2024年5月18日 (土)

フォーム13F

米国の場合、運用資産が1億ドル以上ある機関投資家などは、SECに対してフォーム13Fを提出しなければなりません。

これは機関投資家が保有している株式を一覧表にしたものです。

提出期限は暦年の各四半期末から45日以内なので、3月末現在の数字は一昨日(5月15日)に提出されました。

今回、ウォーレン・バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイが提出したフォーム13Fは『こちら』(注:その後、一部、修正も出されています。『こちら』など)。

バークシャーは昨年9月末と12月末、2四半期連続で、保有株式の1銘柄以上を一時的に非公開とすることの許可をSECから得ていました(『こちら』)。

市場では、この銘柄はどこなのかと、噂や憶測が飛びかっていました。

今回はついに、この「秘密の株式」が開示され、それが保険会社のCHUBBであることが分かりました。

このニュースが伝わるや、CHUBBの株価は一時8%ほど上昇(253ドル→274ドル)。

しかしその後は落ち着いています。

Chubb

バークシャーのCHUBBへの投資額は時価ベースで70億ドルほどなのですが、CHUBBの時価総額は1085億ドルほどあるため、バークシャーの投資はCHUBB全体の6%ほどに過ぎません。

* * *

ところで昨日、日経新聞(電子版)にバフェット関連の記事を寄稿しました(『こちら』)。

同じ記事が5月19日(日曜日)の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

なおこの記事は5月15日より以前に書いた為、バークシャーの最新のフォーム13Fは反映されていません。

この記事には、実はバフェット氏とFRB議長のパウエル氏との間には意外な接点があることも載っています(ご存知でしたか?)。

パウエル氏の人となりを知る上でも結構この辺の情報は重要だと個人的には思いました(あくまでも個人の感想ですが・・)。

なにせ、その言動で世界の金融が動いてしまう人ですから・・。

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2024年5月13日 (月)

宇宙ビジネスの現状と今後

本日は日経CNBCテレビの「日経ヴェリタストーク」に出演しました。

トピックスは宇宙ビジネスについて。

詳しくは『こちら』をご覧頂きたいのですが、以下、概要を簡単に記しておきます。

【1】日本の宇宙ビジネスの現況

今般、日本政府は宇宙戦略基金(10年で1兆円)を立ち上げた。

斯様に宇宙ビジネスは現在注目を集めている分野と言える。

ただ昨年1年間のロケット打ち上げ回数で見ると、アメリカが108回、中国68回、これに対して日本は2回。

残念ながら、現状、米、中、露が第1グループを走っているのに対して、日本と欧州は第2グループ。

ただ宇宙ビジネスのマーケットは大きく、しかも急速に伸びているので、幾つかの分野では、日本勢でもじゅうぶんに勝てるチャンスはあると思う。

【2】注目分野:①合成開口レーダー(SAR)

衛星から地球を観察する場合、普通の光学画像だと上空に雲がかかると撮影できない。

これに対して、電波は雲のような障害物を透過できる。

つまり衛星から電波を送り、跳ね返ってくる電波を受信することで、地表を観測できる。

ただこの場合に難点があって、宇宙のような遠いところから電波を当てても、ビーム角が広くなり解像度が落ちてしまう。

これを解決したのが合成開口レーダー(SAR)。

時系列に電波を照射して受信した結果をつなぎ合わせるという技術。

九州大学発のベンチャー、QPS研究所などがこの分野で活躍している。

【3】注目分野:②宇宙デブリ(ゴミ)除去

デブリ除去の方法としては、デブリを捕獲したり、レーザーを当てたりして、デブリを大気圏に突入させ燃やすことなどが考えられている。

しかしデブリは地球の周りを秒速7~8キロで周回している。これはライフルの弾丸の8倍のスピード。

これを捕獲するか、レーザー光線を当てるかと言っても、技術的ハードルはかなり高い。

この業界のリーダー格であるアストロスケールも当初は接着剤を使ってデブリを捕獲することを考えていたが、宇宙空間で粘着剤が劣化してしまうことが分かり、磁石に切り替えた。

