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2008年5月24日 (土)

メドゥーサ(その16)

原油価格高騰の背景にあるのは中国、インドなどの諸国の経済発展とそれに伴う原油に対する需要増と言われています。

と同時に一つの書物が何がしかの影響を与えたことも否定できません。

2005年に発刊された『TWILIGHT IN THE DESERT: The Coming Saudi Oil Shock and the World Economy』

日本語でも『サウジ石油の真実』となって昨年翻訳本が出版されています。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構の石井彰さんが、日本語版の本書に解説を載せていますが、以下はその解説文からの抜粋です。

『・・(本書は)ロシアと並ぶ世界最大の原油生産国にして、OPEC(石油輸出国機構)の盟主であるサウジアラビアの原油生産力が

近い将来、ないし既に限界に達していて急落するために、

世界の現行石油供給量を維持できず、

必然的に世界経済は大混乱に巻き込まれる可能性が高いと言うショッキングな内容である。

・・・原油価格高騰の背景の一つに、広範な石油業者や投機家、投資家の将来認識に与えた本書の影響があるとも言われている。・・』

本書のベースになっているのは、Society of Petroleum Engineers (SPE) (石油技術者協会)発行の膨大な論文の数々です。

著者のシモンズ氏はこれらを丹念に読みこなし、それをもとに本書の議論を展開しています。

これに対してサウジアラビア政府は

『サウジの原油生産が近く減退に向かうとの見方は間違いである』と反発しています。

そして石井さんの解説によりますと、専門家たちの間では、サウジの見解を支持する意見が多いようです。

とは言うものの、本書を読むと、

我々の経済的繁栄は必ずしも磐石な上に成り立っているわけではないことを実感させられます。

この本が書かれた2005年。

原油価格は50ドルでした。

そのとき著者のシモンズ氏は、

『いま、一から油田の開発を行い(投資家が求める利益を上げるとすれば)・・石油価格は・・100ドルとか200ドルになるだろう。

しかし、掘削、パイプライン・・といった資産に今後・・どれだけの費用が必要かはわからないし、・・200ドルでも低すぎるということも(今後10年から20年の間には)あるかもしれない』

と述べていました。

既に原油価格135ドルが現実となってしまった今。

我々はこれまでの生活様式を変えることさえ求められるようになってきています。

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2008年5月23日 (金)

メドゥーサ(その15)

海外の国に行くと、空港のビルを出て外に出た瞬間にその国や都市の『風』が我々の体に伝わってきます。

ロスアンゼルスの空港に降りて外に出れば、空が青く、高く感じられます。そしてカラッとした乾燥した外気がなんとなく気分を開放的にします。

ロンドンは小雨であることが多く、街の雰囲気は歴史と伝統を感じさせます。

中東の国は、街全体がオリーブ油の匂いなのでしょうか、どこか独特の匂いがして、時折お祈りをしている方たちの声が街全体に響き渡ります。

今から10年以上も前でしたがサウジアラビアを訪れた時、今まで訪問した国々とはまったく違う異質な空気のようなものを感じました。

特に首都のリヤドは宗教警察の力が強く、例えば、街を歩く女性の姿は殆ど目にすることが無く、オフィスを訪れても、受付の方やお茶を出してくれるのは、フィリピン人など出稼ぎで来ている男性でした。

人々はたとえ一般道でも時速100キロを超えるスピードでクルマを疾走させます。

一方、MEDUSAの国々のなかでもマレーシアはアジアの国なので親近感を感じます。

それでも香港などとは違い、ふとしたところでイスラムを感じます。

例えばホテルの部屋の机の引き出しを開けると矢印がついています。(シンガポールやインドネシアなどでも同様の経験をされた方は多いと思います。)

矢印はメッカの方向を示し、イスラムの方たちはこの方向に向かってお祈りをします。

スクークといわれるイスラム金融の債券は世界の6割以上がマレーシアで発行されています。

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2008年5月20日 (火)

メドゥーサ(その14)

