2018年5月27日 (日)

アセット・アロケーションとリバランス (その1)

人生100年時代に備え如何にして自分の資産を形成していくか・・。

アメリカで一般的に言われているのは、「アセット・アロケーションとリバランス」という考え方。

『90% of long term wealth creation happens through correct asset allocation decisions』という人もいます(『こちら』)。

まずアセット・アロケーションのところですが、いままでは「100マイナス年齢」と言われていました。

どういうことかと言うと、金融資産は株と債券で持て。その比率は「100マイナス年齢」で株式を持て、というもの。

つまりあなたが30歳の場合は70%は株式で、30%は債券で持つ。

年齢が行って、リスクが取りづらくなるに従い、債券の比率を増やしていく・・。

65歳になれば35%は株式で、65%は債券で、ということになります。

もっとも最近は「110マイナス年齢」あるいは「120マイナス年齢」といった考えに基づき金融商品が組成されるように変わってきていると言います(『こちら』)。

さて40歳のあなたが「120マイナス年齢」に従い、ポートフォリオを組みました(株80%、債券20%)。

半年後(あるいは1年後)、株式の値上がりが著しく、ポートフォリオを時価評価したところ、株が95%、債券が5%の比率になっていました。

これを元の比率に戻すため、株を売って債券を買うことを「リバランス」と言います。

バランスを元に戻すといったイメージです。

リバランスの背景にはいろんな考え方があります。

一般的な考え方はリバランスせずに放置すると、ポートフォリオのリスクが増大していってしまうというもの(下図)。

Vanguard_3

      (上図の出所は『こちら』)   

もう一つの考え方は次のようなものです。

『株の比率が高まったということは、株価が高くなりすぎたということに違いない。このときに株を売って、より安全な資産の債券に乗り換えておく。

逆に株の比率が低くなりすぎたということであれば、株価が安くなりすぎたということ。このときは債券を売って安くなった株を買っていく』

米国ではこうしたリバランスを自動的に、しかも極めて安価にやってくれる金融商品が増えています(たとえば『こちら』)。

もちろん日本でも自動リバランス機能を持つ商品があり、手数料も(米国ほどではないですが)かなり安くなっています(たとえば『こちら』)。

次回では、アセット・アロケーションとリバランスについて、もう少し別な観点から考えてみたいと思います。

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2018年5月 5日 (土)

1.4兆円の追加購入

このところ冴えない動きが続いていた米国の株式市場ですが、ウォーレン・バフェットが75百万株のアップル株を第1四半期に買い増ししていたことを開示。

アップルが史上最高値をつけ、つられて他のテック株(technology stocks)を中心に、米国市場全般が上がりました。

75百万株というのは、1株170ドル(推定購入コスト)、1ドル109円で計算して、1.4兆円。

追加購入の結果、バフェット(正確には投資会社のバークシャー)は、総計2.4億株のアップル株を保有していることに。

現在の時価で計算すると、アップル株だけで4.8兆円を持っていることになります(『こちら』)。

アップルの時価総額は102兆円。

バークシャーが保有しているのは、このうちの4.75%ということになります。

市場に鬱積していた「もやもやムード」を一掃。バフェットのパワーに驚かされます。

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2018年5月 2日 (水)

円安シナリオ再び

昨日のニューヨークでは一時、109円90銭を突破しましたが・・・。

昨晩出演した日経CNBCテレビ、日経ヴェリタストークで為替について話しました。

『こちら』でご覧になれます。

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2018年4月29日 (日)

