2010年9月29日 (水)

年金について(4)

昨日午後の東京の景色です(↓)。

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さて、少し前の新聞を見ていたら、

「人生を1日に例えると、50代は午後2時ごろ」

との記事が目にとまりました(9月25日付け、朝日新聞)。

ちょうど上の写真のような感じですね。

真昼(正午)ではない、しかし夕暮れにはほど遠い・・。

しかし50代にして精神的には守りに入ってしまう人も少なくありません。

守りに入るのは、おそらくは将来に不安があるからで、不安の要因のひとつは、分からないことが多いからなのかもしれません。

年金がいくらもらえるか、そしてそれで足りるかも実のところよく分からない・・。

* * * * * *

たとえば最近よく話題になる「空白の5年間」

これはいったいどういうことなのでしょうか。

9月21日に記したブログ記事にもありますが、現在の年金制度のもとでは、やがて

「65歳にならないと一切の年金がもらえなくなる」

すなわち 「年金がもらえるのは65歳から」

といったことになります(昭和36年4月2日以降に生れた男性は公的年金は65歳になるまで一切もらえません)。

このため企業には2013年4月1日までに「65歳までの雇用を確保すること」が義務付けられたのですが、はたしてこの実施状況が今後どうようなものになるのか、いまひとつ見えてきません。

「仮に60歳で再雇用されるにしても極端に給与を下げられてしまったらどうしよう」

「うちのような中小企業でも本当に65歳まで面倒みてもらえるのだろうか」

といった不安です。

いずれにせよ退職せざるをえなくなるかもしれない「60歳」から、年金支給開始となる「65歳」までの期間については、

「空白の5年間」と呼ばれ、

中高年の頭の片隅に占める「不安」のひとつになってきています。

もう少し詳しく説明しましょう。

空白の5年間とは、図にして示すと下記のようになります(図はクリックすると大きくなります)。

その人がいま何歳かによって次の11のパターンに分かれます。

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図で年齢は来年4月1日現在の年齢です。

図はその人が60歳の時、61歳の時・・に払われる年金を示しています。

色つきのところは支払われ、白地のところは支払われません。

1階は老齢基礎年金、2階は老齢厚生年金。

たとえば来年4月1日現在57歳の人は、61歳から老齢厚生年金のみが支払われ、65歳になって漸く老齢厚生年金と老齢基礎年金の双方が支払われます。

図で明らかなように空白の5年間の影響はその人の年齢によって違います。

しかしいずれにせよ、60歳から65歳までをどう過ごすか、その人の人生を考える上で、「空白の5年間」のことを無視できなくなってきています。

そして更に大きな問題がひとつあります。

65歳まで働けば、あとは年金で何とかやっていけるかどうか、という点です。

以下は次回にします。

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2010年9月22日 (水)

日経ヴェリタス・トーク(為替介入)

昨晩、日経CNBCの『日経ヴェリタス・トークという番組に出演しました。

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トッピクスは為替介入。

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再放送は今日、9月22日(水)の 18:30~、および 19:06~ です。

放送の内容は『こちら』にかなり近いものになっています。

もう少し為替について勉強してみたい方はたとえば『こちら』の本などが参考になるかもしれません。

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リスクについての読み物としては『こちら』なども面白いと思います。

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2010年9月20日 (月)

サプライズ介入の効果

9月15日に政府・日銀が6年半ぶりに為替市場で介入を行い、相場は1ドル83円から85円強まで2円強ほど動きました。

「今後の見通しは?」ということで、今週発売された日経ヴェリタスでは、みずほの上野さん、JPモルガンの佐々木さんなど10名にアンケート調査をしています。

このうち「年内は84円を切るような円高はもうない」と予想したのは2名(深谷氏84~90円、森田氏85~90円)。

逆に「80円割れの円高があり得る」と予想したのは、3名。

私は8月30日のテレビで 「80円割れの円高もあり得る」 と話しました(『こちら』)が、政府・日銀の介入が行われた後も、この見方を変えていません。

理由は:

