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2010年9月30日 (木)

年金について(5)

今回は少し脱線します。

外資系の投資銀行に勤めるAさんから

「われわれのようなケースはどうなんですか」

と質問を受けました。

「老後に1億円必要」 、それに対応できる「年金の価値は9千万円」との先日の記事を読み、

自分の年金は本当に9千万円にもなるのか、

不安になったといいます。

たしかに外資に勤める人の年金は意外と少ないケースが多いようです。

厚生労働省のモデルケースはサラリーマンの夫と専業主婦で合計月23万3000円の年金が支払われることになっていますが、これは「40年間勤めた場合」です。

外資の投資銀行のケースでは、たとえばアメリカの大学院を出て28歳から勤め始め、48歳では辞めてしまうといった人も少なくありません。

これでは20年間の勤務ですから、足りないところ(年金は最低25年間保険料を払わないともらえません)は、国民年金に加入して保険料を払うことがまず必要になります。

たとえ不足分を国民年金保険料で支払ったとしてもこれは「1階部分」です。

すなわち厚生労働省のモデルケースで40年間払うことになる「2階部分の保険料」は、外資の「上の例」では20年間しか支払われません。このため、それに見合う2階部分の年金が少なくなるのです。

もちろんその代わり外資に勤めている間は年収が高いといった側面はあります。

しかし上記の「価値9千万円の年金」は25年間にわたって年360万円をもらうとの前提で試算されたものであり、したがって、これにはほとんど税金はかかりません。

これに対して外資で9千万円を残そうとすれば、所得税率(地方税を含む)50%として、9千万円の2倍の総計1億8000万円分の給与・賞与を稼ぎ出さなければなりません。

* * * * *

外資の投資銀行に勤める人たちの「その後(投資銀行を勤めた後)」のキャリアはさまざまです。

メリルの網屋さんやモルガンの中西さんのように国会議員になった人もいれば、かつて勤めていた日本の銀行に戻った人もいます。

そのほかにも中堅の証券会社に入った人、自分で会社を興した人、ネット系のスタート・アップ企業に入り、IPOを目指している人、特に仕事を持たずクルーザーであちこち出掛けている人などなど様々ですが、

多くの場合、年金のことは頭の片隅に入れつつも、まだまだ先に広がる自分のキャリアの展開を考えている人が多いように思えます。

たまたまかつて一緒に働いていたBさんと会ったら、

「いまは毎日ジムで体を動かしています。そのうち何かしないといけないと思っていますが・・」

と話していました。

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2010年9月29日 (水)

年金について(4)

昨日午後の東京の景色です(↓)。

      2010092815440000

さて、少し前の新聞を見ていたら、

「人生を1日に例えると、50代は午後2時ごろ」

との記事が目にとまりました(9月25日付け、朝日新聞)。

ちょうど上の写真のような感じですね。

真昼(正午)ではない、しかし夕暮れにはほど遠い・・。

しかし50代にして精神的には守りに入ってしまう人も少なくありません。

守りに入るのは、おそらくは将来に不安があるからで、不安の要因のひとつは、分からないことが多いからなのかもしれません。

年金がいくらもらえるか、そしてそれで足りるかも実のところよく分からない・・。

* * * * * *

たとえば最近よく話題になる「空白の5年間」

これはいったいどういうことなのでしょうか。

9月21日に記したブログ記事にもありますが、現在の年金制度のもとでは、やがて

「65歳にならないと一切の年金がもらえなくなる」

すなわち 「年金がもらえるのは65歳から」

といったことになります(昭和36年4月2日以降に生れた男性は公的年金は65歳になるまで一切もらえません)。

このため企業には2013年4月1日までに「65歳までの雇用を確保すること」が義務付けられたのですが、はたしてこの実施状況が今後どうようなものになるのか、いまひとつ見えてきません。

「仮に60歳で再雇用されるにしても極端に給与を下げられてしまったらどうしよう」

「うちのような中小企業でも本当に65歳まで面倒みてもらえるのだろうか」

といった不安です。

いずれにせよ退職せざるをえなくなるかもしれない「60歳」から、年金支給開始となる「65歳」までの期間については、

「空白の5年間」と呼ばれ、

中高年の頭の片隅に占める「不安」のひとつになってきています。

もう少し詳しく説明しましょう。

空白の5年間とは、図にして示すと下記のようになります(図はクリックすると大きくなります)。

その人がいま何歳かによって次の11のパターンに分かれます。

5_2

図で年齢は来年4月1日現在の年齢です。

図はその人が60歳の時、61歳の時・・に払われる年金を示しています。

色つきのところは支払われ、白地のところは支払われません。

1階は老齢基礎年金、2階は老齢厚生年金。

たとえば来年4月1日現在57歳の人は、61歳から老齢厚生年金のみが支払われ、65歳になって漸く老齢厚生年金と老齢基礎年金の双方が支払われます。

図で明らかなように空白の5年間の影響はその人の年齢によって違います。

しかしいずれにせよ、60歳から65歳までをどう過ごすか、その人の人生を考える上で、「空白の5年間」のことを無視できなくなってきています。

そして更に大きな問題がひとつあります。

65歳まで働けば、あとは年金で何とかやっていけるかどうか、という点です。

以下は次回にします。

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2010年9月27日 (月)

年金について(3)

