2019年6月10日 (月)

中村正直博士

寛政の改革を行った江戸中期の老中、松平定信が残した言葉に次のようなものがあります。

「女はすべて文盲なるをよしとす。

女の才あるは大に害をなす。

決して学問などはいらぬものにて、仮名本よむ程ならば、それにてことたるべし。

女は和順なることをよしとす」

明治初期はまだこの言葉が相当程度通用していた時代。

そのような時代に、女子教育の必要性を説いてまわったのが、中村正直博士(1832-91年)でした。

彼は十代から内々で蘭学を学び、早くから海外の事情に明るく、幕末の開国後はオランダ語より英語の方が必要だと知って、英語を学び始めたと言います。

ところが攘夷党から国賊視され、難をさけるため、(おそらくは)小栗上野介の計らいで、幕府からイギリスへ留学するよう命じられます(1866年)。

ロンドンに行った中村正直は当時すでに35歳。

にもかかわらず、小学校に入って小学生と机を並べて勉強。

ここで中村正直は驚きます。

それはなぜか。

イギリスの小学生の知識のレベルです。

先生が教室で、

「雨はどうして降るか」

「雷はなぜ鳴るか」

といったことを聞いてきます。

こうした先生の質問に中村正直は答えることが出来ません(語学の問題ではなく、当時、神童ともてはやされた幕末期の秀才でも、そもそも雨はどうして降るかが分からなかったのです)。

ところがイギリスの小学生たちは、さっさと答える。

「君たちはどうしてそんなことを知っているの?」

と聞くと、お母さんから聞いたという。

なにかにつけイギリスの母親の知識や識見の高いことを知った中村正直は、

当時の日本の母親を省みて心打たれるものがあったと言います。

「これではだめだ。

日本も女子教育に力をいれなければ、日本は危うい。

婦人がいまのままでは日本は外国と競争できない」

そう痛切に感じ、帰国後、明治の新政府の要人たちに対して、女子教育の必要性を説いてまわったと言います。

* * *

以上のエピソードは先般ご紹介した『おんな二代の記』に出てくる一節。

この本の初めから4分の1くらいまでは、こうした明治の初期ならびに前半の頃のエピソードが満載。

私はたいへん興味深く読みました。

* * * 

ところで、この本を紹介した時の私のブログでは、

「こうした先駆者の活躍があって今の日本がある訳ですが、国際的にみると日本はまだまだ。World Economic Forumが発表した男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数によると、日本は149か国中110位でした」

と書いて締めくくりました。

そうした中で最近起きた「#KuToo運動」。

こうした状況を知るにつけ、日本ではまだまだ超えるべき壁がたくさんあるように思えてきます。

「#MeToo は分かるけど #KuTooって何?」

という方は、『こちら』『こちら』をどうぞ。

海外でも日本のこの話が結構取り上げられています。

 

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2019年6月 5日 (水)

受験番号3583番

2週間ほど前ですが、早稲田大学高等学院D組の同窓会に出ました。

高校時代の同窓会と言っても、私の場合、3つの同窓会があります。

①AFS留学前に2年半を共に過ごした学院D組の同窓会

②米国の高校の同窓会

③米国から帰国後、再編入した学院F組の同窓会

今回は上記①の同窓会でした。

驚いたことに1人の級友が入学時の全員の受験票写真を持ってきていました。

当時、文芸担当のI先生が、A3サイズの紙に

「昭和44年4月13日、1時限目、シーンと静まり返る1Dの教室に第1歩を運んだ・・」

との文章を残していました。

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そして、その紙にはなんとクラス全員の受験票の写真が貼られていたというのです。

以下は、全員の受験票写真のうち、私の箇所のみを切り抜いたものです。

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このA3サイズの紙は、I先生から、クラス全員、一人ひとりに対して、何かの機会に手渡されたとのことですが、

私を含め、ほとんどのクラスメートは覚えていません。

それを一人だけ覚えていて、しかも50年間、ずっと大切に保管していたという人がいたのです。

* * * *

ところで高校1年というと、社会の仕組みもまだよく分かっていません。

自分が何をしたいのか。

何に向いているのか。

こういったことが分からず、文系、理系の進路分けが始まるとしたら、それは相当おかしいのではないか。

そんなことを編集者の方にお話ししていたら記事になりました。

『こちら』です。

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2019年5月 5日 (日)