1)「介入の原資は全部で30兆円強~40兆円。一方で、9月15日一日の介入額は2兆円」 と当局がすべて手の内をさらしてしまっていること

2)マスコミのインタビューに答えて、かつての財務官経験者たち(多くの場合、金融関係の機関や会社に天下り)が、

「今度の介入は上手く行った。サプライズ・アタックだ」

と 「自画自賛」 していること。

「市場に対峙するとき、恐れ(恐怖)を知り、謙虚な気持ちになる」-こう発言したのはあるヘッジファンドのヘッドです。

マーケットにいた人間であればマーケットの怖さを思う存分に味わっています。

「怖さを知り謙虚な気持ちになれるものだけが生き残る」のが市場です。

3)そもそも 「日本がデフレにある」 という問題の本質への解決策には全く手がつけられていないこと。

8月30日のブログで私は次のように書きました。

「リーマンショック後の世界的不況のなかでも、日銀のバランスシートはほとんど膨らんでいません( 『こちら』 )。

むしろ量的緩和政策を行っていた2006年までのほうがバランスシートは膨らんでいたのです( 『こちら』 )。

一方、FRBの方は、リーマンショック後、バランスシートを3倍近くにまで膨らませてきています(下記グラフ参照)。」

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先進国各国の中央銀行がどれだけバランスシートを拡大(要は政府が発行する国債や企業が発行する社債などの購入を通じて市場に資金を放出)してきたかについては、こちらのグラフの方が分かりやすいかもしれません。

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誤解しないで頂きたいのですが、日銀のバランスシートが疲弊していないということは通貨の健全性からすれば望ましいことなのです。

日銀の見方からすれば、

「欧州や米国の中央銀行はこんなに何でも買い取ってしまって通貨の健全性をどう保つのか。ドルやポンド、ユーロの信認が低下してしまって暴落したらどうするつもりなのか」

ということなのでしょう。

それだけ 「円は健全である」 ということは、

「円が他の通貨に比して強い(円高)ということであり、モノに対しても強い(デフレ)」

ということにつながっていきます。

多くの識者が指摘するように一国の中央銀行が健全であり通貨が強いということは本来望ましいことです。

しかしここになんらかのパラドックスがあるように思えてくるわけです。

9月14日アンカラ発のロイター電です(詳しくは『こちら』。太字・下線は筆者による)。

「経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は14日、世界経済の回復は減速しているものの、先進国においては日本以外で景気が二番底に陥る恐れはないとの見通しを示した。

 同事務総長はアンカラでロイターのインタビューに応え「回復は減速しているが、景気の二番底はない。単なる回復の減速だ」と述べた。

 その一方で「日本は例外だ。日本は10年間にわたりデフレと格闘しており、状況が異なる」とし、日本以外の国で「景気が二番底に陥ることは予想していない」と語った。

 ただ、世界経済の回復はぜい弱との見方を示し「家計部門は将来に対して完全に信頼感を持っているわけではない」とし「OECD加盟国は依然として5000万人の失業者を抱えている」と指摘した。

 国別では、ドイツ経済は第2・四半期に2.2%の成長率を達成した後、第3・四半期には減速すると予想。「ドイツの第2・四半期(成長率)はかなり良かったが、他の国と同様に第3・四半期には減速する」と述べた」

* * * * *

(追)「今後のマーケット」という観点からすると目を離せないのが米国の中間選挙(11月2日)でしょう。

米国でも問題になっているのは世代間の貧富の格差。

20代、30代の若い層は職が無く、一方、50代、60代の世代は逃げ切りの体制・・・と日本と似たような状況が起きています。

これが選挙結果や政策にどう跳ね返ってくるか、今年の残りもあと3ヶ月ちょっとですが、マーケットはまだまだ波乱の様相を呈するように思います。

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2010年9月15日 (水)

中国の Clean Energy Business

9月8日、9日とニューヨークタイムスに載った記事が米国シリコンバレーから転送されてきました。

『こちら』『こちら』です。

比較的長い英語なので触りのところのみ下記に抜粋してみます。

・・・ the American clean energy programs carry many time-consuming and difficult requirements. Companies must show they can repay loans and have innovative technology.

・・・ China has been pumping loans into clean energy so rapidly that even $23 billion in credit offered by the China Development Bank to three solar panel exporters and a wind turbine maker since April has barely raised eyebrows. China Development Bank, owned by the government, exists to lend money for strategic priorities.

と、この辺は、米国と中国の違いの一般論なのですが、以下 Evergreen Solar という米国の会社の具体例が出てくると、話がかなり現実味を帯びてきます。

・・・ Evergreen Solar, the Massachusetts company, struggled for three years to raise money in the States, but had no trouble doing so in China.

