2020年1月13日 (月)

ベンガジの悲劇は繰り返さない

久しぶりに株式投資に関する記事を書きます。

と言っても、年末から年始にかけては、米国・イランの衝突によって相場が翻弄されました。

【1】米国・イランの衝突

何が起きたのか、時系列で記しますと:

12月27日、イラク北部の油田都市キルクーク駐留の米軍基地が、武装組織「カタイブ・ヒズボラ」からと思われるロケット砲の攻撃を受けました。

米国人1人が死亡。

攻撃をしかけたと思われる「カタイブ・ヒズボラ」はイラクやシリアで展開するシーア派・親イランの武装組織。

このため翌28日、米軍は「カタイブ・ヒズボラ」のイラクにある拠点3カ所とシリアの拠点2カ所をF15戦闘機で空爆。

このとき標的となったのは、「カタイブ・ヒズボラ」の武器庫や司令部でした。

「カタイブ・ヒズボラ」は、イラン革命防衛隊や「レバノンのヒズボラ」から資金や武器などの支援を受けていると言われています。

それでは「そもそもレバノンのヒズボラって何なのだ」という疑問も湧いてくると思いますが、

ヒズボラは、レバノンにおいて、イラン型のイスラム共和制を樹立しようとする組織で、今から40年近く前のレバノン内戦の最中に誕生。

1983年には首都ベイルートで米大使館(4月)、米仏海兵隊兵舎(10月)を相次いで自爆攻撃し、

2000年以降もイスラエルとの間で軍事的衝突を繰り返してきています。

話を元に戻します。

12月27日の米軍による空爆に抗議し、12月31日からイラク・バグダッドにある米国大使館へのデモが発生。

デモ隊は大使館の壁を放火したり、大使館内への侵入を試みたりするほど過激化しました。 

このとき、トランプ大統領が盛んに言っていた言葉が、

「ベンガジの悲劇は繰り返さない」(『こちら』)。

ベンガジの悲劇とは、リビアの第2の都市ベンガジの米国領事館が2012年に襲撃された事件。

人格者として現地リビアの人たちからも尊敬を集めていた米国のスティーブンス駐リビア大使ら4人が殺害されました。

このとき米国のヒラリー国務長官に不手際があったとして、前回の大統領選の際には、

トランプ陣営が執拗にこの点を攻撃。

ヒラリー敗北の一因となりました。

現在でも、ベンガジ領事館の襲撃を生き抜いて帰還した人たちは当時の民主党政権の不手際を追求、

「仮にトランプが当時指揮を執っていたとすれば悲劇は防げた」と主張しています(『こちら』)。

実際のところ、31日の在バグダッドの米国大使館への襲撃に対して、トランプは素早く対応しました。

直ちに100名以上の海兵隊を現地に派遣するとともに、アパッチと呼ばれる攻撃用ヘリコプターを2機投入、大使館を防衛したのです(『こちら』)。

そして1月2日、大使館襲撃の背後にソレイマニがいるとの報告を受け、トランプはソレイマニ殺害を指示、

3日、無人機を使ってソレイマニを殺害しました。

これに対して、イランは7日、イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃を行うことで報復。

イランの攻撃が限定的で人的被害も出なかったことから、

トランプは8日、

「イランによる昨日のミサイル攻撃に対しては、

軍事的な報復ではなく追加経済制裁で対応する」

旨の方針を表明しました。

これを受け、ダウ平均株価は8日、162ドル上昇。

10日には、取引時間中に一時的ですが、前人未踏とされていた29,000ドルの大台を突破しました。

【2】ベンガジの悲劇

トランプは10日、オハイオ州トレドで演説(『こちら』)。

民主党政権下で起きたベンガジの米大使館襲撃事件に再度言及し、

「ソレイマニはバグダッドのみならず各地の米国大使館を襲撃することを企図していた、自分はそれを未然に防いだ」

と自らの成果を誇示しました。

(注:ソレイマニに関しての日本のマスコミ報道がややおかしいという点については、『こちら』『こちら』『こちら』を参照)

