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2013年5月 4日 (土)

保守的な投資家はよく眠る (1)

30年以上も前のことです。

スタンフォード大学のビジネススクールで、ジャック・マクドナルド教授 が教える「ファイナンス-株式投資論」の講座を受けました。

そのときに、副読本として渡されたのが『保守的な投資家はよく眠る』という本。

             Conservative

留学後、日本とアメリカの間を何回か引越しするうちに、どこかに失くしてしまいました。

先日アマゾンでこの本を買おうと思って調べたら(『こちら』)、すでに絶版になっていて、今では1冊 960ドル(約 9万5000円)もすることが分かりました(中古は60ドルから)。

著者のフィリップ・フィッシャー(Philip Fisher)は 1907年生まれの株式投資家。

ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham; 1894年生まれ)とともに、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett; 1930年生まれ)がもっとも影響を受けた人物としても有名です。

  (注)グレアムの著書『証券分析』については昨年11月にこのブログでも紹介しました(『こちら』)。

        Pf

       (Philip Fisher; from Wikipedia)

フィリップ・フィッシャーは1927年にスタンフォード大学のビジネススクールに入学します。

当時からスタンフォードのビジネススクールは2年制(2年間で卒業)を取っており、フィッシャーは1929年に卒業することになっていました。

スタンフォードのビジネススクールは1925年に創設されたばかりで、フィッシャーは第3期生にあたります。

1927年に入学した同期生は19名しかいませんでした(1年上の26年入学組はもっと少なくてたったの9名)。

設立されたばかりのビジネススクールにとって、卒業生を金融の分野に就職させることは重要な意味を持っていました。

1人がある会社に就職して評価されれば、その会社が次の年もスタンフォードの卒業生を採用することに繋がっていくからです。

1928年、サンフランシスコの Anglo-London Bank (後に Crocker National Bank に買収される)がスタンフォードのビジネススクールに対して、「卒業生を1人採用したい」と言ってきました。

しかし、1928年の卒業生(26年入学組)は9名しかおらず、そのうち金融を学んだのは2名のみ。

そしてこの2人はすでにニューヨークの投資信託会社に就職が決まっていました。

ビジネススクールとしては何とかこのサンフランシスコの銀行に卒業生を送り込みたいし、かといって適当な人材がいないと悩んでいました。

この情報を聞きつけたフィリップ・フィッシャーは、ビジネススクール当局に対して「1年を終えたばかりの自分をこの銀行に送ってほしい」と交渉します。

「もし自分が成功して銀行の期待に応えることが出来れば、そのままこの銀行に就職します。しかし自分はまだ1年しかビジネススクールを終えていないということで、銀行の期待に沿うような活躍が出来なければ、学校に戻ってきて、第2学年のコースを修了して卒業するようにします」

こうして彼はビジネススクールを1年で中途退学して、株式投資の世界に入っていきます。

ところで、1925年に創設されたスタンフォード・ビジネススクールで最初に株式投資論の講座を教えたのは、ハーバート・ドゥーガル(Herbert Dougall)教授です。

彼は1946年から68年まで22年間にわたってスタンフォード・ビジネススクールで教えますが、1961年と62年の2年間だけはサバティカル(研究)休暇を取ります。

この間にドゥーガル教授に代わって教鞭を取ったのが、ビジネススクールを中途退学したフィリップ・フィッシャーでした(当時54~55歳)。

そしてこのときにフィリップ・フィッシャーの教えを受けて感銘し、株式投資論の世界にのめり込んでいったのがジャック・マクドナルド

6年後の1968年、マクドナルド はドゥーガル教授の後を継いで、スタンフォード・ビジネススクールで株式投資論を教えるようになります。

以降、今日(2012年)まで、マクドナルド教授 は株式投資論に関係する講座の教鞭をスタンフォードで取っていますが、「40年間にわたってジャック・マクドナルド教授は学生が必ずフィリップ・フィッシャーを読むようにした」(フォーブス誌『こちら』)とのこと。

少し長くなりましたが、私が『保守的な投資家はよく眠る』を読むに至ったのも、こうした経緯によるものです。

* * * * * *

さて稀代の投資家ウォーレン・バフェット

「私は85%グレアムで15%フィッシャーだ」

と言っている(『こちら』)のはあまりに有名な話です。

グレアムにしてもフィッシャーにしても1929年の大恐慌を株式投資家として経験しており、そのことが彼らの投資理論に影響を及ぼしていると言われています(大恐慌時のグレアムについては『こちら』、フィッシャーについては『こちら』を参照)。

* * * * * *

1冊 960ドルもする『保守的な投資家はよく眠る』ですが、2003年に息子さんのケニス・フィッシャーが中心となって、フィリップ・フィッシャーの著名な著作を一つの本にまとめてJohn Wiley & Sons, Inc. 出版から、装いも新たに出版しなおしました。

『Common Stocks and Uncommon Profits and other Writings by...』という名の本です。

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アマゾンで12ドル強(約1,200円)で買うことが出来ます(『こちら』)。

フィリップ・フィッシャーは生涯次の3冊しか本を残していませんが、このうち(1)と(3)が

上記の本に収録されています(上記の本にはこのほかに1つのmonographが収録されています)。

(1)Common Stocks and Uncommon Profits (1958年)

(2)Paths to Wealth Through Common Stocks (1960年)

(3)『保守的な投資家はよく眠る』(Conservative investors sleep well) (1975年)

ということで、私はアマゾンで上記の本を入手し、連休中は30年以上も前に読んだ(3)の本『保守的な投資家はよく眠る』と、あらたに(1)の本とを読んで過ごしています。

次回はこれらの本のエッセンスについて書くようにしたいと思います。

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