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2011年4月25日 (月)

パエトーン

パエトーンは、ギリシャ神話に登場する少年。

パエトーンは、エチオピア王の妃である母親から、彼の父は「太陽神へーリオスである」と知らされます。

しかし彼は友人のエパポスたちからは「おまえは太陽神ヘーリオスの子などではない」と馬鹿にされます。

パエトーンは、自分が太陽神の息子であることを証明しようと、父ヘーリオスの館を訪ねます。

そして父に願って日輪の馬車の操縦を試みます。

こうすれば自分が太陽神の息子であると認めてもらえると考えたのです。

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   (パエトーン;Gustave Moreau 画、パリ、ルーブル所蔵)

しかし、御すのが難しい日輪の馬車はたちまち軌道をはずれ、大地を焼き払い始めます。

ギリシャ神話では、エチオピア人の肌が黒くなり、リビアが砂漠になったのはこの時だと言われています。

こうして大地は焼き尽くされ、海の神さえ水が熱くなるのを恐れ始めます。

とうとう大地の女神は、神々の王であるゼウスにこう訴えます。

「ゼウス様。人間のために穀物を実らせ、家畜には草を与え、山には木をはえさせてきた私をこれ以上苦しめるおつもりですか。

いまに地も空も海もとけてしまいます」

大地の女神の訴えを聞き、ゼウスは、太陽神へーリオスを前にこう言います。

「与えてはならない権力をむすこに与えたばかりに、悲しくも、この世の終わりが来ようとしている」

そしてゼウスはパエトーンと日輪の馬車をめがけて稲妻を投げつけます。

稲妻はあたり、馬車は壊れて、遠く粉々に飛び散り、パエトーンは川に落ちて最期を迎えます。

    Photo_4

    (パエトーンの墜落;Johann Liss画)

太陽神へーリオスは息子パエトーンの死を悲しみ、顔をかくしたので、このとき世界はまる一日、まっ暗なまま過ぎたと言われています。

* * * *

さて今回の震災や原発事故では、各界のいろいろな方々が「自分に出来ることは何かないか」、「何かしよう」と考えて、実行に移しています。

たとえば『アラベスク』などの作品で有名な漫画家の山岸凉子さん

彼女が自分の作品の一つを敢えて無料にして、ウェブで公開してしまおうというのも、そういった動きの一つでしょう。

今回無料で公開されたのは、すでに1988年に描かれ発表されていたパエトーンという作品。

実はこの作品は、今でも有料で出版されていて人気の高い「山岸凉子スペシャルセレクションⅥ『夏の寓話』」に収録されている作品でもあるのです。

   Photo_2

しかしこのパエトーンという作品に限っては「無料にしてでも一人でも多くの人に見てほしい」という作者の強い思いがあるのでしょう。

『こちら』をクリックした後に出てくる頁で「パエトーンを読む」というボタンを押すと無料で見れます。

* * * *

出版社である潮出版社のコメントです。

「遠いむかし、神になり代われると思いあがった若者・パエトーンをめぐる悲劇。

ギリシャ神話に描かれたこの物語を現代に展開し、原子力発電の是非について世に問いかけた山岸凉子の短編作品『パエトーン』(1988年作品)を、今回Webにて特別公開させていただくこととなりました。

「原子力発電」の必要性や安全性については賛否様々なご意見があると思いますが、本作品をひとつの問題提起と捉え、将来的なエネルギー問題を議論してゆく上での一助としていただければ幸いです」

そして山岸凉子さんのコメントです。

「作者東北関東大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

そして、福島原発の最前線で命を賭して従事している皆様に深い感謝と尊敬の念を禁じえません。

勇気ある彼らのためにも25年ほど前の作品ですが、全国の皆さんに読んでいただき、今一度原発の是非を考えてもらえたらと思っております。

では「パエトーン」をどうぞごらん下さいませ」

* * * *

『こちら』です。

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コメント

長崎にプルサーマル型の原爆が落ちたわずか5年前のこと、人類はそれまで未知だった物質を発見し、ギリシャ神話で地底の冥界を司る神の名・プルートにちなんでプルトニウムと名づけました。今にして思えば、この名の由来は偶然のものではなく、すこぶる暗示的なものだと思わざるをえません。人類は地底に長く眠っていた悪魔の神を発見し、それを地上に引きずり出してしまった。今、福島の3号機で暴れまわるそれをふたたび幽閉できるのか。管理を誤れば人類を滅ぼすほどのものが冥界の支配者・プルートです。
(ディズニー映画に出てくる可愛い犬の名前でもありますけど)

投稿: 神保町 | 2011年4月25日 (月) 18時48分

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