実は、ベンガジの悲劇はマイケル・ベイ監督による映画になっています。

『13時間』と題する映画なのですが、これを見るとトランプが再三再四にわたってベンガジを例に引きながら民主党を攻撃する理由が分かります。

トランプは自分の政権下でベンガジの悲劇のようなことが起きることを決して許さない。

それは自らの首を絞め、再選が阻止されることに繋がるからです。

だからこそソレイマニ殺害を決断したと言えるのかもしれません。

別言すると、ソレイマニ殺害に対するイランの報復が、もし仮に弾道ミサイルによる在バグダッドの米国大使館攻撃であったとすれば、

米国はイランとの間で全面戦争に突入していた可能性が大でした。

イランもその辺のことを分かっていたので米軍基地攻撃に留めたのだと思います。

【3】大統領選挙と今後の相場見通し

年末・年始の米国・イラン衝突が連日のように相場を大きく乱高下させたように、

大統領選挙のある今年はトランプが例年以上に選挙を強く意識して行動する、

そしてそのことが相場を大きく動かすことに繋がりうることを覚悟しておく必要がありそうです。

ベンガジの悲劇は繰り返さないートランプは再三再四にわたってこう発言してきていますが、

大統領選を控えるトランプにとっては、もう一つの重要なポイントがあります。

それは「不景気にはしない。出来れば今以上に株価を上げる」

ということです。

アメリカの大統領選挙では現職が圧倒的に有利です。

私が今でもよく覚えているのが、1972年の大統領選挙。

当時私はアメリカの高校に通う高校生(AFS留学生)でした。

選挙に際し、現職のニクソン大統領が用意したバンパーステッカー(車のバンパーに貼る広告)は、単に「Re-elect the President」というもの。

   Official1972richardnixonreelectthepresid

現職が強いということを熟知したニクソンは、自分の名前さえ出さない(対立候補と対等ではない、自分が上位ということを選挙民に印象付ける)という戦略を取ったのです。

実際のところ、過去100年の歴史において、現職が再選されなかったのは4回だけしかありません。

1992年のブッシュ(父)

1980年のカーター

1976年のフォード

1932年のフーバー

です。

そしてこれらの現職敗退に共通するキーワードは「リセッション」(景気後退;1992)もしくは「スタグフレーション」(景気後退下のインフレ;1980)といった経済関係の不振を示す言葉です(注:1976年の前年にはベトナム戦争後の不況がアメリカを襲い、失業率は9%に達しています)。

トランプはこのことを誰よりも強く意識しているはずですから、これから先、選挙のある11月にかけては、

景気のエンジンをふかし続けるように努力するはずです。

逆に民主党候補有利となれば、市場が一気に冷え込む可能性が大です。

「サンダース、ウォーレン、ブティジェッジの何れかが大統領になれば市場は3割から5割下落するだろう」

これはスティーブ・ギドゥマル氏の言葉です(『こちら』)が、このように占う人は少なくありません(ほかにもドラッケンミラーなど(『こちら』))。

もっとも現在の選挙情勢を見る限り、トランプに勝てそうな民主党候補は見当たりません・・。

マーケットにとってはそれが望ましいのでしょうが、米国にとって、あるいは世界にとってそれが望ましいのかどうかは、別の話です。

"How dare you!" 

こう憤慨するグレタさんの声が聞こえてきそうです。

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2019年11月20日 (水)

暗い決算、光は差すか

昨晩出演した日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』ですが、『こちら』で動画をご覧になれます(13分です)。

    Photo_20191120205301

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2019年11月18日 (月)

2019年度上半期決算と今後の見通し

先週で日本企業の決算発表がほぼ終了しました。

11月7日(木)から14日(木)にかけての6営業日の間に、

上半期決算を発表した会社は、1,825社にものぼります。

これで、東京海上など今週以降発表する数社を除き、

ほとんどすべての3月末決算の会社が、上半期決算を発表し終えたことになります。

結果は・・?