ダイバーシティ

グーグルで「ダイバーシティとは?」と検索をかけると、お台場のショッピングパークが出てきたりします。

ウィキペディアを引くと

ダイバーシティ・マネジメント(Diversity Management)とは、

個人や集団間に存在するさまざまな違い、すなわち「多様性」を競争優位の源泉として生かすために文化や制度、プログラムプラクティスなどの組織全体を変革しようとするマネジメントアプローチ

と説明されています。

* * * *

A社(実在しません)の役員会で。

(人事担当常務)「採用試験の結果ですが、上(トップ)1番から15番までが全員女性でした」

(社長)「去年もそんなようなことを言っていたな。結局、上から7人に入社してもらったが、全員女性になった」

(人事担当常務)「今年はどうしましょう」

そんなやり取りをしている役員会の構成メンバーは全員が50歳以上の日本人男性でした。

 * * * *

先日、ご紹介した「ナデラさんの本」から。

「私がマイクロソフトに入社した頃(岩崎注:1992年)には、インド人のエンジニアやプログラマーの間に暗黙の了解があった。

これだけ会社に貢献しているにもかかわらず、バイスプレジデントに昇進した者はまだひとりもいない」

「実際、あるインド人社員はかつて上級幹部から、昇進できないのはなまりのせいだと言われたことがある」

    Hit-refresh

* * * *

しかしながら、自分とは違う考え方を持った人、自分とは違う境遇で生まれ育った人、自分とは違う生き方、働き方の人と接することで、

人は、様々なインスピレーションを受け、自分自身の成長への糧とすることが出来るようになります。

相手に対する思いやり、寛容、共感の気持ちを持つことが出来るようにもなります。

ナデラさんによれば、現在のマイクロソフトでは多様性の受け入れの進捗度と役員報酬を連動させているとのこと。

はたして日本企業で、部門長の評価や役員の報酬を、多様性の受け入れの進捗度と連動させているところがどれくらいあるでしょうか・・。

日本では大手企業で女性の専務執行役員が登場したことが新聞記事に載るような状況ですから、米国の先進的な企業に比べると20~30年くらい遅れているのかもしれません。

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2019年4月28日 (日)

iPS細胞を用いた再生医療最前線

「NPO法人医師と団塊シニアの会」が共催者となっている講演会のお知らせです(縁あって、私は当NPO設立以来、理事を務めています)。

5月19日(日曜日)14時から。

慶応義塾大学(三田)北館ホール。

なお下記と同じ告知が明日(29日)と1日の朝日新聞に掲載される予定です。

Dankai

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2019年4月15日 (月)