19日(月)のブログに神保町さんから、コメントを頂戴しました。

『以前はイスラム社会は保険契約を禁じていたようですね。

金銭のやりとりがある商契約行為では、できるだけ不確定要素を排除することが義務づけられていますから、保険契約のような、起こるか起こらないかわからないことを前提としたものは馴染まない。

保険の買い手は金銭を受け取れるかどうか、わかりませんから。

また、生命保険であれ、損害保険であれ、死亡や損害が発生すれば保険契約者は保険会社からそれまで支払った金額を超える金銭を受け取るわけですが、

このことがイスラム法が禁じている「利子取得行為」に当たるのだそうです。

そして、死亡も損害も起きなければ、支払い金額は保険会社のものになる。

契約の際に、保険会社が金を取るのか、契約者が金を取るのか確定できていないわけですから、

これはまた、イスラム法で禁じられている「賭博行為」に当たるそうです。

そのこと以上に、イスラム法では不確定事項を人間が取り扱うこと自体が神に対する冒涜行為。

生命保険はその最たるものだそうですね。』

このように従来型の保険契約には、リバー(利子)、ガラール(不確実性)、マイシール(投機)の概念が内在しており、イスラム教では問題とされてきていました。

しかしこれらの3つの概念を排除した新しい形の保険が生れてきています。

タカフルです。

タカフルは相互扶助の仕組みで、加入者が所定の金額を 『相互扶助ファンド』 に拠出します。

そして、相互扶助ファンドに蓄えられた資金は加入者に帰属するといった形を取ります。

この画期的とも言うべくタカフルの開発に際し、先駆的役割を果たしたのが東京海上です。

この辺の事情は吉田悦章『イスラム金融入門』の第5章に詳しいので同書に譲りますが、

日本の金融の地盤沈下が叫ばれる中で、パイオニア精神を発揮している方たちが健在しているのは嬉しい限りです。

明治時代にロンドンで活躍したという各務鎌吉の話を思い起こしました。

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2008年5月19日 (月)

メドゥーサ(その13)

何がコーランが禁止している『リバー』に値するのか。

例えば、金融派生商品(デリバティブ)のような商品は認められるのか。

こうした点については、イスラム金融の世界では、シャリア』学を修めた学者たちの間で研究されています。

『シャリア』(Shariah)とは「人が従うべき道」を意味しますが、憲法よりも上位にあるイスラム教の戒律です。

『シャリア』(Shariah) が禁止するものとしては例えば、

① 金銭の使用に対して利息(リバー:Riba)を課すことを禁止

② 豚肉、酒類、武器などの禁制品(ハラーム:Haram)を使用・取引することを禁止

③ 契約中の不確実性(ガラール:Gharar)の排除

④ 投機行為(マイシール:Maisir)の禁止

などです(前田匡史『「詳細」イスラム金融)。

但し、このリバーの禁止についてですが、前回のブログで見ましたように、

『ムラバハ』(商品の買い手と売り手の間に銀行が介在してマージンを取る)や、

『ムダラバ』(出資者の資金を投資・運用することで上げた利潤を配当で還流)など、

取引実態があるものについては、『リバー』に当らないとして認められています。

しからば、いったいどこが境界線となるのか。

私はふと住友グループの社是(住友家の家訓)である『浮利を追わず』を思い出しました。

我営業ハ確実ヲ旨トシ、時勢ノ変遷、理財ノ得失ヲ計リテ之を興廃シ、

苟クモ 浮利ニ趨リ、軽進ス可ラザル事

(『住友家法』第1款家憲の第3条)

イスラム金融というと特殊な世界を思い浮かべがちですが、

その教えとするところは意外と身近なものなのかもしれません。

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2008年5月18日 (日)

メドゥーサ(その12)

トヨタが約320億円のイスラム債の発行枠を設定し、月内にも発行を始めることがニュースになっていました(5月12日付け日経新聞第一面、詳しくは『こちら』)。

『スクーク』と言われるイスラム債は、イスラム法が禁じる利子の概念をどうやって乗り越えているのでしょうか。

原典にあたってみましょう。

岩波文庫から井筒俊彦訳の『コーラン』が出版されていますが、ネット上の『イスラーム文化のホームページ』でも、日本ムスリム協会発行「日亜対訳・注解 聖クルアーン(第6刷)」を読むことが出来ます。