・・・ Chinese state banks were happy to lend most of the money for the factory on very attractive terms, like a five-year loan with no payments of interest or principal until the end of the loan, said Michael El-Hillow, the company’s chief financial officer.

中国と米国の違いを目の当たりに見て、中国の Clean Energy Business に対する「国を挙げての取り組み」の戦略性を改めて実感させられます。

・・・ “You can’t get a penny in the United States, it doesn’t matter who you call — banks, government. It’s awful,” he said. “Therein lies the hidden advantage of being in China.”

・・・ “Who wins this clean energy race,” Mr. Zhao of Sunzone said, “really depends on how much support the government gives.”

お時間のある方は是非ニューヨークタイムスの記事(上記)をご覧になってみてください。

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2010年9月11日 (土)

よもや私の預金が・・

「よもや私の預金が・・」

日本振興銀行に1000万円を超える預金をしていた方たちはそう思ったに違いありません。

私自身、預金と株とでは違いますが、リーマン破綻時にリーマンの株を持っていて、「まさか・・」と絶句したものでした(この間の事情は拙書「リーマン恐慌」に書きました)。

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          (注)これは実在する小説。「こちら」で購入可です

* * * * *

自分自身の預金を守るために以下のことを心がけた方が良いと思います。

(1)金利が良いからと言って1000万円を超える預金を預けない

金利が良いのは、「金利を良くしないと預金を集められない」

すなわちそれだけリスクの高い銀行である場合があります。

日本振興銀行に1000万円を超える預金をしていた方たちも、ほとんどが「金利が高い」といった理由で預金をした人たちでした。

(2)新聞記者は「この銀行は危ない」といった記事は「書けない」ことを知る

そんなことを書けば、その記事が引き金となってその銀行が潰れてしまいます。

事実、新聞を丹念に読んでいても今回振興銀行が破綻することは事前には分かりませんでした。

(3)上場していれば株価が最良の指標になる

逆に上場していない銀行に預金を1000万円以上集めるのは、なぜ上場していないのかを調べるなどして、良く考えてからにした方が安全だと思います。

主な銀行の現在の株価と時価総額です。

三菱東京UFJ 株価403円  時価総額5.7兆円

三井住友    株価2539円  時価総額3.6兆円

みずほ       株価130円   時価総額2.8兆円

りそな         株価868円  時価総額1.1兆円

新生           株価 63円   時価総額0.1兆円

あおぞら       株価120円    時価総額0.2兆円

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2010年9月 9日 (木)

問題はこれから

トヨタに関しては昨年の6月12日(『こちら』)から9月23日(『こちら』)まで、6回に分けてこのブログで取り上げてきました。

その後の株価は下図のようにトヨタの独り負けだったわけです(青がトヨタ、赤:日産、黒:スズキ、緑:ホンダ)。

すなわち2年前に比し、日産、スズキ、ホンダは株価が概ね2割下落したのに比し、トヨタは4割下落しました。

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しかし本当の問題はこれからです。

自動車は企画、開発、設計から実際の製造・販売まで数年を要します。

今のトヨタはリコール問題の影響もあり、社内は極端に保守的(良く言えば慎重ということなのでしょうが)になったという声も聞こえてきます。

これが実際の製造・販売の数字となって現れてくるのは数年後。

そのときいったいどうなっているのか、ちょっと心配になります。

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2010年9月 5日 (日)

断固たる措置

9月3日(金曜日)に発表された米国の雇用統計が市場予測より良かったことから、株安、円高の動きは一服しました。

もっともその後に発表されたISM指数は芳しくなく、ドル円は85円台から再び84円台へ・・

* * * *

最近の野田財務大臣は、「必要な時に断固たる措置を取る」と言って為替介入を示唆してきています。

しかし政府は本当に「断固たる措置」を取れるのでしょうか。

ミセスワタナベのように、FX取引を経験した方ならお分かりだと思うのですが、相場を張っている人が一番恐れるのが、市場が反転することです。

これまで円高だと思っていたのが、急に逆に円安になる。。。この潮目を読み違えると、FX取引に投入していた資金はあっという間に「蒸発」しています。(しかもこの「潮目」というのが実はくせ者で、大きな潮目のほかに1日から1週間単位でころころ変わる小さな潮目もあります。運が悪いと小さな潮目を読み違えただけで大きく傷つくことがあります)。

