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2018年8月26日 (日)

第2の敗戦

今から73年前。

1945年の敗戦が第1の敗戦であったならば、

平成の30年間は第2の敗戦、

それも経済的な意味での敗戦だったのではないか。

先週号の週刊ダイヤモンド『平成経済全史』を読んでいて、

ふとそうした思いが胸をよぎりました。

Market_cap_3

上の表は上記のダイヤモンド誌45頁に掲載された表の一部。

平成元年(左)から平成30年(右側)までの30年間の変化です。

注意すべきは左側は「日本でのランキング」を示したものではないということ。

左側も「世界ランキング」なのです。

日本の若い人にはこの事実がショッキングなようで、

『えっ!日本勢が世界1位から5位までを独占していたのですか』

といった反応も少なくありません。

なかには

『このデータは信憑性があるんですか』

といった疑問を呈する人もいます。

しかし、この表は事実です

(もともとは米ビジネスウィーク誌1989年7月17日号「The Business Week Global 1000」に掲載されたデータをダイヤモンド社が引いたもの)。

これを見て、

『あの頃はバブルだったから』

とか

『円高だったから』

とコメントする人がいます。

たしかに円高であったとすればドル換算の時価総額は

その分、高くなります。

しかし円高だったから、というのは事実ではありません。

実は、1989年は今よりもずっと円安でした(1年間の始値123.6円、高値 149.63円、安値123.6円、終値143.79円)。

バブルだった、というのは、その通りなのですが、

しかしそれでも、たとえばトヨタ自動車を見ると、

平成元年の時価総額541.7億ドルから

平成30年の時価総額1,939.8億ドルへと

3.6倍にも時価総額を高めています。

つまり元年がバブルだったからといって、

30年間もの長い間に時価総額を高められなかった言い訳にはなりにくい―

この間、3.6倍にも時価総額を高めた日本企業があるのですから。

この表にはいろいろな見方があるのでしょうが、一つ気がつくのは、

30年前には世界ランキング表には名前を見ることもなかった米国の西海岸の企業が

あっという間に躍進して世界のトップ1位から5位までを独占してしまった

という点です。

しかもこの5社のうち3社までが平成元年の時点では存在すらしていませんでした。

フェイスブックの創業者マーク・ザッカ―バーグ氏に至っては当時まだ5歳だったのです。

* * *

平成元年には世界のトップ30社のうち25社までが日本企業でした。

それが30年後、世界のトップ30社に入った日本企業は1社もありません。

でも、それがいったい何の意味を持つのでしょう。

そう思う人もいるかもしれません。

残念ながら、この30年間にわれわれの生活は少しずつ相対的に貧しくなっていきました。

たとえば世帯主が30代の世帯の平均年収はアメリカが990万円(注1)。

これに対して、日本はたったの560万円(注2)。

(注1)アメリカ合衆国国勢調査局「2016年:世帯の所得」(2017年8月10日)

  為替レートは昨年末のものを使用

(注2)平成28年 国民生活基礎調査の概況(平成29年6月27日、厚生労働省)11頁

* * *

いろいろな意味で日本は遅れをとってしまったのです。

なぜそうなったのか、どうしたら挽回できるのか。

これを考えないことにはますます差をつけられてしまいそうです。

公的セクターの力が強くなりすぎていないか、

あるいは民間の方も政府に頼り過ぎていないか・・・

世界のトップ1位から5位までが、いずれも首都ワシントンDCやニューヨークから遠く離れた西海岸の企業であることにも、何らかのヒントがあるのかもしれません。

いちばん避けなくてはいけないのは、『あの頃はバブルだったから』という言葉で片付けてしまうこと。

これは思考停止以外の何ものでもありません。

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2018年8月12日 (日)

太陽を創った少年

「14歳で核融合炉を作った少年がいる」と聞いて手にしたのが、この本。

『太陽を創った少年』(トム・クラインズ著)

「なにをバカな」と思う方は、まずはこの少年が2012年にTEDで講演した時の模様をご覧ください。

『こちら』です。

たった3分25秒。日本語の字幕付きです。

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写真はオバマ大統領(当時)に説明するこの少年(テイラー・ウィルソン君)。

どんな核融合炉を作ったのでしょうか。

『こちら』に日本語で解説する記事があります。

そんなテイラー君が2013年、再びTEDに登壇。

その時の動画が『こちら』です(今度は12分50秒;日本語字幕付き)。

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こちらの写真はテイラー君の個人サイト(『こちら』)から。

