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2010年9月26日 (日)

年金について(2)

質問(1)年金保険料の未納者が増えていると聞きます。年金制度はすでに破綻しているのではないですか

まず国民年金の未納者の割合を見てみましょう。

厚生労働省の発表によると納付率は60.0%(『こちら』)。

これって10人のうち6人しか払っていないってこと・・?

いえいえ違います。

第1号被保険者1985万人に対して納付者1129万人ですから、56.9%です。

56.9%がなぜ60.0%になるか・・・

これは役人が優秀なので納付率の定義を厳格に解釈していているからです。

しかしその結果として、一般の国民には何のことか分かりにくくなります(『こちら』)。

ところで、納付者1129万人の数字にもトリックがあります。

過去23ヶ月間(ほぼ2年ですね)、保険料を1銭も納めていなくとも、24ヶ月前に1か月分だけでも納めた人は納付者としてカウントされます。

つまり国民年金をきちんと納めている人の数は56.9%よりも更に少ないということになります。

もちろん以上の話は個人事業主などが加入する国民年金保険の場合です。

サラリーマンなどは厚生年金保険料として給与から天引きされて納付されますので、保険料の納付からは逃れようがありません。

すなわちこれらサラリーマンなどの部分を入れれば、保険料の未納者の全体に対する割合はぐっと減ります(『こちら』の図)。

質問(2)未納者が増えても年金制度が破綻することはないといった話も聞きますが・・?

たしかにこんなタイトルの本が出ていますね(『こちら』)。

この本の中には、

「未納者には将来年金が払われない(年金をもらうには最低でも25年間保険料を払い続ける必要があります)。

よって未納者が増えたとしても年金財政が破綻することにはつながらない」

といった記述もあります。

ただ「保険料は未納にする。その代わり将来年金はもらわなくてもいい」といった人が増えていくと、

「老後は生活保護に頼ればいい」という発想に流れがちな人が多くなり、

結局は国民負担が増えていってしまいます。

質問(3)それでは年金問題の本質は何ですか

現在の制度が、少子高齢化が急速に進む日本の現状に合わなくなってきていることです。

日本の年金制度は難しい言葉で言うと「賦課方式」という仕組みになっています。

この方式の下では、現役世代が支払っている保険料は、将来の自分たちがもらう年金のために積み立てられているのではありません。

現役世代が支払っている保険料は、いまの高齢者の「年金」の支払に使われてしまっています。

これに対して若い現役時代に払い込んだ保険料を積み立てて、老後にそのお金を受け取る仕組みを「積み立て方式」と言っています。

「積み立て方式」の方は分かりやすいと思います。

郵便局や銀行の積み立て預金のようなもので、毎月払う保険料は政府(日本年金機構)に預かって運用してもらう。

65歳になったら「自分が払い込んだ分」+「運用分」を原資として毎月の年金をもらっていく。

この制度の下では、将来自分が幾らの年金をもらうか非常に分かりやすくなりますし、

その結果、グリーンピアに自分の年金保険料が使われてしまうといった無駄も発生しにくいと思います。(シンガポールなどでは「積み立て方式」が採用されています)。

しかしながら日本の今の制度はこの「積み立て方式」ではありません。

冒頭申し上げた「賦課方式」の方です。

この制度の下では、現役世代が支払っている保険料は、いまの高齢者の「年金」の支払に使われてしまっています。

いまの現役世代が高齢者になるときは、その時の現役世代が払う保険料で高齢者への年金を支払います。

親世代が子世代の面倒になり、子世代が孫世代の面倒になるというように、後の世代に負担をどんどんバトンタッチしていく「自転車操業」方式です。

厚生労働省はこの方式を「世代間の助け合い」とか「世代間扶養」と言っています(『こちら』)。

Photo_5

   (上の図は、図の上でクリックすると大きくなります)

「世代間の助け合い」というと美しいのですが、賦課方式には問題があります。

ひとつは自分が払う年金保険料と将来自分がもらう年金との関係が希薄な為、将来いくら年金がもらうのかが分かりにくいこと。

そして最大の問題は少子高齢化の下では、若い世代に過酷な負担となってしまう、すなわち世代間格差が生じてしまうことです(特に前の世代がグリーンピアなどで無駄遣いをしてしまうと、より一層将来世代の負担が大きくなります)。

鈴木亘教授の試算によると1940年生まれと2010年生まれの世代間格差は実に一人あたり5460万円から5930万円にも上るとのことです(『こちら』)。

こういった世代間格差を放置しておいて、「未納者には将来年金が払われない」とか「若い人でも年金保険料を払っておいた方が得」と説得してみても、若い世代は簡単には納得できませんし、若い世代の活力にはつながっていきません。

何らかの抜本的改革(例えば「賦課方式」から「積み立て方式」に移行するとか)が必要になっていると思います。

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