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2009年8月29日 (土)

トヨタの借入金(3)

トヨタの借入金については、これまで2度にわたって書いてきました。

第1回は、6月12日 『借入金を10兆円も抱えている会社』 (トヨタの借入金 その1)

第2回は、6月16日 『リグリー球場』 (トヨタの借入金 その2)

少し時間が空きましたが、今日が第3回目です。

トヨタの連結ベースの借金はいつの間にか膨れ上がっていました。

  (トヨタ:連結ベース『借入金残高推移』)

Toyota_3

7年前は5兆7000億円だった借入金が、今ではその2倍以上、12兆6000億円にも達しています。

売上高に対する借入金の比率(借入金を売上高で割ったもの)で見ても、7年前は0.38だったのですが、今では0.61という高水準にあります。

Toyota2_2

同業他社と比べても、トヨタの借金の多さは群を抜きます。

  (各社:売上高に対する借入金の比率)

Toyota3_3 

2009年3月期はリーマン・ショックが起きて異常な期でした。そのためこの期だけで比較するのは片手落ちでしょう。

念のために、その前年の2008年3月期の数字も拾ってます。

Toyota41

どちらの期の数字もトヨタは他社に比べて借金依存体質にあることを示しています。

この状況下で、もし仮に世界的な金融危機が再燃したらどうなるのでしょうか。

マネーの流れが凍結し、トヨタとしても借金の借り換えが出来なくなったら、いったいトヨタはどうなってしまうのでしょうか。

金融事業は自動車を売る上で必要な部分(自動車ローン、自動車リース)にとどめるべきです。

それ以外は銀行や証券会社に任せた方がいいのです。

本業に専念しないことには、トヨタはGMの二の舞を踏むことになりかねません。

このことについては、GMとGEの例を参考にしながら、次回にもう少し詳しく見てみることにしましょう。

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2009年8月27日 (木)

Law Author

エドワード・ケネディ上院議員が亡くなられたので、ABCやCNNなどのアメリカのテレビ局は彼の特集番組を一斉に流していました。

テレビ局のインタビューアーが彼にマイクを向けているシーン。

「あなたは太りすぎているし、顔に出来物もできている。ゆっくりと老後を楽しむ経済的余裕もあるのに、なぜまた立候補するのですか」

アメリカのマスコミは随分直截的で失礼なことを聞くものだ・・と少々驚きしました。

エドワード・ケネディというと、Chappaquiddick事件でネガティブなイメージが付きまといますが、立法の分野では大活躍した人でした。

ウォール・ストリート・ジャナール紙の一文です(↓)。

In nearly five decades in the Senate, Mr. Kennedy fathered legislation that affected millions, tackling, among other things, education in the 1960s, poverty in the 1970s, disability in the 1980s and education in the 1990s.

彼は47年間の上院議員在職中に2500以上の法案を起草した(Law Author of 2500 +)とのこと。

1年に53法案。1週間で1法案以上を作っていたことになります。

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2009年8月23日 (日)

コールド・スティール

『JPモルガンのティエリー・ダルジェン(マネージング・ダイレクター)はルクセンブルグ政府にとって、もうひとつ非常に重要な要件があることが分かっていた―

あまりに重要なので、シュミット事務次官(ルクセンブルグ政府経済通商省)がティエリーに初めてその話をした際、

シュミットは彼を自分の部屋に招き入れ、ドアの鍵をかけ、電話器のプラグを抜いたほどだった。そしてささやいたのだ。

「我々はアルセロールがルクセンブルグに本拠を置き続けることを強く望んでいる。」

ティエリーは、シュミットのこの一連の行動を “どんな犠牲を払っても(at any cost)” との意だと理解した。』

* * *

                      Lakshmi_mittal

これは、世界最大の鉄鋼会社ミッタルによる2位アルセロールの買収劇の内幕を綴った『コールド・スティール』という本の一節です。 

ルクセンブルグ政府が出てくるのは、政府がアルセロールの株式 5.8% を持つ筆頭株主であったからです。

JPモルガンはルクセンブルグ政府のアドバイザー。

(【注】アルセロールは2002年にAceralia(スペイン)、Usinor(仏)、Arbed(ルクセンブルグ)が合併して出来た鉄鋼メーカー)。

ミッタルの方は、今年59歳となったインドのラクシュミー・ミッタル氏が実質一代で築きあげた会社。

1975年、彼は25歳の時にインドネシアのEast Javaで電気炉形式のミニ・ミルを設立し、鉄鋼ビジネスの世界に足を踏み入れます。以降、主として買収によって企業規模を拡大。

2006年にアルセロールを買収する以前の段階で既に世界1位の粗鋼生産量を誇る存在になっていました。

* * *

企業買収の内幕を綴った本としては、『Barbarians at the Gate』(1988年のKKRによるRJR Nabisco買収を描写)という本が有名です。