その第二 雌牛(アル・バカラ)章の275節。

275.利息を貪る者は、悪魔にとりつかれて倒れたものがするような起き方しか出来ないであろう。それはかれらが「商売は利息をとるようなものだ。」と言うからである。しかしアッラーは、商売を許し、利息(高利)を禁じておられる。それで主から訓戒が下った後、止める者は、過去のことは許されよう。かれのことは、アッラー(の御手の中)にある。だが(その非を)繰り返す者は、業火の住人で、かれらは永遠にその中に住むのである。

コーランにはこのほかにも利子・利息について記されているところがあります(276~281節など)。

何れを読んでも明らかなようにコーランは『リバー』利子・利息)を禁止しています。

このためイスラム金融の世界では、『リバー』利子・利息)に当らない仕組み・スキームが利用されています。

例えば、『ムラバハ』(商品の買い手と売り手の間に銀行が介在してマージンを取る)や、

『ムダラバ』(出資者の資金を投資・運用することで上げた利潤を配当で還流)などの仕組みです。

『スクーク』も基本的にはこれらと同じで、証券の背後に商品取引や投資にともなう収益の概念を組み入れることで、『リバー』の概念を回避したものになっています。

こうしたイスラム金融の資産規模は今や年率15~20%のペースで拡大しており、すでに1兆ドルを超えていると見られています(糠谷英輝『世界を席巻するイスラム金融』吉田悦章『イスラム金融入門』)。

円にして、約100兆円。

日本の個人の金融資産1500兆円の15分の1ということになります。

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2008年5月13日 (火)

メドゥーサ(その11)

MEDUSAという言葉で表されるイスラムの世界。

実は見方によっては戦前の方が、日本とイスラムの世界が近い関係にあったということは意外と知られていません。

司馬 遼太郎の『十六の話』 (中公文庫;1997年)には、井筒俊彦との対談「二十世紀末の闇と光」が収録されています。

アラビア語、ヘブライ語、ギリシャ語など20カ国語を習得し、イスラム思想を研究していた井筒俊彦は、司馬 遼太郎をして、『二十人ぐらいの天才らが一人になっている』と言わしめた人です。

井筒は、イブラヒムという日本に亡命していたトルコ人にアラビア語を習ったと言いますが、司馬 遼太郎との対談の中で、次のように述べています。

『(イブラヒム)はパン・イスラミズム運動の領袖の一人だったんです。日本の軍部と結びついて、その助けで、トルコを中心として往年のイスラーム帝国を再建しようとしていた。

ヨーロッパ諸国の植民政策によって四分五裂してすっかり無力になってしまったイスラーム諸国を統合し、またサラセン帝国の栄光に戻そうというイデオロギーで・・。

それで、頭山満とか右翼の主な人と親しく、軍部の人たちとしょっちゅう会合して、何か計画を練っていたらしいんです。』

イビラヒムが最初に日本にやってきたのは1909年。

ロシア帝国のイスラム政策に反対し追放されていた彼は、日露戦争(1904-1905)に勝った日本に共感し、大隈重信、伊藤博文、頭山満、犬養毅などに会っていたとのことです(海野弘『陰謀と幻想の大アジア』平凡社)。

司馬 遼太郎との対談で、井筒は、大川周明とのつきあいについても語っています。

『オランダから『イスラミカ』という大叢書・・と手に入る限りの文献を全部集めて、それをものすごいお金で買ったんです。』

東京裁判に出廷した唯一の民間人被告であった大川周明は精神障害と診断され、入院中に以前よりの念願であったコーラン全文の翻訳を完成させたと言われています。

一方の井筒はアラビア語を習い始めて一ヶ月でコーランを読破したといいます。

そして彼もまた1958年にコーランの邦訳を完成させています。

戦前の日本がイスラムの世界と近い関係にあったのは、軍部の思惑と無縁ではありません。

しかし井筒俊彦、大川周明などイスラムの魅力に魅せられた思想家、研究者たちが果たした役割も非常に大きなものであったように思えます。

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2008年5月12日 (月)