これまで「月23万3000円の年金」(厚生労働省発表のモデル世帯のケース。サラリーマンの夫と専業主婦がもらえる年金額)といった記述をしてきました。

しかし実際の事務手続き上は、年金は2か月分がまとめて偶数月の15日に支払われます。

この結果、年金の支払が無い月(奇数月)も出てきます。

サラリーマン時代には、毎月25日には決まって支払われていた給与が、2ヶ月に1回の年金支払に取って代わると、日々の資金計画上、若干の注意が必要になってきます。

クレジットカードで買物した代金の預金引き落としや電気代、電話代の支払などは毎月生じるからです。

「毎月分配型の投資信託にあなたの資金を投入すれば、年金の支払の無い月にも分配金が支払われます」

「当社の投資信託は隔月分配型。年金支払の無い奇数月に分配金が支払われるので老後の生活が安心出来ます」

証券会社のこうした甘い言葉に乗せられて投資信託を購入した方に是非チェックして欲しいのは、購入した投資信託の基準価額はいま幾らかということです。

100万円を投下して購入した投資信託が基準価額56万円になっていたとしたら、仮にいま投信を解約しても56万円しか戻ってきません。(さらに解約に伴う手数料を差し引かれるとすると、実際はもっと少なくなります)。

こういった事態が生ずるなら、100万円で投信を買う代わりに、銀行に100万円を預金し、投信の分配金に見合う額を自分で降ろしていった方が得です。

「しかしこの投信は銀行に勧められたのです。銀行が自分たちに入る預金を犠牲にしてまで投信を勧めるでしょうか」

こうおっしゃる方がいますが、いまの銀行は手数料収入を上げることに躍起です。

銀行はほとんど金利ゼロで日銀から資金を調達できます。

しかも銀行にとって有利な運用先はあまり無く(少なくとも銀行はそう信じているようで、集めた資金が融資の形になってなかなか民間企業に回っていきません)、

「集めた預金はとりあえず国債を買って運用している」というケースが少なくありません。

そういった銀行にとっては預金者に100万円の普通預金を預けられるより、100万円の投信を買ってもらった方が儲かるのです。

銀行に(場合によっては3%前後の)販売手数料が入ってくるからです。

もちろんこの販売手数料を支払っているのは投信を購入した人たちです。

だからこそ投信はほとんどの場合、買ったとたんに手数料分だけ損してしまうのです。

さらに毎年払う信託報酬などの手数料もバカになりません。

それでも海外の金利が高くて、しかも金利と為替の裁定が理論どおりに働いていなかった一時期は投信の基準価額が初期投資額を上回ることもありました。

しかし結局のところそんな時期は長くは続かず、多くの毎月分配型投信の基準価額が値崩れを起こしてしまいました。

この辺の事情はかつて『こちら』のブログ記事にも書きましたので、参考にしてみて下さい。

たとえば毎月分配型の投資信託として人気のあるグローバル・ソブリン・オープン(略称「グロソブ」)の基準価額(赤線)は当初10,000円のものが今や5,627円(下図)。(詳細は『こちら』を参照)。

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毎月分配型投資信託は年金の代わりにはなりません。

年金は生きている間支払われますが、基準価額が減っていく投信は

(a)いずれ分配金が支払われなくなるか

(b)分配金の減額を余儀なくされるか、

さらには(c)信託報酬手数料などの支払の重圧や運用成績の劣悪化によって存続そのものが難しくなってしまいます。

退職金を運用に回すときには、リスクとリターンを十分に吟味することが必要です。

「ミディアム・リスク、ハイリターン」とか

「ローリスク、ハイリターン」などと、

訳の分からないことを言うセールスマン(セールスパーソン)には要注意です。

リターンの高いものはリスクも高い。

この原則を忘れると、「高いリターンを求めて振興銀行に1000万円以上預金してしまう」といったような間違った行動を取ってしまいます。

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2010年9月26日 (日)

年金について(2)

質問(1)年金保険料の未納者が増えていると聞きます。年金制度はすでに破綻しているのではないですか

まず国民年金の未納者の割合を見てみましょう。

厚生労働省の発表によると納付率は60.0%(『こちら』)。

これって10人のうち6人しか払っていないってこと・・?

いえいえ違います。

第1号被保険者1985万人に対して納付者1129万人ですから、56.9%です。

56.9%がなぜ60.0%になるか・・・

これは役人が優秀なので納付率の定義を厳格に解釈していているからです。

しかしその結果として、一般の国民には何のことか分かりにくくなります(『こちら』)。

ところで、納付者1129万人の数字にもトリックがあります。

過去23ヶ月間(ほぼ2年ですね)、保険料を1銭も納めていなくとも、24ヶ月前に1か月分だけでも納めた人は納付者としてカウントされます。

つまり国民年金をきちんと納めている人の数は56.9%よりも更に少ないということになります。

もちろん以上の話は個人事業主などが加入する国民年金保険の場合です。

サラリーマンなどは厚生年金保険料として給与から天引きされて納付されますので、保険料の納付からは逃れようがありません。

すなわちこれらサラリーマンなどの部分を入れれば、保険料の未納者の全体に対する割合はぐっと減ります(『こちら』の図)。

質問(2)未納者が増えても年金制度が破綻することはないといった話も聞きますが・・?

