2013年5月31日 (金)

Sell in May?

日本時間ではいよいよ5月31日に入りました(5月31日、0時50分です)。

30日の日経平均は730円強も下落して13,500円台でクローズしています。

今後の展開を占ううえでここでは幾つか言われている仮説を検証してみます。

(1)5月23日の大幅な下落(前日比▲1,143円)は外人投資家、とくにヘッジファンドが仕掛けたもの・・・?

5月20日~24日の週でもっとも売り越したのは日本の法人(3,889億円の売り越し)。

外人投資家の売り越し額はその4%に過ぎません(166億円)。

以上は東証一部の数字。

詳しくは『こちら』のデータを参照。

(2)Sell in May と言われているようにヘッジファンドは5月末決算のため5月に売ってくる・・?

ヘッジファンドの多くは12月末もしくは11月末決算。

11月末決算のところは半年の数字を5月末に出しますが、

そもそも多くのヘッジファンドは4半期毎(3ヶ月毎)に投資家にレターを出して決算の概況を知らせており、

5月に売る特段の理由はありません。

ヘッジファンドが投資家に出している手紙を読むと4半期毎に利食うようなことをしているとは考えにくいことがわかります(例えば、著名なヘッジファンドであるGreenlight Capital の投資家向けレターは『こちら』を参照)。

(3)米国では一般にSell in May と言われている・・?

これは11月~4月の相場に比して歴史的に5月~10月の相場の方が弱いことが多いことから

一部投資家は「5月に売ってしまった方が良い」と考えているとのことですが、これも実際には違います。

過去142年間のパフォーマンスを検証したところでは、

5月には売らずに持っていた方がリターンが良かったことが実証されています(下記)。

Sim_2

詳しくは『こちら』の記事をどうぞ。

(4)シカゴの日経225先物の結果が翌日の日経平均始値に反映される・・?

これは相関関係が高いと言えます。

Cme_2

青がシカゴ(CME)の日経225先物、紫が日経平均です。

現在(5月31日、0時50分)、シカゴ(CME)の日経225先物は、13,805円。昨日の終値13,589円より200円強高いレベルですが、さて明日の東京マーケットはどんなスタートとなるのでしょうか。

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2013年5月26日 (日)

消費者物価上昇率

本日の日経朝刊記事(1面)にあるように世界各国で物価がなかなか上がらなくなってきています。

そんな中、日本は依然としてデフレ。

4月26日に発表された3月のCPI(消費者物価指数;生鮮食品を除くベース)は前年同月比▲0.5%(『こちら』)。

5ヶ月連続のマイナスでした。

4月のCPIは今週金曜日(5月31日)に発表されますが、はたして少しは改善するでしょうか。

日銀が現在考えるシナリオは4月26日に『経済・物価情勢の展望(2013年4月)』として公表されています(『こちら』)。

これによると政策委員の大勢見通しは

2013年度のCPI上昇率(%) +0.4~+0.8(各委員見通しの中央値+0.7)

2014年度のCPI上昇率(%) +0.7~+1.6(各委員見通しの中央値+1.4)

2015年度のCPI上昇率(%) +0.9~+2.2(各委員見通しの中央値+1.9)

「大勢見通し」の数字は9人の政策委員が出した数字のうち一番下と一番上の数字を除いた上で幅を示したもの。

中央値とは9人の数字を上から下に順に並べて5番目の数値という意味です。

中央値が上限の方に近くなって現れているのが興味深いところ。

なお上記の2014年度、2015年度の数値は消費税引き上げの影響を除くベースです。

日銀が考えるようなシナリオで物価が上昇していけば良いのでしょうが、民間の研究所などはこの日銀のシナリオはかなりハードルが高いと見ています。

ニッセイ基礎研究所経済調査室長の言葉を借りれば、日銀の見通しは「蓋然性の高い見通しというよりは目標に近い」(注:下記の出所参照)。

問題はデフレ脱却が日銀シナリオ通り進まないことが明らかになったときです。

今から取り越し苦労する必要はないのかもしれませんが、このとき日銀は更なる金融緩和に打って出るのか、あるいは政府は消費税増税実施を1年先送りするのか・・。

なお民間研究所の見方として、ここではみずほとニッセイのものを下記に上げておきます。ほかにもいくつかありますのでご関心のある方は検索をかけて調べてみてください。

  • 山本康雄みずほ総合研究所経済調査部シニアエコノミスト(『こちら』
  • 斎藤太郎ニッセイ基礎研究所経済調査室長(『こちら』

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2013年5月23日 (木)

