500ドル近辺を行ったり来たりしていました)。

そもそもPTを2回続けて引き上げておきながら、投資判断については「Underweight」(アンダーウェイト)を継続するというのも、やや理解に苦しむところ。

そして、7月最後のPT引き上げから、たった2週間後のことです。

8月13日。

今度は、モルスタはテスラ株のPTを 1050ドルから1360ドルへと3度目の引き上げ(2ヶ月間にPTを4回も動かすのは異例です)。

併せて、投資判断も「Underweight」(アンダーウェイト)から「Equal-weight」(中立)に引き上げました。

それだけではありません。

この日、モルスタは、サムスンSDIなど韓国のEV Battery Producers の投資判断を軒並み「Underweight」(アンダーウェイト)に引き下げ。

サムスンSDIに至っては「Overweight」から一気に「Underweight」への引き下げ(つまり「Equal-weight」を飛び越しての2段階引き下げ)。

こうなってくるとモルスタは、

「バッテリー・デイで大きな動きがある。それは投資資金(投資家のお金)が韓国勢からテスラへと大きくシフトすることを意味する」

と考えているのではないかと思えてきます。

それにしてもテスラ株。

去年の今ごろは215ドルでした。

それが1年間で1650ドルへ。

7.7倍になったことになります。

時価総額も33兆円に・・(トヨタは23兆円)。

ここまで高くなると手を出しにくいという人も多いと思いますが、

はたしてバッテリー・デイでいったい何が飛び出すのでしょうか。

* * *

ところで、話はがらりと変わりますが、

一昨日ご紹介した日経電子版への寄稿記事。

日経ヴェリタス紙に連載しているシリーズの5回目にあたるものです。

本日発売の同紙第48頁でご覧頂けます。

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上の写真は、従来同様、出版権などの権利関係に配慮し、敢えて読めないように縮小して掲載しています。

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2020年8月14日 (金)

高齢者(65歳以上)世帯の平均所得額 ~ 日本と米国では2倍以上の差がついてしまった

新型コロナの影響で中止になってしまったのですが、

今年はAFS留学生の同期会がウィーンで行われる予定でした。

1971年から72年にかけて米国カリフォルニア州オレンジ郡に留学していた同期約15名。

主な出身国を挙げると、ドイツ、オーストリア、ベルギー、スペイン、スコットランド、グアテマラ、エクアドル、ブラジル、アルゼンチン、レバノン、イラン、ヨルダン、オーストラリア、タイ、そして日本(私)といった具合。

このうち、レバノン、エクアドル、イラン出身の留学生は、今では米国に住んでいます。

今回は会うことは出来ませんでしたが、SNSが発達した昨今です。

私のスマホには毎日彼らの生活ぶりが送られてきていて、ときに情報過多と感じてしまうほど。

働いている人は私を含めて2名だけで、あとは皆、定年後の生活をエンジョイしているようです。

* * * *

米国国勢調査局のデータ(2018年)によると、米国で世帯主が65歳以上の世帯の平均所得額は、1ドル=106円で換算して、月59万円、年収にして約713万円になります(『こちら』)。

たしかに、これだけの収入があれば、比較的楽な、そして活動的な生活が送れそうです。

ただし残念ながら、日本の状況は少し違います。

日本の高齢者(65歳以上)世帯の平均所得額は月28万円、年収約335万円(2018年厚労省「国民生活基礎調査」)。

老後の収入という観点からすると、日本は米国の半分以下でしかありません。

* * * *

なぜ、こんなに差がついてしまったのでしょうか。

そういった問題意識を持ちながら、今回の記事を書きました。

『米国の制度に学ぶ老後設計の知恵』

本日の日経新聞電子版です(『こちら』)。

よろしかったらご覧になってください(注:電子版のメンバーでなくとも、登録すれば無料でご覧になれます)。

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 『米国の制度に学ぶ老後設計の知恵』『こちら』

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2020年8月 1日 (土)

