まず前回のブログ記事に関して頂いた質問への回答
(1)2011年4月~12年3月のトヨタの営業利益は3,556億円。それが前期(2012年4月~13年3月)には1兆3,208億円。
対前年度比で、9,652億円も営業利益を拡大させたにもかかわらず、円安要因はこのうちの16%、1500億円とは少なすぎないか。トヨタは1円円安になれば400億円利益が増すと新聞に出ていたが・・?
(答え)2011年4月~12年3月期の為替レート(トヨタの場合)はドル円で79円、ユーロ円で109円。
それが前期(2012年4月~13年3月)はドル円83円、ユーロ円107円。
すなわちドル円では4円円安。ユーロ円では2円円高。
為替要因による増益1500億円は、一般に言われている「1円円安になれば400億円増益」にほぼ沿ったものだったと思います。
(2)トヨタの今年度の利益見通し(営業利益1兆8000億円)は保守的ではないか。
(答え)トヨタの説明によれば3月末の為替レートを5円の単位で丸めて1ドル90円をベースに今年度決算見通しを作成したとのこと(下表)。
ちなみ3月末の円ドルレートは94.05円(TTM)でしたので、これをもって90円に丸めて今年度決算の見通しを作成したということでしょう。
かりに今年度1年間の平均為替レートが1ドル=102円となれば、営業利益はどうなるでしょうか。
さきほどの1円円安になれば400億円利益が増すとの法則を使えると「仮定」すれば、営業利益の上乗せ額は
102円-90円=12円
12円×400億円=4800億円
よって今年度の予想営業利益は2兆2800億円ということになります。
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さて前回のブログ記事の続きです。
株価上昇トレンドを支えている3要因。
①金融緩和(アベノミクス)
②米国の景気回復
③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出
以上の3要因がいちばん重要だと思うのですが、これらに加えて次の3つの付随的要因も見逃せません。
少しだけ解説しておきます。
①中国経済底入れ
上海総合指数推移からしても昨年12月あたりに底入れしたのではないかと思われます
②欧州の一時的平穏
ギリシャは昨年6月の再選挙で連立政権発足。新たな緊縮策を導入し、2012年の財政目標を上回る結果を残したとのこと(『こちら』)
③地政学リスクの状況
北朝鮮リスク、イランリスクがさほど緊迫化するには至っていない
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ということで、今後の株価を占う上でのポイントとしては:
上記の大きな3要因と3つの付随的とでもいうべき要因がそれぞれ今後どうなるか-。
これを考えることで
絵が少し見えてきます。
先に私が考える答えを一言で言ってしまうと:
「ポイントは、8月12日~10月31日にかけて」。
このときまでは現在の基調が基本的には推移していくと予想されますが、8月中旬以降は俄然と不透明さが増してきます。
ちまたで言われているように、7月の参議院選ももちろん重要ですが、すでに市場はある程度の予測を織り込んでいます。
それよりも経済の状況はどうなのか、そしてどうなっていくのか。
まず第一のポイントとして明日の朝、8時50分。
このとき2013年1-3月期のGDP第一次速報が公表されます。
これはこれでもちろん重要ですが、もっと重要なのが4-6月期のGDP。
なぜでしょうか。
株価上昇の基本要因の③。
「③13.1兆円の超大型補正予算(2月14日可決)などによる財政支出」
この効果は、主として4-6月期のGDPに現われるからです。
そして政府が消費税増税を当初予定通り来年4月から行うかどうかについては、この数字が決定的なインパクトを持つからです。
この4-6月期GDP第一次速報が公表されるのが、8月12日(二次速報が9月9日)(『こちら』)。
もう少し説明を加えましょう。
すでに国会では野党(みんなの党)から安倍総理に対して
「7-9月期のGDP数値は11月14日に発表されるがそれを待たずに消費税増税の実施時期の判断をするのか」
といった質問もなされています(3月27日財政金融委員会)。
これに対して安倍総理は10月に決めると回答しています。
ここで消費税増税法の条文を見てみましょう(実施時期についての文言)。
「第十八条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる」
「3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二
条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前二項の措置を踏まえつ経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」 (詳しくは『こちら』)
法律の文言を追うのは大変だという方は斜め読みでも、あるいは飛ばして頂いても結構です。
以下の浜田参与の発言をご覧ください。
4月9日。
ロイターが報じた浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)の発言内容です。
「(2%の物価目標を)2年で達成できるかはわからない。財・サービスや消費、投資、雇用などにどれだけ的確に早く(効果が)及ぶかがこれからの問題だ。経済が回復してくれれば、1%に越したことはない。過剰設備を解消し、失業率も次第に改善し、有効求人倍率も1より大きな地域が増える状態が望ましい」
「来年4月に消費税を上げても大丈夫かは、今後をみてみないとわからない。安全策として1年くらい延ばすのもいいのではないか。せっかく上がりかけた景気が増税でぽしゃってしまう例は、日本の歴史だけでなく、世界の歴史にもある。ブレーキをかけて歳入(税収)の上昇が止まれば、消費税は率を上げただけで、何のためにもならない」 (詳しくは 『こちら』 )
要は、8月12日に発表されるGDP値が、「これなら来年4月に消費税を上げても大丈夫」とマーケットが納得いくものが出てくるかどうか、
とくにこのときのGDP値が「13.1兆円の超大型補正」という下駄を履いた上での数値だけに、日本経済がほんとうに体力を回復したのか、慎重な検討が必要になってきます。
もしそれほどまでには体力が回復していないと判断されるような数値だった場合(取り越し苦労だといいのですが)、安倍政権がはたして消費税増税1年先送りの勇気を持つかのかどうか・・。
この辺の状況如何によっては景気が腰折れし、株価が方向性を変えてしまうことも懸念されます。
そればかりではありません。
アメリカ経済は基本的に順調ですが、秋口にはFRBが出口戦略(金融緩和策の方向転換)を模索し始めるとの見通しも一部の識者から伝わってきています。
と同時に9月にはいよいよドイツで総選挙が実施されます。
8月12日~10月。
台風が日本を襲うこの時期。
株価を占う上でもポイントとなる時期のように思います。