バーナンキ発言

私が新聞に期待するのは事実に関する貴重な情報。他の記者が見過ごしてしまって、ほかでは伝えられていない情報です。

それは、例えばバーナンキ議長の議会証言を最初から最後まで注意深くフォローすることによって得られたりするのだと思います。

そういった意味で今日の日経夕刊。「ウォール街ラウンドアップ」の記事は有益でした。                                            

Photo_2

そう言えば昨年にもこのブログで「この新聞記事は凄い」と書いたことがありました(『こちら』)。

調べてみたら同じ日経夕刊の同じコラム、同じ記者の書いた記事でした。

別に新聞は日経だけでなくいろいろ読んでいるのですが・・。

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2013年5月21日 (火)

日本株の上昇余地

昨晩出演した日経ヴェリタス・トーク(21:15~21:30)。

番組で曽根さんからの最後の質問は

「日本株はまだ上がるのか?」

これに対する私の答えは

「まだ上がると思う」

こう答えたうえで、

「今月に入って企業が発表する決算を聞いていると内容の良いものが多い」

旨を説明しました。

具体的にはトヨタの決算をベースに当社の株価はどこまで上がりうるかを話したのですが、番組の終了時間が近づき、かなり簡略化した説明になってしまいました。

以下ここでもう少し詳しく説明します。

まずトヨタが出している今年度の利益予想は

営業利益で1兆8000億円、

当期純利益で1兆3700億円。

これは為替レート1ドル=90円を前提としている。

Toyota5_2

ここで(1)今年度の平均為替レートを102円と仮定する、また(2)1ドル=1円円安になることでトヨタの営業利益は400億円上乗せされる(アナリストの一般的な見解)と仮定する。

すると今年度営業利益は:

1兆8000億円+(400億円×12)=2兆2800億円

このときの当期純利益は(営業利益に対する当期純利益の比率が等しいと仮定)

1兆3700億円×2兆2800億円÷1兆8000億円=1兆7353億円

これを株数で割る(自己株式を引いた後の株数=31億6743万株)

1兆7353億円÷31億6743万株=547円(1株当たり予想利益)

ここで現在のトヨタの株価6,590円と現時点での会社発表予想利益1兆3700億円をベースにPERを算出すると:

現時点でのPER=株価÷EPS(1株当たり利益)=6,590÷(1兆3700億円÷31億6743万株)=15.3

こうして得られたPER=15.3をベースに、新しい1株当たり予想利益(102円の為替レート)を使って株価を算出し直すと:

547円(1株当たり予想利益)×15.3(PER)=8,300円(100円未満切り捨て)

なおアメリカの実証研究論文では「歴史的にPERは14」とするものが多い。

よってPER=14を使って株価を計算すると:

547円(1株当たり予想利益)×14(PER)=7,600円(100円未満切り捨て)

つまりPERを使って、1ドル=102円の為替レート下での株価を算出すると:

8,300円とか7,600円といった株価にたどりつきます。

テレビではこの辺の計算式を飛ばして(時間の関係で)結論だけを話しましたが、

要は、決算発表の数字を会社毎に注意深く見ていくと、まだ株価上昇の余地のある企業が多くあることが分かります。

なお番組の再放送は本日13:40~13:55。

日経CNBCチャンネルです。

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2013年5月20日 (月)

