2024年7月 8日 (月)

バフェットの「堀」とは

本日は、日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トピックは、バフェットの堀について。

ウォーレン・バフェットは幾度となく「堀」について話したり書いたりしてきています。

たとえば、2008年2月、株主への手紙では、

A truly great business must have an enduring “moat” that protects excellent returns on invested capital.

(真に優れたビジネスには、投下資本に対する優れたリターンを守る永続的な「堀」がなければならない)

と記しています。

Moat

彼の言う moat (モート)とは城の周りの「お堀」を意味する言葉ですが、例えば「強力なブランド力」は、鉄壁な「堀」として機能します。

アメリカン・エクスプレスやコカ・コーラなどが良い例でしょう。

競合相手は堀を超えて、城に進出してくることが容易には出来ません。

もう少し別の角度から説明しましょう。 

ウォーレン・バフェットは、長い年月にわたってキャッシュフローを出し続ける会社の株を、長期に亘って保有し続けることで、世界一位の投資家の地位を築いてきました。

その際に役立ったのが、moat を持つ会社への投資です。

例えばアメリカン・エクスプレスについては、彼は1964年にこの株を買って、60年間、ずっと保有し続けています。

コカ・コーラは1988年に買って、36年間、持ち続けています。

どちらの会社も圧倒的なブランド力を持っていて、バフェットはこれを moat という言葉で表したのでした。

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よく誤解されるのですが、たんに現在の世界シェアが高いだけでは、moat を持っていることにはなりません。

10年後、20年後もその高いシェアを維持できるかがポイントです。

そういった会社は日本にあるのでしょうか。

あります。たとえば、ファスナーのYKK。

非上場の会社ですが、YKKのブランド力は圧倒的です。

高級スーツを着込んで重要な商談に臨んだとしても、ファスナーが壊れたりすると一瞬にして台無しになってしまいます。

ファスナーに必要なのは、絶対的な信頼性。

こうしたことからYKKのファスナーが使われるようになってきたのですが、現在、国内シェア95%、世界シェア50%。

この会社が持つ moat は、簡単には浸食できません。

なお moat について、もっと勉強してみたいという方にお勧めなのが、パット・ドーシーが書いた『千年投資の公理』

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その中で、『小さな池の大きな魚でいる方が、大きな池の小さな魚よりずっといい』という一節があります。

これは、グローバルニッチトップ企業という概念に繋がりますが、例えば自動車のワイパーのゴムを製造しているフコク(本社:埼玉県)。

国内自動車メーカーのワイパーの90%がフコク製。

世界のOEMシェアでも40%以上を占めていると言われています。

YKKと同じように一見したところでは、簡単な製品のようですが、圧倒的な技術力がその裏にあります。

海外でレンタカーをした時などに、雨が降ってワイパーを作動させると、時として、ガラスを擦るような音をたてたり、きちんと雨水が拭き取り切れなかったりすることがあります。

しかしフコクのワイパーは、音をたてず、滑るように、なめらかに作動して、しかもきちんと雨水だけをふき取ってくれます。

グローバルニッチトップ企業という視点も投資を考える上で面白いかもしれません。 

なお本日の日経ヴェリタストークですが、 10日(水曜) 12:10~と、21:00~の2回に亘って再放送されます。

また『こちら』のVOD(ビデオ・オン・デマンド)でもご覧になれます。

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2024年6月28日 (金)

債務者監獄

チャールズ・ディケンズの小説というと、「クリスマス・キャロル」(1843年)や「オリバー・ツイスト」(1837年~39年)が有名です。

もう少し後の時代。

ディケンズが43歳~45歳のとき(1855年から57年)に執筆されたのが、「リトル・ドリット」です。

この小説はチャイコフスキー(読書家として知られる)やカフカによっても高く評価されました。

舞台はお金を借りて返せなかった人が入れられる債務者監獄。

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ディケンズの父親もこの債務者監獄に入れられたことが、実話として伝わっています。