『太陽を創った少年』は、ジャーナリストのトム・クラインズが著したノンフィクション。

氏は、ナショナル・ジオグラフィックをはじめ、ガーディアン、ネイチャー、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等に寄稿し、ポピュラー・サイエンスの寄稿編集者としても知られています。

この本の序章には著者による次のような一節も。

『親としては、ケネスとティファニーが子どもの才能を伸ばすために取った、意外性にあふれたアプローチに刺激を受けた。

テイラーが恐ろしいことに興味を持って追いかけようとしていたときに、ふたりは―そしてふたりがテイラーの周回軌道に連れてきた教師や指導者は―テイラーを応援するために、ありとあらゆる手段を用いた。

個人的には、テイラーの才能そのものよりも、両親の支えのほうに感銘を受けた。

私はやがて、テイラーの成功は、彼の優れた頭脳の産物というだけではなく、とりわけ素晴らしい両親に恵まれたおかげなのだということを理解するようになる』

ということで、本書は、小学生~高校生のお子さんを持つ親にとくにお勧め。

誰ですか。

『自宅で子供が核融合炉を作り出したら大変だ』、と心配しているのは。

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2018年8月 8日 (水)

歴史に学ぶ

思い込みの恐ろしさ。

人間はついつい楽観してしまう。

都合のいいように、安易な解釈をしてしまう・・。

お読みになった方も多いと思いますが、8月6日の日経新聞「春秋」のコラム。

印象に残ったので、その一部を下記に再掲します。

* * *

『日本中の都市が次々に焼け落ちていくのに、なぜか広島には空襲がなかった。

1945年夏。

市民は首をひねりつつも、まずは平穏を喜んでいた。

浄土真宗本願寺派の「安芸門徒」が多い土地柄だから、米軍が攻撃を手控えている・・・。

そんな噂まで流れていたという。

思えば、なんと悲しい楽観だったことか。

そのころ米軍は日本本土への原爆投下計画を着々と進め、目標検討委員会を設けて犠牲とする都市を絞り込んでいた。

さまざまな候補地が浮かんでは消え、実際に投下されたのが広島と長崎だった。

核を使うため、2つの都市は「温存」されて焼夷弾の猛威を免れていたのである』

(2018年8月6日、日経新聞、1面、春秋コラムより一部を抜粋しました)

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2018年8月 4日 (土)

1億5597万人

厳密には、1億5596万5000人(155,965,000人)なんですが、

昨日発表の雇用統計でこの数字が出たことで、トランプ大統領は上機嫌。

彼のツイッターにはこの数字を強調するものが2つも載りました(リツイートの形で)。

これは何の数字かというと、米国で雇用されている人の人数。

アメリカで雇用統計を見る場合、ポイントは civilian noninstitutional population。

これは次のような人を言います。

(1)16歳以上で、

(2)米国の50州、もしくはワシントンDCに居住し、

(3)刑務所、精神科病院などの施設、高齢者施設などに入っていなくて、

(4)兵役に就いていない人

(英語だと、the civilian noninstitutional population refers to people 16 years of age and older residing in the 50 States and the District of Columbia who are not inmates of institutions (penal, mental facilities, homes for the aged), and who are not on active duty in the Armed Forces.)

この人たちの合計が、下表の通り、257,843,000人(出所は『こちら』)。

Labour_2

このうち、雇用されている人、あるいは雇用されることを積極的に望んでいる(actively looking for work)人が、civilian labor force です。そして、この人数が、162,245,000人。

少しややこしくなりますが、civilian labor force を civilian noninstitutional population で割ったものが participation rate (労働参加率;62.9%)になります。

civilian labor force の162,245,000人は、

上表の通り、

employed 155,965,000人(96.1%)と

unemployed 6,280,000人(3.9%→これが失業率)

とに分かれます。

と、こんなややこしい説明をしても、普通の人には受けません。多分。

ということで、『155,965,000人も雇用されているんだ、凄いだろ!』と、つぶやくのがトランプ流。

もちろんこれは史上最高の数字で、トランプが19ヶ月前に大統領に就任してから、この史上最高の記録が塗り替えられたのは、先月で11回目なんだとか・・。

もっとも・・

ウォール街の解釈は少し違っていて、非農業部門の雇用者数の増加(対前月比)が市場予測(+19万2千人)を下回る 「+15万7千人」だったというものでした。

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