グーグルやフェイスブックで働く人たちの平均年収(中央値)と為替レートの話

ウォールストリートジャーナル紙にグーグルやフェイスブックで働く人たちの平均年収(中央値)が載っていました。

分かりやすくするため「平均年収(中央値)」と書きましたが、要は「中央値の年収」です。

給与総額を従業員数で割って得られる「平均値」は、年収が極端に高い人がいると、その人の数値に引っ張られて、平均値まで高く振れることになってしまいます。

その点、「中央値」であれば、上から順に並べた人たちの中で、真ん中の人の数字なので、普通の人の実態に近くなります。

なおウォールストリートジャーナル紙が報じた平均年収(中央値)の記事は、『こちら』ですが、購読者以外は全文が読めないかもしれません。

モーニングスター社のサイトに同じ記事が載っており、『こちら』で全文が読めます。

これによると、グーグルの従業員の中央値の年収は $197,000。

1ドル=109円で計算すると、2,100万円になります。

フェイスブックの従業員の中央値の年収は  $240,000。円にして 2,600万円。

日本のIT企業である富士通はどうでしょう。

富士通の有価証券報告書(『こちら』)によると、従業員数3万3000人、平均年齢43歳、平均年収797万円。

ずいぶんと差がついてしまいましたが、為替レートを1ドル=80円で計算すると、現状のグーグル対富士通の2.6対1.0は、2.0対1.0くらいにまで改善します(ちなみに両者が等しくなる為替レートは1ドル=40円)。

* * * * *

さて、先週1週間で一気に円安ドル高が進みました。

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月曜日には107円台だったものが、ついに109円台に。

今年に入ってからずっと円高の傾向にあった(下図)のですが、ここにきて市場はドル円の金利差に着目。

円安に振れるようになったというのが一般的な解釈です。

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* * * * *

現在のマーケットの関心事は、

先週から特に顕著となった円安ドル高の傾向がどこまで続くのか

にあるのですが、こうした為替の話になると、必ず出てくるのが実質実効為替レートの議論。

3年ほど前にこれをテーマにブログ記事を書いたので、ご関心のある方はその記事(『こちら』)をご覧になってみてください。

日銀が現在発表している実質実効為替レートのチャートは下図です (『こちら』の頁に入り、為替のボタンをクリック)。

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これを見ると現在のレートは実質ベースでは1975年頃のレートに等しいことが分かります。

ちなみにこのときの名目為替レートは1ドル=300円前後。

つまり現在の円ドル(109円)は実質ベースでは超円安になっているということで、本当はもっと円高になってもおかしくないという議論です。

であれば、先ほどのグーグル、フェイスブックのドルベース年収も、実は、富士通とそんなに大差はないと見ることも出来ます。

* * * * *

もっとも為替の世界はこうした学者が論じるような理論で説明したところで、現実はそれとは違った要因で動いてしまうもの。

ただし、

『世界の投資家はこうした実質実効為替レートの議論も分かった上で、今後どうなるかを考えている』

ことに留意しておく必要があります。

たとえば、ロイターに掲載された佐々木氏のコラム(『欧州投資家が見る「歴史的円安」相場の持続力=佐々木融氏』)では、歴史的円安との表現でこの辺について触れています。

当然のことながら、円の実質実効為替レートについては米国の財務省も注目しています。

4月13日に米財務省は『Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States』(日本で為替報告書とよばれているもの)を米議会に対して提出しました。

このなかで、米財務省は、『実質実効ベースでは、円は2017年初めから今年2月にかけて2.4%切り下げられた。この結果、円の実質実効為替レートは過去20年の平均を25%も下回っている(25%も円安になっている)』と記述。

(上記の18頁。原文は、On a real effective basis, however, the yen depreciated by 2.4 percent from the start of 2017 through February of this year. This brought the real effective exchange rate to nearly 25 percent below its 20-year average.)

つまり佐々木氏が面談した欧州投資家や米財務省の視点からすると、

『日本はずっとデフレが続いてきたのだから、本来、円はもっと強くてしかるべき。

そうしたことを勘案すると現状は円安に振れ過ぎている』

ということになります(すくなくとも実質ベースに着目するとそうなる)。

* * * * *

繰り返しますが、実質実効為替レートで実際の為替が決まるのであれば、ことは簡単です。

しかし現実は違います。

需給が複雑に絡み合って現在の相場を形成しているのです。

たとえば:

・米国の長期金利が3%をつけ、この結果生じた日米の金利差に着目する投資家。

・円キャリートレードを考える投資家。

・武田のシャイアー買収だけで7兆円ものドルが調達されるかもしれないと考える投資家(日本の経常黒字額が21兆円であることを考えると、7兆円というのはインパクトある数字です)。

・4月から新年度に入り、日本の機関投資家による外債投資が活発化していると考える投資家。

これらの投資家の存在はすべて円安ドル高方向に相場がふれることを物語っています。

はたしてこれから先、為替はどう動いていくのでしょうか。

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2018年4月 8日 (日)

