2022年6月10日 (金)

株価には下限がある?

今年に入ってダウ平均株価は▲16%下落(6/8の値を昨年末と比較;以下他の指数も同じ)。

ナスダックは▲23%下落。

ドルベースの日経平均は▲16%下落(円ベースだと▲2%)。

株式市場の行き末に気を揉んでいる方もいるかもしれません。

米国の場合、市場で取引される株価が安くなり過ぎると、

「プレミアムを払ってでも全株を購入して自分が経営しよう」

と考える買収者が出現するようになります。

それはイーロン・マスク氏のように富裕な個人かもしれないし、買収ファンドかもしれません。

今回の日経ヴェリタス紙「マネー研究所」はM&Aの持つ「株価是正機能」について書きました。

『こちら』で日経新聞(電子版)の記事をご覧いただけます。

日経ヴェリタス紙の方は、今度の日曜日(6月12日)号に載ります。

      Ma

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2022年6月 7日 (火)

円安とは、日本の労働力が低く評価されること

【1】インフレ率の差

AFSで留学した米国Corona del Mar High School の50周年同窓会が今夏あります。

先日幹事から来たメールには:

「急いでください。当地のハイアットホテルの宿泊代は1晩279ドルから700ドルに値上げになっています(The Newport Hyatt went from $279 per night to now $700 per night)」

とありました。

米国のインフレ率が日本のインフレ率よりも高ければ、通貨としてのドルの価値は本来であれば日本円に比して下がっていくはずです。

しかし最近時はインフレ率の差(=円高要因)以外の要因で、為替が(ドル安ではなく逆に)円安に振れてきています。

その結果、日本から米国に行く場合、(1)米国の物価が高い、(2)円安ドル高の為、円ベースにすると更にもっと高く感じる、とダブルに厳しさを実感するようになってきています。

それでは、インフレ率の差以外の「別の要因」とは何でしょう。

【2】日米の金利差

一つには、金利差。この金利差ゆえに現在は円安になってきています。

このところ米国は金利を上げ続けてきています。

(1)22年3月16日に0.25%利上げして、利上げ後:

0.25~0.50%(Fed Funds Rate target rate)

(2)22年5月4日に0.50%利上げして、利上げ後:

 0.75~1.00%(Fed Funds Rate target rate)

FRBは今後も少なくとも6月と7月に0.50%ずつ利上げすると考えられており、更に、9月、11月、12月にも利上げがあるかもしれません。

仮にこれらの月も0.5%ずつ上がるとすると、22年末のFF金利は:

3.25%~3.50%

となります(もちろん、そうなるかどうかは、今後のインフレ次第)。

一方で、日銀は金利を上げる気がなく、長期金利でさえ、指値オペで0.25%以下に抑え込んでいます。

その結果、為替は円安に振れやすくなっています。

【3】日本の経常収支の悪化

もう一つの要因は今年の2月と3月に発表になった日本の経常収支の悪化。

2/8発表 ▲    3708億円(昨年12月分)

3/8発表 ▲1兆1887億円(今年1月分)

2ヵ月続けてマイナスとなり、しかも3月発表分はマイナス幅が大きかったことから為替が円安に振れました。

しかし経常収支はその後、プラスに転じ、

4/8発表 +1兆6483億円(今年2月分)

5/12発表 +2兆5493億円(今年3月分)

となっています。

そもそも、

「長い目で見れば、経常収支はマクロ的な貯蓄・投資バランスで決まる(貯蓄超過ならば経常黒字)。日本は、政府の投資超過を家計・企業の貯蓄超過が上回ることによる、貯蓄超過構造となっている」

(山口範大氏、週刊エコノミスト22年4月26日号、36頁)

とのことなので、

今年2月、3月のような形での経常収支赤字が恒常的に続くことは考えにくいかもしれません。

従って、3月の頃はともかくとして、6月現在の円安は、もっぱら金利差によって引き起こされていると見ることも出来そうです。

【4】円安は輸出企業にとってプラスだが・・

ところで円安は輸出企業にとってプラスに働きます。

同じクルマを1台45,000ドルで米国に輸出しても、為替が1ドル=100円ならば売上は450万円。

しかし1ドル=130円だと売上は585万円になります。

では円安になれば輸出はどんどん伸びるかと言うと、現実の世の中は、それほど単純でもありません。

第一に日本の自動車や電気機械のメーカーは海外生産の比率を高めており、従来ほど円安のメリットを受けづらくなっています。

また国内で生産している場合も、円安になったからと言って(円ベースの輸出金額は増えますが)企業は設備投資をしてまでして輸出数量を増やすことには慎重な姿勢を取ります。