債務者監獄とはいったいどんなものだったのでしょうか。

現代を生きる私たちはこうした過去から何を学ぶことが出来るのでしょうか。

そんなことを考えながら文章を書き、日経新聞(電子版)に寄稿しました。『こちら』です。

なお明後日発売になる日経ヴェリタスにも寄稿されます。

ところで「リトル・ドリット」ですが、BBCがドラマ化していて、全8話。

アマゾン・プライム会員の方は無料で見れます(『こちら』)。

私は8話とも見ましたが、主人公を演じた役者さんも上手で面白かったです。

なによりも小説の設定では、リトル・ドリットは債務者監獄で生まれたことになっているのですが、「監獄で赤ん坊が生まれるとはどういうことなのだろうか」と疑問に思いながら、小説を読みました。

こうした疑問が、映像で観ると解き明かされ、作品をよりよく理解することが出来ました。

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2024年5月18日 (土)

フォーム13F

米国の場合、運用資産が1億ドル以上ある機関投資家などは、SECに対してフォーム13Fを提出しなければなりません。

これは機関投資家が保有している株式を一覧表にしたものです。

提出期限は暦年の各四半期末から45日以内なので、3月末現在の数字は一昨日(5月15日)に提出されました。

今回、ウォーレン・バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイが提出したフォーム13Fは『こちら』(注:その後、一部、修正も出されています。『こちら』など)。

バークシャーは昨年9月末と12月末、2四半期連続で、保有株式の1銘柄以上を一時的に非公開とすることの許可をSECから得ていました(『こちら』)。

市場では、この銘柄はどこなのかと、噂や憶測が飛びかっていました。

今回はついに、この「秘密の株式」が開示され、それが保険会社のCHUBBであることが分かりました。

このニュースが伝わるや、CHUBBの株価は一時8%ほど上昇(253ドル→274ドル)。

しかしその後は落ち着いています。

Chubb

バークシャーのCHUBBへの投資額は時価ベースで70億ドルほどなのですが、CHUBBの時価総額は1085億ドルほどあるため、バークシャーの投資はCHUBB全体の6%ほどに過ぎません。

* * *

ところで昨日、日経新聞(電子版)にバフェット関連の記事を寄稿しました(『こちら』)。

同じ記事が5月19日(日曜日)の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

なおこの記事は5月15日より以前に書いた為、バークシャーの最新のフォーム13Fは反映されていません。

この記事には、実はバフェット氏とFRB議長のパウエル氏との間には意外な接点があることも載っています(ご存知でしたか?)。

パウエル氏の人となりを知る上でも結構この辺の情報は重要だと個人的には思いました(あくまでも個人の感想ですが・・)。

なにせ、その言動で世界の金融が動いてしまう人ですから・・。

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2024年5月13日 (月)

宇宙ビジネスの現状と今後

本日は日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」に出演しました。

トピックスは宇宙ビジネスについて。

詳しくは『こちら』をご覧頂きたいのですが、以下、概要を簡単に記しておきます。

【1】日本の宇宙ビジネスの現況

今般、日本政府は宇宙戦略基金(10年で1兆円)を立ち上げた。

斯様に宇宙ビジネスは現在注目を集めている分野と言える。

ただ昨年1年間のロケット打ち上げ回数で見ると、アメリカが108回、中国68回、これに対して日本は2回。

残念ながら、現状、米、中、露が第1グループを走っているのに対して、日本と欧州は第2グループ。

ただ宇宙ビジネスのマーケットは大きく、しかも急速に伸びているので、幾つかの分野では、日本勢でもじゅうぶんに勝てるチャンスはあると思う。

【2】注目分野:①合成開口レーダー(SAR)

