2024年4月15日 (月)

踊るインド株 巨象の実像

2016年11月8日、午後8時にインドのモディ首相がテレビに出演し、演説をしました。

「今から4時間後の真夜中0時以降、現在使われているお札のうち、500ルピー札(当時の為替で約800円)と1000ルピー札(約1600円)が使えなくなります」。

これはインドで使われていた紙幣の約86%にあたります。

日本で言うと、「1万円札と千円札が今日の夜から使えなくなる」と首相が宣言するようなもの。

インド中が大騒ぎになりました。

500ルピー札と1000ルピー札は通常の取引では使用禁止になりましたが、

銀行に持って行けば、(1)新紙幣と交換したり、(2)銀行に預金することは出来る、とのことでした。

しかしそれも年内まで。

さらに銀行から引き出せる新札の額にも制限がつけられたりしました(そもそも新札の印刷が間に合わなかった)。

「こんなことをしたら国中が大混乱に陥る」

とばかり、米国のローレンス・サマーズ(元財務長官、ハーバード教授)などが警鐘を鳴らしました。

銀行には長い列が出来ましたが、モディ首相の強力なリーダーシップの下で、インドはこの政策を断行しました。

目的は大きく言って、2つ。

1つはブラックマネーの炙り出し。

もう1つは、国民に銀行口座を持ってもらうことにありました。

それまでインドでは国民の約50%は銀行口座を持っていませんでしたが、この政策の結果、今では約8割の人が銀行口座を持つようになりました。

これは一例ですが、インドのサッチャーとも称されるモディ首相は、10年前に政権を握ってから、数々の経済改革を進めてきました。

おかげでインドのGDP(名目ドルベース)は10年間でほぼ2倍に・・。

さて、今週金曜日(19日)から、インドでは総選挙が行われます。

全国を7つの選挙区に分けて順次投票していくので、全ての投票が終わるのが6月1日。

開票は全国一斉に6月4日に行われます。

人民党 vs. 国民会議派の構図ですが、与党である人民党が勝利し、モディ氏が3期目に入ると予想されています。

今日の日経ヴェリタストークでは、そんなインドの状況について話し合いました。

上記のような政治の話よりも、むしろ自動車産業、金融機関など経済の話が中心です。

インド株への投資(具体的には投信、ETF)を考えている方は是非ともご覧になってみてください。

『こちら』です。

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なおインドについてお勧めしたいのが、鈴木真弥さんの『カーストとは何か』

学びの多い本でした。

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2024年4月12日 (金)

「複利」のすごさと怖さ 数%で資産形成に大差

複利のことなど今さら聞かなくても分かっている―という人がほとんどだと思います。

では、「100円(100万円ではない!。たったの100円)を年10%で複利運用したら100年で幾らになるか?」

これをイメージできる人はそんな多くないかもしれません。

答えは138万円!。

日経新聞(電子版)と日経ヴェリタス(4/14号)に寄稿しました。(『こちら』です)。

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2024年3月24日 (日)

NVIDIA GTC

3月18日~21日に開催されたNVIDIA のGTC(GPU Technology Conference)。

ファン会長の 基調講演(key note)だけでも見ておきたいと思っていたのですが、今日やっと時間が取れて最初から最後までを見ることが出来ました。 

2時間を超えるプレゼンですが、英文の字幕もあり、一見の価値ありだと思います(『こちら』)。

忙しい方は最初の3分間の動画だけでもご覧になってみてください。

下図は昨年10月のNVIDIAのプレゼン資料で、今後のプロダクト・ロールアウト(製品投入計画)を示したものです。

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H-200は今年の4-6月期にshipmentが始まる(『こちら』)とのこと。

現在のH100およびこれから出てくるH200はいずれも頭文字はHで、このHはGrace Hopper(1906~1992年。1959年にプログラミング言語COBOLを開発)から来ています。

