最近ではGAFAという言葉があまり聞かれなくなりました。
スコット・ギャロウェイ教授の『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』が日本でも翻訳出版されたのは、2018年。
この4社の動向から時代を読み解けたのは、せいぜい2020年代初めまでだったように思います。
2022年にChatGPTが一般公開されると、人々は「AIが将来の我々の生活を一変するのではないか」と考えるようになりました。
そして株式市場もAIの視点から企業を評価するようになります。
それはあたかも産業革命の時代に、どの馬車や馬具が有能かを競うよりも、来るべき鉄道や自動車の時代に活躍することになる企業を評価するような動きでした。
すでに時価総額のランキングを見ると、GAFAの一員ではなく、エヌビディアが世界第1位になっており、ブロードコムも第7位にまで順位を上げてきています。
またGAFA4社の間でも、AIに対してどう取り組んでいるか、AI時代にどう力を発揮できるかといった視点で、評価されるようになっているように思います。
その結果、過去5年間の株価推移を見ると、
グーグル 3.3倍
メタ 2.7倍
アップル 2.1倍
アマゾン 1.3倍
(注:S&P 500 1.9倍)
と、かなりの優劣の差が出てきてしまいました(上記は2020年10月20日の株価と現在の株価との比較です)。
この数字の意味を探る前に、アマゾンという会社の価値はどこから来るのかを見てみましょう。
ネット販売やプライムビデオで知られるアマゾンですが、企業価値という視点で見ると、クラウド事業のAWSが、会社全体のOperating Income の約6割(25年Q1、Q2の合計値をベースに算出)をあげています(『こちら』)。
Free Cash Flow(FCF)のセグメント情報は公表されていませんが、アナリストの分析などから、AWSが会社全体のFCFの70~90%を占めると見なされています。
つまりアマゾンの企業価値は「AWSから来る」と言っても過言ではないような状況にあります。
そのクラウド事業(AWS)ですが、AWSはいまなお世界最大のシェア(推定31%)を誇るとはいえ、下図が示すように、背後から、マイクロソフト(Azure)やグーグルがひたひたと追い上げてきています(なお下図はSynergy Research Group社のサイトから転載したものです)。

アマゾンの株価が市場平均以下のパフォーマンスしかあげてこられなかったのは、この辺に要因があるものと考えられます。
そしてその背景にあるのが、AIインフラとしてのクラウド事業です。
たとえばマイクロソフトはオープンAIと提携し、『Azure OpenAI Service』というクラウドベースのAIサービスを提供することで、クラウド業界におけるシェアを着実に拡大してきています。
一方のAWSは、以前はどちらかというと守勢に回っていたと見る向きが多かったように思います(それが株価にも反映されていました)。
しかしながら、近年はAIインフラ面で攻勢を強めています。
AWSは「AIの土台となるクラウドサービス」である AWS Bedrock を通じて、Anthropic Claude、Meta Llama、Stability AI など、多様なファウンデーションモデルを提供しています。
顧客企業の開発者は、BedrockのAPI(AIとやり取りするための窓口)を利用することで、自社のアプリやシステムにチャット、検索、要約、画像生成などのAI機能を簡単に組み込むことができます。
また、AWSは自社開発チップ『Trainium』シリーズを展開しており、特に最新の Trainium 2 は、エヌビディアのハイエンドGPUに比べて単体性能では劣る面もあるものの、トレーニング時の電力効率やトータルコストで優位性を狙っています。
最近ではAnthropicが、AWSの自社開発チップ(Trainium 2)を用いた超大規模トレーニングクラスタの稼働を開始したとも伝えられており、AIインフラとしてのクラウド事業において、最終的に誰が勝者となるかは、まだ未知数のように思います。