アップル株4分割

アップル株の4分割。

8月31日に実施されます。

それまでアップル株を1株持っていた人は、分割後4株を持つことになります。

一方、株価の方も4分の1になることが予想されることから、経済的効果は変わりません。

では、なぜ株式分割をするのでしょうか。

会社側の説明は、「もっと広い範囲の投資家層に株式を持ってもらえるようにするため」( to make the stock more accessible to a broader base of investors )というものです(『こちら』)。

そうは言っても、分割前で1株425ドル(昨日の終値)。

米国株は1株から買えますので、4万5000円ほどで買えて、誰でもアップルの株主になれます。

グーグル(1,487ドル)やアマゾン(3,164ドル)に比べても現状の株価は安いのに、「なぜ?」と思われる方もいるかもしれません。

本当の理由は(私の推測ですが)、アップルがダウ平均株価の構成銘柄であるため。

ちなみにグーグルやアマゾンはダウ平均株価の構成銘柄ではありません。

なぜアップルがダウ平均銘柄だと株式分割が必要となるのか、もう少し詳しくご説明しましょう。

まずダウ平均株価の構成銘柄ですが、これは30銘柄しかありません。

主なところを挙げると、アメリカン・エキスプレス、ボーイング、P&G、コカ・コーラなど。

その中で、アップルの株価は最も高くなっています。

同じダウ平均株価の構成銘柄であっても、例えばファイザーの株価は38ドル(昨日の終値)。

これはいったい何を意味するのでしょうか。

たとえば、ファイザーの業績が良くなり、株価が10%上がっても、3.8ドル上昇するだけです。

ところがアップルの業績が良くなった結果、仮に株価が同じく10%上がったとすると、株価は42.5ドルも上がることになります。

そして、ここで問題となってくるのが、ダウ平均株価算出の為の計算式。

ダウ平均株価は、30銘柄の株価の合計値をある除数(divisor)で除した(割った)数式で計算されます。

すなわち:

ダウ平均株価=30銘柄の株価合計÷「除数」 

(注)この除数は現在のところ約 0.146となっている(『こちら』)。

つまりダウ平均株価を決定づけるのは、30銘柄の単純な合計値に他なりません(単純合計値を単に一定の除数で割るだけなので)。

その為、アップルのような高株価銘柄は、ダウ平均株価に与える影響度が、他銘柄に比べて大きくなってしまいます(同じ1%の上昇でもダウ平均へのインパクトが全然違ってくる)。

こうした、ある種の「不都合」を是正するためには、30社の株価を出来るだけ近づける(少なくとも、ある一定のレンジ内に収める)必要が出てきます。

そういった目的もあって今回アップルは株式分割を決定するに至ったものと考えられます。

ダウ平均株価指数の特殊性(=単純平均がベース)に起因すると言ってもいい株式分割。

実はこうした性格の株式分割は、これまでにも何度か行われてきています。

そもそもアップルがダウ平均株価の仲間入りする時にも、当時のアップルの高株価が問題とされました。

2014年6月初めの段階でアップルの株価は600ドルを超えていたのです。

当時、アップルはダウ平均銘柄ではありませんでしたが、600ドルを超えるような水準では、そもそもダウ平均入りは難しいと考えられていました。

そこで同年6月9日、アップルは7分割を実施。

株価は7分の1(90ドル台)になりました(それ以前のアップル株所有者は所有株数が7倍に増加しました)。

こうして株価をある一定のレンジに落としたうえで、翌年3月、アップルはダウ平均銘柄に採用されるに至ったのです。

それから僅か5年です。

アップルはダウ平均株価採用後も株価を上げ続け、またしてもダウ平均銘柄としては、株価が高くなり過ぎてしまいました。

そのために今回また株式分割が実施されることになった訳です。

ところで、先ほど出てきたダウ平均株価を算出するための除数。

これはいったい何でしょうか。

除数は、ダウ平均株価の銘柄入れ替えや株式分割などがあるたびに、指数としての連続性を保つための調整弁として使われます。

たとえば、銘柄入れ替えの場合は、入れ替える銘柄間の株価差によって指数(株価合計がベース)が上がったり下がったりするので、その変化率に合わせて除数を上げ下げして、指数の連続性を保つようにします。