ひとことで言うと、

厳しい決算が相次ぎました。

日経新聞の集計によると、上場企業の2019年度上半期連結純利益は、

前年同期比▲14%の減益。

製造業で見ると減益幅は▲31%にもなります。

各社が掲げる下期(10月~3月)の見通しはどうでしょうか。

日経の集計では、前年同期比+3%増と微増の見通し。

結果、2019年度通期の業績修正を発表した企業のうち、

製造業では4社に3社が下方修正でした。

しかし・・・。

こうした状況にもかかわらず、なぜか株価は好調です。

   N225

日経平均株価はここ3か月間で2万円台から2万3千円台へと、

3千円ほど値を上げてきました(上図)。

なぜでしょうか。

いくつか要因があるのですが、3か月前の時点では、

日本株全体が過小評価されていた点があげられます。

3か月前、つまり8月の時点では、日経平均の予想PERは11.5倍前後。

このときのマーケットを思い起こしてみると、

米中貿易摩擦の影響がどう出るか、

消費税の影響はどうか、といった具合に

不安要素が大きく、市場は極端に神経質になっていました。

そしてその後3か月間をかけて、予想PERが本来の水準と考えられている14倍に上がってきたことで、

「株価は3千円ほど値を上げてきた」

と見ることも出来ます。

もう一つの要因は、好調な米国の株価。

   Dow30

11月に入って、ダウ平均株価は史上最高値を繰り返し、

とうとう2万8千ドル台に突入しました(上図)。

こちらの方は予想PERが18.6倍(『こちら』)ですので、

さすがに「過熱気味である」と指摘する市場関係者が多くなってきています。

ダウに牽引される形で、日経平均にも買いが入り、

とくに日経平均の方はこれまでPERが低かったこともあって、

ある意味、安心して買い進められてきたのです。

結果、ここ3か月間で見ると、日経平均はダウ平均以上の値上がりを示現してきています(下図で青線が日経平均、赤紫がダウ)。

   Dow30-vs-nikkei225

実際、このところの東証における投資主体別売買動向を見ても、

ダウに牽引される形で(つまり海外勢によって)日経平均が値を上げてきたことがはっきりと窺えます(下表)。

   Photo_20191117233701

すなわち10月11日で終わる1週間から始まって、5週連続で、

個人投資家は売り越してきています(5週累計のネット売り越し額は1.3兆円)。

これをどの投資主体が買ったのかというと、

海外投資家です。

この同じ5週間で、海外投資家は5週連続で買い越し(5週累計のネット買い越し額は1.5兆円)。

つまり、10月中旬から11月中旬にかけては、海外勢が買いを入れることで、日経平均は値を上げてきたことが分かります。

今後の見通しはどうでしょうか。

日経平均の予想PERは14倍になってきたので、3か月前のような割安感はもはやなくなりました。

しかしダウが予想PER18.6倍と高値にあることを考えれば、ダウとの比較感から、もう少し上値を追えるのかもしれません。

いずれにせよ日経平均は今後もダウ平均株価にある程度連動する可能性が高いのですが、

問題はそのダウが今後どうなっていくか、です。

さすがにここまで高くなってくると高値警戒感も台頭してきています。

しかし各社の最近時四半期決算を一つひとつ追っていくと、マーケットがアグレッシブになるのもある程度納得がいきます。

ダウ平均に採用されている30社の個別決算ですが、IBM、キャタピラー、ボーイング、3Mなどの決算は悪かったものの、

アップル、マイクロソフト、P&G、ファイザー、インテル、ホームデポ、JPモルガンなどは好調。

総じて市場予想を上回る結果を上げたところが少なくありませんでした。

市場予想を上回る収益を上げることで株価が高くなる・・。

米国での高株価を演出しているのは、そんな実際の数字に裏打ちされた形での

「主要米国企業(ダウ構成銘柄)の高収益体質」であると見てとることも出来ます。

もちろんこれから先のことは、米中の貿易交渉の行方がどうなるかによって、大きく変わってきてしまうでしょう。

米中の貿易交渉がなぜそんなに重要なのか?

