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2013年5月31日 (金)

Sell in May?

日本時間ではいよいよ5月31日に入りました(5月31日、0時50分です)。

30日の日経平均は730円強も下落して13,500円台でクローズしています。

今後の展開を占ううえでここでは幾つか言われている仮説を検証してみます。

(1)5月23日の大幅な下落(前日比▲1,143円)は外人投資家、とくにヘッジファンドが仕掛けたもの・・・?

5月20日~24日の週でもっとも売り越したのは日本の法人(3,889億円の売り越し)。

外人投資家の売り越し額はその4%に過ぎません(166億円)。

以上は東証一部の数字。

詳しくは『こちら』のデータを参照。

(2)Sell in May と言われているようにヘッジファンドは5月末決算のため5月に売ってくる・・?

ヘッジファンドの多くは12月末もしくは11月末決算。

11月末決算のところは半年の数字を5月末に出しますが、

そもそも多くのヘッジファンドは4半期毎(3ヶ月毎)に投資家にレターを出して決算の概況を知らせており、

5月に売る特段の理由はありません。

ヘッジファンドが投資家に出している手紙を読むと4半期毎に利食うようなことをしているとは考えにくいことがわかります(例えば、著名なヘッジファンドであるGreenlight Capital の投資家向けレターは『こちら』を参照)。

(3)米国では一般にSell in May と言われている・・?

これは11月~4月の相場に比して歴史的に5月~10月の相場の方が弱いことが多いことから

一部投資家は「5月に売ってしまった方が良い」と考えているとのことですが、これも実際には違います。

過去142年間のパフォーマンスを検証したところでは、

5月には売らずに持っていた方がリターンが良かったことが実証されています(下記)。

Sim_2

詳しくは『こちら』の記事をどうぞ。

(4)シカゴの日経225先物の結果が翌日の日経平均始値に反映される・・?

これは相関関係が高いと言えます。

Cme_2

青がシカゴ(CME)の日経225先物、紫が日経平均です。

現在(5月31日、0時50分)、シカゴ(CME)の日経225先物は、13,805円。昨日の終値13,589円より200円強高いレベルですが、さて明日の東京マーケットはどんなスタートとなるのでしょうか。

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2013年5月26日 (日)

消費者物価上昇率

本日の日経朝刊記事(1面)にあるように世界各国で物価がなかなか上がらなくなってきています。

そんな中、日本は依然としてデフレ。

4月26日に発表された3月のCPI(消費者物価指数;生鮮食品を除くベース)は前年同月比▲0.5%(『こちら』)。

5ヶ月連続のマイナスでした。

4月のCPIは今週金曜日(5月31日)に発表されますが、はたして少しは改善するでしょうか。

日銀が現在考えるシナリオは4月26日に『経済・物価情勢の展望(2013年4月)』として公表されています(『こちら』)。

これによると政策委員の大勢見通しは

2013年度のCPI上昇率(%) +0.4~+0.8(各委員見通しの中央値+0.7)

2014年度のCPI上昇率(%) +0.7~+1.6(各委員見通しの中央値+1.4)

2015年度のCPI上昇率(%) +0.9~+2.2(各委員見通しの中央値+1.9)

「大勢見通し」の数字は9人の政策委員が出した数字のうち一番下と一番上の数字を除いた上で幅を示したもの。

中央値とは9人の数字を上から下に順に並べて5番目の数値という意味です。

中央値が上限の方に近くなって現れているのが興味深いところ。

なお上記の2014年度、2015年度の数値は消費税引き上げの影響を除くベースです。

日銀が考えるようなシナリオで物価が上昇していけば良いのでしょうが、民間の研究所などはこの日銀のシナリオはかなりハードルが高いと見ています。

ニッセイ基礎研究所経済調査室長の言葉を借りれば、日銀の見通しは「蓋然性の高い見通しというよりは目標に近い」(注:下記の出所参照)。

問題はデフレ脱却が日銀シナリオ通り進まないことが明らかになったときです。

今から取り越し苦労する必要はないのかもしれませんが、このとき日銀は更なる金融緩和に打って出るのか、あるいは政府は消費税増税実施を1年先送りするのか・・。

なお民間研究所の見方として、ここではみずほとニッセイのものを下記に上げておきます。ほかにもいくつかありますのでご関心のある方は検索をかけて調べてみてください。

  • 山本康雄みずほ総合研究所経済調査部シニアエコノミスト(『こちら』
  • 斎藤太郎ニッセイ基礎研究所経済調査室長(『こちら』

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2013年5月25日 (土)

漢詩の世界

夏目漱石が吐血後、生死をさまよっていたときに詠んだのが「仰臥人如唖・・」の漢詩。

それより少し前、幕末から明治にかけて、

もともと身分が低かった西郷隆盛は出世のため必死で漢文を学んだのだとか・・。

以上は『入門 漢詩の世界』に出てくる一節。

1

この本では、

  • 李白(701~762年)、
  • 杜甫(712~770年)、
  • 白楽天(772~846年)、
  • 陶淵明(365~427年)、
  • 王維(699~759年)、
  • 杜牧(803~852年)

の6大詩人の生い立ちや人となりを紹介しながら

その主な作品を読んでみるといったスタイルを取っています。

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と同時に、本の終わりの方では、上杉謙信や武田信玄など戦国時代の武将が詠んだ漢詩を解説するなど、漢詩をいろいろな切り口で紹介。

下の写真は現在の西安市。

漢詩文化が最も花開いた唐王朝時代の首都長安の面影が残ります。

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2013年5月23日 (木)