たしかにこんなタイトルの本が出ていますね(『こちら』)。

この本の中には、

「未納者には将来年金が払われない(年金をもらうには最低でも25年間保険料を払い続ける必要があります)。

よって未納者が増えたとしても年金財政が破綻することにはつながらない」

といった記述もあります。

ただ「保険料は未納にする。その代わり将来年金はもらわなくてもいい」といった人が増えていくと、

「老後は生活保護に頼ればいい」という発想に流れがちな人が多くなり、

結局は国民負担が増えていってしまいます。

質問(3)それでは年金問題の本質は何ですか

現在の制度が、少子高齢化が急速に進む日本の現状に合わなくなってきていることです。

日本の年金制度は難しい言葉で言うと「賦課方式」という仕組みになっています。

この方式の下では、現役世代が支払っている保険料は、将来の自分たちがもらう年金のために積み立てられているのではありません。

現役世代が支払っている保険料は、いまの高齢者の「年金」の支払に使われてしまっています。

これに対して若い現役時代に払い込んだ保険料を積み立てて、老後にそのお金を受け取る仕組みを「積み立て方式」と言っています。

「積み立て方式」の方は分かりやすいと思います。

郵便局や銀行の積み立て預金のようなもので、毎月払う保険料は政府(日本年金機構)に預かって運用してもらう。

65歳になったら「自分が払い込んだ分」+「運用分」を原資として毎月の年金をもらっていく。

この制度の下では、将来自分が幾らの年金をもらうか非常に分かりやすくなりますし、

その結果、グリーンピアに自分の年金保険料が使われてしまうといった無駄も発生しにくいと思います。(シンガポールなどでは「積み立て方式」が採用されています)。

しかしながら日本の今の制度はこの「積み立て方式」ではありません。

冒頭申し上げた「賦課方式」の方です。

この制度の下では、現役世代が支払っている保険料は、いまの高齢者の「年金」の支払に使われてしまっています。

いまの現役世代が高齢者になるときは、その時の現役世代が払う保険料で高齢者への年金を支払います。

親世代が子世代の面倒になり、子世代が孫世代の面倒になるというように、後の世代に負担をどんどんバトンタッチしていく「自転車操業」方式です。

厚生労働省はこの方式を「世代間の助け合い」とか「世代間扶養」と言っています(『こちら』)。

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   (上の図は、図の上でクリックすると大きくなります)

「世代間の助け合い」というと美しいのですが、賦課方式には問題があります。

ひとつは自分が払う年金保険料と将来自分がもらう年金との関係が希薄な為、将来いくら年金がもらうのかが分かりにくいこと。

そして最大の問題は少子高齢化の下では、若い世代に過酷な負担となってしまう、すなわち世代間格差が生じてしまうことです(特に前の世代がグリーンピアなどで無駄遣いをしてしまうと、より一層将来世代の負担が大きくなります)。

鈴木亘教授の試算によると1940年生まれと2010年生まれの世代間格差は実に一人あたり5460万円から5930万円にも上るとのことです(『こちら』)。

こういった世代間格差を放置しておいて、「未納者には将来年金が払われない」とか「若い人でも年金保険料を払っておいた方が得」と説得してみても、若い世代は簡単には納得できませんし、若い世代の活力にはつながっていきません。

何らかの抜本的改革(例えば「賦課方式」から「積み立て方式」に移行するとか)が必要になっていると思います。

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2010年9月24日 (金)

年金について

実は今回のこの記事は9月19日から書いているブログ記事の続きで、4回目にあたります。

19日21日23日の記事をお読みになっていない方は、これらを読んでから、今日の記事を読んだ方が分かりやすいと思います(緑字のところをクリックしてみてください)。

さてMさんの年金、月30万円というのは実はちょっと高めです。

厚生労働省が発表しているモデル世帯のケースでは、サラリーマンの夫と専業主婦がもらえる年金は2人で月23万3000円です。

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サラリーマンではなくて個人事業主の場合は、もっとずっと少なくて月6万6000円

本屋さんを覘くと年金の本がたくさん出ていますが、多くの場合、幾らの年金がいつからもらえるかが中心になっています。

700円から1500円を投資してこれらの本を買うのも一案です(なかでも『この本』が分かりやすいと思います)。

しかしもっと簡単で確実な方法は(1)日本年金機構から送られてくる『ねんきん定期便』(上図)を見る、あるいは(2)地元の年金事務所に問い合わせてみることです。

一昔前は年金事務所は横柄で感じが悪く、質問によっては「なんでそんな質問をするんだ」と怒られることさえあったと聞きますが、いまはとても親切に教えてくれるとの評判です。

年金の本は一般的に言って分かりづらいのが難点です。

専門用語がじゃんじゃん出てくるからです。

これらの専門用語は学問的な専門用語とは違って役人だけの世界で通じる用語です。

たとえば「マクロ経済スライド」。

この妙な言葉は日本語なのか、英語なのか、一般の経済学者でも何のことか分からないと思います。

もちろん macro economic slide などと言っても外人には通じず、通訳の人はどうしているのだろうと、人ごとながら気の毒に思います。

私には厚生労働省の役人の方がわざと普通の人には分かりにくい言葉を創作して使っているだけとしか思えません(と思っていたら、私と同じ考えの人が書いた本に最近出くわしました。『こちら』です)

ただそうは言っても、日本の年金の仕組みの基本的なところは押さえておかないと、老後の生活を考える上での「一番大切な資産」のことが分からないということになってしまいます。

ということで基本は以下のようなものです。

年金は人によってもらえる年金の種類や額は違うのですが、

大きく1階部分と2階部分、そして3階部分に分かれる

ということです。

家を想像してみてください。

1階建ての人はその部分の年金しかもらえません。

冒頭の個人事業主の人がこれにあたり、最大でも月6万6000円が国民年金から支給されるだけです。

サラリーマンの夫を持つ専業主婦も同じです。

2階建ての家に住むのは、普通のサラリーマン。

1階の月6万6000円に上乗せされて、2階部分の年金がもらえます。老齢厚生年金という、役所の人が考えた複雑な名前のもので、厚生労働省のモデルケースでは月10万1000円。

冒頭の月23万3000円のモデルケースは、夫と妻の1階部分に、この2階部分を加えた数字です(66,000×2+101,000=233,000)。

サラリーマンの時に年収が高かった人はこの2階部分がもう少し大きな金額になり、逆に年収が低かった人はモデルケース以下しかもらえません。

さて3階建てとは・・?

