2026年4月10日 (金)

住宅ローンは変動金利のままで大丈夫か?

講演会や少人数のセミナーで若い世代の方々から一番多く寄せられる質問がこれです。

「住宅ローン、変動金利のままで本当に大丈夫ですか?」

日銀はこれまで、政策金利を0.25%ずつ合計3回引き上げ、現在は0.75%の水準にあります。

いったいこれから先、金利はまだ上がるのでしょうか?

上がるとしたら、どこまで上がる可能性があるのでしょうか?

多くの人が「今、固定金利に切り替えるべきか」「このまま変動で乗り切れるか」と不安を感じていると思います。

YouTubeの第4回目では、このテーマについてお話ししてみました。

そもそも日銀はなぜ金利を上げてきたのか、そして今後の見通しなどについて話しています。

関心のある方は、ご覧になってみてください。

『こちら』です。

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2026年4月 7日 (火)

トロントの思い出

大谷選手第3号!

現在、ドジャース対ブルージェイズの熱戦が繰り広げられているトロント。

この街は、私にとっても特別な思い出のある場所です。

今から45年ほど前、私が28歳だった1981年の秋。

当時、私は興銀の外国部総務班に所属していました。

カナダ・トロントにあった興銀の駐在員事務所が、現地法人「カナダ興銀」へと移行する話が持ち上がりました。

そこで、私がその設立準備の手伝いのために急遽トロントへ長期出張という形で派遣されることになったのです。

記録を調べると、1981年10月20日に出発し、11月30日に帰国したとあります。

約40日間。

到着したトロントは、すでに日本の冬よりもずっと寒く感じました。

街の中心部は地下街で繋がっていて、寒さを避けながらあちらこちらに移動できたのが印象的でした。

ニューヨークともロサンゼルスとも違う、どこかヨーロッパのような落ち着いた雰囲気。

街並みが美しく、とても印象的な都市でした。

Toronto

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2026年4月 3日 (金)

為替介入の有効性

3月30日朝、ドル円は一時160.46円〜160.47円まで上昇しました。

これを受け、三村淳財務官は

「足元、原油先物市場に加えて、為替市場においても投機的な動きが高まっているという声が聞かれる。この状況が続けば、そろそろ断固たる措置も必要になる」

と発言。

為替は159円台へと押し戻されました。

その後は4月1日に中東情勢の緊張緩和期待から158円台まで下押しする場面もありましたが、

4月2日のトランプ大統領演説(攻撃継続を示唆し早期終結期待が後退)を受けて、再び159円台へ強含みました。

これから先、三村さんの言うような『断固たる措置』が発動されることになるのでしょうか。

そもそも政府・日銀による為替介入は有効なのでしょうか。

YouTubeの配信3回目では、【為替介入の有効性:円安が進む今、政府・日銀はどこまでコントロール出来るか?】について話しています。

『こちら』です。

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大統領演説をどう解釈するか?

トランプ大統領による昨日の演説ーー。

期待の大きさに比べて新味に乏しい内容でした。

欧米メディアの報道でも、「失望」「既存メッセージの繰り返し」といった評価が目立ち、マーケットも一時的に原油高・株安で反応。

一方で、その後の市場はやや落ち着きを取り戻しました。

イランの高官が、戦争終結後にホルムズ海峡の航行管理に関する新たな枠組み(navigation regime)をオマーンと協力して検討する意向を示したと報じられました。

この発言は、海峡封鎖の長期化リスクをある程度抑制するものと受け止められ、原油価格の上昇圧力がやや緩和(と言っても、WTIは 112.06ドル)。

その結果、主要株価指数は小幅ながら持ち直し、S&P 500やナスダックはわずかに上昇、ダウ平均は-0.13%下落して取引を終えました。

では、そもそも今回の演説は何を意図したものだったのでしょうか。

あくまで推測の域を出ませんが、当初は停戦や外交面で踏み込んだ内容を含む可能性があったものの、交渉の進展が思わしくなく、結果として従来メッセージの再提示にとどまった、との解釈もーー。

ただし、欧米主要メディアの報道を確認する限り、このような解釈を裏付ける情報は見当たりません。

むしろ、大統領としては、これまでと同じ主張であっても、「改めてテレビを通じて国民に直接訴えたかった」と見る方が現時点では自然かもしれません。

もう一つ注目されるのが、米陸軍トップ人事です。

Randy George(ランディ・ジョージ)陸軍参謀総長の交代、後任としてChristopher LaNeve(クリストファー・ラニーブ)将軍が指名された点について、日本の一部メディアでは、同氏が第82空挺師団の指揮経験を持つことから、地上戦展開の可能性を示唆するとの見方もあります。