現状はまだいろいろなやり方が考えられている段階と言えるかもしれない。

なおデブリについては積極的デブリ除去(Active Debris Removal, ADR)のみならず、デブリをこれ以上出さないことも重要。

つまりこれから打ち上げられる人工衛星は、寿命が来たら大気圏に再突入するための装置を搭載するといったことが重要になってくる。

【4】宇宙ビジネスはイノベーションに寄与するか

1961年にケネディ大統領が「10年以内に人間を月に到達させる」と宣言して、アポロ計画がスタートした。

それまで宇宙船の飛行ルートの計算は「手計算」で行われていたが、アポロ計画においてはコンピューターが導入された。

ソーラーパネルなどもアポロ計画で開発された。

経営学の分野では、ある目的があって、それに向かって組織として努力することで、イノベーションが生まれるという「目的工学」の考え方もあるが、宇宙ビジネスとイノベーションはこのように密接に関係していると言える。

たとえばアルテミス計画で要求される月面探査車は月の環境に耐える必要がある。

月面では、重力は地球の1/6、温度はマイナス170℃~プラス120℃、真空、強い放射線、そして昼が2週間続き、次に夜が2週間続く。

こうした環境に耐える車を開発することがイノベーションに繋がる。

もう一つ、別の視点だが、例えば、衛星を使ったリモート・センシングの機能は、人類が新しい測定の技術を入手したことに繋がる訳で、いろいろな分野に応用可能。

こうした新機能を応用していく、その結果、その先で新しいイノベーションが生まれるという側面もあるかもしれない。

【5】産学官の連携と政府の舵取り

国による「宇宙戦略基金」(10年間で1兆円)がスタートしている。

基本的な発想は、米国などと同じく「官から民へ」というもの。

官が中心だと、国民の税金を使うということで失敗が許されにくい。

どうしても慎重になり、スピード感に欠ける。

これに対して、民の力を上手く使うことで、スピード感ある開発が行えるのではないかという考え方である。

「宇宙戦略基金」のもう一つのポイントは、JAXAに関する法律を改正して、この1兆円基金がJAXAに設置されたこと。

JAXAのこれまでの機能は、宇宙科学や宇宙航空に関する研究・開発、並びに人工衛星等の開発、打上げ、追跡及び 運用等の業務を行うことだったが、これに加えて基金がJAXAに設置され、JAXAが、民間・大学が行う研究開発に対して助成を行うようになる。

JAXAによる民間や大学に対する支援が、こうした宇宙ベンチャーに対する民間資金の呼び水となることが期待される。

更に、今後の方向性としては、米国のNASAが行ったように、JAXA自身が宇宙関連スタートアップの製品やサービスを積極的に購入するようになることも期待したい。

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2024年4月15日 (月)