さらに為替以外の要因も輸出には影響します。

例えば今年の初めには米国西海岸LAやロングビーチ港での入港待ちコンテナ船の数が100隻を超えるといった事態が生じました。

その先の米国内陸部での物流もスムーズに行かないといった状況で、米国のお客さんは日本の品物が欲しいのに、これを届けられないといったことが起きていました。

米国西海岸の港湾の状況は現在は改善しているようですが、実は今年の6月末に港湾労働者の労使交渉の期限を迎えます(これまで大凡6年に一度のペースで交渉が行われてきているようです)。

万が一、この労使交渉が上手くいかなくなると、また港が滞るといったことが懸念されます。

【5】円安を是正する政策

最後になりましたが、現在の円安は小麦やガソリンなどの価格高となって日本で生活する人の家計を直撃しています。

今後、政府・日銀は円安を是正するため利上げや為替への介入などを行うのでしょうか。

まず円安是正の為の利上げですが、

自国通貨が安くなることを防ぐために利上げをするというのは、発展途上国ではやられていますが、

先進国では為替レートを目的としての金融政策は行われていません。

金融政策の目標は、あくまでも物価の安定。

以下、日銀のホームページから。

『日本銀行の金融政策の目的は、物価の安定を図ることにあります。

物価の安定は、経済が安定的かつ持続的成長を遂げていくうえで不可欠な基盤であり、日本銀行はこれを通じて国民経済の健全な発展に貢献するという役割を担っています(日本銀行法第1条第1項、第2条)』 

次に為替の介入ですが、日本が現在これを行うことは可能でしょうか。

現在米国はインフレを退治しようと躍起になっています。

そういった中で日本がドル安(円高)方向に向かわせるような介入をすることを米国が認めることは考えにくいと言えます。

すなわち現在の米国にとってはドル高が望ましく、この逆にドル安になると輸入品の価格が上昇してしまいます。その結果、米国で、より一層インフレが悪化してしまうことになってしまうのです。

【6】今後の見通し

円安を是正するための利上げや為替への介入が難しいとすると、今後どうなるのでしょう。

日本で予想以上のインフレが起きて、これを抑えるために日銀が利上げを行えば円安も止まるでしょう。

しかし仮にそうならなかったとしても、いずれは沈静化するのではないでしょうか。

為替レートは日米の金利差だけで決まる訳ではありません。

当面は金利差が注目され、円安へのエネルギーが強いのでしょうが、行き過ぎた円安はいずれは是正されていくのではないかというのが私の個人的な見解です。 

円安とは一言で言うと、日本人の労働力が低く評価されること。

かつては「円安にして経済成長を図る」と(一部で)言われたこともありましたが、成長の手段としては健全とは思えません。

なお昨日出演した日経ヴェリタストークですが、『こちら』でご覧いただけます。

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2022年5月27日 (金)

些細なエピソードが面白い

ソニーの平井さん(前CEO)が書いた『ソニー再生』

1年ほど前の本なのですが、些細なエピソードが面白く読めます。

   Sony

彼が社長になった後で、海外に出張した時の話なのですが、以下、本書173~4頁より。

ホテルの部屋に入るとソニーのテレビが置いてあった。

でも何かがおかしい。

テレビの裏側を見るとホコリがまったくない。

室内の他のものと比べて配線が明らかに新しいことも気になった。

「もしかして・・・」

ホテルを手配してくれた現地のスタッフに聞くと案の定だった。

東京から本社の役員が来るときは部屋のテレビをソニー製に取り換えているのだという。

「なんでそんなことをするかなぁ・・・」

とため息をつきながらテレビを眺めたのを覚えている。

これはなにも現地のスタッフが悪いわけではない。

今まではそれが当然だったのだろう。

だから、いちいちこちらの意図を説明して改善してもらった。』

ソニーの株価は2000年3月には16,950円をつけました(分割調整後)。

それが2012年11月には772円にまで下落。

▲95%もの下落です。

その後、右肩上がりになって、今年の1月には15,725円にまで回復。

約10年で20倍になりました。

現在11,425円ですが、この水準でも当時の15倍になります。

平井さんは如何にしてソニーを再生させたのか・・。

その秘密が本書に書かれています。

成功した経営者の本は往々にして日経新聞「私の履歴書」のように自画自賛ものが多いのですが、

不思議とそういったものを感じさせない本でした。

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2022年5月 6日 (金)

