使命感
このところ立て続けにマスコミ関係者の方たちからホリエモン事件の感想を求められています。
私は、モルガンとかメリルとか投資銀行時代の教え(投資銀行は黒子に徹しなければいけない)を守り、
「私の名前を出さない」という了解が得られる場合には、マスコミの方々にお会いしたり、電話での取材にお答えして、私が言いたいことをお話しています。
以前にもこのブログで書きましたが(2005年10月26日)、経営者は本来自らの使命を持たなくてはなりません。それは「価値を創造する」ということです。
企業は価値ある「もの」や「サービス」を提供するからこそ、消費者や顧客がその「もの」や「サービス」を購入する。そして、だからこそ、企業は利益をあげることが出来る。
投資家はそういった企業にお金を投資して、投資した先の企業がより一層の利益を上げるような企業体になっていくことによって(その企業自身の企業価値が高まることにより)リターンを得る。
全てはそうした「価値創造」のメカニズムのもとに回っています。
「何が価値あるものやサービスなのか」―このことを決めるのは市場(顧客・消費者)です。
IBMのガースナー前会長は、半導体の性能が著しく向上し、その結果、PCがかつての大型コンピューターに匹敵するような能力を持つようになるのを見て、
従来のメインフレーム(汎用大型コンピューター)中心のハードを売り続けることだけでは、IBMとして十分な価値を提供し続けられないと考えました。
ハードからソフトへ、IBMの事業内容を強引にシフトさせ、9年間の在任期間中に、IBMの企業価値を10倍に高めました。
ビル・ゲイツは5兆円という個人資産を有しながらも、マイクロソフトは引き続き貪欲に「価値の創造」に邁進しています。
ところで、このことと関連するのですが、日本のある財界人のAさんは、ビル・ゲイツは何をやっているか分からないと言いました。
「あれだけの金持ちになったのだから、さらに貪欲に競合他社を叩きのめすような戦い方をしなくても良いのではないか。
第一に、ビル・ゲイツはああやって稼いだ金を殆ど寄付してしまったというではないか。いったい何をしたいのか全く分からない。」と言います。
ビル・ゲイツが自らの目標を「金持ちになること」においていたのなら、「ビル・ゲイツは何をやっているかわからない」というAさんの疑問は理解できます。
ビル・ゲイツは「価値あるものやサービスを提供し続けたい」と考え、彼が作ったマイクロソフトという企業こそがこれをもっとも効率的になしうるし、またそうでなくてはならないと信じているのだと思います。
ホリエモンにしても、先ほどの財界人のAさんにしても、あるいは防衛施設庁関係者を天下りとして受け入れてきた企業経営者にしても、使命感を持たない(あるいは使命感を履き違えた)経営者がいるのは残念なこどです。
使命感が欠如しているのは一部の経営者ばかりではありません。
論文を捏造したり、テレビにばっかり出ていて肝心の授業は休講気味の(一部の)大学教授の方々。
人の命を救うという本来の使命を忘れ権力闘争に忙しい(これまた一部の)病院や大学の医局の方々。
マスコミの方々も昔はもう少し「気骨」のあるジャーナリスト魂を感じさせる方々が多かったように感じます。
二極化社会どころか、誰もが使命感を忘れ、小金持ちを目指す「金太郎飴のような社会」になってしまったらと時折心配になることもあります。
と、ここまで書いたところで、わが身はどうかと気になります。
「自分も使命感を失ってはいけない」― そう思って、このブログを最初にスタートさせる時に書いた「原点」と題する記事をもう一度読み返しました。
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