一部の大企業などでは社員のために1階、2階の公的年金に加えて、特別な企業年金を用意しています。

たとえば経営破綻した日本航空の場合、報道によればモデルケースでは年金支給額は1階、2階の公的年金に3階の企業年金を加えて、月48万6000円。

日本航空の破綻時にはこの年金の扱いを巡ってもめていたわけです。

企業年金には退職金の一部が年金になって充当されたりするケースがあります。また公的年金(1階と2階)と違って、死ぬまで支給されるとは限らないものもあります。

いずれにせよ3階まであると、老後の生活設計はずいぶんと楽になります。

逆に1階しかないない個人事業主などの老後は結構シビアなものになります。

専業主婦は1階しかありませんが、サラリーマンの夫が先に死ねば75%の遺族厚生年金を受け取れます。

離婚した場合も、かつては2階部分は夫に残され、妻は1階部分だけでしたが、法改正によって夫が持つ2階部分を分割できるようになりました。

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2010年9月23日 (木)

彼岸

今日はお彼岸。

春と秋の彼岸になるといつも頭に浮かぶのが、

「暑さ寒さも彼岸まで」

の言葉。

昔の人はよく言ったものだと感心させられます。

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さて21日の「老後にいくら必要か」というブログ記事を読んで、Mさんが電話をかけてきました。

「たしかに1億円くらいいる、とうのは雑誌でも読んだことはある。

しかし、あーやって数字を出されると暗くなるよ。

だいたい退職金だって、せいぜい出ても 3000万円だろう。

うちの会社じゃ 2000万円ってとこだ。

いま住んでいる家のローンを払い終わって売ったとしても、せいぜい4000万円か・・・」

こう話すMさんに私は言いました。

「でもMさんは年金という資産を持っているのです」

「えっ、年金が資産・・?」

「65歳から毎月30万円の年金をもらえれば、90歳まで生きたとして、9000万円になります。

それだけの“資産”をもっているのと同じことです。

退職金や、(失礼ですが)Mさんが持っている家に比べて、ずっと価値ある“資産”です」

「しかし俺が75歳で死んでしまえば、年金という“資産”にそんな価値は無いだろう?」

「そうです。しかしその場合、Mさんが必要とする“老後の資金”はぐっと減りますよね。

だからそれでもいいわけです」

「俺が死んだら、俺の妻が困るじゃないか?」

「Mさんが死んだ後でも、奥さんが生きている間は毎月ずっと、Mがもらっていた老齢厚生年金の75%が遺族年金として支払われます」

「えっ、そうなの? しかし、年金が資産だとはね・・」

* * * * * *

年金については若い世代が高齢者世代を支える仕組みであるとして、少子高齢化が進む日本では

今後制度が破綻するとか、そういったマイナス面ばかりが強調されています。

しかし年金には優れたプラス面があります。

一言で言うと 「長生きしてしまうリスク」を軽減するということです。

「長生きするリスク」などというと怒られそうですが、

85歳、90歳になって収入があり続ける人は、一部の政治家や天下り役人くらい(彼らの世界にもだんだんと年齢制限が設けられてきています)。

ほとんどの人は収入が無いまま高齢化時代を過ごして行かざるをえないわけですから、金融(ファイナンシャル・プランニング)の観点からすれば、

「長生きするリスク」

になってしまいます。

そしてこの長生きするリスクに対して、一番心強い「武器」は、あなたが一所懸命貯めて作った預金でもなければ、住宅でもありません。

65歳の時に築20年だった家は、85歳の時には築40年になっています。(少なくとも建物には価値が無く、毎年の修繕補修費が大変になってきます)

預金だって毎月降ろして使っていけばどんどん減ります。

毎月分配型の投資信託を購入した人は、いまや元本(基準価格)がどんどん目減りしていて不安になっていると思います。(儲かっているのは販売手数料や毎年の信託報酬を得ている金融機関だけです)。

これらに比べて一番頼もしいのは、実は、頼りなさげに思えていた年金なのです。

年金については、不幸にして早く死んでしまう人が、長生きしていく人を、社会全体として支える仕組みでもあるのです。

こんな仕組みは生命保険などの保険にもありません(生命保険は死ぬことで、残された遺族が助かる仕組みです)。

ほかの金融商品でもちょっと無い仕組みです。

「長生きしてしまうリスク」・・・

このリスクには「年金」という武器で立ち向かうしかありません。

そのためには私たちは年金のことをもっと良く知る必要があります。

たとえばいったいMさんは月30万円の年金をずっともらっていけるのでしょうか。

制度は破綻しないのでしょうか。

そもそも「平均的なサラリーマン」はいったい幾らの年金がもらえるのでしょうか。

次回はこの辺を見ていきましょう。

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2010年9月22日 (水)

日経ヴェリタス・トーク(為替介入)

昨晩、日経CNBCの『日経ヴェリタス・トークという番組に出演しました。

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トッピクスは為替介入。

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再放送は今日、9月22日(水)の 18:30~、および 19:06~ です。