「平和の配当」と「グローバリゼーション」の終焉

2月24日、ロシアがウクライナへ侵攻。

これ以降、世界は大きく変わってしまいました。

今から33年前のことですが、

1989年にベルリンの壁が壊されました。

そしてその2年後の1991年にソ連が崩壊。

この後、世界は軍事用だった予算や人員を民生用に振り向けました。

今は亡きジョージ・H・W・ブッシュ元大統領(父親の方です)が当時盛んに強調していた「平和の配当」。

これを享受することが出来るようになったのです。

米国の国防費は1980年代半ばには対GDP比で毎年6%を超えていました。

それをだんだんと低下させることが出来るようになったのです。

そして2017年にはとうとう3.3%台になりました。

これと同時に、経済の「グローバル化」も進展。

先進国で企画・開発された製品が、人件費の安い国や地域で製造されるようになりました。

そして完成した製品は、今度は世界各地の消費者を相手に売られるようになりました。

「平和の配当」と「グローバリゼーション」。

この2つのフォローの風を受け、米国の株式市場は概ね好調に推移していきました。

この間、リーマンショックなどがありましたが、1991年から2022年2月23日までの31年間で、S&P500種株価指数は11.6倍になりました。

年率平均にして8.2%を超える伸長率です。

しかしながら残念なことに、今年の2月24日以降、状況は一変してしまいました。

もはや「平和の配当」は望むべくもありません。

また「グローバリゼーション」という言葉も今や「非グローバリゼーション(deglobalization)」という言葉に置き換わってしまいました。

こういった中で、我々個人投資家の投資戦略は如何にあるべきか・・。

日経新聞(電子版)と日経ヴェリタス紙への今回の寄稿記事は以上のような観点から書きました。

『こちら』で日経新聞(電子版)の記事はご覧いただけます。

日経ヴェリタス紙の方は、今度の日曜日(5月8日)号に載ります。 

 なお記事の中に出てくるキプロスですが、以下に幾つかの写真を載せておきます。

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(キプロスのガバナーズ・ビーチ。英国のガバナーがここで泳ぐのを好んだことから、こう呼ばれるようになった)

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(キプロスの銀行。2013年にキプロスでは預金封鎖が行われた)

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(キプロスは日本の四国の約半分の大きさ。レンタカーであちらこちらに回ることが出来る)

 

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(日経の記事に書いたS氏と)

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2022年5月 2日 (月)

インフレ耐性の強い消費関連銘柄

本日のNHKニュース7。

大手パンメーカーの「フジパン」と「敷島製パン」が、輸入小麦の価格高騰などを受け、食パンなどの一部の製品をことし7月から値上げすること決定したとのこと。

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 (注:画像はNHKのサイト『こちら』より)

パンの値上げは、いずれも、ことしに入って2回目(『こちら』)。

このように最近、様々なモノの値段が上がるようになってきました。

一方、企業の方から見ると、値段を上げるというのは一大事です。

輸入原料や物流費などのコストが上がってきたからといって、安易に製品価格に転嫁すると、場合によっては消費者に逃げられてしまうことも懸念されます。

* * *

本日の日経ヴェリタストークでは、現在の難しい状況を念頭に置きながら『インフレ耐性の強い消費関連銘柄』を次のように3分類して議論しました。

(1)明確な値上げをしなくても、コストを吸収し増益を続けられる『成長力』を有する企業(例:ワークマン)

ご存知の方も多いと思いますが、ワークマンの日本国内での店舗数は今やユニクロを上回ります。

キャンプ場でバーベキューを楽しんだり、焚火を囲んだりするとき、ワークマンの服は焚火の火の粉が飛んできても焦げにくい。

あるいは撥水性や防水性に優れているので、雨に降られてもビショビショにならない。

こんな理由で、ワークマンはアウトドア志向の人に受けてきました。

(2)「そこでしか手に入らないモノやサービス」を提供し、ファンとなる消費者をつなぎ留められる企業(例:マクドナルド)