Hの一世代前はA(Ampere)、さらにその前はV(Volta)といった開発コードネームがつけられていました。

さて今回のGTCでは、Hopperの次の世代、Blackwellが発表されました(下図)。

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これは数学者のDavid Blackwellから取ったもの。

新しいGPUは、B100、GB200といった具合に、数字の前にBlackwellのBが付くことになります。

GPUの性能は、このようにどんどんと良くなりますが、NVIDIAの凄いところは、顧客と一緒になって、エコシステムを創り出しているところ。

TSMCは半導体のファンドリー(顧客が設計する半導体を製造する工場。製造専門の会社)として有名ですが、ファン会長は『NVIDIAはAIのファンドリーを目指す』と力説していました。

社内にはハードのエンジニアよりもソフトのエンジニアの方が多いといった声も聞こえてきます。

未来はもうすぐ、そこまで来ている・・。

動画の最初の3分間を見ただけでも、それを感じることが出来ると思います。

音楽はAI、AIVAが作曲したものです。

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2024年3月23日 (土)

建築家とゼネコン

先月24日に発行されたバークシャーのアニュアルレポート(2023年)。

表紙と目次のすぐ後に、バフェットによるマンガーへの弔辞が掲載されています(下の写真)。

題して『チャーリー・マンガ―:「バークシャー・ハサウェイのアーキテクト(建築家)」(The Architect of Berkshire Hathaway)』

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この中でバフェットは次のように書きました。

『チャーリーは現在のバークシャーの "設計者 "であり、私は "ゼネコン"として彼のビジョンを日々建設していった。』

(Charlie was the “architect” of the present Berkshire, and I acted as the “general contractor” to carry out the day-by-day construction of his vision.)  

昨年11月28日に99歳で他界したマンガー。

あと33日で100歳の誕生日を迎えるところでした。

チャーリー・マンガ―と言えば、歯に衣着せぬ発言で有名でした。

私はそんなマンガーのコメントをバークシャーの株主総会で聞くのが好きでした。

たとえばバフェットは2006年にようやくコカ・コーラの役員を退任したのですが、

マンガーによれば「もっと早く取締役を辞めていればコカ・コーラ株を売れたはずだ」(バフェットの公認伝記「The Snowball」原書681頁)。

昨年5月のバークシャー株主総会にはマンガー(当時99歳)は車椅子に乗って登壇しましたが、

今年の総会では残念ながら彼の姿を見ることが出来ません。

ご冥福をお祈りします。

* * *

話は変わりますが、先週末(3/15)時点で、バークシャーの時価総額は8,883億ドルでした。

これを分解してみると、

保有有価証券(上場株式)の時価が3,660億ドル。

現金および現金同等物が1,676億ドルです。

この2つを足し合わせると、5,336億ドル。

これとバークシャーの時価総額との差(3,547億ドル)が、ざっくり言って、バークシャーの事業会社(保険会社、エネルギー会社、鉄道、キャンデー、家具など)の価値ということになります。

(本当は、現金および現金同等物の中には、事業会社が事業を行っていく上で必要なものも含まれている為、上記計算は正確ではありません)。

保有有価証券(上場株式)の時価(3,660億ドル)の中身を見てみましょう。

全体の74%をアップルなど、たった5社への集中投資が占めています。

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しかもこの上位5社の顔触れですが、10年前(下図)と比べると大きく変わっていることが分かります。

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10前の上位5銘柄で残ったのは、コカ・コーラとアメックスだけでした。

350万もの虚偽口座が作られたウェルズ・ファーゴについては、バークシャーは、22年第1四半期に全株の売却を完了。

IBM株については、17年にほぼ全て売却。

17年8月のCNBCによるインタビューの中で、バフェットは次のように発言しました。

"I was wrong on IBM.  I made a mistake." 

