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2020年10月18日 (日)

株主優待について考えてみる

日本では株主優待は好ましいものと考えられています。

実際、マネーや株式投資関係の雑誌や新聞のページをめくると、

「A企業の株主になるとこんな特典がある」

といった記事が目を引きます。

はたしてどのくらいの企業が株主優待を行っているのでしょうか。

   Jal

     (上記はJALのウェブサイトより)

少し前の記事ですが、日本では上場企業の36%が株主優待を行っている旨が報じられていました(日本経済新聞 2018年1月13日)。

一例をあげてみます。

自動車会社スズキのウェブサイトにはこうあります。

『当社は、株主の皆様の日頃のご支援に感謝するとともに、当社株式の魅力を高め、長期保有の促進を目的として株主優待制度を実施しております。

100株(1単元)以上の当社株式を決算期末(3月末)現在保有する株主様を対象として、当社が所在する静岡の産品「静岡茶2本セット(80gリーフタイプ及び60gティーバッグ)」を株主優待品としてお届けいたします』

株主になることで、静岡茶がもらえる!

ちょっと得した気分になります。

それにスズキの立場に立って考えてみれば、地元の産品ですので、地元貢献にも繋がるといった利点があるのかもしれません。

さて、ここで視点を少し変えてみましょう。

あなたは一戸建てでなくて、マンションを所有しそこに住んでいるものとします。

マンションの理事会が、住民(区分所有者)全員に日本茶のセットを配ることを決めたとしたら、どうでしょうか。

自分たちのお金をそんなことに使ってほしくないとばかり、反対する住民(区分所有者)も出てきてそうです。

しかしスズキが配る静岡茶の場合はどうでしょうか。

マンションの理事会の決定には反対であっても、スズキの取締役会の決定には株主として歓迎するというのは何故でしょうか。

ちなみに米国では株主優待(shareholder perks と英語で言います)はほとんど行われていません。

2017年4月2日付けの日経新聞(『こちら』)によると米国で株主優待を行っているのは10社未満。

S&P500に採用されている会社だけでも500社もあるのですから、全体で10社未満というのはほとんどゼロに等しいようなレベル。

もちろんダウ平均株価に採用されている30社で株主優待を実施しているところは一社もありません。

なぜでしょうか。

先ほどのマンションの例を思い出してみてください。

企業は株主のものであり、株主優待とは、株主が自分の資産を取り崩して自分に支払う行為です。

つまり会社から財産が流出したら、それは株主の負担になるということです。

ですから株主優待を行うということは、基本的には「行って来い」の関係です。

つまり株主優待を行なおうと行なうまいと、経済効果は等しい(タコが自分の足を食うような関係)のですが、

配当金(現金)と違って優待の内容から得られる便益は大部分の株主にとっては現金以下の価値しかありません。

株主の中にはコーヒーを飲む方が好きな人もいて、全員が静岡のお茶を好きだとは限らないのです。

また株主優待を行なうことの事務コスト(郵送料、配送に伴う労働コスト)も馬鹿にならず、その分だけ株主にとっての企業価値は毀損されます。

つまり理論的には優待実施後には「優待の経済価値+アルファ」分だけ株価が下がることになります。

このように株式投資の世界では、

日本の常識=世界の非常識

であることが少なくありません。

追ってこれから先、こういったことを少しずつ紹介していきたいと考えています。

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