バーナンキ発言

私が新聞に期待するのは事実に関する貴重な情報。他の記者が見過ごしてしまって、ほかでは伝えられていない情報です。

それは、例えばバーナンキ議長の議会証言を最初から最後まで注意深くフォローすることによって得られたりするのだと思います。

そういった意味で今日の日経夕刊。「ウォール街ラウンドアップ」の記事は有益でした。                                            

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そう言えば昨年にもこのブログで「この新聞記事は凄い」と書いたことがありました(『こちら』)。

調べてみたら同じ日経夕刊の同じコラム、同じ記者の書いた記事でした。

別に新聞は日経だけでなくいろいろ読んでいるのですが・・。

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2013年5月21日 (火)

日本株の上昇余地

昨晩出演した日経ヴェリタス・トーク(21:15~21:30)。

番組で曽根さんからの最後の質問は

「日本株はまだ上がるのか?」

これに対する私の答えは

「まだ上がると思う」

こう答えたうえで、

「今月に入って企業が発表する決算を聞いていると内容の良いものが多い」

旨を説明しました。

具体的にはトヨタの決算をベースに当社の株価はどこまで上がりうるかを話したのですが、番組の終了時間が近づき、かなり簡略化した説明になってしまいました。

以下ここでもう少し詳しく説明します。

まずトヨタが出している今年度の利益予想は

営業利益で1兆8000億円、

当期純利益で1兆3700億円。

これは為替レート1ドル=90円を前提としている。

Toyota5_2

ここで(1)今年度の平均為替レートを102円と仮定する、また(2)1ドル=1円円安になることでトヨタの営業利益は400億円上乗せされる(アナリストの一般的な見解)と仮定する。

すると今年度営業利益は:

1兆8000億円+(400億円×12)=2兆2800億円

このときの当期純利益は(営業利益に対する当期純利益の比率が等しいと仮定)

1兆3700億円×2兆2800億円÷1兆8000億円=1兆7353億円

これを株数で割る(自己株式を引いた後の株数=31億6743万株)

1兆7353億円÷31億6743万株=547円(1株当たり予想利益)

ここで現在のトヨタの株価6,590円と現時点での会社発表予想利益1兆3700億円をベースにPERを算出すると:

現時点でのPER=株価÷EPS(1株当たり利益)=6,590÷(1兆3700億円÷31億6743万株)=15.3

こうして得られたPER=15.3をベースに、新しい1株当たり予想利益(102円の為替レート)を使って株価を算出し直すと:

547円(1株当たり予想利益)×15.3(PER)=8,300円(100円未満切り捨て)

なおアメリカの実証研究論文では「歴史的にPERは14」とするものが多い。

よってPER=14を使って株価を計算すると:

547円(1株当たり予想利益)×14(PER)=7,600円(100円未満切り捨て)

つまりPERを使って、1ドル=102円の為替レート下での株価を算出すると:

8,300円とか7,600円といった株価にたどりつきます。

テレビではこの辺の計算式を飛ばして(時間の関係で)結論だけを話しましたが、

要は、決算発表の数字を会社毎に注意深く見ていくと、まだ株価上昇の余地のある企業が多くあることが分かります。

なお番組の再放送は本日13:40~13:55。

日経CNBCチャンネルです。

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2013年5月20日 (月)

Great Rotation

本日の日経ヴェリタス・トークに出演します(21:15~)。

トッピクスは『リスクオン劇場―「大転換」第2幕へ』 。

世界的規模で進むGreat Rotationについて議論します。

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たとえば上のグラフはここ3カ月の日経平均株価の動き(緑)と三井物産(青)、三菱商事(赤)の動きを比べたもの。

日経平均が順調に値を上げていくのに比して、物産、商事の動きはパッとしません。

原油、銅をはじめとする商品市況がさえない動きを示していることなどが一因となっているからなのですが、番組では世界的規模で進む「マネーをめぐる新しい動き」(Great Rotationと呼ばれる)を議論します。




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2013年5月17日 (金)

100歳のサラリーマン

100歳になっても片道1時間の電車通勤をしているサラリーマンの話が日経ビジネス・オンラインに載っていました(『こちら』)。

記事は会員登録すれば最後まで読めるはずです。

今回の記事はさわりの部分だけで全体は本(『こちら』)が今月23日に出版されてからということのようです。

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2013年5月15日 (水)

株価の見通し(その2)

まず前回のブログ記事に関して頂いた質問への回答

(1)2011年4月~12年3月のトヨタの営業利益は3,556億円。それが前期(2012年4月~13年3月)には1兆3,208億円。

対前年度比で、9,652億円も営業利益を拡大させたにもかかわらず、円安要因はこのうちの16%、1500億円とは少なすぎないか。トヨタは1円円安になれば400億円利益が増すと新聞に出ていたが・・?

(答え)2011年4月~12年3月期の為替レート(トヨタの場合)はドル円で79円、ユーロ円で109円。

それが前期(2012年4月~13年3月)はドル円83円、ユーロ円107円。

すなわちドル円では4円円安。ユーロ円では2円円高。

為替要因による増益1500億円は、一般に言われている「1円円安になれば400億円増益」にほぼ沿ったものだったと思います。

Toyota4_2

2)トヨタの今年度の利益見通し(営業利益1兆8000億円)は保守的ではないか。

(答え)トヨタの説明によれば3月末の為替レートを5円の単位で丸めて1ドル90円をベースに今年度決算見通しを作成したとのこと(下表)。

Toyota5_2

ちなみ3月末の円ドルレートは94.05円(TTM)でしたので、これをもって90円に丸めて今年度決算の見通しを作成したということでしょう。

かりに今年度1年間の平均為替レートが1ドル=102円となれば、営業利益はどうなるでしょうか。

さきほどの1円円安になれば400億円利益が増すとの法則を使えると「仮定」すれば、営業利益の上乗せ額は

102円-90円=12円

12円×400億円=4800億円

よって今年度の予想営業利益は2兆2800億円ということになります。

* * * * * *

さて前回のブログ記事の続きです。

株価上昇トレンドを支えている3要因。

①金融緩和(アベノミクス) 