ドルコスト平均法(3)

ドルコスト平均法には、それが有利な場合と不利な場合とがあります。

株価がどう推移していくかによって有利か不利かが決まるのですが、いくつかのケースを想定して、実際に数値を入れてみることで、どういった場合に有利なのか、そしてどういった場合が不利なのかが、分かるようになります。

たとえば、下記のような3つのケースを想定します(グラフ1)。

Dollar_averaging_2

ケースA 1期目 株価 100、2期目 50、3期目 100

ケースB 1期目 株価 100、2期目 150、3期目 100

ケースC 1期目 株価 100、2期目 100、3期目 100

図で言うと、谷になっている形状(青)がケースA

山の形状(緑)がケースB

平ら(茶)がケースC

です。

各々の場合に(1)最初に一気に投資する方法と、(2)半分ずつ2期に分けて投資する方法とを考えてみます。

(2)の方法がドルコスト平均法です。

総投資額を2,000とした場合、

(1)では、1期目に2,000を投資。

(2)では、1期目と2期目に、1,000ずつを投資。

両者の投資法で3期目がそれぞれいくらになっているかを比較します。

ケースAでは、

(1)1期目に一気に投資する方法では、3期目の資産は2,000

当初資産と同じ金額です。

(2)1期目と2期目に分けて投資、すなわちドルコスト平均法を取ると、3期目は、

[(2,000÷2÷100)+(2,000÷2÷50)]×100=3,000

つまりケースAのような場合には、ドルコスト平均法の方が有利な結果をもたらします。

次にケースBを見てみましょう。

ケースBでは、

(1)1期目に一気に投資する方法では、3期目の資産は、やはり当初と同じ2,000

株価は投資した時点と3期目には同じ水準に戻っているので、このときの資産は、当初資産と同じ金額になります。

(2)1期目と2期目に1,000ずつ分けて投資すると、3期目は、1,667

ケースBのように株価が上がった後に元に戻る場合には、ドルコスト平均法では株価が高くなった時点で株を買ってしまう部分が生じることから、最初に一気に投資する方法に比べて不利な結果をもたらします。

ケースCの場合は、株価が一定に推移しますので、

(1)1期目に一気に投資する方法だろうと、

(2)1期目と2期目に分けて投資する方法を取ろうと、3期目の資産は、当初資産と同じ。

ケースCの場合は、ドルコスト平均法は有利でも不利でもありません。

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株価が第2図の(A)、(B)、(C)のように推移するケースはどうでしょうか。

総投資額を2,000として、

(1)の投資方法では、1期目に全額2,000を投資。

(2)の投資方法では、1期目と2期目に、1,000ずつを投資。

この想定のもとで、株価が(A)、(B)、(C)のように推移すると、

(A)のケース

一気に投資する場合は、4期目は3,500

ドルコスト平均法では、4期目は4,083

(B)のケース

一気に投資する場合は、4期目は3,500

ドルコスト平均法では、4期目は2,917

(C)のケース

一気に投資する場合は、4期目は3,500

ドルコスト平均法では、4期目は3,150

谷になるケース(A)ではドルコスト平均法が有利、山になるケース(B)ではドルコスト平均法が不利という点では、グラフ1も2も同じです。

ただ株価が直線的に上昇するケースではドルコスト平均法は不利な結果をもたらします。

たとえ一部にせよ(上記の例では半分を)、株価が当初に比して上がったところで、購入することになるからです。

* * *

以上を踏まえて、前回のブログで取り上げたヴァンガード社による1926年から2015年までの期間の1,069事例の調査結果を検討してみましょう。

『1,069例を調査した結果、全体の3分の2の割合で、最初に一気に投資してしまう方が、ドルコスト平均法よりも、有利な投資結果をもたらした』

との調査結果です。

これは、よく考えてみると当然とも言えます。

というのも、グラフ2の(C)のケースで見たように、相場が右肩上がりの時にはドルコスト平均法は不利な投資方法になってしまうからです。

ドルコスト平均法のように、少しずつ分けて投資してしまうと、(株価が右肩上がりの場合)、遅れて投資した分は、(最初に一気に投資した場合に比べて)、より高い値段で買うことになってしまうからです。