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2024年3月 6日 (水)

一万円出しても読みたい本

最近読んで面白かった本を2つ。

【1】清原達郎著 『わが投資術 市場は誰に微笑むか』

間違いなく今年読んだ本でいちばん面白かった本です。

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生きるか死ぬかの市場を生き抜いて、最終的には抜群のパフォーマンスを手にした著者の言葉はさすがに重さが違います。

アマゾンの書評欄に『一万円出しても読みたい本』と載っていましたが、私も全く同じ感想。

この本が世に出たことを感謝したい、そんな読後感を持ちました。

きっと1回だけでなく、何回か、読み返す本になりそうです。

【2】ビル・パーキンス著『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』

先日、日経新聞の方が来社され、この本の話が出てきたので、買って読んでみました。

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本書のエッセンスをひとことで言うと、

「多くの人はお金を残して死ぬ。

お金よりも人を幸せにするのは"経験"なので、その為にお金を使いなさい」

という内容の本。

これだけ書くと、大したことのないようです(やはり私はとても書評家にはなれない)。

しかし本書には寿命時計とか、目から鱗の話が幾つか出てきます。

(私も早速自分のスマホに寿命時計を入れてみました。すると結構、緊張するものです。「あと〇〇年」とか出てきますので)。

多くの人が老後の為とばかり、資産を増やすことに邁進している現在の日本。

そんな中で、著者の主張は新鮮です。

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2024年3月 5日 (火)

日経平均4万円突破

日経平均が4万円を突破したことで、いろいろな方からコメントを求められます。

基本、巷で言われていることと同じで、何か新しい視点がある訳ではないのですが、

『S&P500やオルカン(オール・カントリー)と比べると、どうか』といった質問も受けます。

両者(たとえばS&P500と日経平均)を比べる場合は、通貨を揃えた方が良いと思います。

【1】ドルベースでの比較(外国人投資家の視点)

たとえば今から約3年前。

2021年2月16日の日経平均株価は、

30,467.75円(このときの為替レートTTMは105.49円)

よってこの時の日経平均はドルで、288.82ドルです。

現在は、日経平均40,097.63円(為替150.42円)。

ドルベースで、266.57ドルです。

つまり約3年の間に日経平均は値下がりしています。

一方、S&P500(米国株)は、

2021年2月16日が、3,932.59ドル

そして現在が5,130.95ドルなので、

30%以上値上がりしています。

【2】円ベースでの比較(日本人投資家の視点)

同じ期間で、日経平均は

30,467.75円→40,097.63円(32%上昇)

一方の、S&P500(円ベース)は、

414,849円(3,932.59ドル×105.49円)

から、

771,797円(5,130.95ドル×150.42円)

へと、86%上昇しています。

* * *

つまり現時点で、日経平均は一見したところ、暴騰しているように見えます(そうマスメディアが騒いでいる)。

しかし、S&P500(そして米国株が62%を占めるオルカン)に比べれば、まだまだ力不足と言えるかもしれません。

もちろん、これから先、短期的には、ドルベースでも、そして円ベースでも、

日経平均のパフォーマンスがS&P500を上回ることがあるかもしれません。

ただ中長期で見ると株価は基本的にはGDP(経済力)の伸びに左右されていく面が強いように思います。

目先の市場に惑わされず、国として経済の底上げを図る(なによりも急速な人口減少に歯止めをかける)ことが重要であるような気がしています。

(注)S&P500の単位はドルではなく、ポイントですが、分かりやすくするため、1ポイント=1ドルと仮に置いて、議論を進めています。

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2024年3月 3日 (日)