②米国の景気回復 

③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出

以上の3要因がいちばん重要だと思うのですが、これらに加えて次の3つの付随的要因も見逃せません。

少しだけ解説しておきます。

①中国経済底入れ

  上海総合指数推移からしても昨年12月あたりに底入れしたのではないかと思われます

Sh_2


②欧州の一時的平穏

 ギリシャは昨年6月の再選挙で連立政権発足。新たな緊縮策を導入し、2012年の財政目標を上回る結果を残したとのこと(『こちら』)  

③地政学リスクの状況

 北朝鮮リスク、イランリスクがさほど緊迫化するには至っていない

* * * * * *

ということで、今後の株価を占う上でのポイントとしては:

上記の大きな3要因と3つの付随的とでもいうべき要因がそれぞれ今後どうなるか-

これを考えることで

絵が少し見えてきます。

先に私が考える答えを一言で言ってしまうと:

「ポイントは、8月12日~10月31日にかけて」

このときまでは現在の基調が基本的には推移していくと予想されますが、8月中旬以降は俄然と不透明さが増してきます。

ちまたで言われているように、7月の参議院選ももちろん重要ですが、すでに市場はある程度の予測を織り込んでいます。

それよりも経済の状況はどうなのか、そしてどうなっていくのか。

まず第一のポイントとして明日の朝、8時50分。

このとき2013年1-3月期のGDP第一次速報が公表されます。

これはこれでもちろん重要ですが、もっと重要なのが4-6月期のGDP。

なぜでしょうか。

株価上昇の基本要因の③。

「③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出」

この効果は、主として4-6月期のGDPに現われるからです。

そして政府が消費税増税を当初予定通り来年4月から行うかどうかについては、この数字が決定的なインパクトを持つからです。

この4-6月期GDP第一次速報が公表されるのが、8月12日(二次速報が9月9日)(『こちら』)。

Gdp_3

もう少し説明を加えましょう。

すでに国会では野党(みんなの党)から安倍総理に対して

「7-9月期のGDP数値は11月14日に発表されるがそれを待たずに消費税増税の実施時期の判断をするのか」

といった質問もなされています(3月27日財政金融委員会)。

これに対して安倍総理は10月に決めると回答しています。

ここで消費税増税法の条文を見てみましょう(実施時期についての文言)。

「第十八条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる」

「3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二 条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつ経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」 (詳しくは『こちら』

法律の文言を追うのは大変だという方は斜め読みでも、あるいは飛ばして頂いても結構です。

以下の浜田参与の発言をご覧ください。

4月9日。

ロイターが報じた浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)の発言内容です。

「(2%の物価目標を)2年で達成できるかはわからない。財・サービスや消費、投資、雇用などにどれだけ的確に早く(効果が)及ぶかがこれからの問題だ。経済が回復してくれれば、1%に越したことはない。過剰設備を解消し、失業率も次第に改善し、有効求人倍率も1より大きな地域が増える状態が望ましい」

「来年4月に消費税を上げても大丈夫かは、今後をみてみないとわからない。安全策として1年くらい延ばすのもいいのではないか。せっかく上がりかけた景気が増税でぽしゃってしまう例は、日本の歴史だけでなく、世界の歴史にもある。ブレーキをかけて歳入(税収)の上昇が止まれば、消費税は率を上げただけで、何のためにもならない」 (詳しくは 『こちら』 )

要は、8月12日に発表されるGDP値が、「これなら来年4月に消費税を上げても大丈夫」とマーケットが納得いくものが出てくるかどうか、

とくにこのときのGDP値が「13.1兆円の超大型補正」という下駄を履いた上での数値だけに、日本経済がほんとうに体力を回復したのか、慎重な検討が必要になってきます。

もしそれほどまでには体力が回復していないと判断されるような数値だった場合(取り越し苦労だといいのですが)、安倍政権がはたして消費税増税1年先送りの勇気を持つかのかどうか・・。

この辺の状況如何によっては景気が腰折れし、株価が方向性を変えてしまうことも懸念されます。

そればかりではありません。

アメリカ経済は基本的に順調ですが、秋口にはFRBが出口戦略(金融緩和策の方向転換)を模索し始めるとの見通しも一部の識者から伝わってきています。

と同時に9月にはいよいよドイツで総選挙が実施されます。

8月12日~10月。

台風が日本を襲うこの時期。

株価を占う上でもポイントとなる時期のように思います。

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2013年5月13日 (月)

株価の見通し(その1)

これまで日本株は急ピッチで上昇してきましたが、今後もこの傾向は続くのでしょうか?

続くとするといつまで?

今後の株価を見通すうえでは、その前段階の作業として、

「昨年11月以降これまで続いてきている株価上昇の要因」

を把握することが重要になってきます。

そしてこの要因としては次の3つが考えられます。

これら3つがすべてそろったからこそ、株価はこれまで順調に上昇してきていて、いまも上昇トレンドにあると言えるのだと思います。

①金融緩和(アベノミクス) 

②米国の景気回復 

③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出

このうち日本のマスコミでは ①ばかりが注目されていますが、②と③も同じように重要。

たとえば先日発表されたトヨタの決算を見てみます。

Toyota1_2

右側が今年3月末までの1年間の実績(クルマの販売台数)。

左側が前年(2011年4月~12年3月)。

ここ1年間で販売台数は21%増加。

内訳は:

日本10%増

北米32%増

欧州0.1%増

といった具合。

ただし日本でのプラスはエコカー補助金効果による影響がかなり効いています。

この辺の事情は、これから先1年間の見通しを見るともっとクリアーに理解できます。

Toyota2

左側が今年3月末までの1年間の実績(クルマの販売台数)。

右側が今年度(2013年4月~14年3月)の見通し。

内訳は:

日本▲7%減

北米7%増

欧州4%増

といった具合。

日本はエコカー補助金が終了してしまったことの影響により、今年度はマイナス成長。

しかし北米を中心とする日本以外の地域の売上げ増が寄与し、トヨタ全体としては3%の販売台数増を見込んでいます。

このようにトヨタの業績回復の裏側には、北米、とくに米国における景気回復が大きく影響しているのです。

[(注)そもそもトヨタの販売台数の77%が日本以外の地域における販売。北米がそのうち38%を占める(今年度見通しベース)]

「なるほど米国の景気回復の影響は分かった。しかしそうは言ってもトヨタの調子が良いのは、アベノミクスによる円安の影響、つまり為替要因が圧倒的に大きく作用しているからではないか」

そう思っている方もたくさんいるでしょう。

もう少しトヨタの決算の中身を見てみましょう。

2011年4月~12年3月のトヨタの営業利益は3,556億円。

それが前期(2012年4月~13年3月)には1兆3,208億円になりました。

すなわち対前年度比で、9,652億円も営業利益を拡大させたのですが、

このうち為替が円安に好転したことの影響はどのくらいを占めるのでしょうか。

約半分の4,800億円くらいでしょうか。

いいえ、違います。

意外に思われるかもしれませんが、為替変動の影響は1,500億円。

全体の16%です。

ではいったい何が営業利益をこれだけ拡大させたのか。

その要因分析の結果は下図の通り(トヨタのウェブサイトに載っています)。

Toyota3_4

なお上の図3つは、何れも、図の上でクリックすれば約2~3倍に大きくなり、図中の文字が読めるようになります。

以上、トヨタの決算から読み取ることが出来るのは、

①アベノミクスによる金融緩和、円安がプラスのインパクトを与えた

②しかしそれに勝るとも劣らないのが米国の景気回復の影響

③さらに地道な企業努力が奏功した

ところで米国の景気回復ですが、これが一番顕著に現れているのは米国の株価でしょう。

ダウ平均株価は今年3月5日に14,253.77ドルをつけて、史上最高値を更新。

ダウはその後も史上最高値を幾度となく更新し続け、先週末には15,118.49ドルでクローズするに至っています。

失業率も10%から下落を続け、7.5%にまで改善してきました。

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  Dol2_2

こうした諸条件、外部環境要因(注:冒頭の①~③)が重なって示現した日本の株高。

ポイントは

この株高がどこまで行くか、

個人投資家のみなさんが今から参戦しても遅くないのか、

いつ下降局面に入ると予想されるか、

ですが、これらについては次回以降に見ていきましょう。

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2013年5月12日 (日)

旬の食

きょうの東京も夏日となりました(10日には福島県の若松で30度4分、埼玉県の鳩山で30度ちょうどまで上がり、東北や関東で今年初の真夏日を記録)。

暑くなったり寒くなったり、最近では「寒暖差アレルギー」などという言葉も耳にするようになりました。

なんだか季節感がはっきりしないこの頃ですが、古代中国で作られ、日本でも使われてきたのが、七十二候

5月10日~14日のこの時期は、七十二候では「蚯蚓出(みみずいづる)」。

『雨が土に浸みるとミミズたちは地表に出て息を継ぎます。 

この時期の旬な食材としては鰹、イサキ・・・

(以上、『日本の七十二候と旬の食』 より)。

入門 日本の七十二侯と旬の食 (洋泉社MOOK)

* * * * * * * * * * *

そう言えば、フジテレビの人気TV番組 『ペケポン』 には、『旬モノはどれだ?』 というコーナーがあります。

並べられた食材の中から旬な食材を当てるゲーム。

最近は宝石の値段を当てるデヴィ夫人(『一流の見極め』のコーナー)に押され気味のようですが・・。

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2013年5月11日 (土)

インテリジェンス

文藝春秋 の今月号(6月号)、半藤一利(作家)と船橋洋一(ジャーナリスト)の対談「原発事故と太平洋戦争 日本型リーダーはなぜ敗れるのか」 。

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全体の3分の1くらいは『こちら』のウェブサイトでも(無料で)読めます。

しかし読むべきは残りの3分の2なので、これは書店で買う か図書館にでも行かざるをえません。

福島第一の事故の時の状況。

アメリカは無人偵察機グローバル・ホークを使い高度1万8千メートルの上空から「あの炉は何度で放射線量はどれほどか」といった点について把握。

こうした何千というモニタリングのデータを日本側に逐一知らせてきたとのこと。

一方で日本側の対応は?

のちに有名となった「ルース・枝野の喧嘩」とは?

こういった点を含む諸々について半藤・船橋の両氏が議論を交わしているのですが、実は両者の立場や見解はかなり違うところもあります。

にもかかわらず、そういった違いを突っ込まずに大人の議論を交わすところが、さすがというか、やはり日本的。

今回の事故に関してこの2人の対談者は、日本独特の思考様式に言及。

「誰かに恥をかかせてはいけないという配慮が絶えずはたらいている」

とか

「独立した視点を煙たく思う」

といった指摘をしているのですが・・・。

ややシニカルな見方で恐縮ですが、それにしてもこれは一読の価値ある対談だと思いました。

とくに日本のインテリジェンスの特色として船橋氏が

「(情報が)上がらない、回らない、漏れる」

とし、これに対して半藤氏が第二次世界大戦時の日本のインテリジェンスの扱いにまで言及。

せっかく掴んだ貴重なインテリジェンスも、不都合な真実を覆い隠したいとする組織の都合の前に握りつぶされてしまう・・・。

こういったことを如何に防ぐのか。

対談が我々の前に(解決の糸口すら示さずに)提示した宿題はけっこう難題です。

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2013年5月10日 (金)