メドゥーサ(その10)

原油、資源(石炭、非鉄、鉄鉱石)、穀物の価格の高騰は、マネーがこれらの『モノ』に行き場を求めた結果なのでしょうか。

すなわち投機なのでしょうか。

それともファンダメンタルな市場の変化を反映したものなのでしょうか。

ウォールストリート・ジャーナル紙が5月2日-6日にかけて55人のエコノミスト(主として金融界、一部は学界。全員の固有名詞は『こちら→「wsjecon0508.xls」をダウンロード 』をどうぞ)にアンケート調査を実施したところ、

エネルギー価格の高騰については、51%のエコノミストが、中国・インドの需要拡大が原因であると答え、15%が供給サイドの問題であると考えているとのこと。

これに対して投機が主因と考えているエコノミストは全体の11%に過ぎませんでした。

同じく、穀物価格の高騰について、41%のエコノミストが、中国・インドの需要拡大が主要因であると考え、20%が供給サイドに原因があると回答。 

穀物の高騰についても、投機が主因と考えているエコノミストは全体の11%でした。

(詳しくは『こちら』のウォールストリート・ジャーナル紙の記事をご覧下さい。)

投機ではなくファンダメンタルな市場の変化を反映したものだとすれば、メドゥーサ(MEDUSA;マレーシア、エジプト、ドバイ、サウジ)やブラジル、ロシア、カナダ、オーストラリアの勢いはこれから先も続くことになります。

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2008年5月11日 (日)

メドゥーサ(その9)

サブプライムの問題が大きく騒がれるようになったのは、2007年6月22日(金)。

ベアスターンズが、傘下の2つのヘッジファンドのうちの一つを救済する目的で、32億ドル(約4000億円)の拠出を発表したのが発端でした。

(もちろんそれ以前からサブプライムの問題は指摘されていましたが、大きな具体的動きはこの辺からでしょう。詳しくは2007年6月26日付けの私のブログをご覧下さい。)

さてこの時のダウ平均株価13,360ドルに比し、現在の米国株価は、12,745ドル。

95%のレベルです。

月並みな議論ですが、日経平均は同じ時2007年6月22日の

18,188円 (懐かしいですね。1万8千円台でした!)に比し、

現在は、13,655円 (75%のレベルです。)

この辺については、2008年4月17日のブログでも書きましたが、

アメリカは、財政的にも国民一人当たり4万円に上る、総額  1,170億ドルの戻し税還付を行うとか、金融的にも幾度となく利下げを実行してきたのに比し、

日本政府は何もしてこなかった

といった事情が大きく左右しているといえましょう。

そしてもう一つの側面。

メドューサと題してこれまで議論してきている『原油、資源(石炭、非鉄、鉄鉱石)、穀物の価格の高騰』といった切り口で見てみますと

日本の原油自給率0.4%。

天然ガス、水力発電、太陽光発電などを含めたエネルギー全体としての自給率でも、日本は 9%。

これに対して、米国は85%。

食料自給率は日本が39%。

一方、米国は世界最大の穀物輸出国です。(ちなみに英国の食料自給率は70%、独80%、フランス 120%)。

ギリシャ神話で、目を合わせると見たものは全て石にしてしまったと言われるメドューサ。

『もっとも無防備に目を合わせてしまっているのが、日本』

ということなのでしょうか。

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2008年5月 9日 (金)

メドゥーサ(その8)

