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2006年5月 7日 (日)

ランダム・ウォーク(その2)

現在、書店で売られている株式投資の本には、ほとんどの場合、チャート分析(テクニカル分析)のことが記されています。

チャート分析は市場参加者の心理に着目するものです。

たとえば、『抵抗線』とか『支持線』という言葉をよく耳にしますよね。

これには、どういうロジックがあるのでしょうか。

投資家には、『自分が株式を購入した時の価格を覚えているものである』 という一種の習性があります。

おそらく実際に株式を買って持っている皆さんも、その株式を幾らで買ったものか、覚えておられる方が多いと思います。

具体的に説明してみましょう。

携帯サイトのサイバードの株価。

去年の8月には、36万円をつけていました。

その後、ずっと下がりぱなしで、現在は当時の半額以下の17万円です。

Photo

さてサイバードの株を去年の8月に36万円で買った人は、『やれやれ、とんでもない株に手を出してしまった』と今では後悔していることと思います。

買ったとき以来ずっと下がりぱなしで、上がったとしても買ったときの値段に戻すことは決して無かった訳ですから。

そして、この株がもしもこれから1ヶ月後の6月に、36万円に戻したとしたら、『こんな株はもう懲り懲りだ。今ならやっと損得無しだ。この段階で売ってしまおう』 と思って売ってしまうかもしれません。

これがテクニカル・アナリストが言う抵抗線です。

すなわちこれから先、36万円まで株価が上がったとして、その水準が一種の『抵抗』として作用し、(売る人が増えるので)株価は再び下落に転じる可能性が高くなるという考えです。

逆に、抵抗線を突き抜けることが出来れば、株価は、その後は、かなりの水準まで、どんどん上がっていくという考え方です。

テクニカル分析には、この『抵抗線』の他にも、『支持線』(上がった株を買い損なった投資家の心理に着目します)とか、『ヘッド・アンド・ショルダー』といった、いろいろな考え・ルールがありますが、一つだけ共通点があります。

それは、ある時点までの株価のパターンに着目して、その結果、株価がどう動くかを予想するというものであるという点です。

要は、「ある時点までの株価の推移のパターンがAとします。すると、そこから先の株価はBのように動く」 と予想するわけです。

A→Bです。

ということは、本当にA→Bと、予想通りになったかどうか、過去の様々な株価のパターンを使いながら、検証することが可能です。

テクニカル分析が学者の支持を受けていないのは、その検証の結果、実は、過去の株価はテクニカル・アナリストの言うとおりになっていないからです。

(より厳密には、取引に伴って発生する手数料を勘案すると、テクニカル手法によって取引した場合と、バイ・アンド・ホールド(Buy and hold)戦略(買ってそのまま持っている)を採用した場合とでは、前者の方が有利だとする結論は、どのような実験・検証結果からも得られていません。)

この辺についてはアメリカの学者や研究者は徹底していますから、様々な形での実験・検証が行われてきています。

例えば、ある研究では、ニューヨーク証券取引所で取引されている548銘柄について、テクニカル・アナリストのいう、幾つかのチャート・パターンを、過去の株価推移のパターンから見つけ出すようコンピューターに指示します。

そして、テクニカル・アナリストの言うとおりに従って売り買いをした場合のパフォーマンスと、実際の市場全体のパフォーマンスを比較するのです。

詳しくは、前回のブログ、『ランダム・ウォーク(その1) 』で紹介した『ウォール街のランダム・ウォーカー』という本に載っていますので、この本を是非ご覧頂きたいのですが、どのような検証結果も、テクニカル・アナリシスの有効性を証明することは出来ませんでした。

著者のマルキール教授は次のように述べています。

『実際、・・テクニカル手法を採用して成功したという投資家は、結構多いに違いない。しかし、・・単なる「バイ・アンド・ホールド」戦略、つまりある銘柄ないし銘柄群を買い、長期間保有することが、少なくともテクニカル戦略と同じくらい、ないしはそれ以上に儲かる・・』

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