SAPIO (サピオ)

昨晩は六本木ヒルズで開かれた勉強会に参加。

内容は「航空機産業について」。

「旅客機の機体部分はトン当たり1.1億円(これは換算すれば純銀と同程度の価値ということになる)。 

旅客機用ジェットエンジンはトン当たり1.5億円。 

戦闘機はトン当たり8.0億円以上もする」

のだとか・・。

航空機産業を考える場合、ポイントとなるのはジェットエンジンのビジネスモデル。

巨大な開発費は20年近くかけて補用品で回収するとのことで、講師の方いわく

「インクジェットプリンター型投資回収方式」

たしかにプリンターを買うときは安いけれど、その後インクを補充する段階で、消費者は製造業者に

「けっこう貢いでいる」

-こういった感覚に襲われます。

ただしジェットエンジンについて言うと、「近年はPMA(Parts Manufacturer Approval)やPower by Hour などの新しいビジネスモデルも出てきている」とのこと。

いずれにせよこの辺はGEなどがけっこう巧みに儲ける仕組みを構築してきているように思います。

* * * * * *

ところで話は変わりますが、本日発売のSAPIO (サピオ)にインタビュー記事が掲載されています(100~101頁)。

    Sapio50

もうひとつ。ご報告が遅れましたが週刊プレイボーイの先週号(GW合併号)の特集「アベノミクス時代を生き抜く20~30代のサバイバルマネー術」にもインタビュー記事が掲載されています(73-84頁)。

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2013年5月 7日 (火)

保守的な投資家はよく眠る (4)

これ以上、フィリップ・フィッシャーの本について書くと、書評の域を超えてしまいそうです。

私は彼の本の翻訳権を持っている訳でもないので、今回で最終回にします。

ご興味のある方は是非、原書をお読みになってみてください。

さてフィッシャーの15原則ですが、グーグルで「フィリップ・フィッシャー」と検索をかければ日本語でも英語でも15原則が出てきます(15原則は Wikipedia で彼を説明するページにも出てきます)。

しかしほんとうにためになるのは、15原則の言葉そのものよりも、ひとつひとつに対する彼の説明。

そういった観点からも彼の本をお読みになることをお勧めします(15原則の説明の部分は全部でもたったの32ページです)。

* * * *

前回のブログ記事で、フィッシャーは「いったん投資した以上、3年間は持つ」という3年ルールを堅持していたと記しました。

フィッシャーの3年ルールは、同時に、「3年経っても自分が思ったような結果を投資先が生まない場合はその時点で売る」というものです。

しかしすべてのルールに例外があるように彼は1度だけこのルールを破ったことがあると述べています。

* * * *

フィリップ・フィッシャーは96歳で亡くなりましたが、92歳くらいまでは現役で働いていました。

しかし息子さんのケニス・フィッシャーによると、

70歳を超えたあたりからのフィリップ・フィッシャーの投資判断は間違えてしまうことの方が多かった、

70歳で現役引退していれば経済的にはもっと裕福だった、とのこと。

ケニス・フィッシャーいわく

「人によって “年を取る” あるいは “老いる” 年齢は違う。

しかしもしあなたが投資家ならば、年を取った後、老いた後では、投資判断はしないことだ」

* * * *

そう言えば先週末(5月4日)、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの年次総会が開かれました。

2012年1年間のバークシャー・ハサウェイの成績は14.4%。

またしても市場平均値S&P500 の 16.0% に割り負けました。

バフェットのここ4年間の成績は1勝3敗。

現在82歳のバフェットはまだまだしっかりしていますが、20年くらい前の彼と比べるとやはり差を感じてしまいます(両方のスピーチを聞き比べても差は歴然です)。

と言うか、20年くらいの前のバフェットの頭の回転の早さ、鋭さは尋常ではありませんでした・・。

* * * *

最後に「保守的な投資」について一言。

フィッシャーによれば、「保守的な投資(conservative investment)とはあなたの資産をconserve (保持する)ものでなければならない」

なるほど conservative の動詞は conserve でした。 Conserve とは、to protect from loss or harm もしくは to preserve するとの意味。

つまり減らさない投資が保守的な投資ということです。

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2013年5月 6日 (月)

保守的な投資家はよく眠る (3)

フィッシャーの『保守的な投資家はよく眠る』という本の第6章。

モトローラの話が出てきます。

1974年3月12日。

モトローラの株価は48ドルと5/8でした(48.625)。

翌朝株価は60ドルを付けました。

23%強の上昇。

12日の取引終了後にモトローラが

「テレビの製造から撤退し、工場と在庫を松下(現在のパナソニック)に売却する

と発表したからです。

さて、このニュースを受けてモトローラの株式購入に走った投資家は正解だったのか、どうか?

フィッシャーいわく

「株価が安いか高いかは、それまでのその会社の株価と比較して判断すべきではない。たとえどんなに我々がこれまでの株価に慣れ親しんでいようとも、だ」

「ポイントは現在の市場関係者による評価に比べて、実のところ会社のファンダメンタル(事業素質)はいったいどうなんだ、ということだ」

分かったような、分からないような説明ですが、この話から遡ること約20年。

1955年にフィッシャーはモトローラの株を購入。

以降2004年に96歳で亡くなるまで彼は約50年間モトローラを保有し続けました。

この間、モトローラは配当を出していましたので、株価だけで投資のリターンを把握することは出来ません。

しかし息子さんのケニス・フィッシャーが書いた文章によると、1978年から2003年までの25年間(約50年の保有期間の約半分)だけで、配当を入れないで計算しても株価は30倍になったとのこと。

ちなみに会社の資本勘定はどう変化したか。

1955年と2004年のモトローラのアニュアルレポートを比較してみると、約50年間で資本勘定は56百万ドルから13,331百万ドルへと、238倍へとなっています。