マクドナルドは、3月にハンバーガーなど全体の2割にあたる商品の価格を10~20円引き上げました。

にもかかわらず、3月の月次売上高は13.5%増を維持しています。

ところで、マクドナルドと言うと、2014年12月期と15年12月期に2年連続で赤字に転落したことが思い出されます。

しかしその後、カサノバ社長(当時)のリーダーシップの下、見事に復活していきます。

株価も当時に比べると現在では2倍強になりました。

いったい全体、どうやって復活させたのでしょうか。

この復活劇については、すでに各方面で報じられていますが、その一つが「マクドナルド復活の仕事人たち」と題する特集記事。

日経新聞が2018年12月に5回にわたって連載したものです(第1回は『こちら』)。

この連載を読むと、これといった大きな種明かしは存在せず、『企業はやはり人なんだな』と実感できます。

(3)海外に活路を見いだすパターン(例:スノ―ピーク)

金属加工の町、燕三条の職人技術による高品質を武器に発展してきたスノーピーク。

実は、日本の『地方の地場産業』には高い技術力を持っているところが多く、海外の消費者にも広く知られているところが結構あります。

燕三条のスノーピークは一つの例ですが、ほかにもメガネのフレームで有名な、福井県鯖江市。

2008年の米国大統領選挙で副大統領候補となったサラ・ペイリンが鯖江の眼鏡をしていたこともあって、その名を一躍世界に広めました。

今治のタオルも有名で、海外の富裕層が東京に来た時、デパートで今治のタオルを買い求めていくことがあります。

ところで、鯖江の眼鏡にしても、今治のタオルにしても、海外に住む人がサイトから簡単に購入できるように、Shopifyなどを使ってECサイト化してみては如何でしょう。

『こちら』をご覧になると、今やだれでも海外の顧客相手にECサイトを作れることが分かります。

なお本日のテレビ番組、日経ヴェリタストークですが、『こちら』で録画をご覧いただけます。

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2022年4月24日 (日)

アメリカンTVシリーズ

「ネットフリックス」(以下ネトフリ)の契約者数が純減したことで、株価が下落しています。

たしかにネトフリについては「最近見ていないな」、「契約を止めてしまおうか」と思ったことも何度かありました。

しかし結局のところ、なんやかんやで今まで契約を続けてきています。

一方、ネトフリの競争相手「アマゾン・プライム」(以下アマプラ)。

これについてはストリーミング(動画配信サービス)だけでなく、アマゾンで買ったものが早く届くといった利点もあり(そもそもこれが理由でアマプラに入った)、番組を見なくなったからといって、「即、止める」といったことには繋がりにくい・・。

つまりネトフリとアマプラはある意味で異なった土俵で競争しているような気もします。

さて、私はネトフリなりアマプラなりで米国のTVシリーズを見るのが好きなのですが、以下これらのTVシリーズの寸評です。

星1つは(今イチ)、星5つは(最高評価)という意味ですが、全くの個人的感想に基づくもの。

以下、思いつくままに挙げていきます(つまり順不同)。

【LOST】星2

かなり昔に見ました。撮影はハワイの島で行われたのだとか。シーズン6まで続くのだそうですが、最後までたどり着けず(多分シーズン2くらいで止めた記憶)

【The O.C.】星3

これもかなり昔に見た作品。私は高校時代にAFSでニューポートビーチの高校に留学したのですが、この町が舞台だっただけに面白かったです。ただしMarissaが登場しなくなったシーズン4は全く面白くなくなり、途中で止めました。