衛星から地球を観察する場合、普通の光学画像だと上空に雲がかかると撮影できない。

これに対して、電波は雲のような障害物を透過できる。

つまり衛星から電波を送り、跳ね返ってくる電波を受信することで、地表を観測できる。

ただこの場合に難点があって、宇宙のような遠いところから電波を当てても、ビーム角が広くなり解像度が落ちてしまう。

これを解決したのが合成開口レーダー(SAR)。

時系列に電波を照射して受信した結果をつなぎ合わせるという技術。

九州大学発のベンチャー、QPS研究所などがこの分野で活躍している。

【3】注目分野:②宇宙デブリ(ゴミ)除去

デブリ除去の方法としては、デブリを捕獲したり、レーザーを当てたりして、デブリを大気圏に突入させ燃やすことなどが考えられている。

しかしデブリは地球の周りを秒速7~8キロで周回している。これはライフルの弾丸の8倍のスピード。

これを捕獲するか、レーザー光線を当てるかと言っても、技術的ハードルはかなり高い。

この業界のリーダー格であるアストロスケールも当初は接着剤を使ってデブリを捕獲することを考えていたが、宇宙空間で粘着剤が劣化してしまうことが分かり、磁石に切り替えた。

現状はまだいろいろなやり方が考えられている段階と言えるかもしれない。

なおデブリについては積極的デブリ除去(Active Debris Removal, ADR)のみならず、デブリをこれ以上出さないことも重要。

つまりこれから打ち上げられる人工衛星は、寿命が来たら大気圏に再突入するための装置を搭載するといったことが重要になってくる。

【4】宇宙ビジネスはイノベーションに寄与するか

1961年にケネディ大統領が「10年以内に人間を月に到達させる」と宣言して、アポロ計画がスタートした。

それまで宇宙船の飛行ルートの計算は「手計算」で行われていたが、アポロ計画においてはコンピューターが導入された。

ソーラーパネルなどもアポロ計画で開発された。

経営学の分野では、ある目的があって、それに向かって組織として努力することで、イノベーションが生まれるという「目的工学」の考え方もあるが、宇宙ビジネスとイノベーションはこのように密接に関係していると言える。

たとえばアルテミス計画で要求される月面探査車は月の環境に耐える必要がある。

月面では、重力は地球の1/6、温度はマイナス170℃~プラス120℃、真空、強い放射線、そして昼が2週間続き、次に夜が2週間続く。

こうした環境に耐える車を開発することがイノベーションに繋がる。

もう一つ、別の視点だが、例えば、衛星を使ったリモート・センシングの機能は、人類が新しい測定の技術を入手したことに繋がる訳で、いろいろな分野に応用可能。

こうした新機能を応用していく、その結果、その先で新しいイノベーションが生まれるという側面もあるかもしれない。

【5】産学官の連携と政府の舵取り

国による「宇宙戦略基金」(10年間で1兆円)がスタートしている。

基本的な発想は、米国などと同じく「官から民へ」というもの。

官が中心だと、国民の税金を使うということで失敗が許されにくい。

どうしても慎重になり、スピード感に欠ける。

これに対して、民の力を上手く使うことで、スピード感ある開発が行えるのではないかという考え方である。

「宇宙戦略基金」のもう一つのポイントは、JAXAに関する法律を改正して、この1兆円基金がJAXAに設置されたこと。

JAXAのこれまでの機能は、宇宙科学や宇宙航空に関する研究・開発、並びに人工衛星等の開発、打上げ、追跡及び 運用等の業務を行うことだったが、これに加えて基金がJAXAに設置され、JAXAが、民間・大学が行う研究開発に対して助成を行うようになる。

JAXAによる民間や大学に対する支援が、こうした宇宙ベンチャーに対する民間資金の呼び水となることが期待される。

更に、今後の方向性としては、米国のNASAが行ったように、JAXA自身が宇宙関連スタートアップの製品やサービスを積極的に購入するようになることも期待したい。

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2024年4月15日 (月)