* * * * *

以上がモトローラの話ですが、一般にフィッシャーというと有名なのが、

【1】このモトローラの話(約50年間保有して素晴らしいリターンをあげた)と、

【2】フィッシャーの15原則です。

フィッシャーの15原則とは株式投資をするにあたってのチェックポイント。

15原則のうちの多くを満たせば投資は、“ボナンザ”【bonanza】(正解)。

逆に多くを外せば投資は失敗になることが多いとフィッシャーは言います。

またこれらの15ポイントについてフィッシャーは

「会社の関係者(従業員、元従業員、納入業者、顧客、競争相手)や会社の経営陣に直接質問するときに使ってもいい」

と述べています。

なおこの15原則はフィッシャーの最初の書籍、『Common Stocks and Uncommon Profits』(1958年)に出てきます。

* * * * *

さて、フィッシャーの15原則の第1は以下のとおり。

「その企業は、十分な潜在力をもっているか。

すなわち少なくともこれから先数年は売上をかなりの程度で向上させるだけの製品やサービスをもっているか?」

この第1の原則を説明する際にフィッシャーはモトローラを引き合いに出します。

当時(1950年代後半)モトローラはラジオ無線の世界でナンバーワンでした。

「ラジオ無線による双方向コミュニケーションは警察やタクシーの分野で使われ始めた。

しかし今(1950年代後半)や、無限の成長の可能性を持っている。

トラック業界、配達業者、建設会社などでも使われるだろう。

さらにモトローラは半導体の分野にも進出している。そのほかステレオ・蓄音機、補聴器なども期待できる」

フィッシャーはこうしてモトローラは少なくともこれから先数年は売上をかなりの程度で向上させるだけの製品やサービスをもっていると判断し、モトローラの株を買ったと言います。

ところが1955年に購入した後、モトローラの株はパッとしません。

個入価格から5~10%下落したレベルで行ったり来たりしています。

フィッシャーの顧客の一人はこのことにイラつき、モトローラという単語を言うのを意図的に避けてフィッシャーと会話をしたと言います。

「that turkey which you bought me (あんたが私に買ったあの“どうしようもない株”だが)・・」

という具合です。

しかしフィッシャーは「いったん投資した以上、3年間は持つ」という3年ルールを事前に決めていました。

3年後、モトローラの株はある巨大機関投資家(保険会社)が当時持っていた全ポートフォリオの中でもっとも高いパフォーマンスを上げていました。

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なおモトローラはその後ケータイ電話機器端末の分野にも進出していきます。

2011年、モトローラは携帯電話とセットトップボックス事業を行うMotorola Mobilityと、

エンタープライズおよびネットワーク事業製品を担当するMotorola Solutionsの2社に分社(両社とも上場会社)。

Motorola Mobilityの方は 2012年にグーグルに買収されています。

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「色彩を持たない・・」のドリーさんの書評

YouTube でスーザン・ボイルおばさんを見たときも驚きましたが、この書評(下記をクリック)も面白い。

5月3日にアップされたばかりなのにすでに5,200人以上が投票。

書評に対するコメントも79に達し、本編よりも面白いとのコメントも。

ネットの威力にも驚きです。

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国会審議中継

日ごろ忙しくされている方はなかなか国会中継を聞く暇はないと思います。

新聞やテレビのニュースで流れるのはほんの一部。

ご存知の方も多いと思いますが、『こちら』 をクリックすると、希望する日時の国会審議のビデオライブラリーを見ることが出来ます。

2月7日や12日の予算委員会、4月17日の国家基本政策委員会合同審査会(党首討論)などは今から見てもけっこう面白いと思います。

経済や金融に興味ある方は7日の予算員会での物価指数の議論やハイパーインフレに関する議論も興味深いかもしれません。

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フェイスブックへのアクセス

今朝起きてパソコンを立ち上げたら、フェイスブックからメールが来ていました。

「いつもと違う場所からFacebookにログインしましたか?」

との件名で、朝の 4:14 am の発信。

「今までにご利用されたことのないコンピュータ、携帯機器、場所からFacebookアカウントへのログインがありました。 

安全のため、不正な利用がなかったことをご確認いただけるまで、Facebookアカウントを一時停止させていただきました」

とのこと。

調べてみたら、米国バージニア州の聞いたこともないような町からログインが試みられていました。

私は最近 iPhone でフェイスブックにログインすることも多く、海外出張時など日本以外の場所からログインすることもあります。

しかし今朝は日本にいたし、 バージニア州の聞いたこともないような町には行ったことさえありません。

PCやネットに詳しい人に聞いたら、「この種のことはよくある」とのこと。

いわく、「(悪意の第三者が)ある人のフェイスブック・アカウントに入り込むことが出来れば、そこから貴重な情報を盗み出し、ネット証券、ネット銀行、ネットショッピングなどの不正利用を試みようとする」のだとか・・。

しかしフェイスブックの方で「これはおかしい」と気付き、アカウントを一時停止してくれたので助かりました。

さっそくログイン・パスワードをもう少し安全性の高いものへと変更し、その他のサイトへのパスワードも同時に替えました。

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2013年5月 5日 (日)

保守的な投資家はよく眠る (2)

前回紹介した『Common Stocks and Uncommon Profits and other Writings by...』に収録されているフィッシャーの本によく出てくる言葉に、Scuttlebutt という言葉があります。

英和辞典を引くと、うわさ、ゴシップと載っていますが、フィッシャーいわく「rumor や Wall Street noise に惑わされるな。Scuttlebutt を使え」。