【The Americans】星4.5

アメリカに潜入していたKGBのスパイの話。最終話の「我々はいったい何を成し遂げたんだろう」という言葉とそれに対する答えが秀逸。

【Chuck】星4

スタンフォードを中退したチャックがCIAの女性スパイと出会い・・。気楽に楽しめる作品です。

【24】星3

私が行きつけの理容院の理容師さんの数年前のコメントを思い出します。「アドレナリン、バクバクですね」。

【The Good Wife】星4

 夫がイリノイ州検事の専業主婦アリシアが13年ぶりに弁護士へと復帰。私はシカゴに5年ほど住んでいたので面白く見ました。

【Suits】星5

ドラマに出ていたメ―ガンさんがヘンリー王子と結婚するようになるとは、この時には夢にも思いませんでした。

【The Mentalist】星3

気楽に見れます。

 【Cold Case】星2

シーズン7まであるらしいのですが、シーズン1の途中で頓挫

【Rizzoli & Isles】星3

メンタリスト同様、気楽に見れます。 

 【Numbers】星3

天才数学者とFBI捜査官の兄の話。シーズン6まであるらしいのですが、途中までしか見ていません。

【ハワイアン・ファイブオー】星3.5

ハワイの景色を見るだけでも楽しめます。気楽に見れます。

【Designated Survivor】星3

ややリアリティに欠けるところが残念。

【Homeland 】星4.5

 双極性障害を持つ、極めて有能なCIAエージェントの話。

【Billions】星4

ヘッジファンドを運営する数千億円(ビリオンズ)の富豪と連邦検察官の戦い。

* * *

これは10数年以上にわたって見た番組のリストですが、こう列挙してみると、我ながらたくさんのテレビを見てきたことに驚かされます。

私が見るのはたいてい夜の11時から12時にかけて。

仕事で疲れた頭を切り替えて眠りにつくのに役立てています。

若い頃は、そんな切り替えは必要なく、布団に入ると直ぐに寝てしまったのですが・・

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2022年4月20日 (水)

「平和の配当」と「グローバリゼーション」の終焉

昨日(4月19日)のニューヨーク市場は3指標が全て上がり、ホッとした個人投資家も多いかもしれません。

しかし私は「今年の2月24日以降、世界は変わってしまった」との認識を持っています。

ひとつは、「平和の配当」の時代の終焉。

これはブッシュ大統領(父親)が好んで使った言葉ですが、

1989年にベルリンの壁がなくなり、

91年にはソ連が崩壊。

これにより、その後、世界は「平和の配当」を享受出来るようになったというもの。

米国の国防費(対GDP比)の推移を下記に載せます。

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これを見ると(クリックすると大きくなります)、この言葉の意味が実感できます。

国防費がGDPの40%にも上った第二次世界大戦中のみならず、

朝鮮戦争の時も15%に迫り(統計によっては15%超えを示すものも)、

80年代は6%を超えていました。

それが94年以降08年まで5%を下回るようになったというもの。

この間、人々はグローバリゼーションの恩恵も受けてきました。

ユニクロ(ファーストリーティング)の服は人件費の安い国や地域で作られ、そのメリットを日本を初め世界の消費者が受けることが出来るようになってきたのです。

しかしトランプ政権以降、世界は「グローバリゼーション」から「非グローバリゼーション(deglobalization)」に行くのではないかと言われるようになりました。

それが今回の2.24で更に一層進んでしまった・・。

そんな認識を持っています。

もっともウクライナ避難民の人たちを助けようという輪が世界に広がっていることも事実。

そんな複雑な思いで、一昨日のテレビ(日経CNBC)に出演しました。

『こちら』で録画をご覧いただけます。

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2022年4月17日 (日)

ウクライナを横断するパイプライン

2021年、欧州諸国(EU)が使う天然ガスの45%がロシアから来たものでした(『こちら』および『こちら』)。

ドイツに至っては55%のガスがロシア産(『こちら』)。

これらのガスはパイプラインでロシアからEU諸国に運ばれていて、

主なルートは:

(1)バルト海を経由してドイツへ(ノルドストリーム1は稼働中、2は完成したものの認証作業停止)

(2)ベラルーシを経由してEUへ

(3)ウクライナを経由してEUへ

といったものになっています(下図参照。なお下図の出所は『こちら』)。

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このうちウクライナを経由するものが、ロシアからEUに運ばれる天然ガス全体の3分の1(『こちら』)。

なお、話は少し脱線しますが、ウクライナ自身の天然ガスの産出と消費を見ると、以前は天然ガス輸出国でしたが、1975年をピークに生産量が減少、現在では輸入国になっています(『こちら』)。具体的にはロシアがEUに輸出したものを再輸入して自国生産では足りない分の天然ガスを調達しています(『こちら』)。