そしてアメリカの株式市場は基本的には、これまで右肩上がりで推移してきました。

ですからヴァンガード社による調査結果のようになってしまうのです。

* * *

さてここから先は「それでは実際にはどうするか」の問題になってきます。

ヴァンガード社による調査結果に重きを置き、一気に投資してしまうか。

それとも大恐慌やリーマンショックのような谷間が来るときには傷口を広げないことで知られる「ドルコスト平均法」を採用するのか・・。

『そもそも大恐慌やリーマンショックのようなケースはもはや考慮する必要はないのではないか』-そう思う人もいるかもしれません。

そういった人もいることも踏まえて、今年に入ってからの日本株の相場環境で考えてみましょう。

たとえばあなたが65歳になって今年の1月に退職したとします。

そして退職金2,000万円をもらい、これを株式投資に回すとします。

【最初に一気に投資する方法】

1月末に日経平均株価で株(指数)を購入(1月末 23,098円)

現在の資産は

2,000万円÷23,098円=865.9口

865.9口×21,567円=1,867万円

【1月末と3月末に2回に分けて投資する方法】

1月末:1,000万円÷23,098円=432.9口

3月末:1,000万円÷21,454円=466.1口

現在の資産は

899.0口×21,567円=1,939万円

「1,867万円」対「1,939万円」。

その差は72万円です(ドルコスト平均法の方が72万円ほど傷口が浅い)。

こうしたことを踏まえると、私としては、アップサイドをすべて取れなくても、ダウンサイドを小さくするとの観点から、ドルコスト平均法を考えてみるべきだと思うのですが、如何でしょうか。

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2018年4月 7日 (土)

ドルコスト平均法(2)

世界で最も読まれている株式投資本の一つがジェレミー・シーゲル教授の『株式投資』です。

1994年に初版が出て、現在原書(Stocks for the Long Run)では第5版。

私の手元にあるのは第4版の翻訳本ですが、この本では複数箇所においてドルコスト平均法が紹介されています。

この本の3頁(4月1日付の私のブログ記事を参照)や92頁の一節などですが、これらを読む限りシーゲル教授はドルコスト平均法についてポジティブな評価を下しているようです。

全世界で150万部を売り上げたというバートン・マルキール教授(プリンストン大学教授)の『ウォール街のランダム・ウォーカー』(原書はA Random Walk Down Wall Street)。

こちらの本では、ドルコスト平均法はどう扱われているのでしょうか。

私の手元にあるのは、第8版の翻訳本(2004年)ですが、397頁に『ドルコスト平均法はリスクを効果的に軽減する』との1節を設け、402頁まで5頁もかけてこの手法について説明しています。

その昔、私がゼミを取ったノーベル賞学者のウィリアム・シャープ(スタンフォード大学教授)も、『INVESTMENTS』という教科書の中でドルコスト平均法について説明しています。

1

525~526頁です。

以下に解説部分の画像を載せます。

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3

いま読み返してみるとシャープ先生の説明は面白いですね。

画像はクリックすると2倍の大きさになるので興味ある方は読んでみてください。

いずれにせよドルコスト平均法は米国の学者の間では真面目に検討されている投資法です。

日本の一部のマネー評論家が指摘するような『医学的に誤った民間療法のような「もっともらしいダメな話」』として、一刀両断に切って捨ててしまうような話ではありません。

きちんと検討に値する投資方法であることだけは確かなようです。

ただし、これから述べていきますが、ドルコスト平均法にはプラス面もあれば、マイナス面もあります。

残念ながら世の中に『これだ! これさえ守れば大丈夫!』といったような投資手法はありません。

きちんとプラス面とマイナス面を理解したうえで、これを採用すべきかどうかを、個人投資家の各々が決めるべき性格のものなのです。

それではドルコスト平均法のマイナス面とはいったいどういうものなのか。

これを取り上げた記事としては、(英語になりますが)下記のサイトを上げておきますのでクリックしてみてください。

『Why Dollar-Cost Averaging Is a Lousy Retirement Investing Strategy』  

以下、簡単にこの記事の要点を述べます。

『アメリカの投資信託運用会社であるヴァンガード社は、1926年から2015年までの期間に、ある投資金額を(a)一気に投資するのと、(b)12か月間にわたって12分の1ずつ投資するのと、どちらが最終的に多くの富に結び付いたか、1,069の例で調査をしました』