それでは政府が介入すると、市場関係者は相場が反転したと恐れるようになるのでしょうか。

逆です。

相場の方向性が見えやすくなってしまいます。

要は、「マーケット(ヘッジファンドほか)vs. 政府の戦い」の構図となり、

「マーケットは円高、政府は円安の方向にもっていくような形で市場に参入」といった色分けが出来てしまいます。

実際のところ「政府が出てきた方が儲けやすい」と思っているヘッジファンドは少なくありません。

日銀時代に為替介入を担当していたJPモルガン・チェース銀行の佐々木融さんは、

「円売り介入が始まると世界中から円買い注文が集まるため、逆に円高が進んだ」と指摘しています(『こちら』)。

2003年~2004年。このとき日本政府は積極的に円売り介入(全部で35兆円規模)を行ないました(これ以降、政府は介入していません)。

しかしこの間にマーケットでは逆に円高が進行(120円→105円)してしまった(すなわち介入は逆効果になってしまった)というのは良く知られているところです。

* * * *

このブログでも再三再四の繰り返しになってしまいますが、

為替問題の本質は日本のデフレにあります。

「日米の名目の短期金利はほぼ0%で同じ。

にもかかわらず、米国のインフレ率は2%弱で、日本はマイナス1.5%程度というデフレだから、

アメリカの実質金利は0-2でマイナス2%とマイナス金利なのに対して、

日本は0-(-1.5)でプラス1.5%と、日本の実質金利がアメリカを大きく上回っている」『こちら』)。だから円に投資した方が金利面では得になる・・・。

* * * *

円高に対する「対処療法」になっているかどうかさえ疑わしい「為替介入」。

野田大臣の言う「断固たる措置」とは、この「為替介入」ではなくして、病気の根源の治療、すなわち「デフレ退治」に向けられるものでなければなりません。

もっとも「円売りドル買い」の為替介入をして政府・日銀が市場に円を放出、

それに対して日銀が「非不胎化政策」で協力すれば、デフレ退治に向けて一定の効果が期待できると思います(『こちら』の記事を参照)。

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2010年9月 1日 (水)

どこまで円高、株安になるか

「年内にいったいどこまで円高、株安になるんでしょうか。これをまず番組で取り上げるので、紙に書いてください」

一昨日の日経CNBC『日経ヴェリタス・トーク』の収録30分前にプロデューサーからこう言われて紙を渡されました。

番組をご覧になった方はお分かりでしょうが、私は円は79円台になることもあり得る、そして株は7900円台(8000円割れ)もあり得ると書いてプロデューサーに渡しました。

(こう紙に書いていた時の為替は84円80銭、日経平均は30日の終値 9,149円でした)

理由はこのブログでも書いてきましたが、為替の方は:

(1)実質実効為替レートで見ると、よく言われているような「過去15年で最大」といった円高にはなっていない(別言すれば、これから先もっと円高になってしまう余地がある)、

(2)先進各国が輸出促進によって景気回復を図ろうとしている(適度な自国通貨安が各国にとって望ましい。そしてこのための各国間の競争)、

(3)日銀によるデフレ退治のコミットメントが希薄(デフレとは物価の下落、通貨価値の上昇です)

一方、株価の方は:

(1)株価収益率(PER)で見ると、8000円程度の日経平均でもおかしくはない(それだけ企業の予想収益が弱い)

(2)国内のデフレがなかなか改善しない(政府や日銀によるデフレ退治のコミットメントが希薄)

(3)米国景気の不安(住宅減税終了による住宅関係諸指数の悪化、失業率の高止まり)

(4)欧州(アイルランド、ギリシャ、スペインなど)の問題は実は解決していない

(5)政府が出口戦略を急ぎすぎてしまった(例:消費税増税の議論を始めることは、やっと回復しかけた病人に対して、「これから走らなければならないマラソン大会の話」を始めるようなもの)

というものです。

まあ、為替とか日経平均とか、この種の予想はなかなか難しい(そして当らない)ものですが、これから先 4ヶ月間、いったいどういった状況になっていくのでしょうか。。。

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2010年8月30日 (月)