日本の方にはもうひとつピンとこないのかもしれません。

しかし例えば次のYouTubeの動画をご覧になってみてください(『こちら』)。

『もしも中国製のものがなければ、あなたの生活はどういったものになるのだろう』

米国の若者が作った、こんなタイトルの3分少々の短い動画なのですが、

『これ』を見ると、ナイキ(Nike)など米国企業の「中国製品」が、米国の消費者に如何に浸透しているかがよく分かります。

何もかもが「メイド・イン・チャイナ」だらけ。

そんな中で、高い関税を掛けたらどうなるのか・・。

こうした状況を是正したいがゆえに始めた米中貿易交渉でしたが、それはすなわち自らを苦しめることにも繋がってしまう。

米国のフラストレーションが伝わってきます。

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2019年11月10日 (日)

始まりはダーパのプロジェクトだった  (その2)

グーグルの自動運転プロジェクトは、現在グーグル(正式名称はアルファベット)の子会社「ウェイモ(Waymo)」で進められています。

ウェイモは全米6つの州、25の都市で自動運転プロジェクトを遂行。

そのうちの1つが、2017年以降、アリゾナ州フェニックス(Phoenix)の郊外で進められています。

現在、このプロジェクトが最も大規模な形で展開されていると言います。

フェニックスは、人口約170万人を擁するアリゾナ州最大の都市。

この郊外(東南)に位置するチャンドラー(Chandler)、テムピー(Tempe)、メサ(Mesa)といった市で、現在ウェイモの自動運転車が走行中(下図)。

数にして600台です。

   Az

チャンドラーの市長、ケヴィン・ハートキー(Kevin Hartke)氏によれば、

『ウェイモの車は市内の至る所で見受けられる。

街角に立っていれば必ずと言っていいほどウェイモが通り過ぎていくし、

2~3マイル走ればウェイモに出くわす』。

600台のウェイモ車はすべてクライスラーのミニバンを基本車体としています。

   Waymo

     (ウェイモの自動運転車;

      From https://www.cnbc.com/video/2019/08/17

この地域で登録した約1,000人の住民はウェイモ車を24時間いつでも呼びだし、地域内のどこにでも連れて行ってもらうことが出来ます。

実際にタクシーと同じように利用でき、もちろん有料です。

さらにこの地域では配車アプリの Lyft(リフト)が10台のウェイモ車を擁していて、

地域の人は誰でもリフトでウェイモ車を呼ぶことが出来ます。

なおこの地域のウェイモ車は、自動運転のLevel 4に分類されています。

   Level

CNBCは今夏、アリゾナにおけるウェイモ車の状況を放映、現在でも13分間の動画としてこれを見ることが出来ます。

百聞は一見にしかず。

まずはこの動画をご覧になってみてください(『こちら』です)。

さて日本でも自動運転の試みは進められています。

例えば、今年の11月2日、大津市は公道を使ったバスの2度目の自動運転の実証実験を始めました。

バスは大津駅を出発し、湖岸沿いを通ってびわ湖大津プリンスホテルまでの約3.6キロのコースを、最高時速約40キロ、曲がり角も試しながら走行しました(『こちら』)。

アリゾナのウェイモ車と違って、決まったコースしか走ることが出来ませんが、今後が期待できます。

欧州ではどうでしょう。

メルセデス・ベンツのダイムラー社は、先月1日、

「来年公表予定の新しいSクラスは、規制当局によって認定される最初のレベル3車になるだろう」

と発表しました(『こちら』)。

すでにアウディは同様のレベル3車を開発済みですが、ダイムラーのカレニアス会長によれば、

「当局から認可を受けるのは当社の方が先だろう」

とのこと(『こちら』)。

ちなみにアウディ車についてはせっかくレベル3の機能を開発したものの、自動運転を受け入れるための法整備が遅れているとの記事が昨年配信されていました(『こちら』)。

自動運転車の開発を巡っては、本来競争関係にあるダイムラー社とBMWがコラボするといったことも起こってきており(『こちら』)、まさに「何でもあり得る」といった状況になってきています。

ところで、

話は変わりますが・・・。

前回の自動運転車の記事で登場したセバスチアン・スラン。

彼はいま何をしているでしょうか。

スランは、キティ・ホーク(Kitty Hawk)という会社を起業しました。

この会社は、空飛ぶタクシーとも言うべき自動操縦の無人小型飛行機を開発。

グーグルのラリー・ペイジのサポート(恐らくは出資)も得ています。

『こちら』でキティ・ホーク(Kitty Hawk)が開発した無人操縦の空飛ぶタクシー「コラ(Cora)」の動画を見ることが出来ます(2分45秒です)。

自動運転車から無人操縦の空飛ぶタクシーへ。

スランのような常に一歩先を行く人が次の時代を切り開いていくのだと思いました。

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2019年11月 4日 (月)