しかしながら、こうした踏み込んだ解釈は欧米主要メディアではほとんど見られず、現時点では慎重な報道姿勢が維持されている印象です。

いずれにせよ、いくつかの疑問を残したまま、マーケットはGood Friday(聖金曜日)による休場を迎えることにーー。

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2026年4月 1日 (水)

値上げの季節

今日から新年度。

その幕開けと同時に、気になるニュースが飛び込んできました。

食品だけでも、約2,800品目が本日から値上げになるとのこと。

思えば数年前まで、企業は値上げにかなり慎重でした。

価格を上げれば消費者に敬遠され、売上が落ちてしまう――そんな懸念が強かったからです。

しかし今や状況が変わりました。

原材料費や物流費の高騰が続く中、競合他社も値上げに踏み切っているため、「自社だけ据え置く」ことをむしろ選択しなくなってきているように思います。

結果として、値上げは“例外”ではなく、“前提”になりつつあるように感じます。

そんな中で、「こんなところにも…」と驚いたのが、皇居西側・千鳥ヶ淵沿いのボート乗り場の料金。

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    (Photo from『写真AC』)

観桜期の特別料金とはいえ、60分で3,000円。

この料金は3月1日から適用されているそうですが、以前は1,600円でした(『こちら』)。

単純計算すると、実に87.5%の値上げ。

ここまで一気に上がると、さすがにインパクトがあります。

もちろん、人件費や維持管理費の上昇など、背景にはさまざまな事情があるのでしょう。

ただ、それでも「8割超の値上げ」をどう受け止めるかは、人によって分かれそうです。

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2026年3月27日 (金)

YouTubeチャンネル第2回を公開しました

1週間が経つのは本当に早いものですね。
東京では3月19日の開花宣言から1週間が過ぎ、桜もだいぶ見応えのある姿になってきました。

さて、先週スタートしたYouTubeチャンネルですが、本日第2回の動画をアップいたしました(宣伝のようになってしまい恐縮です)。

今回は、【ドルの価値のゆくえ:アメリカ人が望むのはドル高か?ドル安か?】についてお話ししています。
ご視聴は『こちら』から。

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2026年3月26日 (木)

日本は内向きになっているのか?

日本人の旅券保有比率(全人口に対する旅券保有者の率)が減少してきています。

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上図は日本人の旅券保有率の推移ですが、かつて24%以上あった数字が現状17.5%(出所は『こちら』)。

この17.5%という数字は、欧米諸国(概ね50〜90%)と比較するとかなり低い水準です。

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ちなみに米国では約1.8億冊の旅券が発行されており、人口比ではおよそ50%前後とされています。(『こちら』)。

なぜ日本の数字が低いのか?

一般的に指摘される要因としては、

(1)国内での生活満足度の高さ
(2)海外渡航コストの上昇(為替の影響)

などが挙げられます。

仮に内向き傾向が強まっているとすれば、やや気になる動きとも言えます。

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2026年3月20日 (金)

再現性と投資の心構え:なぜ「他人の成功」が最大の敵になり得るのか

 株価とは、企業が将来生み出すと期待されるキャッシュフローを、現在価値に割り引いたものです。

(The stock price is the present value of its expected future cash flow.)

したがって、投資には常に「未来の予測」という不確実性が伴います。

もう一つ、投資の世界ではよく「再現性がない」と言われます。

もし誰にでも簡単に再現できる手法が存在するなら、市場の原理によってすぐにその利益は消失してしまうはずです。

つまり、万人に通用する“魔法の再現性”など、存在しないのです。

【思考プロセスを学ぶ】

大切なのは、手法をそのままコピーすることではなく、偉大な投資家の「思考プロセス」を深く理解することです。

たとえば、バークシャー・ハサウェイの株主総会で、著名ヘッジファンドマネージャーのビル・アックマンが一株主としてウォーレン・バフェットに真剣に質問する姿を目にしました。