世界経済を支配してきたゲームのルールが変わるかもしれない。

そのことを頭の中に入れておくことが株式投資に際しても重要になってきます。

例えば日本の粗鋼生産量。

過去最高の粗鋼生産量は(これまでは)昭和48年度に記録した1億2,002万トンでした。

それが昨年度(平成19年度)は、なんと34年ぶりに、上記の記録を破り、生産量1億2,152万トンを達成したのです。

その結果、例えば新日本製鐵の平成20年3月期売上は4.8兆円で、これは当社設立以来、最高の売上高になりました。

そればかりではありません。新日鐵の今期(平成21年3月期)売上予想は、昨年度を更に12%も上回る5.4兆円です。

ところが株価の方は、過去2年間の動きをグラフにすると以下のようになります。

Photo

『原燃料価格は下期以降足下にかけて、・・急激かつ大幅に上昇し、・・原料炭のスポット価格が高騰する等、想定を大きく上回るコストアップとなりました。』

これは今年3月6日に新日鐵が営業利益見通しを下方修正(5,800億円→5,450億円)した時のプレス発表文です。

原油、資源(石炭、非鉄、鉄鉱石)、穀物の価格の高騰。

このことが投資先の企業業績にどう影響するのか。

投資家の方々はこの点を見極めることが必要です。

また経営者の方々にとっては、こうした環境下で如何に利益を上げていくかの経営手腕が問われます。

新しいゲームのルールの下では、これまでの勝者が引き続き勝者であり続けることは約束されていません。

過去の成功体験に捉われずに柔軟な頭を持つことが必要です。

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2008年5月 7日 (水)

メドゥーサ(その7)

原油価格が高騰し、石炭、非鉄(銅、鉛、亜鉛など)、鉄鉱石などの資源価格全般や穀物の価格までが高騰を続けると、世界各国においてインフレが問題となってきます。

例えば新興国として脚光を浴びるベトナムのインフレ率はどのくらいか、皆さん見当がつくでしょうか?

JETROによると、2007年12月のベトナムの消費者物価上昇率は前年同月比12.6%の上昇(詳しくは『こちら』)。

先月大学時代のゼミの先輩が主催しているEarly Bird Seminar で榊原英資さんの講演を聞きましたが、席上、榊原さんはベトナムは足元20%くらいのインフレかもしれないと話していました。

因みにその時の榊原さんのスピーチでも各国のインフレについて話が及び、次のように話されていました。

CPI

米国 4.0

欧州 3.5

中国 8.3

インド 7.0 (WPI)

ベトナム 20.0

5月5日バーゼルで行われた国際決済銀行(BIS)本部での主要国中央銀行総裁会議でも、『世界的なインフレ加速を警戒すべきだとの認識で一致した』(5月6日付け日本経済新聞5面)とのこと。

日本の3月の消費者物価上昇率はまだ1.2%(前年同月比)ですが、これでも10年ぶりに高い水準とのこと。

世界の富が、MEDUSA諸国や、ブラジル、カナダ、オーストラリア、ロシアといった、原油・資源・穀物を産出する国々に移転していっていることの歪みが、こういった数値に現れてきていると見ることも出来そうです。

かつてゼウスの娘アテナの怒りを買い、その美しい髪の毛を全て蛇に変えられてしまったというメドゥーサ。

目を合わせると見たものは全て石にしてしまうという魔力を持ったと言います。

現代の社会で世界の富を吸い寄せようとしているMEDUSAの諸国は、ギリシャ神話と同じように他国を石に変えてしまうような魔力を持つのでしょうか・・。

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2008年5月 6日 (火)

メドゥーサ(その6)

原油価格が120ドルを突破したということで、大きなニュースになっています。

さて、ここでクイズです。

まだ日本が江戸幕府の時代。

1864年の世界の原油価格は幾らだったでしょうか。

インフレを勘案して、2006年ベースのドル価格でバーレル当り幾らだったかをお答えください。

答えは、104ドルです。

原油価格を時間軸で見る時、名目価格だけでなく実質価格で見ることも重要です。

このことについては、2006年5月30日付けの私のブログでも書きましたので、そちらも参考にしてみて下さい。

原油価格のトレンドを捉える時に参考になるのが、オイルメジャーの一つであるBP (British Petroleum) のホームページです。

こちらから Statistical Review of World Energy 2007 というページに入ることが出来ます。

ここは原油に関する統計の宝庫。

原油価格推移もこの中で見つけることが出来ます。

このBPの統計データを使って原油価格推移をグラフ化してみると下記のようになります。

Bp_oil_data_13258_image001_3

縦軸は原油価格でバーレル当りのドル価格。

横軸は年を現します。

一番左のスタート時点が1861年。

一番右が2006年です。

マゼンダ色が、その年々の名目価格の原油価格(ドル)。

黄色が2006年価格で現した実質価格の原油価格です。

黄色で現される実質価格が最近時のほかに、2度ほど大きくなっています。

最初が冒頭述べた1864年の104ドル。

2度目が1980年です。

(注:BNPパリバのデータ数値との若干の差異は原油価格としてWTIを取るかBrentを取るか、あるいはその年の平均値を取るか高値を取るかなどの違いによるものと思われます。)

