ここがおかしい? 日本のIPO市場
今月半ばになりますが、『ここがおかしい?日本企業』と題して、株主優待の話を書きました(『こちら』)。
今回は、「その続き」という訳でもないのですが、同じく『ここがおかしい?』と題して、日本のIPO市場について取り上げます。
IPOとは initial public offering の略で、新規に株式を証券取引所に上場すること。
たとえば今年6月19日、メルカリが東京証券取引所に上場。
公開価格(公募・売り出し価格)は3,000円。
6月19日の市場では取引開始直後から買い注文が殺到。
午前11時過ぎ、3,000円の公開価格に対して5,000円の初値が付きました。
そして後場にはストップ高の6,000円まで上昇する局面も。
しかしどうでしょう。
メルカリは現在2,766円。
初値はおろか、公開価格さえも下回っています。
こういったことはメルカリだけでなく、日本のIPO市場では頻繁にあることです。
また例えば政府によるNTT株第二次売り出し(1987年11月)。
売り出し価格は255万円(これは分割調整後ベースで1万2,500円)。
現在のNTT株価は4,600円。
つまり30年以上経っても、現在の株価は当時の36%しかありません。
2015年11月4日に上場した日本郵政は?
公開価格は1,400円、初値は1,631円。
そして現在は1,379円。
『日本のIPO市場で儲けるには、証券会社から公開価格で分けてもらって、初日、もしくは2~3日のうちに売る。長く持ってはダメ』
と考える人も少なくありません。
当然のことながら、こうしたことは不健全。
じっくり持とうとする投資家に損をさせてしまっては、企業はその後のエクイティ・ファイナンス(公募増資など)が難しくなってしまいます。
実際のところ、日本ではIPOした後に、公募増資をして再度株式市場から資金調達をするということがあまりありません。
つまりIPOがベンチャー企業にとっての目的となってしまっています。
だから創業者は目一杯高い値段に公開価格を設定するよう引受証券会社に求めてきます。
一方で、たとえばアメリカは違います。
IPOはあくまでも資金調達の一手段とみられています。
創業者は第2、第3のエクイティ・ファイナンスを視野に入れていますから、最初のIPOの値段を目一杯高くするようなことはしません。
テスラは2010年に上場しましたが、その後、ほぼ毎年のようにエクイティ・ファイナンスを実施してきています。
日本の常識は世界の非常識。
少なくともIPO市場を見る限り、そのことが窺えそうです。
そしてこのことは日本の投資家と企業の双方にとって不幸な結果をもたらしています。
必ずしも売り抜けることを意図しない、真面目な投資家はIPOで(往々にして)損をしてしまいます。
一方で、企業の方も、IPO後、株式市場で第2、第3の資金調達を行う「芽」を自ら断ってしまい、成長のための資金調達を行わなくなってしまっています。
そんなことも考えながら、一昨日の日経CNBCテレビ、『ヴェリタストーク』ではお話ししました。
『こちら』でご覧いただけます。
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