踊るインド株 巨象の実像

2016年11月8日、午後8時にインドのモディ首相がテレビに出演し、演説をしました。

「今から4時間後の真夜中0時以降、現在使われているお札のうち、500ルピー札(当時の為替で約800円)と1000ルピー札(約1600円)が使えなくなります」。

これはインドで使われていた紙幣の約86%にあたります。

日本で言うと、「1万円札と千円札が今日の夜から使えなくなる」と首相が宣言するようなもの。

インド中が大騒ぎになりました。

500ルピー札と1000ルピー札は通常の取引では使用禁止になりましたが、

銀行に持って行けば、(1)新紙幣と交換したり、(2)銀行に預金することは出来る、とのことでした。

しかしそれも年内まで。

さらに銀行から引き出せる新札の額にも制限がつけられたりしました(そもそも新札の印刷が間に合わなかった)。

「こんなことをしたら国中が大混乱に陥る」

とばかり、米国のローレンス・サマーズ(元財務長官、ハーバード教授)などが警鐘を鳴らしました。

銀行には長い列が出来ましたが、モディ首相の強力なリーダーシップの下で、インドはこの政策を断行しました。

目的は大きく言って、2つ。

1つはブラックマネーの炙り出し。

もう1つは、国民に銀行口座を持ってもらうことにありました。

それまでインドでは国民の約50%は銀行口座を持っていませんでしたが、この政策の結果、今では約8割の人が銀行口座を持つようになりました。

これは一例ですが、インドのサッチャーとも称されるモディ首相は、10年前に政権を握ってから、数々の経済改革を進めてきました。

おかげでインドのGDP(名目ドルベース)は10年間でほぼ2倍に・・。

さて、今週金曜日(19日)から、インドでは総選挙が行われます。

全国を7つの選挙区に分けて順次投票していくので、全ての投票が終わるのが6月1日。

開票は全国一斉に6月4日に行われます。

人民党 vs. 国民会議派の構図ですが、与党である人民党が勝利し、モディ氏が3期目に入ると予想されています。

今日の日経ヴェリタストークでは、そんなインドの状況について話し合いました。

上記のような政治の話よりも、むしろ自動車産業、金融機関など経済の話が中心です。

インド株への投資(具体的には投信、ETF)を考えている方は是非ともご覧になってみてください。

『こちら』です。

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なおインドについてお勧めしたいのが、鈴木真弥さんの『カーストとは何か』

学びの多い本でした。

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2024年4月12日 (金)

「複利」のすごさと怖さ 数%で資産形成に大差

複利のことなど今さら聞かなくても分かっている―という人がほとんどだと思います。

では、「100円(100万円ではない!。たったの100円)を年10%で複利運用したら100年で幾らになるか?」

これをイメージできる人はそんな多くないかもしれません。

答えは138万円!。

日経新聞(電子版)と日経ヴェリタス(4/14号)に寄稿しました。(『こちら』です)。

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2024年3月23日 (土)

建築家とゼネコン

先月24日に発行されたバークシャーのアニュアルレポート(2023年)。

表紙と目次のすぐ後に、バフェットによるマンガーへの弔辞が掲載されています(下の写真)。

題して『チャーリー・マンガ―:「バークシャー・ハサウェイのアーキテクト(建築家)」(The Architect of Berkshire Hathaway)』

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この中でバフェットは次のように書きました。

『チャーリーは現在のバークシャーの "設計者 "であり、私は "ゼネコン"として彼のビジョンを日々建設していった。』

(Charlie was the “architect” of the present Berkshire, and I acted as the “general contractor” to carry out the day-by-day construction of his vision.)  

昨年11月28日に99歳で他界したマンガー。

あと33日で100歳の誕生日を迎えるところでした。

チャーリー・マンガ―と言えば、歯に衣着せぬ発言で有名でした。

私はそんなマンガーのコメントをバークシャーの株主総会で聞くのが好きでした。

たとえばバフェットは2006年にようやくコカ・コーラの役員を退任したのですが、

マンガーによれば「もっと早く取締役を辞めていればコカ・コーラ株を売れたはずだ」(バフェットの公認伝記「The Snowball」原書681頁)。

昨年5月のバークシャー株主総会にはマンガー(当時99歳)は車椅子に乗って登壇しましたが、

今年の総会では残念ながら彼の姿を見ることが出来ません。

ご冥福をお祈りします。

* * *

話は変わりますが、先週末(3/15)時点で、バークシャーの時価総額は8,883億ドルでした。

これを分解してみると、

保有有価証券(上場株式)の時価が3,660億ドル。

現金および現金同等物が1,676億ドルです。

この2つを足し合わせると、5,336億ドル。

これとバークシャーの時価総額との差(3,547億ドル)が、ざっくり言って、バークシャーの事業会社(保険会社、エネルギー会社、鉄道、キャンデー、家具など)の価値ということになります。

(本当は、現金および現金同等物の中には、事業会社が事業を行っていく上で必要なものも含まれている為、上記計算は正確ではありません)。

保有有価証券(上場株式)の時価(3,660億ドル)の中身を見てみましょう。

全体の74%をアップルなど、たった5社への集中投資が占めています。

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しかもこの上位5社の顔触れですが、10年前(下図)と比べると大きく変わっていることが分かります。

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10前の上位5銘柄で残ったのは、コカ・コーラとアメックスだけでした。

350万もの虚偽口座が作られたウェルズ・ファーゴについては、バークシャーは、22年第1四半期に全株の売却を完了。

IBM株については、17年にほぼ全て売却。

17年8月のCNBCによるインタビューの中で、バフェットは次のように発言しました。

"I was wrong on IBM.  I made a mistake." 

