The Buck Stops Here
「責任の付回しはしない。責任はここで取る」という意味の英語で、the buck stops here と言います。
元々はポーカーのゲームから来た言葉で、かつてアメリカ大統領の机の上に、この言葉のプレートがあったとのこと(詳しくは『こちら』)。
私は興銀の審査部に5年間勤務していました。
審査部では1つの会社を1ヶ月くらいかけて審査します。
相手が中小企業であったりすると、1ヶ月間のうち、10日間くらい毎日のように社長の下を訪れて時間を共有し、いろいろと話を聞きだすようなこともしました。
1ヶ月後、結論を出さなくてはなりません。
貸して良いか、貸しては駄目か。マルかバツか。
正にバック・ストップス・ヒアの状況です。
どんなに立派な分析をして、どんなに大量のレポートにしてまとめても、重要なのは、結論だけです。マルかバツか。
私は、マルかバツかをはっきりさせることのみが審査部の使命と考えていましたから、(当たり前のことですが)結論だけは常に明白に分かるように調書を書きました。
当然、マルと結論していて、取引先が倒産したりすると、その審査の調書を書いた人は責任を問われます(逆にバツと結論して、他行がその会社に融資を行い、後にその会社が良い会社になっていってもやはりその審査の調書を書いた人は責任を問われます)。
当時興銀の審査部には首都圏審査室も含め、50人ほどの審査部員(サポートの一般職は除く)がいたと記憶していますが、中には、結論がはっきりしない調書、すなわち『こうなったら、こうなる』式の調書を書く人も出てきました。(例えば『不動産市況が順調に推移すれば、当社も何とかやっていけるだろう』といった、実は結論になっていない調書)。
その結果、銀行全体としては融資が甘くなっていってしまいます。
私が興銀の審査部にいたのは1987年から92年。バブルがピークに上り詰め、崩壊し始めた頃です。
自分の保身を考えるとサラリーマンが、the buck stops here を徹底させることには、なかなか辛いものがあります。しかし、そのポジションにある人が、the buck stops here を果たさないと、組織は自壊し、保身したつもりが(組織は倒産するとか他と合併させられて)結局は保身になっていなかったということになりかねません。