さて、ここで注記しますと、

①1926年1月~12月の12か月間、

次に

②1926年2月~1927年1月の12か月間・・

といった具合に、

1か月ずつずらして2015年12月まで進めると、1,069例になります。

『1,069例を調査した結果、全体の3分の2の割合で、(a)の一気に投資する方が(ドルコスト平均法よりも)有利な投資結果をもたらしたとの調査結果に辿り着きました』

ということは、ドルコスト平均法はやはり『医学的に誤った民間療法のような「もっともらしいダメな話」』なのでしょうか。

ジェレミー・シーゲル教授やバートン・マルキール教授の解説はどう解釈すればいいのでしょうか。

次回、もう少し詳しく説明します。

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2018年4月 3日 (火)

ドルコスト平均法(1)

前回記事でご紹介したジェレミー・シーゲル教授の『株式投資』に出てくる投資法。

すなわち、「大恐慌(1929年~)のような株価低迷期であっても、毎月15ドルずつダウ平均株価指数を買う方法」。

この方法は、一般にはドルコスト平均法と言われています。

ドルコスト平均法とは、要は、(株や投資信託などを)一度に購入しないで、均等額ずつ定期的に継続して買う(投資する)方法です。

英語では dollar cost averaging あるいは単に dollar averaging と言います。

仮にあなたが65歳だったとして退職金2,000万円をもらい、これを運用に回すとします。

この場合、

(A)一気に2,000万円を株式投資に回す

のではなくて、

たとえば、

(B)半年に1回、200万円ずつ5年間かけて投資する。

こちらの(B)の方が、ドルコスト平均法です。

別に「半年に1回」と決まっているわけではなくて、

むしろ一般的に言って、多いのは「毎月」です。

しかしここでは実際に過去の株価に照らし合わせて検証していきますので、

たんに私の作業の簡易性の観点からのみの理由で、

「半年に1回、200万円ずつ5年間かけて投資する」方法をとります。

さて早速(A)、(B)双方について、検証していきましょう。

時計の針を1929年の大恐慌時に戻します。

投資対象はダウ平均株価指数。

為替の影響は捨象して考えます(以下、2,000万円とあるのは「2,000万円相当ドル」とご理解ください)。

もしもこのときを起点として、その後の相場展開が1929年以降とまったく同じ道をたどるとすれば、コース(A)の場合、あなたが一気に運用(株式投資)に回した2,000万円は、

3年後には、なんと(!)、216万円にまで減少します。

すなわち、

2,000万円×[41.2ドル(1932年7月8日の株価)÷381.2ドル(1929年9月3日の株価)]=216万円

です。

元本は9分の1になってしまうのです。

そして元の2,000万円に戻るのは、25年後、そう、あなたが90歳になったときです(1954年11月23日、382.7ドル)。

この投資方法では、65歳から90歳になるまで、あなたはずっと含み損を抱えたまま過ごすことになります。

「あのときに投資しなければ良かった」と後悔し続けるわけです。

(もしも80代で死ねば、かなり後悔したまま死ぬことになります)。  

これに対して、退職金2,000万円を半年に1回、200万円ずつ5年間かけて(分割して)投資する方法を取った場合が「コースB」。

同じく大恐慌のときと同じ相場展開を辿ると仮定すると、投資元本は当初は減りますが、6年後、すなわち下図の通り1935年6月(あなたが70~71歳のときです)には、当初元本の2,000万円を回復します。

具体的なデータ、および計算結果は下図のとおりです。

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コースBの場合、10年後(あなたが75歳のときです)には、資産は2,550万円にまで増えます。