始まりはダーパのプロジェクトだった  (その1)

ダーパ(英語で DARPA)。

米国国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)の略称です。

ダーパは、インターネットやGPSの「産みの親」としても知られています(『こちら』『こちら』)。

自動運転車の場合はどうでしょう。

自動運転車については、すでに1980年代から、米、独、日などで開発が進められていました(1920代まで遡れるという説もあります;『こちら』)。

2003年、デンソーは、トヨタ自動車と共同で、ミリ波レーダーセンサーで前方車両や障害物との衝突を予測し、衝突前にシートベルトの巻き取りやブレーキ制御を行うシステムを開発しています(『こちら』)。

この技術は、同年2月発売のトヨタ・ハリアーに世界で初めて搭載されました。

一方、これとは全く別のアプローチで、最初から完全に無人の自動運転車の開発を考えたのがダーパ(DARPA)です。

2004年、ダーパ(DARPA)は、無人自動車による走行競技「ダーパ・グランド・チャレンジ(DARPA Grand Challenge)」を開催します。

米国議会は、このプロジェクトを「基礎研究と軍事利用との橋渡し(bridge)を担うプロジェクト」と認定、

プロジェクト勝者に賞金1百万ドル(約1億円)を授与することを認可します(『こちら』)。

つまり「ダーパ・グランド・チャレンジ」は、最初から、自動運転技術を軍事目的でも使うことを展望してスタートしたのでした。

走行競技における規定走行距離は142マイル(約230キロメートル)。

これを完全自動運転(無人車)でもっとも速く完走した車を開発したチームを優勝チームとし、賞金1百万ドル(約1億円)を授与する予定でした。

しかし・・・。

何台もの無人車が参加しましたが、残念なことに、142マイルの規定距離を走破出来た車は1台もありませんでした。

最も長い距離を走った無人車は、「サンドストーム(砂嵐)」と名付けられたカーネギーメロン大学の無人車。

この車は、参加した車の中で最長の距離を進みましたが、それでもたったの7マイル(11キロ)を走れただけ。

11キロ進んだ時点で岩にぶつかり、それ以上走ることが出来なくなりました。

この結果、2004年の「ダーパ・グランド・チャレンジ」では勝者はなく、どのチームも賞金を獲得することが出来ませんでした。

翌年もダーパは同種の競技を開催。

今度は賞金が2百万ドル(約2億円)に引き上げられていました。 

この間、たったの1年間ですが、実はこの1年間で状況は一変していました。

第2回目の「ダーパ・グランド・チャレンジ」では、なんと約200台の無人車が競技に参加。

このうち5台の車が規定走行距離(今度は132マイル;212キロ)を完走したのです。

このとき、もっとも速く完走し、走行競技「ダーパ・グランド・チャレンジ」を制覇したのは、スタンフォード大学の無人車でした。

「スタンレー(Stanley)」と名付けられたスタンフォード大学の無人車は規定走行距離を6時間54分(平均時速31キロ)で走破したのです(『こちら』)。

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    (スタンレー;From Wikimedia Commons

見事優勝を果たし、賞金2百万ドル(2億円)を手にしたのはセバスチアン・スラン(Sebastian Thrun;当時37歳)。

スタンフォード大学コンピューター・サイエンスの准教授(associate professor)で、無人車「スタンレー」を開発したチームのリーダーでした。

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   (ダーパのプロジェクトに優勝し喜ぶスラン;

    https://www.cnbc.com/video/2019/08/17

実は、ダーパのレース会場では、スランの快挙をじっと見守っていた人がいました(『こちら』)。

周囲に気づかれないように帽子をかぶり、サングラスをかけながら、レースをこっそり見に来ていた人物。

この人物こそがグーグル創業者の1人、ラリー・ペイジでした。

ペイジに説得され、2007年、スランはグーグルに入社します(『こちら』および『こちら』)。

そして2010年には、Astro Teller、Yoky Matsuoka(現パナソニック㈱・フェロー)とともにグーグルXを設立。

こうしてスランはグーグルでの自動運転車開発を牽引していくようになったのです。

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2019年10月27日 (日)