IBJ Professorship

IBJとは、Industrial Bank of Japan の略で、海外では興銀(日本興業銀行)のことを英語でこう呼んでいました。

三行統合で興銀の名が消え「みずほ」になってから、残念ながら IBJ の名前も聞かれなくなってしまいました。

銀行としての名は消えてしまったのですが、スタンフォード大学ビジネススクールでは IBJ の名前が残り続けました。

どういうことでしょうか。

1987年、興銀はスタンフォードのビジネススクールに寄付をしました。

当時のビジネススクール学長 Robert Jaedicke はファイナンス(株式投資論)を教えていたマクドナルド教授を冠名教授としました。

IBJ Professorship の誕生です。

マクドナルド教授は、IBJ Professor と呼ばれ、1968年から2017年まで50年間に亘って株式投資論をスタンフォードで教え続けました。

翌18年、教授は80歳で他界しましたが、教授の薫陶を受けた資産運用業界で活躍する人たちがビデオメッセージ(『こちら』)を送りました。

本日の日経ヴェリタス紙に掲載の寄稿記事は、教授のことを思い出しながら書いたものです(『こちら』でお読みいただけます)。

なお記事の中では、マクドナルド教授が授業に招いたゲストスピーカーの名前を例として数名挙げました。

ウォーレン・バフェット、

チャーリー・マンガー、

フィリップ・フィッシャー、

ノーラン・ブッシュネル(アタリの創業者)

しかし大事な人の名前を記事には書き忘れました。

スティーブ・ジョブズです。

1980年、マクドナルド教授は スティーブ・ジョブズをゲストスピーカーとして授業に呼びました。

トピックスは『もしアップルがIPO(株式公開)をするなら、いくらの値段が適当だろうか』というもの。

ちなみにこの時のジョブズは25歳。

そしてこの年の12月12日、アップルはIPOを実施。

売出価格は1株22ドルでした。

その後、アップルは何度か株式分割をしていますので、分割調整後のベースでは、売出価格は0.1ドル。

現在アップルの株価は約180ドルですので、当時1000ドルを投じていれば、180万ドル(2.7億円)になっている計算です(そのほかに配当金として16万ドルを得ている計算)。

1980年当時のジョブズを交えての、IPO価格に関するクラス討論、きっと興味深いものであったに違いありません。

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(Jack McDonald, From the website of Stanford Business School, Photo by R.J. Muna)

最後に、マクドナルド教授にビデオ・メッセージを送った人々の名を記しておきます(ビデオに現れた順番。なお資産運用業界の人に限定して載せます)。

Sandy Dean, Sansome Partners

John Saer, GI Partners

John Zellerbach, BE Properties, Inc.

Wallace Hawley, InterWest Partners 

Charles R. Schwab, The Charles Schwab Corporation 

Steve Denning, General Atlantic 

John S. Osterweis, Osterweis Capital Management 

Warren Buffett, Berkshire Hathaway Inc.

Andreas Halvorsen, Viking Global Investors, L.P.

Bill Barnum, Brentwood Private Equity

Peter Chung, Summit Partners 

Jody Fowler Jonsson, The Capital Group

Mary Ellen Martin Zellerbach, Martin Investment Management, LLC 

Jim Coulter, TPG Holdings 

Frank Quattrone, Qatalyst Partners

Gene Skyes, Goldman Sachs Group, Inc.

John H. Scully, SPO Partners & Co.

Bill Oberndorf, Oberndorf Enterprises, LLC 

Carter McClelland, Union Square Advisors

Glenn Solomon, GGV Capital

Charlie Anderson, Fox Point Capital 

Don O’Neal, The Capital Group

Doug Valenti, QuinStreet, Inc.

Dave Hodgson, General Atlantic 

Alex Seaver, Stadium Capital Management

Bill Matthes, Behrman Capital

John Hurley, Cavalry Asset Management

Hadley Mullin, TSG Consumer Partners 

Mike McCaffery, Makena Capital Management LLC 

Tim Bliss, Investment Group of Santa Barbara

Thomas A. Russo, Gardner Russo & Gardner LLC

Bill Ford, General Atlantic

John Bartholdson, Juniper Investment Company, LLC

Reece Duca, Investment Group of Santa Barbara

Ed McDermott, Spring Tide Partners

Michael Fisch, American Securities LLC

Terry O’Toole, Macanta Investments LLC

George Davis, Hotchkis & Wiley

Lizzie Fisher Marshall, Hall Capital Partners LLC

John Anderson, Anderson Dealership Group

Ori Uziel, Uziel Capital Management, LLC 

Tom McKinley, Cardinal Partners

Pete Masucci, New Mountain Capital, LLC

Ted Muhs, The Muhs Company, Inc.