もう少し詳しくデータを見たいという方は下記のエクセル形式の表でご覧下さい。

「bp_oil_data_excel.xls」をダウンロード

現在の120ドルは確かに高値ですが、実質価格ベースでは、原油価格はこれまでにも時折高騰してきたことが分かります。

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2008年5月 5日 (月)

メドゥーサ(その5)

今日は立夏でした。

さて三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストによりますと、

20世紀にはハイテク製品が希少価値で資源は一般商品だったが、21世紀には逆に資源が希少価値でハイテクはコモディティになってしまう

とのことです。

以下、水野さんの発言をまとめた『嶌信彦のコラム(毎日JP)』より抜粋してみます(青字部分)。

水野氏によると、95年からの10年余に世界の金融資産が90兆ドル増え、150兆ドルとなり、同じ期間に20兆ドル増えた実物資産の3倍に達したという。

通貨は物と物との交換をスムーズに行なう媒介手段として工夫されたものだから、本来なら実物資産よりやや多目の量でいいのだが、株式で企業買収が可能になるなど、ここ10年余のビッグバンによる金融の規制緩和で、マネーの流通量が一挙に増大してしまったのだ。

この通貨が株や債券、為替、資源、穀物などへ投機的に投資されるため、それらの価格が上昇するのだ。

さらにBRICSを中心とする新興国の人口28億人が先進国経済を営む10億人の中に入ってきたこともその原因となっている。

少ない人口なら先進国システムの中に溶け込ませることができるが、人口が多すぎると必ず価格革命を起こすというのだ。

過去においては、15~16世紀に先進国だったイタリア、ギリシャの地中海経済3000万人にイギリス、フランス、オランダ、ドイツ、東欧などの5700万人の遅れた地域が参入、

さらに大航海時代でヨーロッパが金や銀を大量に持ち込んだため、

穀物価格などが6~8倍に高騰したという。

この間にイタリアの土地バブルやオランダのチューリップバブルが発生している。

現代の28億人は人口爆発を抱え、経済成長のために石油や石炭、鉄鉱石などを大量に必要とするので、穀物、資源の価格が数倍に高騰するわけだ。

さてMEDUSAと称される国々が脚光を浴びるようになったのは、原油価格高騰(下図;WTIベース原油価格推移)が背景にあります。

800pxoil_prices_medium_term_2

しかしこの原油価格の高騰が原油だけでなく石炭、非鉄(銅、鉛、亜鉛など)、鉄鉱石などの資源価格全般や穀物の価格にまで及ぶものであり、しかも構造的に高騰する傾向にあるのだとしたら・・。

水野さんの言うように資源は一般的に言って希少価値となり、一方、ハイテクはコモディティ化してしまうのだとしたら・・。

ハイテク製品を生み出すのを得意としてきた日本にとっては厳しい時代を迎えることを意味しそうです。

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2008年5月 4日 (日)

朗読ミュージカル

先日、高校時代のクラスメートたちと共に、朗読ミュージカルを観に行きました。

4月21日の日経新聞『文化』面にも大きく取り上げられていた山崎陽子さん(平成13年度文化庁芸術大賞受賞)の脚本によるもので、『いのち愛づる姫』ほか3作が演じられました。

私は特に老夫婦とエレベーターガールの心の触れ合いを描いた『おぼろ月夜』という作品が好きでした。

一台のピアノとほのかな照明だけの舞台。

台本を手に一人(ないし二人)の演者が歌い、語るのが朗読ミュージカルです。

私にとっては初めて目にする、不思議な世界でした。

なおこの朗読ミュージカルは、三越劇場で上演されたものでしたが、東京に長い間住んでいて、三越劇場に入ったのも私にとってはこれが初めてでした。

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2008年5月 3日 (土)