Great Rotation

本日の日経ヴェリタス・トークに出演します(21:15~)。

トッピクスは『リスクオン劇場―「大転換」第2幕へ』 。

世界的規模で進むGreat Rotationについて議論します。

Photo_3


たとえば上のグラフはここ3カ月の日経平均株価の動き(緑)と三井物産(青)、三菱商事(赤)の動きを比べたもの。

日経平均が順調に値を上げていくのに比して、物産、商事の動きはパッとしません。

原油、銅をはじめとする商品市況がさえない動きを示していることなどが一因となっているからなのですが、番組では世界的規模で進む「マネーをめぐる新しい動き」(Great Rotationと呼ばれる)を議論します。




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2013年5月15日 (水)

株価の見通し(その2)

まず前回のブログ記事に関して頂いた質問への回答

(1)2011年4月~12年3月のトヨタの営業利益は3,556億円。それが前期(2012年4月~13年3月)には1兆3,208億円。

対前年度比で、9,652億円も営業利益を拡大させたにもかかわらず、円安要因はこのうちの16%、1500億円とは少なすぎないか。トヨタは1円円安になれば400億円利益が増すと新聞に出ていたが・・?

(答え)2011年4月~12年3月期の為替レート(トヨタの場合)はドル円で79円、ユーロ円で109円。

それが前期(2012年4月~13年3月)はドル円83円、ユーロ円107円。

すなわちドル円では4円円安。ユーロ円では2円円高。

為替要因による増益1500億円は、一般に言われている「1円円安になれば400億円増益」にほぼ沿ったものだったと思います。

Toyota4_2

2)トヨタの今年度の利益見通し(営業利益1兆8000億円)は保守的ではないか。

(答え)トヨタの説明によれば3月末の為替レートを5円の単位で丸めて1ドル90円をベースに今年度決算見通しを作成したとのこと(下表)。

Toyota5_2

ちなみ3月末の円ドルレートは94.05円(TTM)でしたので、これをもって90円に丸めて今年度決算の見通しを作成したということでしょう。

かりに今年度1年間の平均為替レートが1ドル=102円となれば、営業利益はどうなるでしょうか。

さきほどの1円円安になれば400億円利益が増すとの法則を使えると「仮定」すれば、営業利益の上乗せ額は

102円-90円=12円

12円×400億円=4800億円

よって今年度の予想営業利益は2兆2800億円ということになります。

* * * * * *

さて前回のブログ記事の続きです。

株価上昇トレンドを支えている3要因。

①金融緩和(アベノミクス) 

②米国の景気回復 

③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出

以上の3要因がいちばん重要だと思うのですが、これらに加えて次の3つの付随的要因も見逃せません。

少しだけ解説しておきます。

①中国経済底入れ

  上海総合指数推移からしても昨年12月あたりに底入れしたのではないかと思われます

Sh_2


②欧州の一時的平穏

 ギリシャは昨年6月の再選挙で連立政権発足。新たな緊縮策を導入し、2012年の財政目標を上回る結果を残したとのこと(『こちら』)  

③地政学リスクの状況

 北朝鮮リスク、イランリスクがさほど緊迫化するには至っていない

* * * * * *

ということで、今後の株価を占う上でのポイントとしては:

上記の大きな3要因と3つの付随的とでもいうべき要因がそれぞれ今後どうなるか-

これを考えることで

絵が少し見えてきます。

先に私が考える答えを一言で言ってしまうと:

「ポイントは、8月12日~10月31日にかけて」

このときまでは現在の基調が基本的には推移していくと予想されますが、8月中旬以降は俄然と不透明さが増してきます。

ちまたで言われているように、7月の参議院選ももちろん重要ですが、すでに市場はある程度の予測を織り込んでいます。

それよりも経済の状況はどうなのか、そしてどうなっていくのか。

まず第一のポイントとして明日の朝、8時50分。

このとき2013年1-3月期のGDP第一次速報が公表されます。

これはこれでもちろん重要ですが、もっと重要なのが4-6月期のGDP。

なぜでしょうか。

株価上昇の基本要因の③。

「③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出」

この効果は、主として4-6月期のGDPに現われるからです。

そして政府が消費税増税を当初予定通り来年4月から行うかどうかについては、この数字が決定的なインパクトを持つからです。

この4-6月期GDP第一次速報が公表されるのが、8月12日(二次速報が9月9日)(『こちら』)。

Gdp_3

もう少し説明を加えましょう。

すでに国会では野党(みんなの党)から安倍総理に対して

「7-9月期のGDP数値は11月14日に発表されるがそれを待たずに消費税増税の実施時期の判断をするのか」

といった質問もなされています(3月27日財政金融委員会)。

これに対して安倍総理は10月に決めると回答しています。

ここで消費税増税法の条文を見てみましょう(実施時期についての文言)。

「第十八条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる」

「3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二 条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつ経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」 (詳しくは『こちら』