私はその昔この本を読み、投資銀行という世界に興味を持つようになりました。

今回読んだ『コールド・スティール』は、『Barbarians・・』に勝るとも劣らない面白さ。

M&Aに従事している投資銀行関係者、法律や会計の関係の方々、そして何よりも鉄鋼業界の方々にお薦めです。(恐らく新日鐵の経営企画部などでは既に皆さん読んでおられるのでしょうが・・)。

残念なのは、ネットで翻訳版を探しましたが、いまだ翻訳本が出ていないと思われること(『Barbarians・・』は直ぐ訳本『野蛮な来訪者』が出たのですが・・)。

なお上記クリックではハードカバー本の頁に繋がりますが、ペーパーバック版も出ており、こちらの方が安価。(本の内容説明はハードカバー本の紹介頁に出ています。)

* * *

それにしても世界の鉄鋼メーカーの粗鋼生産量は下記の通り。

1位 アルセロール・ミッタル 102(百万トン)

2位 新日鐵           38(百万トン)

3位 宝鋼集団          35(百万トン)

4位 河北鉄鋼集団       33(百万トン)

5位 JFE             32(百万トン)

   出所:World Steel Association 2009 (2008年の数字)

先日のブログ記事『世界で進むM&A』でも書きましたが、好むと好まざるとに係わらず、世界的規模での合従連衡はどんどん進んでいきます。

* * *

もう一つ見逃せない点。

それは新日鐵が官営八幡製鉄所の設立、戦前の製鐵大合同、昭和45年の八幡と富士の合併といった、連綿とした歴史を辿って、今の地位に登りつめたの対して、

ミッタルは、年も私とそれほど違わないインドの実業家が、鉄スクラップを原料に電気炉で鉄鋼を生産することから事業を始めて一代で世界に君臨する大企業を作り上げてしまったという点。

そこでは、まったく違う時間軸が支配しているように感じます。

* * *

『ある日、突然ミッタルがアプローチしてきたら・・?』

そういった局面に備えるためにも、『コールド・スティール』のような本を読んでおくと参考になると思います。

蛇足ですが、この本には、かつて私が投資銀行にいた時に一緒に仕事をしていた人たちの名前が固有名詞で出てきます。

「この辺の発言やコメントは、如何にも彼らしい・・」そんな風に感じながら読み進みました。

The Economist 誌が書評で、

『この本はThriller(スリラー)のようだ(スリル満点でわくわくする)』

と書いていましたが、まさに言い得て妙、ぴったり当てはまる書評です。

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2009年8月15日 (土)

特別会計

2003年2月25日の衆議院財政金融委員会で当時の塩川正十郎財務大臣は次のように発言し話題を呼びました。

「母屋では、おかゆを食って辛抱しようとけちけち節約しておるのに、離れ座敷で子供がすき焼き食っておる」

この発言の趣旨は、一般会計(母屋)では予算の節約に努力しているのに、特別会計(離れ座敷)では無駄があるというものです。

長い間、私たちは日本の国家予算は約85兆円前後(平成21年度当初予算89兆円)と理解してきました。しかしこれは一般会計。

このほかに21の特別会計があり、この歳出総額は355兆円(ただし各特別会計間の重複分を控除して見るのが全体観を知る上では適切。控除した後の歳出純計額は169兆円)。

詳しくは財務省が『平成21年版 特別会計のはなし』としてまとめていますので、是非ご覧になってみて下さい。(193頁に及ぶものですが、カラーの図表満載で分かりやすくまとまっています。)

8月9日、細川元首相は、朝日新聞のインタビュー(詳しくは『こちら』)で、「政権交代は断絶が目的」とした上で、次のように発言しています。

「民主党のマニフェストを巡り、財源論の議論が出ていますね。一般会計と特別会計の合計から不要なものを削って予算を組み直すというのも、断絶です。手間は大変ですが、意味のあることだと思います」

(注:民主党の政権政策(Manifesto)では国の総予算を207兆円と組み改めた上で無駄を廃するとしています)

特別会計に斬りこんだ書物として一読の価値があるのが、石井紘基著『日本が自滅する日』。この本の序章から一部抜粋します。

「この国の「経済」は端的にいえば、国と地方と合わせて国民の税金と貯金、年金、保険積立金など350兆円を上から流し込んで消費しているだけのものだ。つまり、市場特有の拡大再生産機能によって生み出される果実はないに近い。経済的価値を創造する“市場”が死亡状態となり、回復不能の、借金が借金を呼ぶ財政破綻構造に陥っている」