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2024年3月 5日 (火)

日経平均4万円突破

日経平均が4万円を突破したことで、いろいろな方からコメントを求められます。

基本、巷で言われていることと同じで、何か新しい視点がある訳ではないのですが、

『S&P500やオルカン(オール・カントリー)と比べると、どうか』といった質問も受けます。

両者(たとえばS&P500と日経平均)を比べる場合は、通貨を揃えた方が良いと思います。

【1】ドルベースでの比較(外国人投資家の視点)

たとえば今から約3年前。

2021年2月16日の日経平均株価は、

30,467.75円(このときの為替レートTTMは105.49円)

よってこの時の日経平均はドルで、288.82ドルです。

現在は、日経平均40,097.63円(為替150.42円)。

ドルベースで、266.57ドルです。

つまり約3年の間に日経平均は値下がりしています。

一方、S&P500(米国株)は、

2021年2月16日が、3,932.59ドル

そして現在が5,130.95ドルなので、

30%以上値上がりしています。

【2】円ベースでの比較(日本人投資家の視点)

同じ期間で、日経平均は

30,467.75円→40,097.63円(32%上昇)

一方の、S&P500(円ベース)は、

414,849円(3,932.59ドル×105.49円)

から、

771,797円(5,130.95ドル×150.42円)

へと、86%上昇しています。

* * *

つまり現時点で、日経平均は一見したところ、暴騰しているように見えます(そうマスメディアが騒いでいる)。

しかし、S&P500(そして米国株が62%を占めるオルカン)に比べれば、まだまだ力不足と言えるかもしれません。

もちろん、これから先、短期的には、ドルベースでも、そして円ベースでも、

日経平均のパフォーマンスがS&P500を上回ることがあるかもしれません。

ただ中長期で見ると株価は基本的にはGDP(経済力)の伸びに左右されていく面が強いように思います。

目先の市場に惑わされず、国として経済の底上げを図る(なによりも急速な人口減少に歯止めをかける)ことが重要であるような気がしています。

(注)S&P500の単位はドルではなく、ポイントですが、分かりやすくするため、1ポイント=1ドルと仮に置いて、議論を進めています。

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2024年2月19日 (月)

ETF(Exchange Traded Funds)

本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演しました。

トッピクスはETFについて。

ETFとはExchange Traded Fundsの略。

証券取引所に上場する投資信託のことで、多くは株価指数などの指標への連動を目指します。

世界のETFの運用残高は1800兆円。

ETFは、金融商品の中で「20世紀最大の発明」とも言われます(日経ヴェリタス2/18号、第1面)。

これはどのように開発されたのでしょうか。

【1】ブラックマンデーに遡る

1987年10月19日のブラックマンデー。

米国市場はたった1日で22.6%も下落しました。

これは1日の記録としては、今日に至るまで歴史上最大の下落率です。

どうしたら、こういった下落は防ぎ得たのでしょうか。

事後検証や研究の結果、「市場にもっと流動性があれば、過度な暴落を防げたはず」との結論に辿り着きました。

当時は、先物やオプションの市場では、マーケット全体を取引出来ましたが、

現物市場(Cash Equityの市場)では、マーケット全体を売買できる単一の有価証券がなかったのです。

「この種の単一の有価証券があれば、市場の流動性が高まる」ー こう考えられて、開発されたのが、ETFです。

第1号となったのは、S&P 500の指数に連動するETFで、1993年に誕生しました。

SPDR(スパイダー;Standard & Poor's Depository Receipts の略)の名がつけられ、

「SPY」のティッカー・シンボルで取引されました。

現在、SPDRのSPY 1本だけで、日本円に換算して、74兆円の純資産総額(4,917億ドル)を有しています。

日本全体のETF残高(日銀保有分も含めて)が75兆円と言われていますので、SPY 1本で、日本全体にほぼ匹敵することになります。

【2】ETFには2つの市場がある

ETFには、「流通市場」と「発行市場」の2つの市場があります。 

これについては『こちら』の記事によくまとめられていますので、ご覧になってみてください。

【3】ETFには3つの価格がある

もう一つ。

ETFには、「取引所価格」と「基準価額」、そして「インディカティブNAV(推定一口あたり純資産価格)」の3つの価格があります(『こちら』)。

2つの市場と3つの価格。

少しややこしいですが、これが分かるようになると、ETFの仕組みが理解できるようになります。

【4】日本の個人投資家がETFを買う時の注意点

いろいろな種類のETFが誕生してきていますが、個人投資家が実際に買う時には注意も必要です。

ひと言で言うと(すべての金融商品の評価に共通するポイントでありますが)流動性がきちんとあるか、

つまり売りたいときに、きちんとした価格で売れるか

という点に留意する必要があります。

具体的なチェック・ポイントは3つ。

(1)出来高(1日当たりの出来高)