法律の文言を追うのは大変だという方は斜め読みでも、あるいは飛ばして頂いても結構です。

以下の浜田参与の発言をご覧ください。

4月9日。

ロイターが報じた浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)の発言内容です。

「(2%の物価目標を)2年で達成できるかはわからない。財・サービスや消費、投資、雇用などにどれだけ的確に早く(効果が)及ぶかがこれからの問題だ。経済が回復してくれれば、1%に越したことはない。過剰設備を解消し、失業率も次第に改善し、有効求人倍率も1より大きな地域が増える状態が望ましい」

「来年4月に消費税を上げても大丈夫かは、今後をみてみないとわからない。安全策として1年くらい延ばすのもいいのではないか。せっかく上がりかけた景気が増税でぽしゃってしまう例は、日本の歴史だけでなく、世界の歴史にもある。ブレーキをかけて歳入(税収)の上昇が止まれば、消費税は率を上げただけで、何のためにもならない」 (詳しくは 『こちら』 )

要は、8月12日に発表されるGDP値が、「これなら来年4月に消費税を上げても大丈夫」とマーケットが納得いくものが出てくるかどうか、

とくにこのときのGDP値が「13.1兆円の超大型補正」という下駄を履いた上での数値だけに、日本経済がほんとうに体力を回復したのか、慎重な検討が必要になってきます。

もしそれほどまでには体力が回復していないと判断されるような数値だった場合(取り越し苦労だといいのですが)、安倍政権がはたして消費税増税1年先送りの勇気を持つかのかどうか・・。

この辺の状況如何によっては景気が腰折れし、株価が方向性を変えてしまうことも懸念されます。

そればかりではありません。

アメリカ経済は基本的に順調ですが、秋口にはFRBが出口戦略(金融緩和策の方向転換)を模索し始めるとの見通しも一部の識者から伝わってきています。

と同時に9月にはいよいよドイツで総選挙が実施されます。

8月12日~10月。

台風が日本を襲うこの時期。

株価を占う上でもポイントとなる時期のように思います。

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2013年5月13日 (月)

株価の見通し(その1)

これまで日本株は急ピッチで上昇してきましたが、今後もこの傾向は続くのでしょうか?

続くとするといつまで?

今後の株価を見通すうえでは、その前段階の作業として、

「昨年11月以降これまで続いてきている株価上昇の要因」

を把握することが重要になってきます。

そしてこの要因としては次の3つが考えられます。

これら3つがすべてそろったからこそ、株価はこれまで順調に上昇してきていて、いまも上昇トレンドにあると言えるのだと思います。

①金融緩和(アベノミクス) 

②米国の景気回復 

③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出

このうち日本のマスコミでは ①ばかりが注目されていますが、②と③も同じように重要。

たとえば先日発表されたトヨタの決算を見てみます。

Toyota1_2

右側が今年3月末までの1年間の実績(クルマの販売台数)。

左側が前年(2011年4月~12年3月)。

ここ1年間で販売台数は21%増加。

内訳は:

日本10%増

北米32%増

欧州0.1%増

といった具合。

ただし日本でのプラスはエコカー補助金効果による影響がかなり効いています。

この辺の事情は、これから先1年間の見通しを見るともっとクリアーに理解できます。

Toyota2

左側が今年3月末までの1年間の実績(クルマの販売台数)。

右側が今年度(2013年4月~14年3月)の見通し。

内訳は:

