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2008年10月26日 (日)

『水俣から、未来へ』 

熊本日日新聞社編  『水俣から、未来へ』 (岩波書店)。

本屋さんで目に留まり思わず買ってしまいました(2,520円とチョッと高めの定価なので少し迷いましたが・・)。

私は1992年から5年間、日本興業銀行(本店営業第3部課長)で水俣病の原因企業であるチッソ㈱を担当していました。

当時の興銀では新任の課長が着任し引継ぎなどが一通り終わった頃合いを見計らってチッソの人がレクチャーに来てくれました。3~4年の人事異動で替わってしまう銀行の課長に比べてチッソの幹部の方たちは長い期間担当していますのでいろいろな問題を熟知しているのです。

『水俣病認定の問題は政治問題化してしまい、政治的に新規の患者を掘り起こそうといった動きが広まってしまったのです。』

『水俣の近くでゴルフをしているとキャディーさんが、私もそろそろ疲れたから仕事を辞めて水俣病にでもなろうかしら、といった話をしているのが聞こえてきます。』

もちろん我々銀行員は馬鹿ではありませんので、こういったチッソの話を全て鵜呑みにする訳にはいきません。

私は水俣病と題する本や雑誌、新聞を片っ端から読み、役所の方たちとも意見交換をし、政治家の方たちの訪問も受けました。

当時の興銀営業第3部(第3班)では熊本日日新聞と西日本新聞を定期購読していて私は毎日両紙を読んでいました。

また興銀はチッソに対して金融支援をしていましたので、当然のこととしてチッソからの接待の誘いは全てお断りし、逆にチッソが全国に持っていたゴルフ会員権の一覧表を求めたり、これらの売却を促したりと、私はかなり厳しくチッソに接しました。

『今度の課長は厳しくて扱いづらい』

チッソの上層部から興銀の部長にこのようなクレームがなされた―。そういった情報も伝わってきました。

自分としては精一杯努力したつもりなのですが、それでもいまこうやって上記の本を読んでみますと、やはり私は当時偏った情報しか得ていなかったのだと悔やまれます。

いったい私は何人の患者の方たちの話を直接聞いたのでしょうか。

ゼロです。

この本の編者である熊本日日新聞社の山口和也さんは次のように書いています。

『水俣病を発生させ、被害を拡大させたことは悲しむべきことですが、人類がそこからいつまでも教訓を得ないなら、もっと悲しむべき事態と思います。』

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コメント

岩崎先生、こんばんわ。

 「猫おどり」のような、奇妙な病気になった我が子に栄養をつけさせようとして、恐ろしい水銀が含まれているとは露とも知らずに、水俣湾で獲れた魚貝をせっせと食べさせた、親の気持ちを思うと、とてもかわいそうに思います。
 水俣病の教訓が生かされず、今も食品に害のある薬物が混入されたり、あるいは、賞味期限切れの材料や原産地の偽装など、ごく身近な生活の近辺で、儲けるためには何でもやるという、企業というくくりに縛られた人間の集団心理の恐ろしさを感じます。
 そういえば、ラルフ・ネーダーが、『どんなスピードでも自動車は危険だ:アメリカの自動車に仕組まれた危険』の本で某巨大自動車会社を告発し、ネーダーの私生活の弱みを握ろうと、若い美女にカネを与えてネーダーを誘惑させようとしたその会社が、今のような状況になろうとは、40年前には誰も想像しなかったでしょうね。

投稿: まさくん | 2008年10月26日 (日) 18時49分

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