円キャリートレード(2)
昨日の復習です。
『円キャリートレード』などと言うと難しく聞こえますが、何のことはない。
銀行の窓口で盛んに勧めてくる外貨預金や外債投資、外貨建て投資信託のことだと考えてみてください。
銀行の窓口では、よくこんな声が聞こえてきます。
『そんなに儲かるなら少しはオーストラリア・ドルにしてみるか。』
『私は、ヨーロッパに旅行したいから、ユーロがいいわ。』
カウンターの後ろでは、銀行員がにこにこ顔です(『外貨預金獲得目標達成まであと一歩だ!』と内心嬉しくてたまらないようです。)
このように、敢えて為替リスクを取ってまでして、金利の高い通貨で運用することを、『キャリートレード』と言うことを、昨日の記事で書きました。
例えば金利の低い『円』で借り入れ、調達した資金を、
外国為替市場でUS$や豪$など金利の高い『他の通貨』に交換し、
その高金利で運用して金利差収入を狙う取引のことです。
教科書的には、市場では裁定機能が働き、
金利差で儲けても、為替で損失を被る可能性が高くなるのですが、
ここ6~7年の円の為替レートを見る限り、こういった裁定機能が余り働いてきていません。
円キャリートレードの最大の問題は、実は、この点にあるように思えます。
なぜ裁定機能が上手く働いてこなかったのでしょうか。
今後はどうなるのでしょうか。
JPモルガン証券の菅野チーフエコノミストとJPモルガンチェース銀行の佐々木チーフ為替ストラジストは、
『円キャリー取引の増加を通じ、円安の自己増殖(円キャリーバブル)が始まっている』
と見ています(日本経済新聞2006年12月1日)。
確かに日本の人たちが、銀行に勧められるまま、どんどん豪ドルや米ドルの預金を開始すれば、円を売って、豪ドルや米ドルを買うことになる訳ですから、このこと自体が、円安を助長します。
もっとも、この種の取引は、何れ『アンワインド(unwind)』が起きます。
すなわち、普通の日本人はずっと豪ドル預金をし続けるのではなく、何れかの時点になれば、豪ドルを円に戻して、利益を確定させます。
しかし、アンワインドされる以上の規模やペースで、新規に豪ドル預金をする人がどんどんと増えていけば、その過程では、円安が是正されることはなく、逆に、菅野さんや佐々木さんが言う『円安の自己増殖』が起きてしまうことになります。
いうことは、煎じ詰めれば、問題の本質は、
この種の円キャリートレードの増加が、それ自体、市場にインパクトを持つような、『無視しえない大きさ』のものなのかという点に帰結していきそうです。
次回はこの辺を見ていくことにしましょう。
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コメント
円キャリートレードのアンワインドのインパクトは大きそうで、心配になります。何がトリガーとなるのでしょうね?外貨預金を解約してまで投資したい、と思わせるものが出てこない限り、アンワインドは起こらないのだと思いますが、それは株高でしょうか?金利高でしょうか?金利はファンダメンタルにも政策的にも上昇しないように思えるので、やはり株高でしょうか?日経平均が2万円くらいまで上昇すると、資金シフトが起こったりするのでしょうかね?
投稿: 名無し | 2007年1月 4日 (木) 14時53分