日本▲7%減

北米7%増

欧州4%増

といった具合。

日本はエコカー補助金が終了してしまったことの影響により、今年度はマイナス成長。

しかし北米を中心とする日本以外の地域の売上げ増が寄与し、トヨタ全体としては3%の販売台数増を見込んでいます。

このようにトヨタの業績回復の裏側には、北米、とくに米国における景気回復が大きく影響しているのです。

[(注)そもそもトヨタの販売台数の77%が日本以外の地域における販売。北米がそのうち38%を占める(今年度見通しベース)]

「なるほど米国の景気回復の影響は分かった。しかしそうは言ってもトヨタの調子が良いのは、アベノミクスによる円安の影響、つまり為替要因が圧倒的に大きく作用しているからではないか」

そう思っている方もたくさんいるでしょう。

もう少しトヨタの決算の中身を見てみましょう。

2011年4月~12年3月のトヨタの営業利益は3,556億円。

それが前期(2012年4月~13年3月)には1兆3,208億円になりました。

すなわち対前年度比で、9,652億円も営業利益を拡大させたのですが、

このうち為替が円安に好転したことの影響はどのくらいを占めるのでしょうか。

約半分の4,800億円くらいでしょうか。

いいえ、違います。

意外に思われるかもしれませんが、為替変動の影響は1,500億円。

全体の16%です。

ではいったい何が営業利益をこれだけ拡大させたのか。

その要因分析の結果は下図の通り(トヨタのウェブサイトに載っています)。

Toyota3_4

なお上の図3つは、何れも、図の上でクリックすれば約2~3倍に大きくなり、図中の文字が読めるようになります。

以上、トヨタの決算から読み取ることが出来るのは、

①アベノミクスによる金融緩和、円安がプラスのインパクトを与えた

②しかしそれに勝るとも劣らないのが米国の景気回復の影響

③さらに地道な企業努力が奏功した

ところで米国の景気回復ですが、これが一番顕著に現れているのは米国の株価でしょう。

ダウ平均株価は今年3月5日に14,253.77ドルをつけて、史上最高値を更新。

ダウはその後も史上最高値を幾度となく更新し続け、先週末には15,118.49ドルでクローズするに至っています。

失業率も10%から下落を続け、7.5%にまで改善してきました。

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こうした諸条件、外部環境要因(注:冒頭の①~③)が重なって示現した日本の株高。

ポイントは

この株高がどこまで行くか、

個人投資家のみなさんが今から参戦しても遅くないのか、

いつ下降局面に入ると予想されるか、

ですが、これらについては次回以降に見ていきましょう。

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2013年4月14日 (日)

M&A の視点からみた「これからの企業財務戦略」

デフレ時代には企業は果敢な設備投資を行いづらくなります。

投資計画を立てて設備を発注し、増設を完了させ、いざ生産活動を開始するようになる頃。

この頃には、デフレのために製品販価引き下げを余儀なくされるような状況に陥ってしまう。

こうしたことが起きかねません。

いきおい企業としては日常の企業活動で上げるキャッシュを

「とりあえず現預金のまま貯め込んでおく」

といった行動に出てしまう・・・。

そして円高メリットを享受すべく(貯め込んだ現預金を使って)

円ベースでは安くなった「海外企業の買収」を行ったりするようになります。

         Ma

                   (上図は拙著「M&A新世紀」のカバー写真から) 

ところが・・です。

円高が是正されると、こうした企業行動は変更を余儀なくされるようになります。

多くの日本企業は外資ハゲタカのターゲットになりうるようになるからです。

今は日本企業の株価収益率(Price Earnings Ratio; PER)は 24となっています(『こちら』)。

つまり企業が上げる予想キャッシュフローに対して株価が高い(注:米ダウ平均株価のPERは13です 『こちら』)。

このため、日本企業を狙う動きはまだ活発化していません。

ただ今後企業収益の方が上がってきて、PERが国際的にみた「歴史的平均値」(=14)に近づいてくると話は違ってきます。

ターゲットとして日本企業がハゲタカたちの視野に入ってくるようになります。

その時には一部の日本企業が抱える「過分なキャッシュ」はハゲタカたちを惹きつける「エサ」となってしまいかねません。

* * * * *

円高という防波堤が期待できなくなってきた昨今、企業が持つ余分な現預金は設備投資に回してキャッシュフローを高めるのに使うか、あるいは適当な投資案件がないのであれば、増配や自己株購入(消却)の形で市場(投資家)に返すことを考えるべきです。