(2)純資産残高

(3)基準価額と市場価格の乖離率

純資産残高について言えば、SPYは残高4,917億ドル(74兆円)です。

一方、日本では317本のETFが東証に上場されていますが、純資産残高30億円未満のものも少なくありません。

(3)の基準価額と市場価格の乖離の問題は、2018年に東証がマーケットメイク制度を導入したことで大分改善されました。

【5】日本のETFマーケットの特殊性

日本全体で、ETFの残高が75兆円と言われていますが、

日銀保有分を除けば、12兆~13兆円です。

一方、米国のETF市場は、1,100~1,200兆円と言われていますので、サイズで見ると、米国の100分の1です。

ただし本数で見ると、米国3,100 本 vs. 日本317本。

つまりサイズでは、米・日の比率が100対1でしたが、本数になると10対1となります。

これは1本あたりの運用資産残高が小さいものが日本には多くあることによるものです。

【6】投信を買うか、ETFを買うか

昔はETFの方が、コスト(信託報酬など)が安かったので、ETFの方がお勧めでした。

しかし最近は、eMAXIS Slimなど低コストの投信が出てきたので、どちらを選んでも大差ありません。

新NISAで「つみたて投資枠」を利用する場合は、ETFは使えません。つまり投信を選ぶしか手がありません。

新NISAには「つみたて投資枠」以外に「成長投資枠」もありますが、これについては投信でもETFでも利用できます。

投信は口数を設定して、何口買いたいと注文しても、幾らの単価で買えたのか、翌日もしくは翌々日になるまで分かりません。

一方、ETFは、スクリーンを見ながら、指値などでも購入出来ます。

こういったことから、ETFの方が好きだという人も多くいます。

この辺は人それぞれだと思います。

【7】日銀が保有するETF

日銀が持つETFは、昨年9月末で簿価37兆円に対して、時価61兆円。

つまり含み益が24兆円もあります(現在では含み益はもっと膨らんでいるはずです)。

この含み益は日銀にとっては有り難い数字だと思います。

というのも、9月末時点で、保有国債(586兆円)の含み損が10兆円あったからです。

いずれにせよ日銀はいずれ金融を正常化していくことになるものと思われ、ETFについても、

何らかの処置が必要になります。

ネットの世界ではいろいろな案が語られていますが、

たとえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に、若干のディスカウントで、毎年少しずつ引き取ってもらうといった案も考えられうるかもしれません。

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なお日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』は『こちら』でご覧になれます。

(未契約ですと最初の1分半ほどで切れてしまいますが・・)

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2024年1月 9日 (火)

今年から始まった新NISAについて

本日は日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』に出演するため、昼間、大手町の日経本社ビルに行きました。

本日の日経平均は取引開始後10分ほどで(9:10 AM)33,990円をつけ、34,000円台に迫る勢い。

そんなこともあってか、ここで働く人たちも、いつにも増して明るく感じました(気のせいかもしれませんが)。

番組のトッピクスは今年から始まった新NISAについて。

【1】新NISAはどう評価できるか

これまでのNISAは、たとえば5年経ったらロールオーバーが必要になるケースもあるといった具合に煩雑さが目立ちました。

新NISAはそういった今までのNISAの弱点がかなり改善され使い勝手が良くなっています。

資産形成を図る上で役に立つと思われます。使ってみることをお勧めします。

この制度を作る上で推進役の1人となった内閣府副大臣(当時)が、昨年雑誌のインタビューで次のように発言していました。

『つみたてNISAの導入に向けて関係者をどう説得しようかと考えていたとき、誰かから「米国ではごく普通の仕事をしている、普通の人がミリオネアだ」という話を聞いたの。』

