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2020年1月13日 (月)

ベンガジの悲劇は繰り返さない

久しぶりに株式投資に関する記事を書きます。

と言っても、年末から年始にかけては、米国・イランの衝突によって相場が翻弄されました。

【1】米国・イランの衝突

何が起きたのか、時系列で記しますと:

12月27日、イラク北部の油田都市キルクーク駐留の米軍基地が、武装組織「カタイブ・ヒズボラ」からと思われるロケット砲の攻撃を受けました。

米国人1人が死亡。

攻撃をしかけたと思われる「カタイブ・ヒズボラ」はイラクやシリアで展開するシーア派・親イランの武装組織。

このため翌28日、米軍は「カタイブ・ヒズボラ」のイラクにある拠点3カ所とシリアの拠点2カ所をF15戦闘機で空爆。

このとき標的となったのは、「カタイブ・ヒズボラ」の武器庫や司令部でした。

「カタイブ・ヒズボラ」は、イラン革命防衛隊や「レバノンのヒズボラ」から資金や武器などの支援を受けていると言われています。

それでは「そもそもレバノンのヒズボラって何なのだ」という疑問も湧いてくると思いますが、

ヒズボラは、レバノンにおいて、イラン型のイスラム共和制を樹立しようとする組織で、今から40年近く前のレバノン内戦の最中に誕生。

1983年には首都ベイルートで米大使館(4月)、米仏海兵隊兵舎(10月)を相次いで自爆攻撃し、

2000年以降もイスラエルとの間で軍事的衝突を繰り返してきています。

話を元に戻します。

12月27日の米軍による空爆に抗議し、12月31日からイラク・バグダッドにある米国大使館へのデモが発生。

デモ隊は大使館の壁を放火したり、大使館内への侵入を試みたりするほど過激化しました。 

このとき、トランプ大統領が盛んに言っていた言葉が、

「ベンガジの悲劇は繰り返さない」(『こちら』)。

ベンガジの悲劇とは、リビアの第2の都市ベンガジの米国領事館が2012年に襲撃された事件。

人格者として現地リビアの人たちからも尊敬を集めていた米国のスティーブンス駐リビア大使ら4人が殺害されました。

このとき米国のヒラリー国務長官に不手際があったとして、前回の大統領選の際には、

トランプ陣営が執拗にこの点を攻撃。

ヒラリー敗北の一因となりました。

現在でも、ベンガジ領事館の襲撃を生き抜いて帰還した人たちは当時の民主党政権の不手際を追求、

「仮にトランプが当時指揮を執っていたとすれば悲劇は防げた」と主張しています(『こちら』)。

実際のところ、31日の在バグダッドの米国大使館への襲撃に対して、トランプは素早く対応しました。

直ちに100名以上の海兵隊を現地に派遣するとともに、アパッチと呼ばれる攻撃用ヘリコプターを2機投入、大使館を防衛したのです(『こちら』)。

そして1月2日、大使館襲撃の背後にソレイマニがいるとの報告を受け、トランプはソレイマニ殺害を指示、

3日、無人機を使ってソレイマニを殺害しました。

これに対して、イランは7日、イラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃を行うことで報復。

イランの攻撃が限定的で人的被害も出なかったことから、

トランプは8日、

「イランによる昨日のミサイル攻撃に対しては、

軍事的な報復ではなく追加経済制裁で対応する」

旨の方針を表明しました。

これを受け、ダウ平均株価は8日、162ドル上昇。

10日には、取引時間中に一時的ですが、前人未踏とされていた29,000ドルの大台を突破しました。

【2】ベンガジの悲劇

トランプは10日、オハイオ州トレドで演説(『こちら』)。

民主党政権下で起きたベンガジの米大使館襲撃事件に再度言及し、

「ソレイマニはバグダッドのみならず各地の米国大使館を襲撃することを企図していた、自分はそれを未然に防いだ」

と自らの成果を誇示しました。

(注:ソレイマニに関しての日本のマスコミ報道がややおかしいという点については、『こちら』『こちら』『こちら』を参照)

実は、ベンガジの悲劇はマイケル・ベイ監督による映画になっています。

『13時間』と題する映画なのですが、これを見るとトランプが再三再四にわたってベンガジを例に引きながら民主党を攻撃する理由が分かります。

トランプは自分の政権下でベンガジの悲劇のようなことが起きることを決して許さない。

それは自らの首を絞め、再選が阻止されることに繋がるからです。

だからこそソレイマニ殺害を決断したと言えるのかもしれません。

別言すると、ソレイマニ殺害に対するイランの報復が、もし仮に弾道ミサイルによる在バグダッドの米国大使館攻撃であったとすれば、

米国はイランとの間で全面戦争に突入していた可能性が大でした。

イランもその辺のことを分かっていたので米軍基地攻撃に留めたのだと思います。

【3】大統領選挙と今後の相場見通し

年末・年始の米国・イラン衝突が連日のように相場を大きく乱高下させたように、

大統領選挙のある今年はトランプが例年以上に選挙を強く意識して行動する、

そしてそのことが相場を大きく動かすことに繋がりうることを覚悟しておく必要がありそうです。

ベンガジの悲劇は繰り返さないートランプは再三再四にわたってこう発言してきていますが、

大統領選を控えるトランプにとっては、もう一つの重要なポイントがあります。

それは「不景気にはしない。出来れば今以上に株価を上げる」

ということです。

アメリカの大統領選挙では現職が圧倒的に有利です。

私が今でもよく覚えているのが、1972年の大統領選挙。

当時私はアメリカの高校に通う高校生(AFS留学生)でした。

選挙に際し、現職のニクソン大統領が用意したバンパーステッカー(車のバンパーに貼る広告)は、単に「Re-elect the President」というもの。

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現職が強いということを熟知したニクソンは、自分の名前さえ出さない(対立候補と対等ではない、自分が上位ということを選挙民に印象付ける)という戦略を取ったのです。

実際のところ、過去100年の歴史において、現職が再選されなかったのは4回だけしかありません。

1992年のブッシュ(父)

1980年のカーター

1976年のフォード

1932年のフーバー

です。

そしてこれらの現職敗退に共通するキーワードは「リセッション」(景気後退;1992)もしくは「スタグフレーション」(景気後退下のインフレ;1980)といった経済関係の不振を示す言葉です(注:1976年の前年にはベトナム戦争後の不況がアメリカを襲い、失業率は9%に達しています)。

トランプはこのことを誰よりも強く意識しているはずですから、これから先、選挙のある11月にかけては、

景気のエンジンをふかし続けるように努力するはずです。

逆に民主党候補有利となれば、市場が一気に冷え込む可能性が大です。

「サンダース、ウォーレン、ブティジェッジの何れかが大統領になれば市場は3割から5割下落するだろう」

これはスティーブ・ギドゥマル氏の言葉です(『こちら』)が、このように占う人は少なくありません(ほかにもドラッケンミラーなど(『こちら』))。

もっとも現在の選挙情勢を見る限り、トランプに勝てそうな民主党候補は見当たりません・・。

マーケットにとってはそれが望ましいのでしょうが、米国にとって、あるいは世界にとってそれが望ましいのかどうかは、別の話です。

"How dare you!" 

こう憤慨するグレタさんの声が聞こえてきそうです。

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