Christine Hammer, Hammer & Associates, Inc.

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2024年2月19日 (月)

ETF(Exchange Traded Funds)

本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トッピクスはETFについて。

ETFとはExchange Traded Fundsの略。

証券取引所に上場する投資信託のことで、多くは株価指数などの指標への連動を目指します。

世界のETFの運用残高は1800兆円。

ETFは、金融商品の中で「20世紀最大の発明」とも言われます(日経ヴェリタス2/18号、第1面)。

これはどのように開発されたのでしょうか。

【1】ブラックマンデーに遡る

1987年10月19日のブラックマンデー。

米国市場はたった1日で22.6%も下落しました。

これは1日の記録としては、今日に至るまで歴史上最大の下落率です。

どうしたら、こういった下落は防ぎ得たのでしょうか。

事後検証や研究の結果、「市場にもっと流動性があれば、過度な暴落を防げたはず」との結論に辿り着きました。

当時は、先物やオプションの市場では、マーケット全体を取引出来ましたが、

現物市場(Cash Equityの市場)では、マーケット全体を売買できる単一の有価証券がなかったのです。

「この種の単一の有価証券があれば、市場の流動性が高まる」ー こう考えられて、開発されたのが、ETFです。

第1号となったのは、S&P 500の指数に連動するETFで、1993年に誕生しました。

SPDR(スパイダー;Standard & Poor's Depository Receipts の略)の名がつけられ、

「SPY」のティッカー・シンボルで取引されました。

現在、SPDRのSPY 1本だけで、日本円に換算して、74兆円の純資産総額(4,917億ドル)を有しています。

日本全体のETF残高(日銀保有分も含めて)が75兆円と言われていますので、SPY 1本で、日本全体にほぼ匹敵することになります。

【2】ETFには2つの市場がある

ETFには、「流通市場」と「発行市場」の2つの市場があります。 

これについては『こちら』の記事によくまとめられていますので、ご覧になってみてください。

【3】ETFには3つの価格がある

もう一つ。

ETFには、「取引所価格」と「基準価額」、そして「インディカティブNAV(推定一口あたり純資産価格)」の3つの価格があります(『こちら』)。

2つの市場と3つの価格。

少しややこしいですが、これが分かるようになると、ETFの仕組みが理解できるようになります。

【4】日本の個人投資家がETFを買う時の注意点

いろいろな種類のETFが誕生してきていますが、個人投資家が実際に買う時には注意も必要です。

ひと言で言うと(すべての金融商品の評価に共通するポイントでありますが)流動性がきちんとあるか、

つまり売りたいときに、きちんとした価格で売れるか

という点に留意する必要があります。

具体的なチェック・ポイントは3つ。

(1)出来高(1日当たりの出来高)