ダウ平均株価とS&P500

以下は、米国の平均株価指数への投資に関心のある方の為の記事です(ちょっとややこしいので、関心ない方は読み飛ばしてください)。

さて、米国の平均株価指数に投資する場合、ダウ平均株価と、S&P500のどちらが良いのでしょうか。

   * * *

実はダウ平均株価とS&P500の違いについては、拙著の184~194頁に書きました。

ダウがたった30銘柄から成り立っているのに対し、S&P500は500銘柄をカバー。

S&P500がカバーする株式の時価総額は500社合計で24兆ドル(『こちら』)。

米国株式全体の8割(時価総額ベース)をカバーしています(『こちら』)。

一方、ダウは30社なので、時価総額の合計は8兆ドル。

米国株式全体の27%(時価総額ベース)をカバーするに過ぎません。

指数の算出方法もダウは基本的には株価平均型ベース(詳しくは『こちら』)、

一方、S&P500は時価総額加重平均型(詳しくは『こちら』)。

一般的には「指数としては株価平均型よりも時価総額加重平均型の方が優れている」と考えられています。

たとえば日経平均も株価平均型指数ですが、日経平均を動かそうとして、値がさ株であるユニクロ株を売買することなどがよく行われます(『こちら』)。

以上のようなことから、機関投資家はダウ平均株価よりもS&P500をよく使います。

にもかかわらず、新聞やテレビなどが報じる時にダウ平均株価の方をよく使うのは、ひとつにはダウが古くから使われていて馴染みがあるからです。

ダウ平均株価はいつ頃から使われているのでしょうか。

これが出来たのは1884年、つまり明治17年です。

日清戦争や日露戦争よりも前なのです。

1929年の大恐慌の時も使われていたのはダウ平均株価。

これに対して、S&P500が出来たのは、第二次世界大戦後の1957年です。

    * * *

実際のパフォーマンスはどうでしょうか。

過去30年で見ると、ダウのリターンは8.7%(年率平均)、S&P500は10.4%(出所は拙著186頁。18年11月末現在)。

一方、同じ30年間のリスク(標準偏差)はダウ13.9%(年率)、S&P500、14.1%(出所は上記と同じ)。

つまり平均株価の振れ幅(リスク)という側面ではダウ有利、しかしリターンではS&Pに軍配が上がっています。

もっとも同じ30年間で見て、日経平均はリターン▲0.9%、リスク20.8%ですから、ダウ、S&Pいずれを選んでも日経平均に比べればはるかに良いパフォーマンスを上げられたことが分かります。

   * * *

最近時(先週末)のデータで、過去5年間のパフォーマンス(リターン)を比較してみましょう。

   Dow-sp

青がダウ、赤紫がS&P500です。

先週末のデータで過去5年間の実績をプロットしたものですが、これを見る限り、ダウの方が勝っていることが分かります。

      * * *

最後に一言。

個人投資家の方が実際に投資する上では、ETFが経費率(例:投信でいう信託報酬など)が低くて好ましいと思います。

そういった意味では、ダウに投資する場合はスパイダー(SPDR)ダウ工業平均ETFが良いと思います

経費率は年0.17%、AUM(Asset under Mgmt)は218億ドル、2.4兆円。

証券コードDIAで購入できます。

   * * *

もっとも最近では、

「エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)が米国の大統領に選ばれれば、ダウ平均株価は25%ほど下落するだろう」

などと言われるようになってきました(『こちら』)。

投資の世界では3つの坂があると言われています。

上り坂、下り坂、そして

まさか。

投資をする前には勉強して納得してから投資をするのが望ましいと思います。

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2019年9月12日 (木)

日経ヴェリタストーク

火曜の夜に出演した日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』ですが、『こちら』で録画をご覧になれます。

   Img_0038-002

約13分間です。

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2019年9月10日 (火)