踊るインド株 巨象の実像

2016年11月8日、午後8時にインドのモディ首相がテレビに出演し、演説をしました。

「今から4時間後の真夜中0時以降、現在使われているお札のうち、500ルピー札(当時の為替で約800円)と1000ルピー札(約1600円)が使えなくなります」。

これはインドで使われていた紙幣の約86%にあたります。

日本で言うと、「1万円札と千円札が今日の夜から使えなくなる」と首相が宣言するようなもの。

インド中が大騒ぎになりました。

500ルピー札と1000ルピー札は通常の取引では使用禁止になりましたが、

銀行に持って行けば、(1)新紙幣と交換したり、(2)銀行に預金することは出来る、とのことでした。

しかしそれも年内まで。

さらに銀行から引き出せる新札の額にも制限がつけられたりしました(そもそも新札の印刷が間に合わなかった)。

「こんなことをしたら国中が大混乱に陥る」

とばかり、米国のローレンス・サマーズ(元財務長官、ハーバード教授)などが警鐘を鳴らしました。

銀行には長い列が出来ましたが、モディ首相の強力なリーダーシップの下で、インドはこの政策を断行しました。

目的は大きく言って、2つ。

1つはブラックマネーの炙り出し。

もう1つは、国民に銀行口座を持ってもらうことにありました。

それまでインドでは国民の約50%は銀行口座を持っていませんでしたが、この政策の結果、今では約8割の人が銀行口座を持つようになりました。

これは一例ですが、インドのサッチャーとも称されるモディ首相は、10年前に政権を握ってから、数々の経済改革を進めてきました。

おかげでインドのGDP(名目ドルベース)は10年間でほぼ2倍に・・。

さて、今週金曜日(19日)から、インドでは総選挙が行われます。

全国を7つの選挙区に分けて順次投票していくので、全ての投票が終わるのが6月1日。

開票は全国一斉に6月4日に行われます。

人民党 vs. 国民会議派の構図ですが、与党である人民党が勝利し、モディ氏が3期目に入ると予想されています。

今日の日経ヴェリタストークでは、そんなインドの状況について話し合いました。

上記のような政治の話よりも、むしろ自動車産業、金融機関など経済の話が中心です。

インド株への投資(具体的には投信、ETF)を考えている方は是非ともご覧になってみてください。

『こちら』です。

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なおインドについてお勧めしたいのが、鈴木真弥さんの『カーストとは何か』

学びの多い本でした。

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2024年4月12日 (金)

「複利」のすごさと怖さ 数%で資産形成に大差

複利のことなど今さら聞かなくても分かっている―という人がほとんどだと思います。

では、「100円(100万円ではない!。たったの100円)を年10%で複利運用したら100年で幾らになるか?」

これをイメージできる人はそんな多くないかもしれません。

答えは138万円!。

日経新聞(電子版)と日経ヴェリタス(4/14号)に寄稿しました。(『こちら』です)。

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2024年3月24日 (日)

NVIDIA GTC

3月18日~21日に開催されたNVIDIA のGTC(GPU Technology Conference)。

ファン会長の 基調講演(key note)だけでも見ておきたいと思っていたのですが、今日やっと時間が取れて最初から最後までを見ることが出来ました。 

2時間を超えるプレゼンですが、英文の字幕もあり、一見の価値ありだと思います(『こちら』)。

忙しい方は最初の3分間の動画だけでもご覧になってみてください。

下図は昨年10月のNVIDIAのプレゼン資料で、今後のプロダクト・ロールアウト(製品投入計画)を示したものです。

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H-200は今年の4-6月期にshipmentが始まる(『こちら』)とのこと。

現在のH100およびこれから出てくるH200はいずれも頭文字はHで、このHはGrace Hopper(1906~1992年。1959年にプログラミング言語COBOLを開発)から来ています。

Hの一世代前はA(Ampere)、さらにその前はV(Volta)といった開発コードネームがつけられていました。

さて今回のGTCでは、Hopperの次の世代、Blackwellが発表されました(下図)。

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これは数学者のDavid Blackwellから取ったもの。

新しいGPUは、B100、GB200といった具合に、数字の前にBlackwellのBが付くことになります。

GPUの性能は、このようにどんどんと良くなりますが、NVIDIAの凄いところは、顧客と一緒になって、エコシステムを創り出しているところ。

TSMCは半導体のファンドリー(顧客が設計する半導体を製造する工場。製造専門の会社)として有名ですが、ファン会長は『NVIDIAはAIのファンドリーを目指す』と力説していました。

社内にはハードのエンジニアよりもソフトのエンジニアの方が多いといった声も聞こえてきます。

未来はもうすぐ、そこまで来ている・・。

動画の最初の3分間を見ただけでも、それを感じることが出来ると思います。

音楽はAI、AIVAが作曲したものです。

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2024年3月23日 (土)