また今回のアップルのように採用銘柄が株式分割を行う場合には、分割後の株価が下がるため、それに合わせて除数を変化させます。

つまり算式的には次のような関係になります。

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ここでPは採用銘柄の株価、dは除数。Σは30銘柄の株価の合計値。

銘柄入れ替え前や株式分割前は old で示し、入れ替え後や分割後は new で示しています。

これだけでは除数がどう変化するのか分かりにくいという方は、『こちら』の記事をどうぞ。

少し前の記事ですが、この辺を丁寧に説明してくれています。

いずれにせよ2013年6月の時点でアップルの株価は400ドルでした。

それが7分割された後、現在また同じ400ドルになってきた訳です。

つまり7年間で株価は7倍になったことになります(アップル株所有者は7倍の株数を持つようになったため)。

こうした環境下で今月末に実施される4分割。

これから先の数年後にかけて、いったいどんなストーリーとなって展開していくのでしょうか。

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2020年7月14日 (火)

マイクロ株

昨日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

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トッピクスは、マイクロ株。

日本には東証1部上場の2,171社をはじめとし、2部、マザーズ、ジャスダックなど全部で約3,700社の上場企業があります。

このうち約3分の2が時価総額300億円未満の「マイクロ株」と称される株。

ジャスダックに至っては93%がマイクロ株です。

東証1部を含め全体の3分の2を占めているにもかかわらず、マイクロ株は一般にはあまり注目されていません。

アナリストがカバーしていることも殆どなく、結果、株価の変動率(ボラティリティ)は高く、一日の出来高があまり多くない(流動性に欠ける)銘柄も少なくありません。

中には売ろうと思って売りをかけると、それがゆえに(自分が売るという行為で)、値を下げてしまう、そんな銘柄もあります。

にもかかわらず、なぜマイクロ株に手を出す投資家がいるのでしょうか。

それはお宝が眠っているかもしれないからです。

1997年にアマゾンが上場した時の時価総額は3億ドル。

1ドル=100円で計算すると300億円でまさにマイクロ株に近い存在でした。

それが今では時価総額が155兆円(1ドル=100円で換算)。

5,000倍以上にもなっています。

当時、アマゾン株を10万円ほど買った人は、今では5億円以上を手にしていることになります。

しかしそんなお宝はほんの一握り。

リスキーな市場であることは確かなので、危険領域にいるといったスタンスで投資に望むべきです。

なお『こちら』で昨晩の動画をご覧になれます。

13分29秒です。

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2020年7月12日 (日)

キャパニックを使うという選択

サンフランシスコ・フォーティナイナーズのスタープレーヤー(クォーターバック)だったコリン・キャパニック。

2016年に国歌斉唱の際に起立しなかったとのことで、トランプ(当時は大統領候補)に批判されます。

2018年、そのキャパニックと敢えて長期CM契約を結ぶことを発表したのがナイキ。

発表の翌週、株価は2.2%下落。

不買運動も起きました。

なぜ敢えてリスクを取ったのか。

創業者のフィル・ナイトはこう説明します。

「その数週間前、バスケットボール選手のレブロン・ジェームズと話していたんだ。

私が『孫が運転免許を取ってクルマを運転するようになるんだ。心配なんだよ』と話すと、ジェームスはこう言ったんだ。

『僕の息子も運転免許を取るんだが、アフリカ系米国人の多くの若者が警官に撃たれている。だから心配なんだ』と。

これまでの認識が大きく変わった。まさに a real eye-opener だったんだよ」

以上のくだりは、昨年フィル・ナイトがスタンフォードに招かれたとき話した内容の一部。

『こちら』で動画を、そして『こちら』で文章をご覧いただけます。

なお先月のことですが、NFL(全米ナショナル・フットボール・リーグ)のロジャー・グッデルコミッショナーは、

「かつて私たちがNFL選手の言葉を聞かなかったのは間違っていた。我々は、全ての人が発言し平和的に抗議することを応援します」

とツイートし謝罪。

キャパニックの行動は正当化されました。 

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2020年6月19日 (金)

時価総額が世界最大の自動車会社

世界最大の自動車会社は?