世界同時減益の足音

今晩は、日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トピックスは、世界同時減益の足音。

   _

米中による貿易戦争の激化が、企業業績を悪化させていると言われています。

Quick・ファクトセットが、世界で上場する企業の内、2万1000社を調べました。

その結果、4-6月期の最終損益は5%の減益でした。

【1】背景(その1)

米国と中国の覇権争い

かつて米国でベストセラーになった『China 2049』が描き出す世界。

これは中国は100年戦略のもとに、世界の覇権国家になることを目指しているというものですが、

米国としてこれを認めたくない。

中国の野望を阻止するためにも、今のうちに何とかしておきたいー

こういった考えが米中貿易戦争の背後にあります。

【2】背景(その2)

貿易の不均衡

中国から米国への輸出は、5400億ドル。

一方で、米国から中国への輸出は1200億ドルしかない。

つまり中国から米国への輸出を100とすると、米国から中国への輸出は22しかない。

 残り78、額にして4200億ドルは米国にとっての対中貿易赤字ということになります。

いくら何でもこれはひど過ぎるから何とかして欲しい、

というのが、米中貿易戦争の背景にあります。

【3】米国企業はどの程度影響を受けるのか

先ほど述べたように、中国から米国への輸出を仮に100とすると、米国から中国への輸出は22しかない。 

つまり米国が課す追加関税に対抗して、中国が報復として関税を高めても、米国企業は(中国ほどには)悪影響を受けません。

しかも米国が中国に輸出する1200億ドルのうち、およそ6割が大豆です。

もちろんボーイングなど中国への輸出が多い企業、あるいはアップルなど中国で製品を組み立てて、米国で販売している企業にとっては大きなダメージとはなりますが・・。

【4】問題はむしろ韓国などのアジア企業や欧州・日本企業

この辺は番組の中でも詳しく触れていますが、例えば先ほど挙げた4-6月期の最終損益でみても、世界全体は▲5%の減益(対前年同期比)。

それが、韓国などアジア(除く日本)企業は▲21%の減益。

欧州企業は▲14%減。

日本は▲15%減。

一方、北米は▲1%減でしかありません。

この辺のことも分かったうえで、米国は貿易戦争を中国に対して仕掛けているのでしょうが、

はたしてどのような着地になるのでしょうかー。

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2019年7月17日 (水)

リート市況は11年ぶりの高値

昨晩は、日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トピックスはリート(不動産投資信託)。

先日、東証リート(REIT)指数は、ついに2000の大台に乗せました。

これは11年7か月ぶりの高値。

Veritas

いまなぜリートなのでしょうか。

ひとつには、リートの分配金平均利回りは3.8%と、日本株の配当利回り(2%)に比して高いことがあげられます。

しかし投資家の多くは「不動産市況が良くなるから」といった積極的な理由よりも、むしろ「消去法的な理由」でリートに資金を投じているようです。

というのも、低金利の時代に積極的には債券を手掛けにくい・・。

一方、株式市場に対しては、次の3つの理由で慎重になってしまいます。

1)トランプ来日時に、大統領は「参議院選挙が終われば、日米通商交渉で進展がある」とツイート。

投資家としては8月の通商交渉の結果が気になる(とくに為替レート)。

2)10月の消費増税が景気に与える影響

3)米国 vs. イランの情勢

債券も株式市場も、どちらも積極的にはなりにくいということで、マネーは一部リート市場に流れている・・。

そう見ることが出来るのではないでしょうか。

ただリート市場、東証には全部で63本が上場されていますが、全部合わせても時価総額は15兆円。

トヨタ1社の時価総額よりも小さいのです。

個人投資家としては、リートの特性を分かったうえで投資しないと火傷をしてしまうことにもなりかねません。

昨晩のテレビは『こちら』でご覧になれます。

13分間の動画です。

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2019年7月 7日 (日)

今そこにある危機(clear and present danger)