さて話をパイプラインに戻しましょう。

ロシアからウクライナを通ってパイプラインでEUに運ばれる天然ガス。

これは、タダでEUに運ばれるのではなく、通行料(transit fees)がロシアからウクライナに支払われています(以前、私が日本の商業銀行に勤務していた時、パイプラインのファイナンスをしたことがあり、その時のことを思い出しました)。

ロシアはウクライナ経由の輸送量を昨年から絞って他ルートにシフトさせてきていますが、昨年以前の段階ではウクライナ経由の輸送量は年間約800億m³。

ウクライナに支払われた通行料は年間30億ドル、ウクライナ政府の歳入の7%程度を賄っていました(『こちら』および『こちら』)。

さて、これは今、いったいどうなっているのでしょうか。

調べてみると、ロシアによるウクライナ侵略開始後の3月下旬の段階で、ロシアはウクライナに対して契約通り通行料を支払ってきているとのこと。

それもルーブルではなく、ユーロやドルのハードカレンシーで支払いがなされているとのことです(『こちら』)。

『ロシア軍はこれまでのところウクライナ国内を横断するパイプラインを損傷させるようなことはしておらず、ロシアはガスの輸送量を減らすようなこともしていない・・』

ウクライナ最大の国営石油ガス公社(NJSC Naftogaz Ukrainy)のCEOはこう語ります(『こちら』)。

もっとも、そう語るCEO自身は、ロシアからの砲撃が続く中、bunker(掩体壕)に身を隠しながら、ブルームバーグ記者とのインタビューに応じていたのだとか・・。

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2022年4月13日 (水)

PPAPをやめてみては?

今やどの企業もこぞってデジタル化推進を謳っていますが、掛け声とは裏腹になかなか進んでいないところも少なくありません。

日本政府が今後中央省庁での「PPAPを廃止する」と発表したのは、いまから1年半も前(20年11月)。

当時はデジタル庁がまだなく、これを発表したのはデジタル改革担当大臣(当時)の平井卓也氏でした。

政府の音頭取りにもかかわらず、実は多くの大企業は未だにPPAPを利用しています(私のところにも頻繁にPPAPでファイルが送られてきます)。

そもそもPPAPとは何?

一言で説明すると、メールでパスワード付きファイルを送り、パスワードを別送する方法です。

なんでこんな手の込んだことをするのか、送ってくる人に聞いたことがありますが、答えは「会社の決まりなので」。

メールに添付されているファイルを誰かが盗めるのであれば、同じ経路で送られてくるパスワードも当然盗める筈です。

したがって本当にセキュリティを厳格にしたいのであれば、もっと「意味のある」別の方法を考える必要があります。

さて、このPPAPですが、どういった英語を訳したものかと調べてみると、

・Passwordつきzip暗号化ファイルを送ります
・Passwordを送ります
・Aん号化(暗号化)
・Protocol

の略なのだとか・・。(従って外国人には通じません)。

政府もとっくに使うのを止めたことですし、日立など多くの IT 関連企業ももはや使っていません(『こちら』)。

未だにPPAPを使っていると、「IT リテラシーの低い会社」と思われてしまいます。

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2022年4月10日 (日)

永野裕之著『教養としての「数学 I・A」』(読後感想文)

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「なんだ、数学 I・A か。高校時代には数IIIまでやったし・・」と、なめてかかると痛い目に遭います。

本書は、公園のベンチで春の日差しを浴びながら楽しむたぐいの本ではありません。

もちろん個人差はあるのでしょうが、少なくとも私の場合はそうでした。

きちんと机に向かって、ボールペンと紙を横に置きながら、

一つひとつ数式や図形を書いて確認しながら読み進む・・。

そんな感じの本です。

たとえば、冒頭(に近い方で)いきなり出てくるのが、

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これ自体は大したことのない数式なのですが、さて、この証明ってどうやるのだったでしょうか。