(2)純資産残高

(3)基準価額と市場価格の乖離率

純資産残高について言えば、SPYは残高4,917億ドル(74兆円)です。

一方、日本では317本のETFが東証に上場されていますが、純資産残高30億円未満のものも少なくありません。

(3)の基準価額と市場価格の乖離の問題は、2018年に東証がマーケットメイク制度を導入したことで大分改善されました。

【5】日本のETFマーケットの特殊性

日本全体で、ETFの残高が75兆円と言われていますが、

日銀保有分を除けば、12兆~13兆円です。

一方、米国のETF市場は、1,100~1,200兆円と言われていますので、サイズで見ると、米国の100分の1です。

ただし本数で見ると、米国3,100 本 vs. 日本317本。

つまりサイズでは、米・日の比率が100対1でしたが、本数になると10対1となります。

これは1本あたりの運用資産残高が小さいものが日本には多くあることによるものです。

【6】投信を買うか、ETFを買うか

昔はETFの方が、コスト(信託報酬など)が安かったので、ETFの方がお勧めでした。

しかし最近は、eMAXIS Slimなど低コストの投信が出てきたので、どちらを選んでも大差ありません。

新NISAで「つみたて投資枠」を利用する場合は、ETFは使えません。つまり投信を選ぶしか手がありません。

新NISAには「つみたて投資枠」以外に「成長投資枠」もありますが、これについては投信でもETFでも利用できます。

投信は口数を設定して、何口買いたいと注文しても、幾らの単価で買えたのか、翌日もしくは翌々日になるまで分かりません。

一方、ETFは、スクリーンを見ながら、指値などでも購入出来ます。

こういったことから、ETFの方が好きだという人も多くいます。

この辺は人それぞれだと思います。

【7】日銀が保有するETF

日銀が持つETFは、昨年9月末で簿価37兆円に対して、時価61兆円。

つまり含み益が24兆円もあります(現在では含み益はもっと膨らんでいるはずです)。

この含み益は日銀にとっては有り難い数字だと思います。

というのも、9月末時点で、保有国債(586兆円)の含み損が10兆円あったからです。

いずれにせよ日銀はいずれ金融を正常化していくことになるものと思われ、ETFについても、

何らかの処置が必要になります。

ネットの世界ではいろいろな案が語られていますが、

たとえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に、若干のディスカウントで、毎年少しずつ引き取ってもらうといった案も考えられうるかもしれません。

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なお日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』は『こちら』でご覧になれます。

(未契約ですと最初の1分半ほどで切れてしまいますが・・)

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2024年1月27日 (土)

生涯現役、定年後は「好き」を仕事に

私ごとで恐縮ですが、40年以上も前のことです。

当時、興銀に勤めていて、まだ20代でした。

人事部から電話があり、「何事か」と思って行ってみると、「米国シカゴに赴任して欲しい」と言われました。

この後5年近くをシカゴで過ごすことになるのですが、もちろん希望していた訳ではありません。

事前に何の話もなく、まさに晴天の霹靂でした。

そしてシカゴは冬が寒くてたいへんでした。

ウィンディ・シティと呼ばれ、風が強くて、体感温度はマイナス10℃にも20℃にもなります。

会社勤めをするということは、どこに住むのか、どういった仕事をするのかについて、多くの場合、自分でコントロール出来ません。

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      (写真は日経新聞電子版の当該記事サムネ)

もっとも最近の若い人は、こうした滅私奉公的な、昭和的価値観から少しずつ距離を置いてきているように思います。

中には、FIRE(Financial Independence, Retire Early;経済的な自立による早期リタイア)を目指す人も多いと聞きます。

会社から離れて、早く自由になりたいということなのでしょう。

ところで話は変わりますが、日本で60歳以上で仕事をしている人に聞くと、44%の人が「75歳を超えても働いていたい」と回答しています(内閣府「高齢社会白書」)。

FIREを目指している若者からすると、「何で?」といった感想になるのかもしれません。

なお米国で何歳まで働くつもりかを聞くと、54%の人が65歳以下と答えています(下図;出所は『こちら』)。

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こうした統計の数字を並べてみても、あまり意味ないのかもしれません。

「働く」ということに対しての捉え方が、人それぞれで違うからです。

そんなことを考えながら記事を書き、日経新聞に寄稿しました。

『こちら』です。

明日発売の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

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2024年1月 9日 (火)

今年から始まった新NISAについて

本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演するため、昼間、大手町の日経本社ビルに行きました。

本日の日経平均は取引開始後10分ほどで(9:10 AM)33,990円をつけ、34,000円台に迫る勢い。

そんなこともあってか、ここで働く人たちも、いつにも増して明るく感じました(気のせいかもしれませんが)。

番組のトッピクスは今年から始まった新NISAについて。

【1】新NISAはどう評価できるか

これまでのNISAは、たとえば5年経ったらロールオーバーが必要になるケースもあるといった具合に煩雑さが目立ちました。

新NISAはそういった今までのNISAの弱点がかなり改善され使い勝手が良くなっています。

資産形成を図る上で役に立つと思われます。使ってみることをお勧めします。

この制度を作る上で推進役の1人となった内閣府副大臣(当時)が、昨年雑誌のインタビューで次のように発言していました。

『つみたてNISAの導入に向けて関係者をどう説得しようかと考えていたとき、誰かから「米国ではごく普通の仕事をしている、普通の人がミリオネアだ」という話を聞いたの。』