ゼロヒャク

数年前のこと。

車を運転していて、右側のビルの中に入って駐車しようと思い、右折のシグナルを出して一旦停止した。

そこへ対向車線を向こうからタクシーがやってきて、あっという間にタクシーの後ろの右側ドアが私の車の先端に当たった。

なんとこのタクシーは左右両サイドから客を乗せた後、右側のドアは閉めずに開けたまま走行してきたのだ。

開いたままの右側ドアは車線をはみ出して、運悪く私の車の右側ヘッドライトを直撃したのである。

「ゼロヒャクですから」

タクシーの運転手はこう言って詫びてきた。

このとき初めて「ゼロヒャク」の意味を知った。

これは保険でいう過失割合(0:100)のことを指す言葉で、私は停止していたので過失割合はゼロ。

タクシー会社の保険ですべてカバーしてくれるので「心配しなくてよい」とのことだった。

そうは言っても警察を呼んで調書を作ってもらたっりしたので、実際には結構手間暇がかかった。

ただその時に知った「ゼロヒャク」という言葉は、結構良い言葉だと思った。

というのも、現実の社会ではすっきりと「ゼロヒャク」と認定されないことが多いからだ。

その昔、日本の銀行で働いていた時。

元本を返さず利息も払わないでいることを当然だと思っている会社(債務者)があった。

返してもらおうと強く対応すると、難癖をいろいろとつけてくる。

銀行の上司や役員のところに行って、有ること無いこと、担当する銀行員の悪口を言って回ったりするのだ。

どんなに悪口を言われようと、銀行が組織として「ゼロヒャク」をきちんと認定してくれるのであれば、現場の行員は安心して回収に専念できる。

しかし「あそこまで取引先を追い詰めたのは担当の銀行員の方にも少しは問題があったのではないか」とばかり、

「10:90」とか「20:80」くらいに判断されてしまうとなると、

現場の行員はやってられない。

最悪、「回収の手を緩めた方が得だ」といった間違った判断をしてしまう。

* * * * *

「和を以て貴しとなす」国に生きる我々は、往々にして「足して2で割る」とか「喧嘩両成敗」的な発想に立ってしまうことがある。

「ゼロヒャク」ではなくて、「10:90」とか「20:80」くらいに判断してしまうのだ。

しかしそれでは(大げさな言葉でいえば)社会正義が実現できないことが多い。

言うべきことは言う。

守るべきは守る。

その結果、相手が理不尽な対応をしてきたり牙をむいてきたときには、

組織としては正しい行動をした人を守るべきなのだ。

組織の上に立つ人は、安易に「足して2で割る」とか「喧嘩両成敗」的な発想に立つことを慎むべきだと思う。

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2019年2月26日 (火)

周産期のワクチン接種

私が理事を務める「NPO法人医師と団塊シニアの会」(代表理事 辻 哲夫)では、ワクチン接種が最大の予防であると考え、毎年ワクチンを考える講演会を開催してまいりました。

今回が5回目になりますが、 前回は、すでに定期接種化されているワクチンが、なぜ定期接種化できたのか、その社会的・技術的背景、ウイルスの特性、などについてお話しを伺いました。

その折ご参加いただいた方から妊婦さんとワクチン接種について多数ご質問をいただきました。

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今回は、そのような質問に応えるかたちで、妊娠の可能性のある方、妊婦また男性はどうしたらよいかなどについて、専門の先生に解説いただきます。

周産期のワクチン接種は、ここ数年で激増しており、環境が大きく変化しております。

また、予防接種の義務がなかった大人の男性の風疹感染が広がってしまったり、 多くの医師たちの努力の結果ようやく撲滅宣言ができたすぐあとに、外国人から「はしか」が感染し広がるなど、 過去には意識しなかった危険が広がっております。

ご関心のある方はぜひご参加ください。

また皆様のお知り合いにこの講演会をお知らせいただき、参加を募っていただければ幸いです。

参加ご希望の方は下記を印刷の上、FAXにてお申し込みください。

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2019年1月19日 (土)

ネットフリックス効果

いま米国で最も話題の日本人と言えば、近藤麻理恵さん。

今年1月1日からネットフリックスで始まった近藤さんの『Tidying Up with Marie Kondo』という番組。

この番組の人気が凄いのです。

これはネットフリックスによるオリジナル制作番組なのですが、この番組に影響されて、『断捨離』へと走る米国人がたくさん出てきて社会現象化しているのだとか(例えば『こちら』の記事)。

あっという間に世界的なインフルエンサーになってしまった近藤さん。

あらためてネットフリックスのコンテンツ制作力(目のつけどころ!)、そしてその影響力の大きさに驚かされます。

『いったいどんな番組なのか』と興味を持たれる方は、

『こちら』で昨年末配信されていたオフィシャル・トレーラー(予告編)をご覧になってみてください。

さてそのネットフリックスですが、木曜日の取引終了後に発表された決算がいま一つの内容で昨日の株価は下落。

しかし株主への手紙(『こちら』)やインタビュー(『こちら』)を見ると面白いですね。

CNBCが記事(『こちら』)にしていて、その見出しがすべてを物語っています。

『Netflix says it's more scared of Fortnite and YouTube than Disney and Amazon』

要は、ネットフリックスによると、彼らの真の敵はディズニーやアマゾンではない。

彼らが恐れるのはフォートナイトやユーチューブなのだ、と。

ユーチューブはいいとして、『フォートナイトとは何?』という方は、『こちら』をどうぞ。

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2019年1月 1日 (火)

明けましておめでとうございます

今年もよろしくお願いいたします。

Inoshishi3

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2018年12月31日 (月)