単純に式を解きほぐすと左側から右へと結果が得られます。

それだけでは、how to に基づいて右側を算出しているだけ・・。

図刑を使って証明してみると、ちょっと難しい・・(本書に説明が出てきます)。

続いて出てくるのが因数分解、三角比などなど・・・。

本書の最後の方では、正多面体がこの世には5種類しか存在しないことの証明や、オイラーの多面体定理の話も出てきます。

私は標準偏差や正規分布の本は別途読んでいるので、

このあたりの説明(第5章)はスーッと頭に入ってきました。

著者の説明の仕方が上手いこともあって、「公園のベンチの読書」でも平気でした。

しかし社会人として日ごろ慣れ親しんでいない分野(つまり私の場合、本書全体の80%くらい)になると、話が違ってきます。

定理や公式の導き方や証明をまさに食らいつくように、一つひとつ征服していき、1頁、1頁を進んでいく・・。

やや大袈裟ですが、私にとっては知的格闘技といった感じでした。

余談ですが、iPhone の電卓アプリを呼び出して、本体を横にすると、sin、cos、tan などの計算がすぐに出来ます。

10年以上 iPhone を使っていて(iPhone 4S から)このことに気づかず、本書で初めて知りました。

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2022年4月 1日 (金)

バフェットによる日本の商社株投資から分かること

バークシャー・ハザウェイのアニュアルレポート(『こちら』)を見ると、彼らは下記3社などの日本の商社株を有していることが分かります(アニュアルレポート7頁)。

三菱商事    2,102百万ドル(簿価ベース)

伊藤忠商事 2,099 百万ドル(簿価ベース)

三井物産  1,621百万ドル(簿価ベース)

一方で、円建て債を発行して円ベースの負債(残高 6,797百万ドル)も抱えています(アニュアルレポートK-99頁)。

バークシャーは上記以外にも日本の商社株を保有していると考えられますが、保有株として個別開示されるのはバークシャー全体の保有株のうち上位15社のみ。ちなみに最も多く持っているのはアップルの株式で31,089百万ドル。日本の上記商社勢は15社の中で、保有残高ベースで7~9番目に位置します。

いずれにせよバークシャーとしては円建ての資産(上記3社などの日本株)に見合う円建ての負債を敢えて抱えて、円ドルの為替のポジションをスクウェア(為替変動に中立的)に近いものにしていると思われます。

このように海外の投資家は、日本株の株価変動リスクが円ドルの為替リスクと混同されてしまうのを嫌います。

実例で見てましょう。

昨年末に日経平均を買った場合、28,791.71円(昨年末)が27,821.43円(3月末)となりましたので、▲3.4%のマイナスのリターンとなりました。

しかし例えば米国の投資家にとってみれば、バークシャーのような円建て負債を敢えて作らない場合には、

為替が115.02円(昨年末)から122.39円(3月末)に円安に進んでいますので(注:為替はTTM公示レート)、

ドルベースのリターンは、250.32ドル(=28,791.71円÷115.02円)から227.32ドル(=27,821.43円÷122.39円)へと、▲9.2%も下落してしまったことを意味します。

ちなみにこの間、ダウ平均株価は、36,338.30(昨年末)から34,678.35ドル(3月末)へと、▲4.6%の下落で済んでいます。

日本政府は海外にまで出かけて行って「Buy my Abenomics!」と外国人投資家に日本株への投資を呼び掛けてきました(『こちら』)。

しかし外国人投資家の立場からすると、たとえ日本株が値を上げても為替でやられてしまっては元の木阿弥。

つまり世界の投資家を呼び込むためには円安にならないことが重要なのです。

このことに四半世紀以上前に気がついたのは、1995年に米国財務長官に就任したロバート・ルービンでした。

彼はクリントン大統領(当時)に対して、こう助言したと言われています。

「大統領としていろいろとやりたいことがあるのでしょうが、歴史に名を残したいのなら、ドル高政策を進めることです」。

それまで米国では、安いドルが輸出を促進し、企業の競争力を高めると考えられていました。

しかし財務長官に就任する前の四半世紀をウォール街のゴールドマン・サックスで過ごしたルービンは、ドル高にすることで世界の資金を米国に集めることができると考えたのです。

輸出入といった「もの」の動きよりも、「お金」の動きに着目し、世界中から集まる資金をテコとして、米国の企業が積極果敢に投資を行い、経済を成長させていく・・。

ルービンはこうしたダイナミックな資本主義のモデルが成功すると信じていたのです。

* * *

この続きは日経新聞電子版でご覧ください(『こちら』)。

日曜日(4月3日)発売の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

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2022年3月27日 (日)