Too little, too late

本日の日経CNBC『日経ヴェリタス・トーク』は、最近の円高、株安について。

キャスターの方から、「今日の日銀の追加緩和策についてどう思うか」質問されましたが、私は、「Too little, too late」 と答えました。

Too late の方は、もう10日くらい前から、「首相と日銀総裁との会談を行う」といったニュースが流れていました。そして、先週月曜日(23日)に会談が行われたと思ったら、たった15分間の電話会談でしかも中身は無かったという経緯があります。

今日の会合は本当に「やっと」という感じでした。

次に Too little の方です。

ようやく今日に至って臨時の金融政策決定会合が開かれたと思ったら、その決定内容は全く新味の無いものでした。

その結果、マーケットでそれまで85円89銭をつけていた為替は一気に円高へ・・。

日経平均も午前中は300円近く上げていたものが、日銀決定の中身が伝わると下落(上げ幅の縮小)へ・・。

「20兆の資金供給に10兆(しかも6ヶ月)上乗せする」のではなくて、

「20兆プラス10兆(3ヶ月)プラス10兆(6ヶ月)=40兆」くらいの発表を行っていたとしたら、マーケットはもっとポジティブに反応したと思います。

リーマンショック後の世界的不況のなかでも、日銀のバランスシートはほとんど膨らんでいません(『こちら』)。

むしろ量的緩和政策を行っていた2006年までのほうがバランスシートは膨らんでいたのです(『こちら』)。

一方、FRBの方は、リーマンショック後、バランスシートを3倍近くにまで膨らませてきています(下記グラフ及び『こちら』40頁のグラフ参照)。

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  (上のグラフはクリックすると大きく、そして見やすくなります)

中央銀行の庭先は汚くなっても国を救うとの意思が上のグラフからは伝わってきます。

「パーティーが盛り上がった時にパンチボウルを取り上げるのが中央銀行の仕事」と言ったのは、1951年から1970年までFRBの議長を務めた(ちなみにこれが最長記録)William Martin です。

私は、国民や企業が脱水症状に陥ってふらふらしている時に、水を差し出すのも中央銀行の役目だと思っています。

今回は水が出てくるのが遅くて、しかも十分な量ではありませんでした。

なお『日経ヴェリタス・トーク』の再放送は、8月30日(月) 24:00~、8月31日(火) 18:30~、19:06~です。

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2010年8月29日 (日)

本当に株安なのか

8月17日に『本当に円高なのか』とのブログ記事を書きました(『こちら』)。

それでは株価の方はどうなのでしょうか。

今日発売された日経ヴェリタスを読むと、

「日経平均株価はPBR(株価純資産倍率)が1の水準に近づいてきた・・。

これは企業の解散価値と同じだ・・。

9000円を下回った今、次の節目(防衛ライン)は、PBRが1となる8400円程度か・・」

といった内容の記事が目に付きますが、

PBRよりももっと意味のあるPER(株価収益率)でみるとどうでしょう。

PERとは株価を利益(1株当たり)で割ったもの。

アメリカで過去200年間の平均値が14。[先般ご紹介した 『へッジホッグ』 に出てきます(249頁ほか)]。

また Jeremy Siegel によると米国で過去130年間の平均は12.1。

1900年以降今日までのS&P500のPER平均は15であるとか、1900年から2005年までの平均は14であるとの記述もあります(『こちら』)。

要はアメリカが順調に成長してきた時のPERの平均はおおよそ 14 ということです。

現在の米国ダウ平均株価のPERは 12.02 です(『こちら』)。

これが平均値の14にまで回復すると、ダウ平均株価は、10,150 から 11,822まで上昇することになります(つまりPERで見ると、現在の米国株価はそれだけ安く評価されているということ)。

それでは日経平均のPERはどうでしょう。

『こちら』に出ていますが、日経平均のPERは 15.55 です。

すなわち企業が上げると予想している利益(1株当たり)の15倍以上の株価が付いています。

ということで、予想利益の割には今の株価は高いということになります。

米国のこれまでの平均値である14になると仮定すると、日経平均は、8,991円から 8,094円まで下落することになってしまいます。

要は日本企業はもっと利益を上げないことには、株価は上がっていかない。

逆に今の利益見通しの割には、株価は高くついている(値下がり余地がある)ということになります。

もちろん株価は市場の需給で決まるもので、PERは一つの指標に過ぎません。

しかしマーケット全体を見る上では、PBRよりは重要な指標であることだけは確かです。

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