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2014年12月 7日 (日)

円安というよりもドル高

現在の為替の状況は、「円安」というよりも実は「ドル高」と分析する記事が増えてきました。

まずは12月4日の日経新聞(『こちら』)。

主要25通貨の加重平均を使った日経通貨インデックスで見ると、ドルの独歩高が鮮明になるとの記事です。

     From_yahoo_japan_1

           (出所:日経新聞12月4日)

今日発売された日経ヴェリタスも「ドル独歩高」を特集。

主要6通貨に対するドルの価値を示す「ドル指数」は、2006年3月以来の高水準であると報じています。

      Rubin

           Robert Rubin

かつて「強いドルは米国の国益に適う」(a strong dollar is in the U.S. national interest)という有名な言葉を残したのは、ル―ビン元財務長官(例えば『こちら』の記事を参照)。

彼が財務長官に就任したのは、いまから20年近く前の1995年1月11日。

このとき1ドル=99円80銭。

そして長官を退任し、後任のサマーズにその席を譲ったのが99年7月2日。

このとき1ドル=120円90銭。

下の図は年間の平均レートをプロットしたもの(2014年は1月~10月まで)。

Fx

ル―ビンが財務長官を務めていた間の右肩上がり(ドル高へ向かう)が目立ちます。

ル―ビンが就任する前はどうだったでしょう。

クリントン政権の初期、ロイド・ベンツェン元財務長官やミッキー・カンター元通商代表は、どちらかというとドル安による米国の輸出産業(とくに自動車)支援を模索していたと考えられています(“Bentsen and U.S. Trade Representative Mickey Kantor privately favor a weaker dollar as a means of dealing with the U.S. trade deficit with Japan”;『こちら』)。

               Bentsen
                      Lloyd Bentsen

               Kantor         

                      Mickey Kantor

しかしベンツェンの後任として財務長官に就任したル―ビンは、堅調なドル相場を実現することで、「海外からの資金流入を促進できる」と考えました。

海外から資金を呼び込むことで、米国の債券・株式相場を安定(上昇)させる・・。

これが米国内の投資の活発化、経済成長に結びついていくと考えたのです。

榊原英資元財務官によれば、ルービンは「アメリカの為替政策をドル安による経常赤字解消からドル高による金融立国に切り替えていった」 。

この結果、「日米の政策は、ドル安・円高是正で一致し、しばしばドル買いの協調介入等もやることが出来た」とのことです(榊原英資『円はなぜ強いのか』)。

こうして1998年8月12日には1ドル=146円40銭(TTM)を示現するまでになります。[注:上のグラフは年間の平均レートをプロットしたものなので、その時々のこうした(146円といった)レートは表示されません]。

       Lew

              Jack Lew

ところで現在のルー財務長官のスタンスはどういったものなのでしょうか。

彼は「私の前任者たちと同様、私は強いドルが米国にとっては良いことであると信じている(“Like my predecessors, I believe a strong dollar is good for the United States”)」と発言(『こちら』)。

さらに「日本と欧州の通貨に比べて米ドルが強くなることは米国にとって良いこと(Lew said the stronger dollar relative to Japan and Europe “is good for the United States”) 」と

日本、欧州を名指しにして発言していることが注目されます(これは中国については同様に考えず、中国元の通貨安を認めたくないとの趣旨かと思われます)(『こちら』)。

もちろんルー財務長官はル―ビンのように為替市場で直接介入してまでドル高を実現しようとしているわけではなく、したがってその発言の効果のほどは限定的なものと思われます。

      Obama

それでも最近の米国経済の状況は、世界の中で独り勝ちといった様相を呈しています。

このところのオバマ大統領の発言を聞くと、欧州や日本について心配してくれるといった余裕さえ感じられます。

以下は12月3日のBusiness Roundtableでの大統領の発言(全文は『こちら』)。

「アメリカ経済は好調だが欧州と日本が弱い。欧州、日本、そして新興国といった世界的規模での経済の弱さによってアメリカ経済も影響を受けてしまう(could be  pulled back)可能性がある。そこで我々としては特に欧州経済を強く成長させるべく動いている」

I started off by talking about how generally optimistic I am about the economic trends. There are some concerns on the horizon -- obviously Japan being weak, Europe being weak, means that the United States, even as we chug along, could be pulled back by global weakness, not only in Europe and Japan but also the emerging markets. So we're monitoring that and we're working internationally to try to get Europe in particular to see stronger growth.

Forex3

為替レートはマーケット(市場)での需要と供給によって決まります。

と言っても、市場は生き物ですから、その時々の市場参加者の空気にどうしても左右されてしまいます。

追加緩和をした日本と、来年にも量的緩和に入る見られる欧州(ECB)。

一方で、量的緩和をさっさと終えて、来年6月~7月にも利上げに入るかもしれない米国。

さらに最近の原油安はクルマ社会の米国にとっては、日欧以上の良い影響をもたらしています。

独り勝ちの米国が欧州や日本のことまで心配してくれる余裕を持つようになり、一方で、欧州や日本としては輸出増によって経済を活性化させたいとの立場。

市場の空気は(短期間での上下はあるでしょうが、方向性としては)更なるドル高を予感させます。

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