そして、25年後(あなたが90歳のとき)には、なんと6,520万円にまでなっています。  

つまり、大恐慌のような相場展開のときには25年後の資産は、コースA、B、両者で歴然とした差が出てきます。  

コースA(一気に投資)では、2,000万円→2,000万円  

コースB(分散して投資)では、2,000万円→6,520万円  

冒頭のシーゲル教授の本が指摘するように、大恐慌のような相場展開の時には、

(B)ドルコスト平均法は、(A)一気に全額投資してしまう方法に比べて、

はるかに有利な結果をもたらすことが分かりました。

にもかかわらず、です。

日本で売れている、いわゆるマネー本の多くは、ドルコスト平均法に懐疑的です。

たとえば私の手元にある本のなかには、以下のような記述のものもあります。

『投資できるお金が相当額あれば、一気に投資してしまう方が、機会損失が小さいし、手数料も少なくてすむ。投資をする場合に、資金を分割して投資タイミングをずらすことに「時間分散の効果がある」などという人がいるが、これは合理的でないので注意しよう。運用の世界には、医学的に誤った民間療法のような「もっともらしいダメな話」が多々あるので注意しよう』

さて、ほんとうにドルコスト平均法は、医学的に誤った民間療法のような「もっともらしいダメな話」なのでしょうか。

次回はこの点について検討していきます。

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2018年4月 1日 (日)

相場の下落(4)

大恐慌のような時にも、あまり傷口を広げない(といった意味での)「有効な」投資法とは?

ペンシルバニア大学のジェレミー・シーゲル教授の著書『株式投資』(日経BP社、2009年)によると、

大恐慌(1929年~)の株価低迷期であっても、

毎月15ドルずつダウ平均株価指数を買ったとすると、

20年後の時点での年率利回りは、

同じ期間に同じ金額を債券に投資し続けた場合の年率利回りを圧倒的に上回る。

すなわち、この方法では、

『投資元本は1949年には9,000ドルにまで膨らみ、年率利回りは7.86%と、債券の2倍以上になっていた』(前掲書3頁)

とのことです。

ほんとうにそうなのでしょうか。

ダウ平均株価は、1929年から下落しました。

それもピーク時の9分の1という想像を絶する下落です。

そして元の水準に戻るのに25年間を要しました。

このことを考えると、シーゲル教授の著述はちょっと信じられない気がします。

当初は私もそう思って半信半疑の気持ちで、大恐慌時の株価推移のグラフ(下図)を眺めてみました。

1929119551_2_2

そしてしばらくすると納得しました。

確かにダウ平均株価は、1929年から下落し、元の水準に戻るのに25年間を要しました。

すなわち1954年になって初めて元の水準を回復したのです。  

しかしながら、この25年間の軌跡をもう少しよく見てみると、1929年から32年までの3年間は下がり基調です。

そして32年にボトム(41.2ドル、32年7月8日)に達した後は、54年までの22年間は基本的には上がり基調なのです。

この上がり基調の間は、ダウ平均株価への投資はポジティブなリターンを生みだしてきました。  

毎月運用にお金を回すという行動パターンを取ってきた人が、1932年7月の時点で、ダウを購入(@41.2ドル)したとして、この部分の投資(41.2ドルで買った分)は、1954年11月には9倍になった(@382.7ドル)ことになるのです。

だとすると、シーゲル教授の言うように、大恐慌のときにも、毎月同額を株式投資に回すという投資方法は理にかなった投資方法になるのではないか・・。

私はさっそく検証してみることにしました。

次回くわしくその検証過程をご説明します。

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2018年3月28日 (水)

相場の下落(3)