                                 Isiikoki

石井氏がこの本を書いたのは2002年1月。彼は現職の国会議員でしたが、この本が出版された9ヵ月後、刺殺されました。享年61歳。(日本国憲法下において他殺された現職国会議員は浅沼稲次郎、山村新治郎に続いて三人目)

『責任ある政治、無駄遣いの撲滅、リアルな政策と責任力』を謳う自民党(政策パンフレット日本を守るための約束。』)が政権を維持するにせよ、

あるいは民主党が政権交代を実現するにせよ、

特別会計の無駄を廃することは必須になってきています。

それが我々世代の、次の世代に対する「責任」です。

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2009年8月11日 (火)

火星儀

       Photo_2

この火星儀は惑星科学者の松井孝典さんから頂いたものですが、NASA火星探査機Mars Global Surveyorの高度計データを元に作成されたとのことです。

青色部分が低地、赤色部分が高地を示し、火星最大の火山オリンポス山は高さ26キロメートル(エベレストの3倍)にも達するとのこと。

地球の半分くらいの直径の火星に、こんなに高い山があるとは知りませんでした。

松井さんから頂いた火星儀に、「皆様へ」と題する松井さんのレターが添えられていました。一部抜粋します。

『「水の惑星」といえば誰もが地球を思い浮かべるかもしれませんが、火星もまた、その進化の初期段階までは地球と同じような水の惑星であったと考えられています。

そこには原始生命さえも存在していた可能性があります。

その後、火星はその小ささ故、水惑星の姿を現在まで保つことができませんでした。

しかし、だからこそ火星には、地球上では失われた生命の原点の記録が、残されている可能性があります。』

火星儀を見ているだけで未知の世界に対するロマンが広がっていきます。

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2009年8月 7日 (金)

オバマ政権の経済刺激策としての電池開発に対する補助金

オバマ政権のグリーン・ニューディールのひとつ。

Advanced battery and component (アドバンスト電池およびその構成部材)の製造者に対する総額24億ドル(約2400億円)の補助金枠。

これに対して、合計257社が米国で補助金を申請しました。

(各社の申請額を全て足し合わせると24億ドルの枠の4倍、合計96億ドルになりました)。

これらの申請をエネルギー省(Department of Energy)で審査した結果、48社が補助金を得られることになりました。

48社のうち46社までが民間ベースでは未だベンチャーキャピタルから出資を得られていない会社。

民間ベースでベンチャーキャピタルから出資を得ていて、更にエネルギー省としても補助金を与えるに値すると判断された会社(その分将来が有望と考えられている?)は、次の2社。(2社のみです)

①A123Systems Inc. 今回与えられた政府の補助金額は$249.1百万(約249億円)

②EnerG2 Inc. 既に民間のOVP Venture PartnersやFireLake Capital Managementから資金提供を受けている会社。

全体観としては、アジアに生産拠点を持つ会社よりも米国に製造拠点を有している(或いは米国での生産を考慮中)という会社が優先的に選ばれた傾向にあるようです。

詳細は『こちら』の記事をどうぞ。

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2009年8月 1日 (土)

老いてゆくアジア

先日、『老いてゆくアジア』の著者、大泉啓一郎さんのお話を聞く機会がありました。

本書は、アジア経済研究所の第29回「発展途上国研究奨励賞」を受賞した著作。

一般的には、アジアは活力に溢れ、繁栄が続くと思われがちですが、「一人の女性が一生の間に何人子供を産むか」という「合計特殊出生率」を調べてみると(データは2007年)、

 日本 1.3

 韓国 1.3

 台湾 1.1

 シンガポール 1.3

 香港 1.0

 タイ 1.9

 中国 1.7

といった具合で、少子化の問題はアジア共通です。

高齢化も急速に進んでおり、「高齢化社会」(65歳以上の人口が全体の7%以上)に移行する(した)年は

 日本 1970年

 韓国 1999年

 香港 1983年

 シンガポール 1999年

 中国 2002年

「高齢化社会」(65歳以上の人口が7%以上)から「高齢社会」(65歳以上が14%以上)に移行する(した)年は

 日本 1994年

 韓国 2017年

 香港 2013年

 シンガポール 2015年

 中国 2025年~27年

7%→14%になるのに要する(した)年数は、

 日本 24年

 韓国 18年

 香港 30年

 シンガポール 16年

 中国 23~25年

各国とも高齢化の問題は特に農村部に顕著で、人口が移動(農村→都市)するタイミングも20~24歳でピークに達し、年をとるにつれ、高齢者は農村に定着する傾向にあるとのこと。

『外国の研究者が渋谷の街角に立って観察しても、日本の高齢化問題は分からない。同様に我々が上海を見ても中国の高齢化問題は分からない。アジア各国の農村を歩いてみないと・・』

大泉さんのこの言葉には説得力がありました。 

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