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2017年1月23日 (月)

アプレンティス

以下、トランプが2006年に書いた著作から。

『90億ドル(約1兆円)を抱える負債を抱えていたある日、深夜午前3時に私はシティバンクから呼び出しを受けた。

借金をしている海外の銀行に電話をかけ、交渉しろというのだ。

その日は激しい雨が降っていた上、タクシーを捕まえることができなかった。

銀行までの15ブロックを歩いて行く間、私は断頭台に向かってるような心境だった。

たどり着いたときにはずぶぬれになっていた。

落ちるとこまで落ちた、という気分だった』(ドナルド・トランプ著『TRUMP 101』;邦訳『トランプ最強の人生戦略』237頁)

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私が最初にトランプの名を知ったのはニューヨークで 破綻しかけていたCommodoreホテルを彼が買収した時(1977年)。

彼はそれをグランド・ハイアット・ホテルとして蘇えらせます(1980年)。

ニューヨークのグランド・セントラル・ターミナルに隣接するこのホテルには、私自身、何度か泊ったことがあります。

外観は良いのですが、部屋と部屋の間の壁が薄くて、隣部屋のテレビの音などが聞こえてしまい、寝にくかったのを覚えています。

ただこのホテルが生まれ変わったことにより、それまではどちらかというと、荒廃していたこの地区がよみがえったことは事実でした。

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私がシカゴに駐在していたころ(1983-87年)は、興銀はまだ米国の不動産融資の経験がほとんどなく、地元銀行のファーストシカゴに教えてもらいにいったのを思い出します。

construction financing とは何か

bridge loan とは?

permanent financing とは?

といった具合にそれぞれのチェックポイント(基本はすべてcash flow で見るということなのですが)について時間をかけて懇切丁寧に教えてもらいました。

とくに驚いたのは、「cash flow を引く上では、どのテナントがどういった条件で入るかがポイントになる。といってもテナントが全部決まっていることなんて通常ない。要は、近隣のビルのテナントをこちらに引き抜くことが必要になる訳だが、その場合、近隣ビルのテナントがどういったリース契約を結んでいるかを知らなくてはならない」とのコメント。

不動産ビジネスはテナントの取り合いでもあり、勝つか負けるかの厳しい戦いの世界であることを知りました。

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そんな業界にいたトランプ(注:ただし「テナントの取り合い」とは商業用不動産についての話。トランプの場合は商業用不動産のみならず、ホテル、コンドミニアム、カジノなど幅広く手を出していた)。

その彼を一躍有名にしたのがアプレンティスというテレビ番組。

百聞は一見にしかずなので、この番組の名場面集を集めた7分間強の 『こちら』 の動画を最初の2~3分間だけでもご覧になってみることをお勧めします。

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You are fired(お前はクビだ)と告げる番組の内容とは裏腹に、トランプは先ほどの本の中でこんなことも語っています。

『腹を立てているときや、他の従業員が見ているときにクビを言い渡してはならない。 

相手の挑発に乗ってかんしゃくを起こしては負けである。 

ムカムカしてきたときは、すぐその場を離れることだ。 

どこか別の場所に行って、頭を冷やせ。 

すっかり落ち着きを取り戻したら、客観的なアドバイスをしてくれる相手と、状況を話し合うこと。 

どう処理すべきかプランを立て、弁護士と一緒に検討しよう』(上掲書58頁)

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いずれにせよ、これから世界はトランプ大統領によってかなり動揺させられることになりそうです。

トランプの掲げる米国第一主義は保護主義に繋がりうるものであり、こうした保護主義に対しては、相手国も保護主義で対抗してきます。

つまり結局は米国にもデメリットをもたらすものです。

しかし一見したところでは、(やっかいなことに)デメリット以上にメリットの方に目が行ってしまいがちです。

たとえば保護主義で、自動車メーカーがメキシコに工場を建てて米国に輸出してくれば、高率関税をかけると脅す・・・。

その結果、自動車メーカーがメキシコの代わりに米国に工場を作れば、雇用が何万人も増えるというのは、見えやすいメリットです。

(メキシコの対抗措置はメリットに比べれば、さしたる問題とされない可能性があります)

すでにトランプは、2,500万人の雇用創出を打ち出しています。

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経済・金融の分野に目をやると、リーマンショック直後に発足したオバマ政権は経済を立て直し、再びこうした危機に陥らないよう安全運転に終始しました。

たとえば2010年夏に成立した米国の金融規制改革法(ドッド・フランク法)。

これにより銀行はボルカールール(銀行の市場取引規制ルール)を課せられ、2015年7月以降、この遵守が全面的に求められるようになりました。

具体的には、銀行の自己勘定取引に制限がかけられるようになったのです。

トランプ政権は、こうした規制についてもこれを撤廃する方向で見直す可能性があると考えられています(『こちら』『こちら』、および『こちら』)。

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1%対99%といった形で形容されるほど米国の格差問題は深刻を極め、そうした人々の不満を上手にすくい取ったのがトランプ大統領でした。

しかし保護主義、分断主義によって、世界的に政治的、経済的リスクが高まってしまうとすると、我々はトランプラリー(トランプ政権で株高になる)などと呑気なことは言ってられなくなります。

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今晩 21:30〜21:45に日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演します。

トッピクスは、『トランプという現実~政権始動、米国第一の光と影』です。

よろしかったらご覧になってみてください(再放送は25日、水曜日の同時刻)。

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