放送の内容は『こちら』にかなり近いものになっています。

もう少し為替について勉強してみたい方はたとえば『こちら』の本などが参考になるかもしれません。

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リスクについての読み物としては『こちら』なども面白いと思います。

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2010年9月21日 (火)

敬老の日(その2)

9月19日の続きです。

老後にいったい幾ら必要なのでしょうか。

この問題は要するに

「自分が働かなくなった(あるいは働けなくなった)後に、どの位のお金が必要か」

ということだと思います。

現在の年金制度のもとでは、やがて

「65歳にならないと一切の年金がもらえなくなる」

といったことになります(昭和36年4月2日以降に生れた男性は公的年金は65歳になるまで一切もらえません)。

このため企業には65歳までの雇用確保が義務付けられました

(2006年施行の改正高年齢者雇用安定法)。

具体的には、

「企業は2013年4月1日までに65歳までの雇用確保措置を導入せよ」

といった内容となっています。

そこで、以下では 「65歳まで働く」 との前提の下で、いったい幾らのお金が以降必要になるのかを試算してみます。

まず現実に60歳代や70歳代の人がいま幾らのお金を使っているか調べてみます。

総務省の家計調査(『こちら』)を見てみましょう。

これによると世帯主が60歳代以上の2人以上の世帯の消費支出は月27万7000円、70歳代は24万円です(いずれも世帯としての支出額で夫婦の場合、夫婦2人分です)。

このうち食費は60歳代が6万9000円、70歳代が6万2000円。

支出項目の変化で特に目立つのが交通通信費で、60歳代(3万3000円)から70歳代(2万2000円)になると34%も下落するのが特徴的です。

以上の数字は「現実に60歳代や70歳代の人がいま幾らのお金を使っているか」ですが、一般に老後に幾らのお金を「使いたい」と人々が考えているかについては、現実の数字とは少し違ってきます。

財団法人「生命保険文化センター」が行った「生活保障に関する調査」(2007年12月、『こちら』)を見てみましょう。

これによると、一般的に考えられている 「夫婦2人で老後生活を送る必要な最低日常生活費」 は、23万2000円、 「ゆとりある老後生活費」 は、38万3000円です。

* * * * * *

以上の議論をベースにここでは夫婦2人で(1)月30万円使うという「ややゆとりコース」と(2)月24万円使うという「やや窮屈コース」の2つを考えてみましょう。

はたして老後にいったい幾ら必要なのでしょうか。

問題は例えば夫が先に亡くなった場合ですが、その場合の妻(単身)の生活費を月20万円と仮定します。

また要介護となって介護付き老人ホームに入ると月27万円になる(入居一時金がゼロのところに入る)と仮定します。

(1)「ややゆとりコース」

(仮定)夫は80歳まで介護不要(以降は介護付き老人ホーム)、87歳で他界。妻は85歳まで介護不要、92歳で他界。妻は夫より3歳年下。

65歳以降に必要となる資金は:

①夫が80歳まで:30万円×12ヶ月×15年=5400万円

②夫が87歳まで:

夫の分:27万円×12ヶ月×7年=2268万円

妻の分:20万円×12ヶ月×7年=1680万円

③妻が85歳まで:20万円×12ヶ月×1年=240万円

④妻が92歳まで:27万円×12ヶ月×7年=2268万円

となります(日本は現状デフレですが、インフレ率0%で計算しています)。

よって以上①~④を合計すると1億1856万円となります。

(2)「やや窮屈コース」

「やや窮屈コース」では上記の①のところが、

24万円×12ヶ月×15年=4320万円

となり、①~④の合計は1億776万円となります。

以上いずれの場合も1億円以上の老後資金が必要ということになります。

問題はこのうち「幾らを年金でカバーすることが出来るか」 です。

次回この辺を見ていくことにしましょう。

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2010年9月20日 (月)

サプライズ介入の効果

9月15日に政府・日銀が6年半ぶりに為替市場で介入を行い、相場は1ドル83円から85円強まで2円強ほど動きました。

「今後の見通しは?」ということで、今週発売された日経ヴェリタスでは、みずほの上野さん、JPモルガンの佐々木さんなど10名にアンケート調査をしています。

このうち「年内は84円を切るような円高はもうない」と予想したのは2名(深谷氏84~90円、森田氏85~90円)。

逆に「80円割れの円高があり得る」と予想したのは、3名。

私は8月30日のテレビで 「80円割れの円高もあり得る」 と話しました(『こちら』)が、政府・日銀の介入が行われた後も、この見方を変えていません。

理由は:

1)「介入の原資は全部で30兆円強~40兆円。一方で、9月15日一日の介入額は2兆円」 と当局がすべて手の内をさらしてしまっていること

2)マスコミのインタビューに答えて、かつての財務官経験者たち(多くの場合、金融関係の機関や会社に天下り)が、

「今度の介入は上手く行った。サプライズ・アタックだ」

と 「自画自賛」 していること。

「市場に対峙するとき、恐れ(恐怖)を知り、謙虚な気持ちになる」-こう発言したのはあるヘッジファンドのヘッドです。

マーケットにいた人間であればマーケットの怖さを思う存分に味わっています。

「怖さを知り謙虚な気持ちになれるものだけが生き残る」のが市場です。

3)そもそも 「日本がデフレにある」 という問題の本質への解決策には全く手がつけられていないこと。

8月30日のブログで私は次のように書きました。

「リーマンショック後の世界的不況のなかでも、日銀のバランスシートはほとんど膨らんでいません( 『こちら』 )。

むしろ量的緩和政策を行っていた2006年までのほうがバランスシートは膨らんでいたのです( 『こちら』 )。

一方、FRBの方は、リーマンショック後、バランスシートを3倍近くにまで膨らませてきています(下記グラフ参照)。」

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先進国各国の中央銀行がどれだけバランスシートを拡大(要は政府が発行する国債や企業が発行する社債などの購入を通じて市場に資金を放出)してきたかについては、こちらのグラフの方が分かりやすいかもしれません。