建築家とゼネコン

先月24日に発行されたバークシャーのアニュアルレポート(2023年)。

表紙と目次のすぐ後に、バフェットによるマンガーへの弔辞が掲載されています(下の写真)。

題して『チャーリー・マンガ―:「バークシャー・ハサウェイのアーキテクト(建築家)」(The Architect of Berkshire Hathaway)』

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この中でバフェットは次のように書きました。

『チャーリーは現在のバークシャーの "設計者 "であり、私は "ゼネコン"として彼のビジョンを日々建設していった。』

(Charlie was the “architect” of the present Berkshire, and I acted as the “general contractor” to carry out the day-by-day construction of his vision.)  

昨年11月28日に99歳で他界したマンガー。

あと33日で100歳の誕生日を迎えるところでした。

チャーリー・マンガ―と言えば、歯に衣着せぬ発言で有名でした。

私はそんなマンガーのコメントをバークシャーの株主総会で聞くのが好きでした。

たとえばバフェットは2006年にようやくコカ・コーラの役員を退任したのですが、

マンガーによれば「もっと早く取締役を辞めていればコカ・コーラ株を売れたはずだ」(バフェットの公認伝記「The Snowball」原書681頁)。

昨年5月のバークシャー株主総会にはマンガー(当時99歳)は車椅子に乗って登壇しましたが、

今年の総会では残念ながら彼の姿を見ることが出来ません。

ご冥福をお祈りします。

* * *

話は変わりますが、先週末(3/15)時点で、バークシャーの時価総額は8,883億ドルでした。

これを分解してみると、

保有有価証券(上場株式)の時価が3,660億ドル。

現金および現金同等物が1,676億ドルです。

この2つを足し合わせると、5,336億ドル。

これとバークシャーの時価総額との差(3,547億ドル)が、ざっくり言って、バークシャーの事業会社(保険会社、エネルギー会社、鉄道、キャンデー、家具など)の価値ということになります。

(本当は、現金および現金同等物の中には、事業会社が事業を行っていく上で必要なものも含まれている為、上記計算は正確ではありません)。

保有有価証券(上場株式)の時価(3,660億ドル)の中身を見てみましょう。

全体の74%をアップルなど、たった5社への集中投資が占めています。

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しかもこの上位5社の顔触れですが、10年前(下図)と比べると大きく変わっていることが分かります。

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10前の上位5銘柄で残ったのは、コカ・コーラとアメックスだけでした。

350万もの虚偽口座が作られたウェルズ・ファーゴについては、バークシャーは、22年第1四半期に全株の売却を完了。

IBM株については、17年にほぼ全て売却。

17年8月のCNBCによるインタビューの中で、バフェットは次のように発言しました。

"I was wrong on IBM.  I made a mistake." 

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2024年3月 6日 (水)

一万円出しても読みたい本

最近読んで面白かった本を2つ。

【1】清原達郎著 『わが投資術 市場は誰に微笑むか』

間違いなく今年読んだ本でいちばん面白かった本です。

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生きるか死ぬかの市場を生き抜いて、最終的には抜群のパフォーマンスを手にした著者の言葉はさすがに重さが違います。

アマゾンの書評欄に『一万円出しても読みたい本』と載っていましたが、私も全く同じ感想。

この本が世に出たことを感謝したい、そんな読後感を持ちました。

きっと1回だけでなく、何回か、読み返す本になりそうです。

【2】ビル・パーキンス著『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』

先日、日経新聞の方が来社され、この本の話が出てきたので、買って読んでみました。

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本書のエッセンスをひとことで言うと、

「多くの人はお金を残して死ぬ。

お金よりも人を幸せにするのは"経験"なので、その為にお金を使いなさい」

という内容の本。

これだけ書くと、大したことのないようです(やはり私はとても書評家にはなれない)。

しかし本書には寿命時計とか、目から鱗の話が幾つか出てきます。

(私も早速自分のスマホに寿命時計を入れてみました。すると結構、緊張するものです。「あと〇〇年」とか出てきますので)。

多くの人が老後の為とばかり、資産を増やすことに邁進している現在の日本。

そんな中で、著者の主張は新鮮です。

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2024年3月 5日 (火)