 『「つみたてをしているアメリカ人はザラに1億持っているんだ」って、自民党の会議で言いふらしましたよ。ザラにじゃないかもしれないけれど』

2019年に出した拙著(『こちら』にも、こんな一節があります。

『米国で世帯主が65歳以上の平均所得は月57万円、年収にして680万円』

この数字は現在(2022年の数字)で年収1000万円を超えています(『こちら』)。

65歳以上の世帯年収がこれだけ多いということは、米国の401Kという『年金資金積立制度』が有効に機能しているからと思われます(詳しくは上記拙著をご覧ください)。

つまり新NISA(とくに「つみたて投資枠」)は最初から米国の401Kを意識して作られた訳で、「国も漸く国民の資産形成に真剣に取り組みだした」と評価できるように思います。

【2】年齢によってポートフォリオの資産配分を変えるという考え方について

年齢が上がるにしたがって、ポートフォリオの中身をリスクの低いものにしていくというのは、米国の教科書にも載っている考え方です。

昔から米国では、株と債券の資産配分のルールとして、「100マイナス年齢で株を持て」とか「110マイナス年齢で株を持て」と言われてきました。

すなわち25歳の人は100あるいは110から、年齢である25を引いて、80前後が株式の比率になり、残りは債券の比率になります。

ただ日本の場合は、債券がまだ金利がほとんどつかないといった特殊な事情にあります。

10年ものの個人向け変動国債の金利は税引き後で現状年0.37%。

100万円預けて、3,700円しか金利がつきません。

そういった面では米国の考え方をそのまま今の日本に当てはめることについては違和感を持つ人もいるかもしれません。

(ちなみに米国ではiPhoneに出てくるアップルの定期預金で税引き前4.3%つきます)。

なお債券と言っても、リスクの高いものもあります。

昨年はクレディスイスのAT-1債が全損になりました。

仕組債で大やけどをした人もいます。

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    (写真はキプロスの銀行)

更にもう1点。

個別の債券はNISAの対象外です。

【3】NISAで投資して、相場が下落したら、どうするか

株式投資をしていると、相場が大きく下落することもあります。

ウォーレン・バフェットも資産が半分になったことが、これまでに4回あると話していました。

株式投資をする以上、ときに自分の資産が半分になるリスクは覚悟する必要があるように思います。

そんな時、どうするのがいいでしょうか。

個別株ではなくて、S&P500などのインデックス投資の場合は、たとえ半分になったとしても、持ち続けることです。

最悪なのは半分になった時点で狼狽売りをすること。

リーマンショックの時は、米国の株価は半分(正確には46%)になりましたが、5年半で元の水準に戻りました。

1929年の大恐慌の時は、株価は9分の1になりました。

元の水準に戻るのに25年かかりましたが、この間、半年に1回株を買うという積立投資をしていれば(安くなった時に買えるので)、6年で元に戻りました。

多くの人は暴落の相場が続くと、怖くなって降りてしまいますが、下がった時に売らずに、市場に参加し続けていることがポイントです。(繰り返しますが、個別株ではなくて、S&P500などのインデックス投資の場合の話です)。

【4】新制度を機に、初めて投資を始めようという人も多い。基本的なことから教えて欲しい。

まずNISAの口座の開設は銀行がいいか、証券会社がいいかですが、銀行だと株式やETFが買えません。よって証券会社の方を考えるべきです。

とくにネット証券は手数料が割安なのでお勧めです。

次にNISAには(1)つみたて投資と(2)成長投資があります。両方いっぺんにスタートさせてもいいのですが、資金的にあまり余裕のない人や初心者は、つみたて投資から始めるべきです。

たとえば「毎月3万円ずつ投資信託を買っていく」という方式で、これが一番資産形成に向いています。

金額を一定にして購入していく「つみたて投資」方式は、相場が安い時に、より多くの投資信託を買えるという利点があるのです。

なお投資信託にはインデックスとアクティブとがありますが、どちらかというとインデックスの方がお勧め(『こちら』の記事参照)。

信託報酬などの手数料もインデックスの方が安価です。

ネット証券の大手3社を対象に、『ある雑誌』が、『昨年1月から11月末まで、つみたてNISAで、どの銘柄の買い付けが多かったか』を調査しました。

結果は、どの会社でも米国のS&P500に投資するインデックスファンドが第1位でした。

個人投資家の方々はよく勉強していて、ちゃんと分かっているなと思いました。

【5】リタイヤ後の運用について。また全世代を通して新NISAへの向き合い方など

一般的には、さすがに70代になれば、資産を取り崩すのが一般的と考えられていますが、『金融庁の調べ』によると、これまでにNISAで買い付けられた金額のうち25%以上が70代以上によるものとなっています。

