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2013年9月 1日 (日)

CEOの辞任

CEO(最高経営責任者)が「1年以内に会社を辞める」と発表した途端に、その会社の株価が急騰するとしたら、発表したCEO当人はどんな気持ちになるでしょうか。

株式市場はときに冷酷で、実際にそういった非情な動きを演じることも少なくありません。

先月マイクロソフトのバルマーCEOが「1年以内に辞める」と発表した時もそうでした。

Microsoft

        (ここ1か月間の株価の動き)

発表を受けて株価は朝から一気に35ドル20セントまで上昇(8月23日)。

一時前日引値比8.7%増を記録しました(最終的には23日は34ドル75セント、前日引値比+7.2%でクローズ)。

バルマー氏と言えば、ハーバード時代、ビル・ゲイツと同じ寮に住んでいて、ビル・ゲイツに説得されて創業間もないマイクロソフトに入社したことで有名。

実はバルマー氏はハーバード卒業(1977年)後、マイクロソフトに入社する前に、スタンフォードのビジネスクールに入学しています。

私より1学年上の「79年クラス(class of 79)」(1977年入学、79年卒業の学年)。

われわれの学年の同窓会では今でも当時のバルマー氏の話題が出たりしています(当時のスタンフォードでは冬学期、春学期の選択科目授業で1年上の学生と一緒になることがあったのです)。

さてバルマー氏はスタンフォードのビジネスクールに入学したものの卒業せずにマイクロソフトに入社。

これは彼が下した人生最高のビジネス・ジャッジメント(経営上の判断、意思決定)だったかもしれません。

なにせフォーブス誌によると、彼の個人資産は今や1兆5200億円(1ドル=100円で計算)。

全米19位の金持ちです。

      Sb_2

     (Steve Ballmer; The photo is from Wikipedia)

彼が保有するマイクロソフト社の株数は3.3億株(『こちら』)。

8月22日の引値で計算しても1兆700億円。

これがどうでしょう。

自らの辞任を発表したことで株価が上昇。

彼の持ち分もたった1日で800億円も価値を上げ、1兆1500億円となったのですから、彼自身ちょっと複雑な心境になったのかもしれません。

もっともいろいろな新聞記事を読んでみると彼は必ずしも辞任を望んでいなかった、むしろ続投したかった、というのが真相のようです。

しかし『こちら』の記事にあるように、

「バルマー氏がビル・ゲイツに代わってCEOになった前日のマクロソフトの時価総額は6000億ドルを超えていた(つまりこれが彼がビル・ゲイツから引き継いだマイクロソフトの時価総額)。

それがバルマー氏が辞任を発表する前日のマイクロソフトの時価総額は2700億ドル以下になってしまった(つまり彼のCEO在任中、マイクロソフトの時価総額は半分以下に減少した)。

(On the last day of 1999, the day before he took over as CEO, Microsoft’s market capitalization was $600 billion. On the day before he announced his intention to retire, it was less than $270 billion)」

であるからこそ、株式市場はバルマー氏辞任のニュースにポジティブに反応したということなのでしょう。

冷酷なようですが、こうした「実績なり結果による評価」、「数字による評価」が徹底しているところに、米国の資本主義の強さの秘密があるように思います。

さて話は変わりますが、日本。

1兆円とかいう数字が並んだ前段の記事に比べてぐっとスケールダウンしますが、ハンバーガー・チェーンのマクドナルドの話です。

先月27日、日本マクドナルドは、原田泳幸・会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)が会長専任となり、サラ・カサノバ氏が社長兼CEOとなる人事を決めたと発表しました。

社長退任となった原田氏が記者会見で「決して退任ではない」、「マネジメントの強化だ」と述べたことで、かえってCEO退任が大きなニュースとなって取り上げられてしまいました(たとえば『こちら』)。

もともと米国マクドナルド本社のアニュアルレポートやプレスリリースでは最近の日本の業績について厳しめの表現が目立つようになっていました。

2011年のアニュアルレポートでは、「APMEA(アジア・太平洋・中近東・アフリカ)地域は中国とオーストラリアに牽引されて好調だったものの日本は地震の影響もあり、苦戦を強いられている(face some challenges)」と説明していました。

2012年になると「日本のuneven recovery と中国経済の減速があったにも係らずAPMEA地域は売り上げ増を達成した」と表現。

今年7月22日のプレスリリースでは、「第2四半期は、世界全体では1.0%の売り上げ増・・ただし中国、オーストラリア、日本のネガティブな結果により、APMEA地域の売り上げは0.3%のマイナス」とコメント。

先月8日に発表された業績報告によると、「7月は世界全体では0.7%の売り上げ増・・ただし日本、オーストラリア、中国のネガティブな結果により、APMEA地域の売り上げは1.9%のマイナス」。

なお米国マクドナルド本社は世界各国での店舗数推移を発表しています。

これによると:

     (2007年)→(2012年)

全世界 31,377   34,480

米国   13,862      14,146

日本   3,746        3,279

主な国では日本だけがマイナス。

米国本社としては「日本にもっと頑張って欲しい」との気持ちが強かったのかもしれません。

いずれにせよ新たに日本マクドナルドのCEOとなったサラ・カサノバ氏が事業をどう立て直すのか、その手腕が期待されます。

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