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誤解しないで頂きたいのですが、日銀のバランスシートが疲弊していないということは通貨の健全性からすれば望ましいことなのです。

日銀の見方からすれば、

「欧州や米国の中央銀行はこんなに何でも買い取ってしまって通貨の健全性をどう保つのか。ドルやポンド、ユーロの信認が低下してしまって暴落したらどうするつもりなのか」

ということなのでしょう。

それだけ 「円は健全である」 ということは、

「円が他の通貨に比して強い(円高)ということであり、モノに対しても強い(デフレ)」

ということにつながっていきます。

多くの識者が指摘するように一国の中央銀行が健全であり通貨が強いということは本来望ましいことです。

しかしここになんらかのパラドックスがあるように思えてくるわけです。

9月14日アンカラ発のロイター電です(詳しくは『こちら』。太字・下線は筆者による)。

「経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は14日、世界経済の回復は減速しているものの、先進国においては日本以外で景気が二番底に陥る恐れはないとの見通しを示した。

 同事務総長はアンカラでロイターのインタビューに応え「回復は減速しているが、景気の二番底はない。単なる回復の減速だ」と述べた。

 その一方で「日本は例外だ。日本は10年間にわたりデフレと格闘しており、状況が異なる」とし、日本以外の国で「景気が二番底に陥ることは予想していない」と語った。

 ただ、世界経済の回復はぜい弱との見方を示し「家計部門は将来に対して完全に信頼感を持っているわけではない」とし「OECD加盟国は依然として5000万人の失業者を抱えている」と指摘した。

 国別では、ドイツ経済は第2・四半期に2.2%の成長率を達成した後、第3・四半期には減速すると予想。「ドイツの第2・四半期(成長率)はかなり良かったが、他の国と同様に第3・四半期には減速する」と述べた」

* * * * *

(追)「今後のマーケット」という観点からすると目を離せないのが米国の中間選挙(11月2日)でしょう。

米国でも問題になっているのは世代間の貧富の格差。

20代、30代の若い層は職が無く、一方、50代、60代の世代は逃げ切りの体制・・・と日本と似たような状況が起きています。

これが選挙結果や政策にどう跳ね返ってくるか、今年の残りもあと3ヶ月ちょっとですが、マーケットはまだまだ波乱の様相を呈するように思います。

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空飛ぶドクター

一昨日AFS18期の同期会があり、39年前に羽田空港(!)から米国に飛び立った高校生留学生が東京で集まりました。

高校生の時の顔と約40年ぶりに見る顔とでは相当のギャップがありますが、しばらく話していると昔の面影と現在とが繋がってきます。

当日会った同期の1人、坂本君が週刊朝日の最新号に特集されていました(末期がんで「後悔しない余命」を生きる ― 終末期旅行)。

下の写真で一番上段に同じ文章(末期がんで・・)が並んでいるのがご覧になれます。

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彼は「空飛ぶドクター」として有名でブログ(『こちら』)や本(『こちら』)も著しています。

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同じく同期の松村君は宗教史学や神話学の先生になっていました。

彼のブログは『こちら』

最近書いた本(『こちら』)持参で同期会に来ていましたが、値段が高く(6,800円)、同期の連中は薄情にも誰も買わなかったのかもしれません。

一応私はこのブログの上で宣伝だけはしておきますね。

  Photo

当日集まった18期留学生は20数名。同期は全体でたしか105名前後いたと思いますので出席率2割強ですが、海外に住んでおられる方(特に女性は外国の方と結婚して海外にいるケース)が結構多いようです。

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2010年9月19日 (日)

敬老の日

明日9月20日は敬老の日です。

よく 「70歳代を無事過ぎると長生き出来る」 と言います。

本当にそうか、統計上のデータで調べてみましょう。

まず日本人の平均余命を見てみます。

厚生労働省のホームページから平成21年簡易生命表(平成22年7月26日発表)をダウンロードします(『こちら』)。

これによると、男の平均寿命は79.59年、女の平均寿命は86.44年です。

   Photo

この表で明らかなように、80歳男性の平均余命は8.66歳。

つまり 70歳代を無事乗り越えられた80歳の男性は88.66歳まで生きられるということになります。

この辺の関係をもう少し詳しく見てみます。

女性の平均余命データを使って、年齢ごとの平均余命をグラフ化します。

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なるほど80歳を過ぎた辺りからグラフの形状がややフラットに近づいていきます。