なかには80歳以上になっても、つみたてNISAを使って、定期的に積み立てている人もいます。

実際のところ、いまの80代、90代の人と話すと、無駄使いはせずに無理のない範囲で資産を増やせるなら増やして、(自分で使い切るというより)子や孫の世代に残したいという人が結構多いように思います。

つまりどの世代であっても、NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は使えると思います。

ただし、NISAにはマイナス面もあります。

損を出した時、NISAでなく一般の株式投資であれば他の利益を出している金融資産と、税務上、損益通算できます。

しかしNISAでは損を出しても、何の救いもありません。

つまりNISAでは損を出さないことが、より一層重要になります。

そういった意味では、個別株よりもインデックス投信、なかでもS&P500とかオルカンと言われるオールカントリー・インデックスが向いていると思います。

ちなみS&P500は30年前と比べると、ちょうど10倍になっています。

なお本日の番組の冒頭部分は『こちら』でご覧になれます。

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2023年12月16日 (土)

投信とETF

10年以上も前に著した本の中で「投資信託の手数料は苛酷である」と書いたことがあります。

当時、投信の主流は販売手数料1.0~3.0%。

その他に、信託報酬が年2%前後。

100のものが、買った途端に97になり(注:販売手数料3.0%の場合)、しかも20年持てば(信託報酬が年2.0%の場合)更に約20%減価し、結果、77前後になります(注:運用成績がプラス、マイナス、ゼロの場合)。

しかしながら・・。

10年以上の年月の結果、時代はずいぶんと変わりました。

現在では、ネット証券を使えば、販売手数料ゼロの投信が増え、しかも信託報酬も例えばeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の場合、年0.05775%。

ところで、いま日本の投資信託の世界で起きていることは、eMAXIS Slim シリーズのように、強いものがますます強くなるという現象です。

運用会社が投資信託を運用する上では一定のコストがかかりますが、多くの運用資金を集めていれば、コストは薄められます。

その結果、こうした投信が競争優位となり、ますます資金を集めやすくなるといった好循環に。

逆にじゅうぶんな運用資産を集めることが出来ない弱小投資信託の中には、コストを吸収しきれないところも出てきています。

現在もっとも多くの運用資産を集めているのが、eMAXIS Slim米国株S&P500で、純資産総額は、なんと2.95兆円。

いずれにせよ信託報酬がここまで低くなってくると、ETFとの差が少なくなってきます。

そんなことを考えながら、日経新聞(電子版)に寄稿しました。

『こちら』です。

明日の日経ヴェリタス紙にも掲載されます。

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(注:図はSMBC日興証券のサイトより)

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2023年11月17日 (金)

道場

今週月曜日に放映された日経CNBCテレビ『日経ヴェリタストーク』は、EV(電気自動車)について。

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EVは環境にやさしいと言われてきましたが、実は(電池の材料となる)リチウムやコバルトなどを鉱物資源から取り出し

『製錬』する過程で、硫酸が使われることも多く、環境汚染の問題も指摘されてきています。

『現在は中国のような環境規制が緩い国で、環境負荷に目をつぶってリチウムを増産している』状況(週刊エコノミスト23年10/10・17合併号、31頁)。

もっとも上記TV番組が放映された後のことですが、米国時間の13日、米エクソンモービルが、環境負荷の低い直接リチウム抽出法(DLE)により米国でリチウムを生産することを発表(『こちら』)しており、今後が期待されています。

ところで番組ではEVとは直接関係ないのですが、Dojoについても触れました。

Dojoとは日本語の道場から来たもので、マトリックス・レザレクションズにも出てきます。

マトリックス好きで知られるイーロン・マスクは、開発中のテスラのスーパーコンピューターにこの名前を付けたのです。

スパコンに膨大なデータを与えて、徹底的に鍛え上げるーこうした趣旨での命名だったのかもしれません。

Dojo

(上の画像は道場で格闘技で競うネオとモーフィアス。The Matrix Resurrections の Official Trailer より)

