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2006年5月 9日 (火)

ランダム・ウォーク(その3)

ランダム・ウォーク(その1)の最後に提示した幾つかの疑問点を、今日から一つずつ検討していきましょう。

ところで、『ウォール街のランダム・ウォーカー』の著者、バートン・マルキール教授は今年74歳。

プリンストン大学の教授を務めた後、同大学経済学部長。

米国大統領経済諮問委員会委員を経て、エール大学ビジネス・スクール学部長、アメリカン証券取引所理事等を歴任。

現在、エール大学経済学部教授。

世界的投信会社バンガード・グループの社外取締役も務めています。

マルキール教授の名を世界的に高めたのは33年前に出版した本著で、『チンパンジーがウォールストリート・ジャーナルの相場欄にダーツを投げて選んだ銘柄からなるポートフォリオでも、プロのファンドマネージャーと同じような成果を上げることが出来る』と主張したからにほかなりません。

以来、33年間、何人もの学者やウォール街の実務家たち(主として投資銀行に勤める人たちです)が、『我々はサルよりは賢い』ことを示そうとしました。

しかしながら、残念なことに、マルキール教授の主張を突き崩すには至っていません。

さて第1の疑問点:我々は本当にサルと同等か、それ以下なのでしょうか?

サルでもプロのファンド・マネージャーたちと同じようなパフォーマンス(運用成績)を得られるのは、幾つもの実証研究が示すところです。

これは、

マーケットには多くのプロたちがいて、少しでも高いリターンを上げようと努力している。

それゆえ、マーケットが効率的になっていて、結果としてサルがダーツを投げることによって得られるポートフォリオでも、同じような(リスクに見合った)高いパフォーマンスを上げることが出来る。

ということです。

すなわち、努力する人間たちがいるから、サルでも同じようなパフォーマンスを上げることが出来るのです。

(そう考えると少し安心します。)

ここで、アメリカで金融の授業を受けたことがある人なら誰でもおそらくは聞いたことのあるジョークを一つ。(マルキール教授の本にも紹介されています。)

100ドル札が道に落ちていました。学生が喜んでそれを拾おうとすると、ファイナンス(金融論)の教授がこう言います。

『よしたまえ。もしそれが本物のお札なら、今まで放置されているはずがないだろう。』

つね日頃、『マーケットは効率的である』との幾つもの研究結果を読まされてきた学生にとっては、非常に笑えるジョークです。

さて、マルキール教授が言っているのは、

プロのファンド・マネージャーたちに任せることによる手数料(投資信託の管理手数料)やファンド・マネージャーたちが銘柄を入れ替えることによって発生する取引コスト(証券会社に払うコスト)などを、

『控除した後』のベースでの、『比較の話』です。

すなわち、これらの手数料や取引コストを『控除した後』のベースで比較すると、

(プロが運用する)ファンド(投資信託など)の『平均的な』パフォーマンスは、単純なインデックス運用に比べて、『劣後する』と言っているのです。

こうした手数料や取引コストを払う 『前のベース』では、

実はサルよりもプロたちのパフォーマンスの方が、(少しだけ)優れているのかもしれません。

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