買収防衛策としては、ROEを高めて株価を上げるのが、いつの時代にも相応しい手法です。

ここで、R(企業収益)を高めるのが難しければ、E(自己資本)を引き下げる、すなわちレバレッジを高めることを検討すべきです。

たとえば自己株を購入・消却するための資金を銀行借り入れによって調達すれば、レバレッジは一気に高まります(お金が、日銀→銀行→企業という形で回るようになります)。

企業が資金効率を高め、適正な負債比率を実現すること―

このことはROEの改善、ひいてはハゲタカから身を守ることにもつながっていきます。

同時に、市場でお金が「より効率的に」回っていくことにもつながっていくことが期待されます。

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2013年4月11日 (木)

黒田日銀のもとで株はどう動くか

前回のブログ記事で述べたように、2%の物価上昇というのは達成するのがかなり難しい目標。

この目標に向かって日銀が果敢に動き始めたわけですが、この結果、株式市場はどうなるのか。

今週月曜日(4月8日)に日経CNBC「日経ヴェリタストーク」に出演したときの録画が日経新聞のサイトでご覧になれます。

『こちら』です。

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2013年4月 9日 (火)

1ドル=100円に迫る勢い

昨晩は日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」に出演しました。

収録後、キャスターの曽根さんから「明日、朝、起きたら1ドル=100円になっているなんてことは、まさかないですよね」と言われましたが、まさに100円に迫る勢い。

日本時間9日7:14分頃に99.582円をつけて、このブログ記事を書いている9日7:46分現在99.52円です。

さて昨晩の番組のテーマは今回の金融緩和策の評価。

日本株に詳しい外人投資家やアナリスト何人かに事前にヒヤリングしたりしましたが、彼らの見方を含めて、マーケットは次のように考えているのではないかというのが私なりの解釈です。

①日銀による国債の購入については、量、及び、質(長期のもの中心)とも100点満点の評価。

②ただし日銀によるリスク資産購入については米国のFRBが月4兆円(年48兆円)のMBSを購入しているのに比べると、日銀によるETF購入(年1兆円)は見劣りする。

③金融機関が日銀に持つ当座預金残高に利息がつくという「付利0.1%」の引き下げについても今後検討されるべき。

ETF(上場投資信託;Exchange Traded Funds)は米国では100兆円以上の残高があるのに比して、日本では残高約5兆円。

こういったことも勘案して日銀は年1兆円と決めたのでしょうが、日銀が購入するETFはTOPIXや日経平均株価指数に連動するETF。

日銀が購入する形で、ETFに入れた資金は日経平均(225の株式)やTOPIX(東証1部)を構成する株式投資に回ります。

すなわち日銀が相手にしているのはETFを通じての(その背後にある)東証1部株式市場全体です(2部、マザーズも含めた東証全体の時価総額は3月末で365兆円、TOPIXの時価総額は3月末で231兆)。

231兆円や365兆円という株式市場の規模を勘案すれば、日銀による年1兆円のETF購入というのは寂しく、この10倍くらいあっても良いかもしれません。

このように今回の金融緩和策の評価は全体でみると90点とやや厳しめにしましたが、これは物価上昇率2%の達成がそれだけ難しいことの裏返しです。

1998年から15年にわたって続いてきているデフレ基調。

この15年間の物価上昇率は平均すると年▲0.3%というマイナス。

この基調を変える(デフレ・スパイラルを止める)のは容易ではありません。

識者のなかにはデフレのどこがいけないのかという議論もありますが、物価が下がり続ける状況下では企業の投資意欲は減衰、経済活動は拡大しにくく、雇用は悪化(日本の失業率は4%台ですが潜在的な社内失業者を入れれば10%を超える)。

先進国でデフレに陥っているのはスイスと日本くらい。

大学生が3年生の時から就職活動に専念し、卒業してもなかなか正社員になれない人が多いといった状況を変えなくてはなりません。

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