それぞれの年で、平均何歳まで生きれるかをグラフ化すると下図のようになります。

やはり80歳を超えたあたりからグラフはぐっと上に傾き始めます。

2

ちなみに具体的数字で見てみると、

70歳の女性 → 平均89.61歳まで生きれる

80歳の女性 → 平均91.68歳まで生きれる

90歳の女性 → 平均95.86歳まで生きれる

要は、1歳増える(年を取る)ごとに、平均何歳まで生きれるか、この年数が(小数点以下の単位ですが)少しづつ増加していくのです。

この増加のペースが70歳代の半ばあたりから急ピッチになってきます。

これをグラフ化すると下図のようになります。

3

すでに50歳となったあなたが自分の老後の生活設計を考える場合、0歳児の平均余命(男:79.59年、女:86.44年)を使うのは正しくありません。

資金計画などを考える際には0歳児の平均余命に10歳くらい上乗せした方が安心です。

すると男は約90歳、女は96歳となります。

よく「老人は金を使わない」とか、「80歳の人が老後の為にと年金を溜め込んでいる」と批判する人がいます。

「だからお金が回っていかないのだ」といった批判です。

しかし80歳の女性は平均でも後12年間の生活設計を考えなくてはなりません。

「介護が必要になったらどうしよう」、「あまり子供に迷惑をかけたくない」-そう思って節約する人の行動パターンはある意味、合理的なのだと思います。

 

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2010年9月15日 (水)

中国の Clean Energy Business

9月8日、9日とニューヨークタイムスに載った記事が米国シリコンバレーから転送されてきました。

『こちら』『こちら』です。

比較的長い英語なので触りのところのみ下記に抜粋してみます。

・・・ the American clean energy programs carry many time-consuming and difficult requirements. Companies must show they can repay loans and have innovative technology.

・・・ China has been pumping loans into clean energy so rapidly that even $23 billion in credit offered by the China Development Bank to three solar panel exporters and a wind turbine maker since April has barely raised eyebrows. China Development Bank, owned by the government, exists to lend money for strategic priorities.

と、この辺は、米国と中国の違いの一般論なのですが、以下 Evergreen Solar という米国の会社の具体例が出てくると、話がかなり現実味を帯びてきます。

・・・ Evergreen Solar, the Massachusetts company, struggled for three years to raise money in the States, but had no trouble doing so in China.

・・・ Chinese state banks were happy to lend most of the money for the factory on very attractive terms, like a five-year loan with no payments of interest or principal until the end of the loan, said Michael El-Hillow, the company’s chief financial officer.

中国と米国の違いを目の当たりに見て、中国の Clean Energy Business に対する「国を挙げての取り組み」の戦略性を改めて実感させられます。

・・・ “You can’t get a penny in the United States, it doesn’t matter who you call — banks, government. It’s awful,” he said. “Therein lies the hidden advantage of being in China.”

・・・ “Who wins this clean energy race,” Mr. Zhao of Sunzone said, “really depends on how much support the government gives.”

お時間のある方は是非ニューヨークタイムスの記事(上記)をご覧になってみてください。

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2010年9月11日 (土)

よもや私の預金が・・

「よもや私の預金が・・」

日本振興銀行に1000万円を超える預金をしていた方たちはそう思ったに違いありません。

私自身、預金と株とでは違いますが、リーマン破綻時にリーマンの株を持っていて、「まさか・・」と絶句したものでした(この間の事情は拙書「リーマン恐慌」に書きました)。

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          (注)これは実在する小説。「こちら」で購入可です

* * * * *

自分自身の預金を守るために以下のことを心がけた方が良いと思います。

(1)金利が良いからと言って1000万円を超える預金を預けない

金利が良いのは、「金利を良くしないと預金を集められない」

すなわちそれだけリスクの高い銀行である場合があります。

日本振興銀行に1000万円を超える預金をしていた方たちも、ほとんどが「金利が高い」といった理由で預金をした人たちでした。

(2)新聞記者は「この銀行は危ない」といった記事は「書けない」ことを知る

そんなことを書けば、その記事が引き金となってその銀行が潰れてしまいます。

事実、新聞を丹念に読んでいても今回振興銀行が破綻することは事前には分かりませんでした。

(3)上場していれば株価が最良の指標になる

逆に上場していない銀行に預金を1000万円以上集めるのは、なぜ上場していないのかを調べるなどして、良く考えてからにした方が安全だと思います。

主な銀行の現在の株価と時価総額です。

三菱東京UFJ 株価403円  時価総額5.7兆円

三井住友    株価2539円  時価総額3.6兆円

みずほ       株価130円   時価総額2.8兆円

りそな         株価868円  時価総額1.1兆円

新生           株価 63円   時価総額0.1兆円

あおぞら       株価120円    時価総額0.2兆円

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2010年9月 9日 (木)

問題はこれから

トヨタに関しては昨年の6月12日(『こちら』)から9月23日(『こちら』)まで、6回に分けてこのブログで取り上げてきました。

その後の株価は下図のようにトヨタの独り負けだったわけです(青がトヨタ、赤:日産、黒:スズキ、緑:ホンダ)。

すなわち2年前に比し、日産、スズキ、ホンダは株価が概ね2割下落したのに比し、トヨタは4割下落しました。

Toyota_2

しかし本当の問題はこれからです。

自動車は企画、開発、設計から実際の製造・販売まで数年を要します。

今のトヨタはリコール問題の影響もあり、社内は極端に保守的(良く言えば慎重ということなのでしょうが)になったという声も聞こえてきます。

これが実際の製造・販売の数字となって現れてくるのは数年後。

そのときいったいどうなっているのか、ちょっと心配になります。

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2010年9月 5日 (日)