投資家に求められるもの

投資家に求められるもの、それは自分なりに会社のことを研究して、こうなるに違いないと判断したら、他人の言葉や、たんなる印象論に惑わされないことだと思います。

まぁ、言うのは簡単で、実際に実行に移すのは、難しいのですが・・。

2010年5月13日。

私はアップルの株を買い、ブログでそのことを書きました(『こちら』)。

すると、多くの人たち(知人、かつての仕事仲間)から、

『こんなに上がってしまった後で、買うなんて』

とのコメントをもらいました。

実際のところ、アップル株はその後、しばらく低迷。

しかし当時の株価、261.68ドルは、7分割前のものですから、分割調整後のベースでは、37.38ドル。

現在ではそれが156ドルへと、4倍以上になっています。

2016年9月12日。

このときはテレビで、 「IoT時代に岩崎さんが一番注目している(一押しの)銘柄は何か」と聞かれ、その少し前に自分自身で買っていた「NVIDIA」と答えました。

このときのやり取りもブログに残しています(『こちら』『こちら』など)。

当時のNVIDIA株価もすでにかなりの勢いで上がってきた『後』でした。

『ちょっと無謀な発言だったんじゃないか』

テレビを見て、わざわざ電話で忠告してくれる友人もいました。

しかしこの年の1月に発表された自律走行車向けの車載人工知能エンジン「Nvidia Drive PX 2」は、人の脳に近いプロセスを行うニューラールネットワークを用いたディープラーニング(いわゆる深層学習、機械学習)を特徴とし、1秒間に24兆回の演算を可能とするものでした。これは当時のMacbook Pro150台分の演算性能に相当。

ちなみに今では、320 TOPS (tera-operations per second)と、もっとずっと進化しています(『こちら』『こちら』)。

私がテレビで発言した時のNVIDIA株価は 60.75ドル。現在では 133.65ドルと2倍以上になっています。

会社のウェブサイトを頻繁にチェックして、技術の動向を理解する―地味な作業ですが、こうしたことの繰り返しが、会社の持つ本源的価値(intrinsic value)に関する自分なりのconviction (確信)に繋がっていくような気がします。

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2018年11月 5日 (月)

401K

先々週、および先週の月曜日に続き、現代ビジネス(現代ISメディア)インタビュー記事の第3回目です(『こちら』)。

                    Is

今回は知られているようで、知られていないアメリカの401Kについて。

まずは、クイズから。

日本の高齢者(65歳以上)世帯の平均所得額は月26万円、年収約308万円です。

(出所)平成28年 国民生活基礎調査の概況(平成29年6月27日、厚生労働省)12頁

平均値の月26万円は(人によって違うのでしょうが)、国民年金、厚生年金、企業年金などから成り立っているものと思われます。

(個人ではなく世帯の平均値です)。

では、アメリカで世帯主が65歳以上の世帯の平均所得額は幾らでしょうか。

日本と同じように月26万円くらい?

65歳以上ですから、90歳の人も、95歳の人も、全部含めた上での平均値です。

答えは、日本の2倍以上。

月58万円、年収にして約700万円です。

(出所)アメリカ合衆国国勢調査局「2016年:世帯の所得」(2017年8月10日) 

なぜ、こんなに差がついてしまったのでしょうか。

要因の一つは投資です。

とくにアメリカ人の3人に1人が加入している401K。

たとえば、多くのアメリカ人は、トランプ大統領のことを苦々しく思っています(もちろんトランプを支持する人も多くいます)。

トランプが嫌いなアメリカ人でも、401Kで運用している自分の資産を見ると、複雑な気持ちになります。

なにせトランプ大統領が決まる前の2016年11月8日、ダウ平均株価は18,332ドル。

それが2年間でどのくらいになったのでしょうか。

最近、日本のマスコミでは、米国株急落とか、騒がれています。

それでも現在のダウ平均株価は25,270ドル。

わずか2年で4割近く(厳密には38%高)も上げています。

今回の現代ビジネス(現代ISメディア)インタビューでは、こうした点を含め、どうしたら我々日本人がもう少しリッチになれるのかを論じさせて頂きました。

『こちら』です。

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