ということは、うわさやゴッシップとは違って、Scuttlebutt はむしろ良い意味に使われている-英和辞典ではこの辺の違いがよく分かりません。

                   Sb

Scuttlebutt のもともとの意味は、船上の樽で、ここに1日分の真水を入れていました。

船乗りたちがここで水を飲みながら会話を交わしたことから、うわさやゴシップを意味するようになったと言われています。

フィッシャーは Scuttlebutt という言葉を grapevine という言葉とともに使っていますが、彼はどちらの言葉も、実体のないうわさやゴシップと違って、何らかの真実味をもった秘密の情報といったニュアンスで使っています。

どの株式に投資するか、そしてどの株式は避けるべきか。

これを検討する上で、投資候補先の社員、元社員、顧客、納入業者、競争相手から

「その会社に関する情報(“Scuttlebutt”、“Grapevine”)を取れ」

と説いているのです。

                       Gv

彼はまた情報の取り方についても詳しく説明しています。

たとえば情報を入手する際、誰からこの話を聞いたのか、情報ソースについては絶対に秘匿する-このことを情報提供者に信じ込ませることが重要だと言います。

これを信じ込ませれば、多くの場合、正確な情報が取れる。

ただ元社員から情報を入手する場合には、その社員がどうして会社を辞めることになったのかを同時に知る必要がある・・・

などと、かなり丁寧に投資に役立つ情報の入手の仕方を説いています。

フィリップ・フィッシャーの息子のケニス・フィッシャーは、父親のこの部分のセクションに次のように解説を加えています。

「“Scuttlebutt を使え”とは、要は Wall Street の情報に頼るのではなくて、Main Street の情報を取れということだ。このことを守っていれば2000年直前のドット・コム・バブルのときに価値のほとんどない会社の株に投資して傷つくこともなかったであろうし、Enron や Tyco、WorldCom のような会社の株に投資してしまうといったミスも犯さないで済んだはずだ」

Wall Street ではなくて Main Street。

                       Ws_2

これはオバマ大統領が好んで使う言葉なのでご存知の方も多いと思いますが、アメリカの多くの都市の中心を走るのがメイン・ストリート。人々がそこに集まり、生産活動、消費活動を営んでいます。

これに対して、ウォール・ストリートはニューヨーク・マンハッタンの短いストリート。株式市場があり証券会社が活動する場です(『こちら』を参照)。

要は証券会社や投資銀行、あるいは株式アナリストたちの言葉に惑わされずに、現場から情報を取れ、投資候補先の社員、元社員、顧客、納入業者、競争相手などに直接アプローチしろと説いているのです。

つまり投資に際しては、証券会社やアナリストたちのフィルターを通した情報ではなくて、出来るだけ生の情報を多面的ソースから取ることが重要なのです。

次回はフィッシャーの15のポイントについて説明します。

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2013年5月 4日 (土)

保守的な投資家はよく眠る (1)

30年以上も前のことです。

スタンフォード大学のビジネススクールで、ジャック・マクドナルド教授 が教える「ファイナンス-株式投資論」の講座を受けました。

そのときに、副読本として渡されたのが『保守的な投資家はよく眠る』という本。

             Conservative

留学後、日本とアメリカの間を何回か引越しするうちに、どこかに失くしてしまいました。

先日アマゾンでこの本を買おうと思って調べたら(『こちら』)、すでに絶版になっていて、今では1冊 960ドル(約 9万5000円)もすることが分かりました(中古は60ドルから)。

著者のフィリップ・フィッシャー(Philip Fisher)は 1907年生まれの株式投資家。

ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham; 1894年生まれ)とともに、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett; 1930年生まれ)がもっとも影響を受けた人物としても有名です。

  (注)グレアムの著書『証券分析』については昨年11月にこのブログでも紹介しました(『こちら』)。

        Pf

       (Philip Fisher; from Wikipedia)

フィリップ・フィッシャーは1927年にスタンフォード大学のビジネススクールに入学します。

当時からスタンフォードのビジネススクールは2年制(2年間で卒業)を取っており、フィッシャーは1929年に卒業することになっていました。

スタンフォードのビジネススクールは1925年に創設されたばかりで、フィッシャーは第3期生にあたります。

1927年に入学した同期生は19名しかいませんでした(1年上の26年入学組はもっと少なくてたったの9名)。

設立されたばかりのビジネススクールにとって、卒業生を金融の分野に就職させることは重要な意味を持っていました。

1人がある会社に就職して評価されれば、その会社が次の年もスタンフォードの卒業生を採用することに繋がっていくからです。

1928年、サンフランシスコの Anglo-London Bank (後に Crocker National Bank に買収される)がスタンフォードのビジネススクールに対して、「卒業生を1人採用したい」と言ってきました。

しかし、1928年の卒業生(26年入学組)は9名しかおらず、そのうち金融を学んだのは2名のみ。

そしてこの2人はすでにニューヨークの投資信託会社に就職が決まっていました。

ビジネススクールとしては何とかこのサンフランシスコの銀行に卒業生を送り込みたいし、かといって適当な人材がいないと悩んでいました。

この情報を聞きつけたフィリップ・フィッシャーは、ビジネススクール当局に対して「1年を終えたばかりの自分をこの銀行に送ってほしい」と交渉します。

「もし自分が成功して銀行の期待に応えることが出来れば、そのままこの銀行に就職します。しかし自分はまだ1年しかビジネススクールを終えていないということで、銀行の期待に沿うような活躍が出来なければ、学校に戻ってきて、第2学年のコースを修了して卒業するようにします」

こうして彼はビジネススクールを1年で中途退学して、株式投資の世界に入っていきます。

ところで、1925年に創設されたスタンフォード・ビジネススクールで最初に株式投資論の講座を教えたのは、ハーバート・ドゥーガル(Herbert Dougall)教授です。

