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2006年5月23日 (火)

ランダム・ウォーク(その6) 日本の市場は効率的か

昨日も下落したニューヨーク株式市場。

Yahoo! Finance (USA)が昨日、アンケート調査を実施していました。

私が、アンケートに参加したタイミングでは、96,790票の投票があり、その時点での結果は下記の通りです。

質問:

米国の株式市場は今後どうなるだろうか?

答え:(5つの選択肢から回答した人の割合がパーセントで示されます)。

(a) 大幅に下落するだろう 15%

(b) 引き続き弱含みだろう 24%

(c) あまり現状と変わらない 25%

(d) 若干上がるだろう    28%

(e) 大幅に上がるだろう   11%

面白いのは (a)+(b) = (d)+(e) となっていた点です。

さて、今日は、脱線はこの位にしてランダム・ウォークに戻りましょう。

マルキール教授や、シャープ教授の議論は、要は、アメリカの株式市場は効率的であるということです。

それでは日本の株式市場はどうでしょうか。

日本市場には、効率化を阻む幾つかの要因があります(にもかかわらず、現実に、効率的なのかどうかは、実証研究の結果をあたって吟味していく必要があります)。

まず第一に、日本企業同士の間で株式の持ち合いが行われていること。一時、50~60%程度あったと言われた『持ちあい比率』は低下して、30~40%程度になっているとも言われています。

それでも、『投資家が経済的合理性のみに基づいて動いているわけではない』という『膨大な量の株式』が存在していることに変わりありません。

第二に、敵対的買収が殆ど行われないことです。これは、株主にとって不適格な経営者(株主の利益を考えず公私混同している経営者や無能な経営者)を排除するメカニズムが市場で働いていないということです。

バブルのピークで100万円を投じて株を購入していたら、現在、幾らになっていたか?

株主価値を向上させた経営者

キヤノン 426万円

ホンダ  398万円

トヨタ   253万円

任天堂  116万円

一方で、株主価値を毀損させた経営者

NTT    34万円

NEC    44万円

日立    55万円

旭化成   67万円

富士写真フィルム 88万円

詳しくは『投資銀行』という本に書きましたので、そちらをご覧になって頂きたいのですが(すみません。またコマーシャルになってしまいました。)、無能な経営者、公私混同する経営者が市場にいて企業価値を毀損している場合、敵対的買収者が現われて、これらの経営者を放逐し、有能な経営者を送り込むことによって、株主価値は上がっていくようになります。

(そういった自浄のメカニズムが市場に内在されていないことには、われわれは市場主義に「よって立つ」ことが出来なくなります。)

例えば、自分の飼い犬まで、自社のコーポレート・ジェットに乗せて、他の州に連れていったRJRナビスコのジョンソン元会長。

彼は同社を敵対的に買収したKKRによって更迭されてしまいました。(その代わりにKKRは、後にIBM再建で辣腕を振るうことになったガースナーを、RJRナビスコの会長に送り込みます。1989年のことです。)

このように不適格な経営者を排除し、有能な経営者を迎え入れることによって、企業が持つ「企業素質」をフルに実現させるようなメカニズムが、市場主義には内在されているからこそ、投資家は市場主義を信頼できるわけです。

ところで、野村證券の調べによると、日本で敵対的買収防止の為の施策導入を今年になって発表した企業は104社。この62%が、市場平均(TOPIX)を下回る値動きだったと言います。

野村證券の西山賢吾ストラジストによれば『導入企業の過半は収益力が平均より低く・・・防衛策が経営陣の保身に使われる、との投資家の懸念が、株価にも反映しているようだ』とのことです(5月22日、朝日新聞)。

経営が駄目な企業の経営者ほど自己保身に走り、買収防衛策の導入に躍起になる。その結果、株主に嫌われ、株価はますます下落する――

最も有効な買収防衛策は、ベストな経営を行うことで株価を上げることである。そうすれば、敵対的買収者が買収して経営陣を入れ替えても、株価を更に上げる余地が無くなる為、敵対的買収は行われない――

この単純なロジックを保身に走る経営者たちはおそらく理解できていません。

われわれ投資家に出来ることは、ベストな経営を株主に提供するよりも保身に走る経営者のいる企業からは、さっさと資金を引き上げ(株を売却し)、まともな企業の株を買うことです。

そうしないと我々の資産はどんどん劣化していき、保身に走る経営者に食いつぶされてしまいます。

先ほどの例のように、今から16年前に、キヤノンの株を買った人は、NECの株を買った人に比べて、10倍に資産を増やしています。

サルがダーツを投げるより賢く投資する-日本にはその為のシグナルがまだまだマーケットに転がっているように思えてなりません。

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コメント

はじめまして いつも楽しく拝見しています。

会社では経理をやっています。

ランダムウオークの記事、マクロ的でおもしろいですね。

でも、自分の会社が「一方で、株主価値を毀損させた経営者」として載るのは気分が悪いです。(笑)

僕自身も投資家だし、株主価値が毀損されていることもわかっているんですが・・・。

みんなまじめだし、いい会社なんですよ~、従業員にとっては。


投稿: サラリーマンS | 2006年5月23日 (火) 19時09分

サラリーマンS様

すみません。ご気分を悪くしてしまったようで。。。

従業員に対してやさしい会社とか、地域社会を重視する会社とか、いろんな会社の形態があって然るべきだとは思いますし、そういった会社(従業員に対してやさしい会社とか、地域社会を重視する会社など)も、実は社会的にすごく意義のある会社だと思います。

ただ上場して一般投資家の金を集めてしまった以上は、やはり(厳しいようですが)それなりの責任が付いて回るように思います。

従業員にやさしく社風の良い会社→評判がよくなり、有能な人が集まる→有能な人たちの下で、会社の業績が向上する→企業価値が向上する

こういった好循環を作り出せると良いですね。

投稿: 岩崎 | 2006年5月23日 (火) 21時46分

岩崎様

始めまして。
「投資銀行」読んでいます。
非常に面白いです。

ぼくは大学生で将来的に起業を志しているのですが、その前に外資証券・投資銀行に入りたいと思っています。
そんな折り、この本を見つけたのですが、
今夢中になって読んでいます。
すごくわかりやすい!
とて勉強になります。

投稿: 学生max | 2006年5月24日 (水) 06時00分

学生max様

面白く読んで頂けて非常に嬉しいです。

私自身、投資銀行で経験を積んでから起業しました(アメリカでは52歳でマクドナルド・ハンバーガー・チェーンを起業したクロック氏などのように遅くなってからの起業も結構たくさんあります)が、投資銀行での経験が非常に役に立っています。

がんばってください!

投稿: 岩崎 | 2006年5月24日 (水) 06時59分

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