アックマンほどの成功者であっても、なお「バフェットはどう考えるのか」を学び続けようとする——その姿勢に、尽きることのない探求心を感じました。

【感情に振り回されない「自分軸」を持つ】

もう一つ、投資で極めて重要な心構えがあります。

それは、「他人が儲けた」という話に感情を揺さぶられないことです。

◆ビットコイン:2010年7月、Mt.Goxがサービスを開始した頃、1BTCは数円〜十数円程度でした。その後、多くのビットコイン長者が生まれました。

◆ゴールド:直近でも最高値を更新し、大きな注目を集めています。

こうした成功談に心を動かされ、「自分も」とよく理解しないまま飛びつくと、失敗するケースが少なくありません。

「他人は他人」と割り切り、自分の投資軸をぶらさない——これが何より大切です。

こうした投資に対する考え方や心構えは、私がスタンフォード大学在籍時に、ジャック・マクドナルド教授の授業やウィリアム・シャープ教授のセミナーで繰り返し学んだものです。

* * *

このエッセンスを、できるだけ多くの方に分かりやすくお伝えできればと思い、YouTubeを始めました。

1本5〜6分の短いトークで、続けていきたいと考えています。

少しでも皆さんの投資判断の参考になれば幸いです。

第1回は『こちら』からご覧ください。

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2026年3月15日 (日)

計算されたエスカレーションの果てに——— 最高の頭脳(?)が繰り返す過ち

At the End of Calculated Escalation — The Best and the Brightest(?)Could be Repeating Their Mistakes

2週間ほど前、2月28日(土曜日)イラン時間早朝、米国およびイスラエルによる大規模なイランへの空爆が開始されました。

この攻撃で最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師が標的となり、死亡がイラン国営メディアにより確認されています。

イランは直ちに報復攻撃を開始し、米国・イスラエル側も空爆を継続・強化しています。

翌3月1日頃、イラン革命防衛隊(IRGC)がホルムズ海峡を通航する船舶に対し警告を発し、多くの船舶保険会社が同海峡を「高リスク戦争区域」と指定した結果、商業船舶の航行が事実上停止(大幅に減少)しました。

現在も海峡はほぼ閉鎖状態が続いており、世界の原油供給に深刻な影響が出ています。

軍事衝突はエスカレートを続けていますが、これまで米国はイラン原油輸出の約9割を担うカーグ島(Kharg Island)の石油関連施設への直接攻撃を控えてきました。

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(カーグ島;1967年のオイルローディングターミナル写真で、イラン著作権法により期限切れ。Public Domainです)

これは、イラン経済への壊滅的打撃になると同時に、世界原油需給を崩壊させ、原油価格の急騰を通じて米国自身も大きな経済的ダメージ(「返り血」)を受けるリスクがあったためです。

しかし、トランプ大統領は昨日(おそらく3月13〜14日頃)、カーグ島への攻撃を指示しました。

ただし、声明では「島の軍事目標を徹底的に破壊したものの、石油インフラの全面破壊は行わず、現時点では温存した」と明言し、ホルムズ海峡の自由航行が妨害され続ければ石油施設も攻撃対象にすると警告しています。

この一連の軍事行動は、表面上激しいエスカレーションに見えますが、非常に計算された段階的・条件付きの圧力強化と評価することも可能です。

トランプ大統領は感情的に動いているように見える一方で、背後で詳細なシナリオやマスタープランを策定する側近・チームが存在している可能性も見えてきます。

それが現国防長官ピート・ヘグセス(Pete Hegseth)氏かどうかは定かではありません。

彼の役割は目立っていますが、戦略の中心人物というより実行面の指揮官という印象です。

歴史的に振り返ると、ベトナム戦争時、ロバート・マクナマラ国防長官は「最高の頭脳(The Best and the Brightest)」と称され、統計分析・システム分析・数理最適化などの経営的手法を国防に導入し、戦略立案を主導しました。

しかし、北爆強化や段階的エスカレーションが結果的に誤りであったことは、歴史が証明しています。

「最高の頭脳」が時に致命的な誤算を犯すことを、過去から学ぶ必要があるように思います。

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2026年3月 1日 (日)

イランの話

昨日、新宿の高層ビルの一室で、セミナー講師として講演をしていました。

「何が起こるか分からないのが金融の世界です。投資家としては、『まさか』といった事態を想定し、それがどのくらいの蓋然性なのかを常に意識しておくことが重要です」

「いまこうして話していますが、数時間後にはアメリカがイランを攻撃していることもあり得る訳です」

これを話した1時間後、イラン現地時間で土曜日の午前8時10分、イスラエルと米国によるイランへの大規模攻撃が始まりました(NYタイムズなど複数のメディア報道による)。