 『「つみたてをしているアメリカ人はザラに1億持っているんだ」って、自民党の会議で言いふらしましたよ。ザラにじゃないかもしれないけれど』

2019年に出した拙著(『こちら』にも、こんな一節があります。

『米国で世帯主が65歳以上の平均所得は月57万円、年収にして680万円』

この数字は現在(2022年の数字)で年収1000万円を超えています(『こちら』)。

65歳以上の世帯年収がこれだけ多いということは、米国の401Kという『年金資金積立制度』が有効に機能しているからと思われます(詳しくは上記拙著をご覧ください)。

つまり新NISA(とくに「つみたて投資枠」)は最初から米国の401Kを意識して作られた訳で、「国も漸く国民の資産形成に真剣に取り組みだした」と評価できるように思います。

【2】年齢によってポートフォリオの資産配分を変えるという考え方について

年齢が上がるにしたがって、ポートフォリオの中身をリスクの低いものにしていくというのは、米国の教科書にも載っている考え方です。

昔から米国では、株と債券の資産配分のルールとして、「100マイナス年齢で株を持て」とか「110マイナス年齢で株を持て」と言われてきました。

すなわち25歳の人は100あるいは110から、年齢である25を引いて、80前後が株式の比率になり、残りは債券の比率になります。

ただ日本の場合は、債券がまだ金利がほとんどつかないといった特殊な事情にあります。

10年ものの個人向け変動国債の金利は税引き後で現状年0.37%。

100万円預けて、3,700円しか金利がつきません。

そういった面では米国の考え方をそのまま今の日本に当てはめることについては違和感を持つ人もいるかもしれません。

(ちなみに米国ではiPhoneに出てくるアップルの定期預金で税引き前4.3%つきます)。

なお債券と言っても、リスクの高いものもあります。

昨年はクレディスイスのAT-1債が全損になりました。

仕組債で大やけどをした人もいます。

Cyprus

    (写真はキプロスの銀行)

更にもう1点。

個別の債券はNISAの対象外です。

【3】NISAで投資して、相場が下落したら、どうするか

株式投資をしていると、相場が大きく下落することもあります。

ウォーレン・バフェットも資産が半分になったことが、これまでに4回あると話していました。

株式投資をする以上、ときに自分の資産が半分になるリスクは覚悟する必要があるように思います。

そんな時、どうするのがいいでしょうか。

個別株ではなくて、S&P500などのインデックス投資の場合は、たとえ半分になったとしても、持ち続けることです。

最悪なのは半分になった時点で狼狽売りをすること。

リーマンショックの時は、米国の株価は半分(正確には46%)になりましたが、5年半で元の水準に戻りました。

1929年の大恐慌の時は、株価は9分の1になりました。

元の水準に戻るのに25年かかりましたが、この間、半年に1回株を買うという積立投資をしていれば(安くなった時に買えるので)、6年で元に戻りました。

多くの人は暴落の相場が続くと、怖くなって降りてしまいますが、下がった時に売らずに、市場に参加し続けていることがポイントです。(繰り返しますが、個別株ではなくて、S&P500などのインデックス投資の場合の話です)。

【4】新制度を機に、初めて投資を始めようという人も多い。基本的なことから教えて欲しい。

まずNISAの口座の開設は銀行がいいか、証券会社がいいかですが、銀行だと株式やETFが買えません。よって証券会社の方を考えるべきです。

とくにネット証券は手数料が割安なのでお勧めです。

次にNISAには(1)つみたて投資と(2)成長投資があります。両方いっぺんにスタートさせてもいいのですが、資金的にあまり余裕のない人や初心者は、つみたて投資から始めるべきです。