彼は1946年から68年まで22年間にわたってスタンフォード・ビジネススクールで教えますが、1961年と62年の2年間だけはサバティカル(研究)休暇を取ります。

この間にドゥーガル教授に代わって教鞭を取ったのが、ビジネススクールを中途退学したフィリップ・フィッシャーでした(当時54~55歳)。

そしてこのときにフィリップ・フィッシャーの教えを受けて感銘し、株式投資論の世界にのめり込んでいったのがジャック・マクドナルド

6年後の1968年、マクドナルド はドゥーガル教授の後を継いで、スタンフォード・ビジネススクールで株式投資論を教えるようになります。

以降、今日(2012年)まで、マクドナルド教授 は株式投資論に関係する講座の教鞭をスタンフォードで取っていますが、「40年間にわたってジャック・マクドナルド教授は学生が必ずフィリップ・フィッシャーを読むようにした」(フォーブス誌『こちら』)とのこと。

少し長くなりましたが、私が『保守的な投資家はよく眠る』を読むに至ったのも、こうした経緯によるものです。

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さて稀代の投資家ウォーレン・バフェット

「私は85%グレアムで15%フィッシャーだ」

と言っている(『こちら』)のはあまりに有名な話です。

グレアムにしてもフィッシャーにしても1929年の大恐慌を株式投資家として経験しており、そのことが彼らの投資理論に影響を及ぼしていると言われています(大恐慌時のグレアムについては『こちら』、フィッシャーについては『こちら』を参照)。

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1冊 960ドルもする『保守的な投資家はよく眠る』ですが、2003年に息子さんのケニス・フィッシャーが中心となって、フィリップ・フィッシャーの著名な著作を一つの本にまとめてJohn Wiley & Sons, Inc. 出版から、装いも新たに出版しなおしました。

『Common Stocks and Uncommon Profits and other Writings by...』という名の本です。

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アマゾンで12ドル強(約1,200円)で買うことが出来ます(『こちら』)。

フィリップ・フィッシャーは生涯次の3冊しか本を残していませんが、このうち(1)と(3)が

上記の本に収録されています(上記の本にはこのほかに1つのmonographが収録されています)。

(1)Common Stocks and Uncommon Profits (1958年)

(2)Paths to Wealth Through Common Stocks (1960年)

(3)『保守的な投資家はよく眠る』(Conservative investors sleep well) (1975年)

ということで、私はアマゾンで上記の本を入手し、連休中は30年以上も前に読んだ(3)の本『保守的な投資家はよく眠る』と、あらたに(1)の本とを読んで過ごしています。

次回はこれらの本のエッセンスについて書くようにしたいと思います。

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2013年5月 3日 (金)

暴走老人

本を買うに至るルートとしては、私の場合、大きく分けて2つ。

(1)書店で見て面白そうだから買う

(2)知人から「あの本は面白かったよ」と勧められて買う

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西条泰著 『石原慎太郎「暴走老人」の遺言』 は(1)のルートでは決して買わなかった本です。

都知事時代の石原さんの発言。

「新銀行東京をM&Aで買うことに関心を寄せているところがあるんです」

こういった発言はM&Aの世界ではタブー(それが事実であればディールの成立にプラスにならないので当事者は決して口にしてはならない)。

これは単なる一例ですが、正直なところ、私としては政治家石原慎太郎には1,000円出して本を買うほどの関心はこれまでありませんでした。(カラスを退治してくれたのは有難かったですが)。

ところが、Oさんいわく「この本はひじょうに面白い」とのこと。

虚心坦懐。

読んでみると、あにはからずや、なるほどこれは面白い本でした。

3章、4章あたりは石原慎太郎をヨイショし過ぎで、ちょっと長く感じましたが、1章、2章と5章、6章はテンポもよく、あっという間に読み終えてしまいました。

石原慎太郎の父親は脳梗塞に襲われ52歳で病死してしまいます。このとき石原慎太郎は大学受験を控えていました。

慎太郎いわく、

「一家の稼ぎ手を失った石原家の将来の見通しはつかなかった。

私の弟は、ありていに言えば不良ですわな。

私が一家の家計を支えなければならなくなった。

当時は京都大学に行って文学の勉強をしたかった。

しかし、ある人物から、そのころ制度となったばかりの公認会計士は収入がいいからやってみないかと勧められた。

そして、その合格への近道として一橋大学を紹介された」(本書188頁)。

しかし会計士の勉強は半年で止めたといいます。

法学部に入ったものの、一橋大学独特の“トンネル”と呼ばれる手法で社会学部の社会心理学のゼミ(南博教授)に入ります。

慎太郎いわく、

「一橋で学んだことなんて何もないよ。南先生も私を破門したしね。あとで和解したけどね」(本書191頁)。

私が本書で興味を持って読んだのは、このように人間石原慎太郎を描いている部分。

石原慎太郎という人物については、政治的には読者によって好き嫌いいろいろあるでしょう。(私も政治的には賛成できないことが多々あります)。

しかしたとえば、石原慎太郎が尖閣購入をぶち上げたワシントンでの演説(2012年4月16日)。

この同じ演説の中で、彼が同時に次のように述べていたのを私は本書を読むまで知りませんでした。

「私は、共産主義は嫌いですけど、毛沢東が短い論文でとてもいいことを言っている。

これは方法論としては非常に正しいと思います。

私たちの目の前にある解決しなくちゃいけないと思っている問題の背景には、もっと大きな矛盾がある。

それを彼は『主要矛盾』と言っています。

解決を強いられている問題は、実はその主要矛盾から発生した『従属矛盾』である。

背景にある大きな矛盾というものを捉えないと、本当の解決にはならない。

これから時間的空間的に狭くなっていく世界でいろんな問題が起こってくるでしょうが、

実はその背景に世界全体の歴史の中で大きな波が動いているということを知らなきゃならないと思います」(本書211頁)。

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