イランでは、金曜日がイスラム教の礼拝日で、全国的に完全な休日・公休日です。

そして木曜日は、多くの場合半休または完全に休み。

オフィスなどの職場は、土曜日から始まり、木曜日までが主な勤務日です。

つまり、イラン時間土曜日の朝8時10分は、日本で言う「月曜日の朝8時10分」に相当します。

昭和の日本企業では、月曜朝8時過ぎに朝礼や会議が始まるのが当たり前でした。

まさに「平日スタートの勤務時間帯」に、攻撃が仕掛けられたわけです。

通常、空爆は夜間に行われ、ステルス性や奇襲効果を最大化するのがセオリーです(過去の米軍ベネズエラ攻撃などもそうでした)。

ところが今回は違う。

米メディアによると、攻撃側は数ヶ月前から標的リストを作成しており、特に「政府高官や軍幹部が一箇所に集まるタイミング」をピンポイントで狙ったと言われています。

* * *

話は少し変わりますが、約10年前、私は日経ヴェリタスに「Money Never Sleeps」というコラムを連載していました。

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(写真はイラン・イスファハン(Esfahan/Isfahan)にあるシャー・モスク。『the diary of a nomad』さんのサイトより拝借しました。『こちら』です)。 

その中で、イランからアメリカに移った友人のエピソードを書いたことがあります(以下、2016年9月11日発売の日経ヴェリタス・コラムの文章を一部掲載)。

「先日、米国での高校時代に一緒だったイランからの留学生ミミ(英語のニックネーム)から44年ぶりに近況報告と題するメールを受け取った。

『米国の高校を卒業した後、私はテヘランに戻り、現地の大学を出て結婚しました。

しかし1979年にイラン革命が起きるとイランにいられなくなりました。

私の父がパーレビ朝の皇帝(シャー)の下で軍の幹部を務めていたからです。

私たち家族は命からがら米国に逃げてきて、以来ずっと米国で暮らしています。

7年前のことですが、私は30年ぶりに祖国を訪れました。

テヘランの街はすっかり変わっていました。

革命政府は、通りの名前さえも変えてしまっていたからです』」

ミミには、イランで生まれた長女と、アメリカで生まれた二人の娘――合計3人の娘さんがいます。

3人ともアメリカ人と結婚し、アメリカで暮らしています。

時々、娘たちや孫たちに囲まれた幸せそうな写真が送られてきます。

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2026年2月25日 (水)

危機の予兆はあるのか?

数か月前のことです。日本に観光で来ているAさんご夫妻から連絡が入りました。

「あなたの友人のBさんからお土産を預かっています。明日にはグアテマラへ帰るので、今晩ホテルで会えませんか?」

Bさんは、高校時代に出会ったAFS留学の仲間。グアテマラから来て、隣町の高校に通っていました。

Aさんご夫妻とはこのときが初対面でしたが、ホテルのロビーで40分ほど立ち話。

私はグアテマラについてほとんど知識がなく、「大西洋に面しているのですか?」などと恥ずかしい質問を連発してしまいました。

実際には、グアテマラは太平洋とカリブ海の両方に面しています。

気候も想像していたほど暑くはなく、首都グアテマラシティは年間を通じて20〜25℃前後の穏やかな「常春」の気候だそうです。

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ところで、話はガラリと変わりますが、最近の市場で話題となっている Blue Owl Capital(『こちら』)。