たとえば「毎月3万円ずつ投資信託を買っていく」という方式で、これが一番資産形成に向いています。

金額を一定にして購入していく「つみたて投資」方式は、相場が安い時に、より多くの投資信託を買えるという利点があるのです。

なお投資信託にはインデックスとアクティブとがありますが、どちらかというとインデックスの方がお勧め(『こちら』の記事参照)。

信託報酬などの手数料もインデックスの方が安価です。

ネット証券の大手3社を対象に、『ある雑誌』が、『昨年1月から11月末まで、つみたてNISAで、どの銘柄の買い付けが多かったか』を調査しました。

結果は、どの会社でも米国のS&P500に投資するインデックスファンドが第1位でした。

個人投資家の方々はよく勉強していて、ちゃんと分かっているなと思いました。

【5】リタイヤ後の運用について。また全世代を通して新NISAへの向き合い方など

一般的には、さすがに70代になれば、資産を取り崩すのが一般的と考えられていますが、『金融庁の調べ』によると、これまでにNISAで買い付けられた金額のうち25%以上が70代以上によるものとなっています。

なかには80歳以上になっても、つみたてNISAを使って、定期的に積み立てている人もいます。

実際のところ、いまの80代、90代の人と話すと、無駄使いはせずに無理のない範囲で資産を増やせるなら増やして、(自分で使い切るというより)子や孫の世代に残したいという人が結構多いように思います。

つまりどの世代であっても、NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は使えると思います。

ただし、NISAにはマイナス面もあります。

損を出した時、NISAでなく一般の株式投資であれば他の利益を出している金融資産と、税務上、損益通算できます。

しかしNISAでは損を出しても、何の救いもありません。

つまりNISAでは損を出さないことが、より一層重要になります。

そういった意味では、個別株よりもインデックス投信、なかでもS&P500とかオルカンと言われるオールカントリー・インデックスが向いていると思います。

ちなみS&P500は30年前と比べると、ちょうど10倍になっています。

なお本日の番組の冒頭部分は『こちら』でご覧になれます。

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2024年1月 1日 (月)

明けましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします。

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                            (元旦の朝の富士)

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2023年12月16日 (土)

投信とETF

10年以上も前に著した本の中で「投資信託の手数料は苛酷である」と書いたことがあります。

当時、投信の主流は販売手数料1.0~3.0%。

その他に、信託報酬が年2%前後。

100のものが、買った途端に97になり(注:販売手数料3.0%の場合)、しかも20年持てば(信託報酬が年2.0%の場合)更に約20%減価し、結果、77前後になります(注:運用成績がプラス、マイナス、ゼロの場合)。

しかしながら・・。

10年以上の年月の結果、時代はずいぶんと変わりました。

現在では、ネット証券を使えば、販売手数料ゼロの投信が増え、しかも信託報酬も例えばeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の場合、年0.05775%。

ところで、いま日本の投資信託の世界で起きていることは、eMAXIS Slim シリーズのように、強いものがますます強くなるという現象です。

運用会社が投資信託を運用する上では一定のコストがかかりますが、多くの運用資金を集めていれば、コストは薄められます。

その結果、こうした投信が競争優位となり、ますます資金を集めやすくなるといった好循環に。

逆にじゅうぶんな運用資産を集めることが出来ない弱小投資信託の中には、コストを吸収しきれないところも出てきています。

現在もっとも多くの運用資産を集めているのが、eMAXIS Slim米国株S&P500で、純資産総額は、なんと2.95兆円。

いずれにせよ信託報酬がここまで低くなってくると、ETFとの差が少なくなってきます。

そんなことを考えながら、日経新聞(電子版)に寄稿しました。

『こちら』です。

明日の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

Etf

(注:図はSMBC日興証券のサイトより)

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