断固たる措置

9月3日(金曜日)に発表された米国の雇用統計が市場予測より良かったことから、株安、円高の動きは一服しました。

もっともその後に発表されたISM指数は芳しくなく、ドル円は85円台から再び84円台へ・・

* * * *

最近の野田財務大臣は、「必要な時に断固たる措置を取る」と言って為替介入を示唆してきています。

しかし政府は本当に「断固たる措置」を取れるのでしょうか。

ミセスワタナベのように、FX取引を経験した方ならお分かりだと思うのですが、相場を張っている人が一番恐れるのが、市場が反転することです。

これまで円高だと思っていたのが、急に逆に円安になる。。。この潮目を読み違えると、FX取引に投入していた資金はあっという間に「蒸発」しています。(しかもこの「潮目」というのが実はくせ者で、大きな潮目のほかに1日から1週間単位でころころ変わる小さな潮目もあります。運が悪いと小さな潮目を読み違えただけで大きく傷つくことがあります)。

それでは政府が介入すると、市場関係者は相場が反転したと恐れるようになるのでしょうか。

逆です。

相場の方向性が見えやすくなってしまいます。

要は、「マーケット(ヘッジファンドほか)vs. 政府の戦い」の構図となり、

「マーケットは円高、政府は円安の方向にもっていくような形で市場に参入」といった色分けが出来てしまいます。

実際のところ「政府が出てきた方が儲けやすい」と思っているヘッジファンドは少なくありません。

日銀時代に為替介入を担当していたJPモルガン・チェース銀行の佐々木融さんは、

「円売り介入が始まると世界中から円買い注文が集まるため、逆に円高が進んだ」と指摘しています(『こちら』)。

2003年~2004年。このとき日本政府は積極的に円売り介入(全部で35兆円規模)を行ないました(これ以降、政府は介入していません)。

しかしこの間にマーケットでは逆に円高が進行(120円→105円)してしまった(すなわち介入は逆効果になってしまった)というのは良く知られているところです。

* * * *

このブログでも再三再四の繰り返しになってしまいますが、

為替問題の本質は日本のデフレにあります。

「日米の名目の短期金利はほぼ0%で同じ。

にもかかわらず、米国のインフレ率は2%弱で、日本はマイナス1.5%程度というデフレだから、

アメリカの実質金利は0-2でマイナス2%とマイナス金利なのに対して、

日本は0-(-1.5)でプラス1.5%と、日本の実質金利がアメリカを大きく上回っている」『こちら』)。だから円に投資した方が金利面では得になる・・・。

* * * *

円高に対する「対処療法」になっているかどうかさえ疑わしい「為替介入」。

野田大臣の言う「断固たる措置」とは、この「為替介入」ではなくして、病気の根源の治療、すなわち「デフレ退治」に向けられるものでなければなりません。

もっとも「円売りドル買い」の為替介入をして政府・日銀が市場に円を放出、

それに対して日銀が「非不胎化政策」で協力すれば、デフレ退治に向けて一定の効果が期待できると思います(『こちら』の記事を参照)。

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2010年9月 2日 (木)

日本人女性が優勝

一部新聞にも報道されていますが、アルゼンチンで開かれたタンゴの世界選手権大会(2010年8月31日)。

日本人女性が優勝しました(その時の踊りの動画は『こちら』)。

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ところでタンゴと言えば、Por Una Cabeza

『こちら』はアルパチーノの Scent of a Woman の一場面。

また『こちら』の方はシュワルツェネッガーのTrue Lies の一場面。

話はそれてしまいますが、Scent of a Woman でアルパチーノは盲目の元軍人を演じます。彼はこの映画でアカデミー賞を受賞。アルパチーノがアカデミー賞を受賞したのは、後にも先にも、これまでのところ1992年のこの作品だけです。まったく瞳を動かさない演技が印象に残ります。

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2010年9月 1日 (水)

どこまで円高、株安になるか

「年内にいったいどこまで円高、株安になるんでしょうか。これをまず番組で取り上げるので、紙に書いてください」

一昨日の日経CNBC『日経ヴェリタス・トーク』の収録30分前にプロデューサーからこう言われて紙を渡されました。

番組をご覧になった方はお分かりでしょうが、私は円は79円台になることもあり得る、そして株は7900円台(8000円割れ)もあり得ると書いてプロデューサーに渡しました。

(こう紙に書いていた時の為替は84円80銭、日経平均は30日の終値 9,149円でした)

理由はこのブログでも書いてきましたが、為替の方は:

(1)実質実効為替レートで見ると、よく言われているような「過去15年で最大」といった円高にはなっていない(別言すれば、これから先もっと円高になってしまう余地がある)、

(2)先進各国が輸出促進によって景気回復を図ろうとしている(適度な自国通貨安が各国にとって望ましい。そしてこのための各国間の競争)、

(3)日銀によるデフレ退治のコミットメントが希薄(デフレとは物価の下落、通貨価値の上昇です)

一方、株価の方は:

(1)株価収益率(PER)で見ると、8000円程度の日経平均でもおかしくはない(それだけ企業の予想収益が弱い)

(2)国内のデフレがなかなか改善しない(政府や日銀によるデフレ退治のコミットメントが希薄)

(3)米国景気の不安(住宅減税終了による住宅関係諸指数の悪化、失業率の高止まり)

(4)欧州(アイルランド、ギリシャ、スペインなど)の問題は実は解決していない

(5)政府が出口戦略を急ぎすぎてしまった(例:消費税増税の議論を始めることは、やっと回復しかけた病人に対して、「これから走らなければならないマラソン大会の話」を始めるようなもの)

というものです。

まあ、為替とか日経平均とか、この種の予想はなかなか難しい(そして当らない)ものですが、これから先 4ヶ月間、いったいどういった状況になっていくのでしょうか。。。

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