人類が経験した、リーマンショックを上回る「悲惨な相場」。

それは1929年の大恐慌のときです。

株価は、1929年9月3日につけた高値381.2ドルに比して、なんと、その9分の1にまで下落してしまいます(1932年7月8日、41.2ドル)。

そしてもとの水準(1929年9月3日の高値381.2ドル)にまで回復するのに、25年(!)もかかってしまったのでした(1954年11月23日、382.7ドル)。

この間、人類は第2次世界大戦を経験。

そして戦後の復興の時期を迎えても株価はすぐにはもとの水準に戻らなかったのです。

大恐慌とリーマンショックの違いを表にまとめてみました。

Photo_2

これを見ると大恐慌が如何にひどかったがお分かりいただけるかと思います。

仮に大恐慌と同じことが起こると仮定すると、30歳のあなたが行った株式投資は33歳まで下落を続け、その後、元の水準に戻るのは55歳の時。

サラリーマン人生の大半を、含み損を抱えたまま過ごすことになってしまいます。

定年退職で65歳の時に退職金をもらい、株に投資した人は、90歳になるまで含み損を抱えたままです。

80代で死んでいれば、後悔のまま死ぬことになります。

大恐慌のときの相場展開をグラフ化してみました(下記)。

1929119551_3

大恐慌が起きたのは1929年の10月24日。

「暗黒の木曜日」と呼ばれています。

このときニューヨーク株式市場は大暴落となり、絶望のあまり自殺する人も現れました。

しかしながらこの日、午前中には株式市場は確かに11%の下落となったのですが、午後になると相場は急回復します。

結局のところ1日を通じて2%しか株式相場は下落しませんでした。

2%というのは今日われわれが、ほぼ日常的に、と言っていいほど、頻繁に経験する株価変動です(昨日のニューヨーク;ダウ▲1.43%、ナスダック▲2.93%の下落)。

大恐慌のときは、結局、株価がボトムに達するのは、1932年7月8日(41.2ドル)。

つまり3年近くかかって下落していった結果、株価は9分の1になったのでした。

この辺のことは拙著「金融資産崩壊」に書きましたので、ご興味のある方はご覧になってみてください。

株式投資をする以上は大恐慌のことを知っておく必要があると思います。

ところで、大恐慌のようなとき、いったいどうしたら良いのでしょうか。

相場が上述のような動きを示すと予め分かっていれば、リーマンショックのときに2兆円を稼いだジョン・ポールソンのように「ぼろ儲け」することができます。

しかしこういった動きになるとは、誰にも分かりません。

このような時にも有効な投資法とは・・・。

次回ご説明します。

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2018年3月25日 (日)

相場の下落(2)

ダウ平均株価は1週間で1,413ドル下落。

昨日の日経新聞の夕刊によると、1週間でここまでの下落は、リーマンショック以来なのだとか・・・。

ところで、リーマンショックのときの株価の下落とは、どのようなものだったのでしょう。

リーマンショックの約1年前、2007年10月9日に、ダウ平均株価はそれまでの史上最高値14,163ドルを記録します。

その後、ダウは下落を続け、2009年3月9日、6,547ドルになります。

それまでのピークの46%の水準です。

この時点をボトムとして、その後は、ダウは上昇基調に転じます。

そしてリーマンショック前の高値を更新し、再び史上最高値を達成したのは、2013年3月5日(ダウ:14,253ドル)。

つまり5年半かけてリーマンショック前の高値を更新したことになります。

もし今回リーマンショック時と同じことが起きるとすると、いったいどういうことになるのでしょうか。

これまでの最高値は1月26日の26,616.71ドル。

この46%というと、12,243.69ドル。

現在の23,533.20ドルよりも、これから更に52%も下落するということです・・・(参考までに、現在はピーク時の12%安です)。

如何に10年前のリーマンショックがひどかったが分かります。

新聞の見出しは人目を引くのが重要ですから、「リーマンショック以来」といった表現になりがちです(しかも、これは下落率でみると正しくはありませんが、絶対額として見れば事実です)。

しかし、たとえ米国と中国の貿易戦争が本格化したり、泥沼化したりしても、私は今回の下落はリーマンショックのようには「なりえない」と思います(米朝戦争勃発なら話は別ですが・・・)。

いずれにせよ、リーマンショック時にはそれまでの高値を更新して元の水準に戻るのに5年半もかかりました。

たとえば65歳で退職金が2000万円出て、これで2007年10月9日に株を買った人のことを想像してみましょう。

この人の2000万円の投資元本は2年後920万円になってしまい(為替の影響を捨象しての議論)、5~6年間、含み損を抱えたまま嫌な老後をおくることになります。

やっとのことで投下資金が元の2000万円に戻ったときには、この人は70歳とか71歳になっていたという話です。

こういったことが起こり得るからこそ、一気に全額投資するという投資手法については、私としてはあまりお勧めできません。

実は相場の歴史では、これ以上に、もっとヒドイことも過去には起きているのです。

次回、お話しします。

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