もう一度思い出すこと

経済評論家の三原淳雄さん(1937年 - 2011年)が生前よく話していたのが、

「僕は小学生の時に満州でソ連兵に銃口を突き付けられた」

というもの(『こちら』)。 

年配の方で三原さんと似たような経験を持つ方もいるかもしれません。

当事者にとっては一生忘れ去ることが出来ない戦慄で恐怖の出来事も、

部外者がニュースで見ただけでは、時と共に印象が薄くなってしまいます。

今回のロシアによるウクライナ侵略でそうした幾つかの出来事をもう一度思い出しました。

【1】2014年、ウクライナ東部でマレーシア航空の旅客機がミサイルによって撃墜され、乗っていた298人全員が死亡

オランダ人193人、マレーシア人43人、オーストラリア人27人ら合計298人が犠牲になりました。

この件では、国際合同捜査チーム(JIT)が結成されました。

彼らは、ロシアのプーチン大統領の最側近が、ウクライナの反政府勢力と定期的に連絡をとっていたことを掴み、2019年、下記3名を含む4人の容疑者を殺人罪で起訴(『こちら』)。

(1)イゴーリ・ギルキン容疑者――ロシア連邦保安局(FSB)の元大佐。ウクライナの反政府勢力が支配していた東部ドネツクで、防衛相の役割を担っていた。

(2)セルゲイ・ドゥビンスキー――ロシア参謀本部情報総局(GRU)の職員。ロシアと定期的に連絡を取っていたギルキン容疑者の代理役だった。

(3)オレグ・プラトフ――GRU特別部隊の元兵士。ドネツクで諜報部門のナンバー2だった。

昨年12月にはオランダの裁判所で公判が開かれ、検察側は4人の終身刑を求刑しました。

ただしロシア政府は被告らを引き渡さず、4人は公判を欠席(『こちら』)。

この件に関して米国のトランプ前大統領は、当時ロシアが関与したことに対して、疑問を投げかけました。

トランプは、米国とヨーロッパの当局者が「ロシアが共謀している」と公に結論付けた後でも、「プーチンが本件につき否定するのを受け入れた」とされています。

(Trump sowed doubt about Russia's involvement. He embraced Putin's denials, even after US and European officials publicly concluded that Russia was complicit)『こちら』

【2】2つのウクライナ疑惑

トランプ前大統領と言えば、米国史上3人目の弾劾訴追された大統領であることが思い起こされます。

ちなみに弾劾訴追された3人とは、第17代大統領のアンドリュー・ジョンソン(1808年 - 75年)、第42代ビル・クリントン、第45代ドナルド・トランプの3人です。

ウォーターゲートのニクソン(第37代)は下院司法委員会の弾劾勧告が可決された段階で大統領を辞任。

下院本会議での弾劾決議は出ておらず上院での弾劾裁判も開かれていません(従って3人の中に入りません)。

またトランプ前大統領は2019年と21年、2度も弾劾訴追された歴史上唯一の大統領です。

ウクライナに関連するのは19年の弾劾訴追の方。

  Nhk 

  (上図はNHKのサイト(『こちら』)より)

19年7月、トランプ大統領(当時)とウクライナのゼレンスキー大統領とが電話会談をした際に、

トランプはウクライナへの軍事支援と引き換えに、大統領選挙に向けた野党・民主党の有力候補のバイデン前副大統領とウクライナとの関係をめぐる調査を要求し、圧力をかけたとされています。 

トランプのこの行動は「米国の安全保障や大統領に就任する際の宣誓に反している」として弾劾訴追されました。

しかし共和党が多数を占めていた上院での弾劾裁判で無罪を勝ち取っています。

ウクライナ疑惑についてはバイデン現大統領も無縁ではありません。

バイデン氏の次男ハンター・バイデン氏が19年4月までの5年間ウクライナのエネルギー最大手ブリスマ社の取締役を務め、非常勤ながら月5万ドル(約500万円)の報酬を受けていたというもの(『こちら』)。

なお、ウクライナ疑惑とは別ですが、プーチンが米大統領選で『ドナルド・トランプ前大統領を有利にするための工作を承認した可能性が高い』(米国家情報長官室(ODNI)の報告書)といった報道(昨年3月17日)も思い起こされます(『こちら』)。

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