日経平均4万円突破

日経平均が4万円を突破したことで、いろいろな方からコメントを求められます。

基本、巷で言われていることと同じで、何か新しい視点がある訳ではないのですが、

『S&P500やオルカン(オール・カントリー)と比べると、どうか』といった質問も受けます。

両者(たとえばS&P500と日経平均)を比べる場合は、通貨を揃えた方が良いと思います。

【1】ドルベースでの比較(外国人投資家の視点)

たとえば今から約3年前。

2021年2月16日の日経平均株価は、

30,467.75円(このときの為替レートTTMは105.49円)

よってこの時の日経平均はドルで、288.82ドルです。

現在は、日経平均40,097.63円(為替150.42円)。

ドルベースで、266.57ドルです。

つまり約3年の間に日経平均は値下がりしています。

一方、S&P500(米国株)は、

2021年2月16日が、3,932.59ドル

そして現在が5,130.95ドルなので、

30%以上値上がりしています。

【2】円ベースでの比較(日本人投資家の視点)

同じ期間で、日経平均は

30,467.75円→40,097.63円(32%上昇)

一方の、S&P500(円ベース)は、

414,849円(3,932.59ドル×105.49円)

から、

771,797円(5,130.95ドル×150.42円)

へと、86%上昇しています。

* * *

つまり現時点で、日経平均は一見したところ、暴騰しているように見えます(そうマスメディアが騒いでいる)。

しかし、S&P500(そして米国株が62%を占めるオルカン)に比べれば、まだまだ力不足と言えるかもしれません。

もちろん、これから先、短期的には、ドルベースでも、そして円ベースでも、

日経平均のパフォーマンスがS&P500を上回ることがあるかもしれません。

ただ中長期で見ると株価は基本的にはGDP(経済力)の伸びに左右されていく面が強いように思います。

目先の市場に惑わされず、国として経済の底上げを図る(なによりも急速な人口減少に歯止めをかける)ことが重要であるような気がしています。

(注)S&P500の単位はドルではなく、ポイントですが、分かりやすくするため、1ポイント=1ドルと仮に置いて、議論を進めています。

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2024年3月 3日 (日)

IBJ Professorship

IBJとは、Industrial Bank of Japan の略で、海外では興銀(日本興業銀行)のことを英語でこう呼んでいました。

三行統合で興銀の名が消え「みずほ」になってから、残念ながら IBJ の名前も聞かれなくなってしまいました。

銀行としての名は消えてしまったのですが、スタンフォード大学ビジネススクールでは IBJ の名前が残り続けました。

どういうことでしょうか。

1987年、興銀はスタンフォードのビジネススクールに寄付をしました。

当時のビジネススクール学長 Robert Jaedicke はファイナンス(株式投資論)を教えていたマクドナルド教授を冠名教授としました。

IBJ Professorship の誕生です。

マクドナルド教授は、IBJ Professor と呼ばれ、1968年から2017年まで50年間に亘って株式投資論をスタンフォードで教え続けました。

翌18年、教授は80歳で他界しましたが、教授の薫陶を受けた資産運用業界で活躍する人たちがビデオメッセージ(『こちら』)を送りました。

本日の日経ヴェリタス紙に掲載の寄稿記事は、教授のことを思い出しながら書いたものです(『こちら』でお読みいただけます)。

なお記事の中では、マクドナルド教授が授業に招いたゲストスピーカーの名前を例として数名挙げました。

ウォーレン・バフェット、

チャーリー・マンガー、

フィリップ・フィッシャー、

ノーラン・ブッシュネル(アタリの創業者)

