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2006年5月 5日 (金)

ランダム・ウォーク(その1)

ランダム・ウォークとは、「物事の過去の動きからは、将来の動きや方向性を予測することは不可能である」ことを意味する言葉です。

金融に携わったことのある方なら、誰でも一度は「ウォール街のランダム・ウォーク」とか「ウォール街のランダム・ウォーカー」(1999年に出た原書第7版から訳本のタイトルはこう変更されています)の話は聞いたことがあるかと思います。

「チンパンジーがウォールストリート・ジャーナールの相場欄にダーツを投げて選んだ銘柄からなるポートフォリオでも、プロのファンドマネージャーと同じような成果を上げることが出来る」

バートン・マルキール教授のこの衝撃的な著作は、発表された当時(1973年)から、金融に携わる人々の間で注目を浴びました。(もっとも私が本書を知ったのはもっと遅くて1980年代の後半です)。

2003年に出版された同書の第8版は次のような書き出しから始まります。

「・・・一般の投資家は、もはやウォール街のプロにはほとんど太刀打ちできないと思われている。いわくプロは「プログラム・トレーディング」や「ポートフォリオ・インシュアランス」などと呼ばれる高度なテクニックを駆使したり、・・・潤沢な資金を動員して、・・・裁定業者たち・・の最新の動向にも通じている・・」

「こうした話を聞くと、機関投資家が取り仕切る今日の株式市場に、個人投資家が入り込める余地はほとんどないように思える。しかし、事実は全く逆なのである。個人投資家は少なくとも専門家と同じくらい、場合によってはそれを上回る、優れた成果を上げることもできる。」

「サルと同列もしくはそれ以下」と酷評されたウォール街のプロたちは、本書に対して抵抗を試みましたが、この本はアメリカで多くの個人投資家(および、特にインデックス・ファンドに投資する機関投資家)の支持を受け、30年間にわたって読み続けられてきています。(アメリカだけで、すでに第8版までに累計150万部以上が販売されています。)

サバイバルとしての金融』をお読み頂いた方にはお分かり頂けると思いますが、学問として金融にアプローチするにせよ、実務家の立場から金融にかかわるにせよ、金融に関しては、大きく言って、二つの対立する考え方があります。

一つは、市場は効率的であるとする立場であり、いま一つは(結果として市場は効率的であるかもしれないが)株価は本来の価値に収斂するはずであり、そのファンダメンタルズ(本質的価値)を見極めようとすること、そのことに重きを置く立場です。

バートン・マルキール教授のこの本は基本的には前者の立場ですが、個人投資家の支持を勝ち得ているのは、理論のみならず、理論に裏打ちされた多くの有益な示唆に富んでいるからにほかなりません。

たとえば、オランダのチューリップ・バブルについて説明した本書第二章の締めくくりで、教授は次のように述べています。

『市場で常に損をする人たちというのは、大小様々のチューリップ・バブルの魅力に抵抗できないタイプの人たちである。株式市場で金儲けをすることは、実際、それほど難しいことではない。

・・仮にウォールストリート・ジャーナルの株式欄にダーツを投げて銘柄を選んだとしても、長期的にはかなり高いリターンを上げることができるのである。

むしろ難しいのは、短期的に手っ取り早くお金を儲けられそうな投機に、お金をつぎ込みたくなる誘惑を振り払うことのほうである。』

過去一年間で日経平均は約56%上昇しました。

Nikkei

一方で、マザーズ(指数)は下記のグラフの通り、一年間で約12%の下落です。(特に今年の1月16日から2月20日にかけて約47%下落しています。)

Chart21_2

教授の言う『短期的に手っ取り早くお金を儲けられそうな投機に、お金をつぎ込みたくなる誘惑を振り払うこと』-このことの難しさを実感させてくれたような相場展開になっています。

ところで、(1)我々はバートン・マルキール教授の言うように、本当に、サルと同列なのでしょうか。

だとしたら、(2)40年間かけて、100万円を28億円にしたウォーレン・バフェットのような投資家のことをどう解釈したら良いのでしょうか(この同じ期間に、S&P500に投資していたとしたら、100万円は5,300万円にしかなっていません。)

(3)マルキール教授の言う効率的市場理論は日本のマーケットにも当てはまるのでしょうか。

(4)実際に30万円を投じて極めて短期に1億円を儲けたデイ・トレーダーもいます。彼らのような存在はどう説明できるのでしょうか。

これらについては次回以降、見ていくことにしましょう。

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コメント

「間違いだらけの株えらび」、購入させていただきました。そこで質問があるのですが、運転資本はどう求めれば良いのでしょうか?ご教授下さい。

投稿: のり | 2006年5月 6日 (土) 15時44分

のり様

分かりづらくて申し訳有りません。

運転資本は本書の51頁にありますように過去の実績を参考にし、売上高の5.5%とおいています。

ご質問の趣旨は、一般的な意味での運転資本の求め方、もしくは過去の実績である運転資本の求め方を言っているものと思われます。

本書53頁にある、2005年3月期と2004年3月期のトヨタの運転資本、1,066十億円と、906十億円を求めてみましょう。

トヨタの有価証券報告書を同社のホームページよりダウンロードします。

連結財務諸表で、平成17年度3月末:

受取手形・売掛金=1,616,341(百万円) (A)
たな卸し資産=  1,306,709(百万円)(B)
支払手形・買掛金=1,856,799(百万円)(C)

運転資本=(A)+(B)-(C)=1,066,251(百万円)

同様に、平成16年度3月末:
(C)=905,633(百万円)

となります。

投稿: 岩崎 | 2006年5月 6日 (土) 18時21分

早速の御回答、感謝いたします。これからも勉強をして正しい株えらびをしたいと思います。ありがとうございました。

投稿: のり | 2006年5月 7日 (日) 13時43分

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