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同社の株価は、ここ1か月で約31%下落(『こちら』)。

さらに先週、同社が運営するプライベートクレジットファンドについて、解約請求の受け付けを停止すると発表しました。

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このニュースを受け、市場関係者の間では、

「パリバ・ショックの再来ではないか」

「炭鉱のカナリアではないか」

といった声が急速に広がっています(『こちら』)。

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時計の針を戻して、2007年8月。

今から約19年前、私は仕事でプラハに滞在していました。

ホテルに戻りテレビをつけると、BNPパリバ が傘下ファンドの解約・償還の凍結を発表。

いわゆるパリバ・ショックです。

その時点では、これが世界的な金融危機の序章になるとは、ほとんど誰も想像していませんでした。

ところが、その約1年後、リーマン・ショック へと発展していきます。

では今回の「青いフクロウ」は、炭鉱のカナリアなのでしょうか。それとも、心配しすぎなのでしょうか。

正直なところ、答えは分かりません。

ただ、現在の市場を見渡すと、プライベートクレジット問題に加え、中東情勢の緊張(ホルムズ海峡封鎖リスク)、政治・地政学リスクなど、不安材料は少なくありません。

それにもかかわらず、株式市場は高値圏にあります(本日の日経平均は史上最高値を更新)。

これは市場の底力と見るべきなのか、それとも、別の何かを示唆しているのでしょうか。

2007年8月9日、パリバ・ショック当日の ダウ平均株価 の終値は13,270.68ドルでした。

その後、株価はむしろ上昇を続けます。

8月31日:13,357.74ドル

9月28日:13,895.63ドル

10月9日:14,164.53ドル(当時の史上最高値)

しかし、この高値を更新するには、2013年3月5日まで、約5年半を待たなければなりませんでした。

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2026年1月 2日 (金)

超高齢社会のエキスパート12人に聞いた  老いと向き合う生き方

大晦日を目前にしたある日、編者の相川さんから一冊の本が届いた。

『超高齢社会のエキスパート12人に聞いた 老いと向き合う生き方』――少し長いタイトルだが、正月休みはこの本を読んで過ごすことにした。

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本書には、樋口恵子さん、上野千鶴子さん、和田秀樹さんなど、よく知られた論者が名を連ねている。その中で、私にとって最も「腹落ち」したのは、高齢者住宅などに詳しい濱田孝一さんの話(本書第5章)だった。

濱田さんは、高齢者問題の核心をこう言い切る。

「(問題の本質は)85歳以上の高齢者が増えることなんです」

なぜ85歳以上がポイントなのか。

実は、75〜84歳では要介護者は全体のわずか13%にとどまるが、85歳以上になると46%にまで跳ね上がる(本書178頁)。

現在、85歳以上の人口は約696万人(『こちら』)。

それが2035年には1,000万人を超える見込みだという。

思い返せば、私の母も86歳までは一人暮らしを続けていた。しかし、その年に骨折をきっかけとして、介護付き老人ホームへの入所を余儀なくされた。2008年のことだ。

今日では多様な事業者が高齢者住宅市場に参入しているが、濱田さんの見方は厳しい。

「サービス付き高齢者向け住宅は、フロントに人がいて、簡単なお世話をするぐらいのものが中心。最期まで住み続けられるみたいなことをPRしているところが多いけれども、介護サービスは外部に頼むので、自宅に住んでいて、外部に介護を依頼するのと基本的には何ら変わらない」(本書180頁)。

さらに現在整備されている高齢者住宅の「8割ぐらいは自立した人や要支援者(岩崎注:要介護者ではない)向けの住宅」であり(本書181頁)、

「(実際に)介護が必要になった時にきちんと介護サービスが受けられる高齢者住宅は、実は全体の2割ぐらいしかない」という(本書181~182頁)。

2008年に母の入居先を探した際、私は多くの施設を回り、現場を見て、職員とも話を重ねた。その体験からしても、濱田さんの指摘は実感とぴたりと重なる。

そして、ここからが最も重要な点だ。 

濱田さんはこう続ける。 

 「要介護者向けの住宅として必要なのは介護付き有料老人ホームなんです。ただ、介護付き有料老人ホームは、この数年で30%くらいしか増えていないんですよ。逆にサ高住は8.9倍ぐらいに増えている。住宅型有料老人ホームも、3倍から4倍ぐらいに増えている。だから、要介護高齢者に適した住宅ではなくて、適さない住宅ばかりを作ってきた」(本書185頁)。

2034年、――今から8年後、団塊の世代は全員が85歳以上になる。

テレビのワイドショーやCMで目にする「高齢者住宅」に、私たちは本当に身を委ねて大丈夫なのだろうか。

本書の出版社名は「ジャーナリストの魂出版」。その名には、事業者やCMスポンサーに忖度せず、現実をありのまま伝えたいという覚悟が込められている――読み終えて、そんな思いが残った。

なお本書は1月15日に発売予定で、紀伊國屋新宿本店やジュンク堂書店池袋本店、アマゾンなどで販売されるという。

(注)キンドル版はすでにご覧になれます(『こちら』)。

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