さて、いまなぜテスラのDojoが注目を集めるのでしょうか。

EVだろうとガソリン車だろうと自動運転機能はクルマの頭脳に当たる部分。

これを制する者が自動車を制すると言われてきました。

しかしながらレベル4と言われる完全な自動運転車はなかなか実現に至りません(米国アリゾナ州の幾つかの都市、および加州のサンフランシスコ、さらには中国の幾つかの都市ではすでに自動運転タクシーが出てきてはいますが)。

レベル2にせよ3にせよ、これまでの自動運転車では、ソフトのみならずハードが重要な役割を果たしてきました。

カメラや、ミリ波レーダー、そしてライダーです。

自動車メーカー各社は、自動運転に近づけるべく、最新鋭のミリ波レーダーやライダーを装備することに注力。

遠隔地からソフトウェアのアップデートでクルマの性能を引き上げるだけでは事足らず、より優秀なハードを求めてきたのです。

しかしイーロン・マスクは2021年に開発中のテスラ車からレーダーを取り払うことを決断します。

車に備え付けるのは8個のカメラのみとし、後はソフトウェアを進化させることで、完全自動運転に近づこうと方向変換したのです。

この辺は、ウォルター・アイザクソンの『イーロン・マスク』(下巻、130~131頁)に詳しいのですが、

直接的な契機はコロナ禍でマイクロチップが不足し、レーダーの部品が足らなくなったことでした。

これを機にマスクはそもそもレーダーなど要らないと主張し始めました。

当然ながらテスラの技術開発部隊はマスクのこの考えに大反対。

カメラや人の目で確認しづらい物体もレーダーなら検出できると主張します。

しかし、結局、マスクは開発部門の言うことを聞かず、2021年1月22日、電子メールで社内に向け最終通達を出します。

『今後、レーダーは切ること。

松葉づえなんぞはなくす。

伊達や酔狂で言っているわけじゃない。

カメラのみでちゃんと運転できるのはまちがいない』。

このメールを受け、多くの技術陣はショックを受け、何人かは退社しました。

一方でイーロン・マスクは

『人間だって目で見ているだけ、それだけで運転できる』

との持論を崩しません。

要は、ソフトが支配する世界への方向転換です。

ハードに縛られることなく、ソフトウェアをアップデートさせていくことによって完全自動運転へ近づいていく・・。

マスクはこうした方向に舵を切ったのでした。

もう一つ。

マスクの凄いところは、このソフトウェア進化の手法も、根本から変えたことにあります。

これまでは『赤信号なら止まれ』、『青信号なら進め』といった具合に、ルールを定め、それをコンピューターに学習させてきました。

しかしマスクは、そうしたルールベースではなく、実際に人間がどう運転しているのかを、ニューラルネットワークのシステムで学習させることにしたのです。

それには膨大な量のデータと、これを学習、処理する高性能コンピューターが必要になります。

そこで登場したのが、スーパーコンピューターのDojo(道場)なのです。

道場はスーパーコンピューターのランキングで一時、世界5位にランクインしたほどの優れもの。

さらに学習(鍛錬)に必要なデータ量ですが、これもグーグルのように自社開発のクルマをマウンテンビュー(Mountain View、シリコンバレーの町)で走らせてデータを集める、といった作業はもはや必要ありません。

と言うのも、テスラ車の累積生産台数はすでに4.5百万台(23年7月)を超えています。

少なく見積もっても2百万台から刻一刻のデータが集まると言われており、膨大なデータ量がDojoの下に集められてきています。

これを超高性能のスーパーコンピューターで学習させ、人間の脳に近づける(あるいは超える)作業が実際に始まっているのです。

Dojoには当初NVIDIAの高性能チップA-100が使われていましたが、マスクはこれでは十分ではないとし、自社で高性能のAIチップ『D1』を開発。これは、TSMC が製造を受託し、7ナノの技術で製品化しています。

D1チップの導入によって、DojoはそれまでNVIDIA社製で1か月かかった訓練を1日で終わらせることが出来るようになったと言います。 

AIの時代は、『Winner takes all 』(勝ったものが独占できる)の時代。

モルガンスタンレーのアナリストはDojo(道場)だけで75兆円の価値があると評価。

つまりトヨタの時価総額の1.7倍の価値があると試算したのです。

いずれDojoが世界の自動車市場を制覇する時代が来るのか、それとも幻(まぼろし)に終わるのか。

あと数年するとその結末が視野に入ってくるかもしれません。

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