しかし大事な人の名前を記事には書き忘れました。

スティーブ・ジョブズです。

1980年、マクドナルド教授は スティーブ・ジョブズをゲストスピーカーとして授業に呼びました。

トピックスは『もしアップルがIPO(株式公開)をするなら、いくらの値段が適当だろうか』というもの。

ちなみにこの時のジョブズは25歳。

そしてこの年の12月12日、アップルはIPOを実施。

売出価格は1株22ドルでした。

その後、アップルは何度か株式分割をしていますので、分割調整後のベースでは、売出価格は0.1ドル。

現在アップルの株価は約180ドルですので、当時1000ドルを投じていれば、180万ドル(2.7億円)になっている計算です(そのほかに配当金として16万ドルを得ている計算)。

1980年当時のジョブズを交えての、IPO価格に関するクラス討論、きっと興味深いものであったに違いありません。

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(Jack McDonald, From the website of Stanford Business School, Photo by R.J. Muna)

最後に、マクドナルド教授にビデオ・メッセージを送った人々の名を記しておきます(ビデオに現れた順番。なお資産運用業界の人に限定して載せます)。

Sandy Dean, Sansome Partners

John Saer, GI Partners

John Zellerbach, BE Properties, Inc.

Wallace Hawley, InterWest Partners 

Charles R. Schwab, The Charles Schwab Corporation 

Steve Denning, General Atlantic 

John S. Osterweis, Osterweis Capital Management 

Warren Buffett, Berkshire Hathaway Inc.

Andreas Halvorsen, Viking Global Investors, L.P.

Bill Barnum, Brentwood Private Equity

Peter Chung, Summit Partners 

Jody Fowler Jonsson, The Capital Group

Mary Ellen Martin Zellerbach, Martin Investment Management, LLC 

Jim Coulter, TPG Holdings 

Frank Quattrone, Qatalyst Partners

Gene Skyes, Goldman Sachs Group, Inc.

John H. Scully, SPO Partners & Co.

Bill Oberndorf, Oberndorf Enterprises, LLC 

Carter McClelland, Union Square Advisors

Glenn Solomon, GGV Capital

Charlie Anderson, Fox Point Capital 

Don O’Neal, The Capital Group

Doug Valenti, QuinStreet, Inc.

Dave Hodgson, General Atlantic 

Alex Seaver, Stadium Capital Management

Bill Matthes, Behrman Capital

John Hurley, Cavalry Asset Management

Hadley Mullin, TSG Consumer Partners 

Mike McCaffery, Makena Capital Management LLC 

Tim Bliss, Investment Group of Santa Barbara

Thomas A. Russo, Gardner Russo & Gardner LLC

Bill Ford, General Atlantic

John Bartholdson, Juniper Investment Company, LLC

Reece Duca, Investment Group of Santa Barbara

Ed McDermott, Spring Tide Partners

Michael Fisch, American Securities LLC

Terry O’Toole, Macanta Investments LLC

George Davis, Hotchkis & Wiley

Lizzie Fisher Marshall, Hall Capital Partners LLC

John Anderson, Anderson Dealership Group

Ori Uziel, Uziel Capital Management, LLC 

Tom McKinley, Cardinal Partners

Pete Masucci, New Mountain Capital, LLC

Ted Muhs, The Muhs Company, Inc.

Christine Hammer, Hammer & Associates, Inc.

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2024年2月19日 (月)

ETF(Exchange Traded Funds)