メドゥーサ(その4)

メドゥーサ(MEDUSA)と称される国々の間では、高騰する原油価格で稼いだ外貨の一部を国営投資ファンド(Soverign Wealth Funds) の形で運用しているところも少なくありません。

国営投資ファンド(Soverign Wealth Funds)で世界最大のものは、アブダビ投資庁(ADIA)。

運用資産は8,750億ドル(87.5兆円)。

1977年の設立なので既に30年以上の歴史を有しています。

シティグループ(75億ドル)、半導体の米AMD社(6億ドル)などに投資をして話題を呼びました。

ところで、アブダビ投資庁(ADIA)を持つアブダビ首長国は、ドバイ首長国などと共に、アラブ首長国連邦(UAE)を形成しています。

UAEが産出する原油の9割はアブダビ首長国からのもので、リッチなアブダビは、石油を保有しない(ドバイなど他の)首長国を財政的に援助し、ドバイなど他の首長国はアブダビのオイルマネーに依存してきました。

もっとも、このアブダビへの経済依存から脱却しようとしたことが、ドバイの発展の原点であるとも言われています(福田一郎『ドバイになぜお金持ちが集まるのか』(青春新書))。

ドバイ首長国が持つファンドは、ドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)。

ソニー元会長の出井氏がアドバイザーを務め、またソニー株への投資(3%程度との一部報道)などでも知られています。

MEDUSAの国々のみならず、シンガポール、ノルウェー、中国なども国営投資ファンドを立ち上げていますが、

これら国営投資ファンドの全体の残高は年率24%で増大しており、2015年(7年後)には12兆ドル(1200兆円)に達すると見込まれています。

2006年のアメリカ合衆国のGDPが13兆ドルですので、これにほぼ等しい金額です。

民間のファンド、カーライル(330億ドル)やKKR(310億ドル)が360~380個集まったような大きさです。

私は外資系投資銀行に勤めていた時、日本企業の経営者の方たちと共に、欧米や香港などに出張し、企業のIR(Investor Relations)活動のお手伝いをしました。

これからの日本企業のIR活動は欧米の機関投資家を回るよりも、MEDUSA諸国を回ることが中心になってくるかもしれません。

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2008年5月 1日 (木)

クローズアップ現代

私が代表(取締役)を務めるインフィニティ㈱

このインフィニティが出資している先であり、私自身も取締役を務める会社に、Ken Okuyama Design という会社があります。

世界的なカーデザイナーのKen Okuyama 氏がスタートさせた会社で、本社は山形県にあり、ミラノ、ロスにもデザイン・スタジオの拠点を持つ会社。

すなわち東京を介することなく、山形、岩手(製造を行うMODI社)が直接、ミラノ、ロスと繋がり、世界を相手にビジネスを展開する形になっています。

今夜のNHK『クローズアップ現代』はそんな奥山さんの姿を追いながら、日本の中小企業の戦略を探るというもの。

以下はNHKのホーム・ページからの抜粋です。

5月1日(木)放送予定
日本発のブランド戦略
~スポーツカー誕生~


この春、ジュネーブの国際モーターショーに東北の小さな工場が試作した超軽量のスポーツカーが出展された。

開発を指揮したのは、ポルシェやフェラーリのデザイナーとして世界的に知られる奥山清行氏。

山形に帰郷後、地方から世界ブランドを生み出そうと動き出している。

地方の地場産業には高い技術があり、その技を結集させれば必ず世界に通用すると考える奥山さん。

キーワードは「東京を経由せず直接世界とつながろう」。

高い技術に奥山さんのデザイン力を加え、感性に訴える商品を開発して世界の檜舞台で勝負する。

奥山氏は「山形カロッツェリア研究会」を組織、地場産業の製品を直接世界の見本市で売り込むシステムを構築した。

今回は岩手県一関の工場と組んで、ボディにカーボンとアルミを使用し一切塗装を施さない、素材むき出しのスポーツカーを開発、話題を集めた。

東北で始まった地場産業の新たな動きを追いながら、日本の中小企業には何が足りないのか、どんな戦略が必要なのかを探っていく。
(NO.2575)

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