日経新聞(本日付け)によると、上場企業17社が今年の6か月間で発表した早期退職者数は合計で8,200人にのぼるとのこと。

昨年1年間が「12社、4,126人」だったことを考えると、たった半年で昨年1年間の2倍になってしまったということです。

それだけではありません。

10月に消費税が上がり景気が一気に冷え込む恐れがあるとして、現時点で早期退職を検討している企業も少なくないようです。

こうした企業の動向は、当然のことながら上記の数字には含まれていません。

経団連会長が声高に「終身雇用見直し」について発言する(『こちら』)ような時代になっていますので、若い人の中には最初から「いまの職場には一生いないかもしれない」と考える人が少なくありません(『こちら』の調査によると 「現在の会社に定年まで勤続する意思があるのは3割強」)。

問題は30代後半から50代の人たち。

今の会社でずっと働き続けられると思って、一所懸命働いてきたのに、ある日突然早期退職を勧奨されても、簡単には次の職場が見つかりません。

東北地方に住む50代の男性は、80代の母親の遺体を自宅に放置したとして、ことし執行猶予のついた有罪判決を受けたと言います(NHK報道『こちら』)。

(以下、NHK記事からの抜粋)

「男性はもともと外資系企業のエンジニアとして働いていた。

年収は1000万円を超え、関東地方に購入したマンションでひとり暮らしをしていたという。

仕事は充実し、実家で暮らす母親には20年以上、仕送りを続けてきた。

男性の人生が暗転したのは、6年前。

突然、仕事を解雇された。

当初は蓄えも十分にあり、生活に困ることはなかった。

しかし、解雇から1年。

新たな仕事を探そうとしたところで、壁にぶち当たった。

すでに50歳を超え、自分の経験やスキルを生かすことができる仕事はなかなか見つからなかった。

中国など海外での求人はあったものの、1人で暮らす母親を置いていくことはできなかった。

いずれ、仕事は見つかると思っていた。

しかし、気がつけば、不採用の会社の数は数十社に上っていた。

見つからない仕事。

減り続ける蓄え。

焦りと不安が募るなかで、友人とも連絡を断つようになっていった。

いつしか就職も諦め、気力を失っていった。

お金を使わないよう、家にひきこもる時間が長くなった。

そして、去年、連絡が取れなくなった息子を心配し、訪ねてきた母親に促される形で、実家に戻ることを決めた。

だが、実家に戻ってからも状況は好転しなかった。

父親は病気で20年前に亡くなっていた。

収入は母親の年金だけが頼り。

生活を切り詰めたとしても楽ではなかった。

そんな生活が7か月ほど続いたある日、突然、その時はやってきた。

居間で横になっていた母親。

寝息も聞こえず、動かなくなっていた。病死だった」

ちょっとした不運が重なれば、誰にでも起こりうるような非情な現実が実はすぐ身近にあるのかもしれません。

この辺、たとえばアメリカのシリコンバレーではどうなんでしょう。

シリコンバレーで活躍してきた坂本明男さんは次のように語ります(ちなみに坂本さんは20年間にわたってシリコンバレーで次から 次へと会社を創業し、成長させて、大企業などに売却してきました(『こちら』)。

「シリコンバレーでも会社が突然破産するとか、会社を首になることも少なくありません。

でもみんな、つね日ごろから、それに備えています。

そしていざそうなると、必死に就職活動をする・・。

実際、多くの人がそういった経験をしていますが、みんなそれをたいしたリスクとは思っていません。

もう一つ、決定的に違うのは、シリコンバレーの人たちは、これから先、2年から5年間で成功が見えない会社は、自分の方からさっさと辞めていきます。

そして新しい会社を起こしたり、別な会社に入社したりする。

『自分がいま勤めている会社は成功できない』(持っているストックオプシ ョンの価値がなくなる)──こう判断し た場合には、新しい職場に移ることが当たり前なんです。

会社が従業員を切るのではなくて、従業員が会社を切るのです」。

高度成長の時代には終身雇用制度が、経営者にとっても従業員にとっても都合の良い仕組みでした。

そんな高度成長の時代が終了して数十年。

いつ何が起きても、どんな会社であっても働けるだけの能力を磨き、会社の外の世界との接点を豊富に持つように努める・・。

今そこにある危機に対処するには、そういった心構えが必要なのではないか。

日経新聞の記事を読んで、そんなことを思いました。

 

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