本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トッピクスはETFについて。

ETFとはExchange Traded Fundsの略。

証券取引所に上場する投資信託のことで、多くは株価指数などの指標への連動を目指します。

世界のETFの運用残高は1800兆円。

ETFは、金融商品の中で「20世紀最大の発明」とも言われます(日経ヴェリタス2/18号、第1面)。

これはどのように開発されたのでしょうか。

【1】ブラックマンデーに遡る

1987年10月19日のブラックマンデー。

米国市場はたった1日で22.6%も下落しました。

これは1日の記録としては、今日に至るまで歴史上最大の下落率です。

どうしたら、こういった下落は防ぎ得たのでしょうか。

事後検証や研究の結果、「市場にもっと流動性があれば、過度な暴落を防げたはず」との結論に辿り着きました。

当時は、先物やオプションの市場では、マーケット全体を取引出来ましたが、

現物市場(Cash Equityの市場)では、マーケット全体を売買できる単一の有価証券がなかったのです。

「この種の単一の有価証券があれば、市場の流動性が高まる」ー こう考えられて、開発されたのが、ETFです。

第1号となったのは、S&P 500の指数に連動するETFで、1993年に誕生しました。

SPDR(スパイダー;Standard & Poor's Depository Receipts の略)の名がつけられ、

「SPY」のティッカー・シンボルで取引されました。

現在、SPDRのSPY 1本だけで、日本円に換算して、74兆円の純資産総額(4,917億ドル)を有しています。

日本全体のETF残高(日銀保有分も含めて)が75兆円と言われていますので、SPY 1本で、日本全体にほぼ匹敵することになります。

【2】ETFには2つの市場がある

ETFには、「流通市場」と「発行市場」の2つの市場があります。 

これについては『こちら』の記事によくまとめられていますので、ご覧になってみてください。

【3】ETFには3つの価格がある

もう一つ。

ETFには、「取引所価格」と「基準価額」、そして「インディカティブNAV(推定一口あたり純資産価格)」の3つの価格があります(『こちら』)。

2つの市場と3つの価格。

少しややこしいですが、これが分かるようになると、ETFの仕組みが理解できるようになります。

【4】日本の個人投資家がETFを買う時の注意点

いろいろな種類のETFが誕生してきていますが、個人投資家が実際に買う時には注意も必要です。

ひと言で言うと(すべての金融商品の評価に共通するポイントでありますが)流動性がきちんとあるか、

つまり売りたいときに、きちんとした価格で売れるか

という点に留意する必要があります。

具体的なチェック・ポイントは3つ。

(1)出来高(1日当たりの出来高)

(2)純資産残高

(3)基準価額と市場価格の乖離率

純資産残高について言えば、SPYは残高4,917億ドル(74兆円)です。

一方、日本では317本のETFが東証に上場されていますが、純資産残高30億円未満のものも少なくありません。

(3)の基準価額と市場価格の乖離の問題は、2018年に東証がマーケットメイク制度を導入したことで大分改善されました。

【5】日本のETFマーケットの特殊性

日本全体で、ETFの残高が75兆円と言われていますが、

日銀保有分を除けば、12兆~13兆円です。

一方、米国のETF市場は、1,100~1,200兆円と言われていますので、サイズで見ると、米国の100分の1です。

ただし本数で見ると、米国3,100 本 vs. 日本317本。

つまりサイズでは、米・日の比率が100対1でしたが、本数になると10対1となります。

これは1本あたりの運用資産残高が小さいものが日本には多くあることによるものです。

【6】投信を買うか、ETFを買うか

昔はETFの方が、コスト(信託報酬など)が安かったので、ETFの方がお勧めでした。

しかし最近は、eMAXIS Slimなど低コストの投信が出てきたので、どちらを選んでも大差ありません。

新NISAで「つみたて投資枠」を利用する場合は、ETFは使えません。つまり投信を選ぶしか手がありません。

新NISAには「つみたて投資枠」以外に「成長投資枠」もありますが、これについては投信でもETFでも利用できます。

投信は口数を設定して、何口買いたいと注文しても、幾らの単価で買えたのか、翌日もしくは翌々日になるまで分かりません。

一方、ETFは、スクリーンを見ながら、指値などでも購入出来ます。

こういったことから、ETFの方が好きだという人も多くいます。

この辺は人それぞれだと思います。

【7】日銀が保有するETF

日銀が持つETFは、昨年9月末で簿価37兆円に対して、時価61兆円。

つまり含み益が24兆円もあります(現在では含み益はもっと膨らんでいるはずです)。

この含み益は日銀にとっては有り難い数字だと思います。

というのも、9月末時点で、保有国債(586兆円)の含み損が10兆円あったからです。

いずれにせよ日銀はいずれ金融を正常化していくことになるものと思われ、ETFについても、

何らかの処置が必要になります。

ネットの世界ではいろいろな案が語られていますが、

たとえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に、若干のディスカウントで、毎年少しずつ引き取ってもらうといった案も考えられうるかもしれません。

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なお日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』は『こちら』でご覧になれます。

(未契約ですと最初の1分半ほどで切れてしまいますが・・)

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