販売台数ではトヨタとフォルクスワーゲンが鎬を削っています。

今年4月のデータでは、トヨタ・グループがフォルクスワーゲン・グループに競り勝ち、トップに立ったのだとか(『こちら』)。

ところで株式市場による評価という観点では如何でしょう。

市場はどの自動車会社をもっとも価値があると見ているのでしょうか。

市場の「評価」という観点では、一般に「時価総額」という指標が使われます。

時価総額とは「株数」×「発行済み株式総数」で現わされる指標。

市場で全株を買うのに要する金額であり、その会社を買うのに必要とされる金額のことです。

もっとも実際の実務では、現在ついている株価で全株を買うのは不可能です。

どんどんと買い進めていくうちに株価は上がってしまうからです。

また法律上、全株を買うにはTOB(Take Over Bid)の手続きを取らざるをえず、そのときの値段は現在ついている株価よりも高くなるのが一般的です。

それでも「株数×発行済み株式総数」であらわされる「時価総額」という指標は、市場が評価する会社の価値として使い勝手の良い数字であり、幅広く使われています。

なお時価総額の算出に際しては、一点、注意が必要です。

それは、算出に際して自己株式を除外するという点です。

現在、多くの企業では自分で自分の会社の株をある一定の範囲内で買うようなことをしています(自己株式の取得)。

自己株式の取得とは、いわば自分で株を発行して資金を調達して、その資金で自分の株を買うという行為。

従って、時価総額を計算する際には、自己株式を除いた形での発行済み株式の数字を使います。

つまり「時価総額」=「発行済株式総数(自己株式を除く)」×「株価」で算出します(『こちら』)。

さて本題に戻りましょう。

時価総額が世界最大の自動車会社はどこでしょうか。

少し前まではトヨタでした。

トヨタの時価総額を算出してみましょう。

発行済み株式数 3,310,097,492株【A】

うち自己株式等 480,379,800株【B】

(注)データはトヨタの「2019年12月 第3四半期」報告書(2019年9月30日現在の数字)

よって自己株式を除くベースの発行済み株式総数は、【A】-【B】= 2,829,717,692株

時価総額は、これに株価(6,851円;6月19日終値)をかけて、19.4兆円。

一方で、テスラは(自己株保有がないので)、1,866億ドル(19日、NY時間10時の株価をベース)。

為替レート106円80銭でかけると:

19.9兆円。

そうなのです。

現時点では、テスラの方がトヨタよりも時価総額が高くなっています(『こちら』)。

ちなみにフォルクスワーゲンはもっとずっと下です。

1位テスラ、2位トヨタ。

このところ数日間、こういった状況が続いています。

2019年の1年間でテスラは、367,500台のクルマを販売しました(『こちら』)。

それに対して、トヨタは、9,714,253台を販売(『こちら』)。

日野、ダイハツを含めれば、トヨタ・グループとして、10,742,122台を販売(『こちら』)。

テスラの29倍です。

もちろん販売台数の多寡と企業の価値は直接的にはリンクしません。

薄利で(あるいは損失を出してまでして)数多く販売しても株式市場は評価しないのです。

それにしてもテスラが世界最大の時価総額を持つ自動車会社であることに対して、何となく納得できないという人もいるかもしれません。

これは(1)テスラにはそれだけの将来性があるのか、あるいは(2)市場の評価が間違っていて早晩是正されるのか、

この2つのうちのどちらかです。

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