不都合なシナリオ (円キャリートレード ④)
昨日の日経平均は為替の要因などにより、262円安となりました。
ところで、今から一年前、2006年が始まった時に、その年に起きることとなった、ホリエモンや村上世彰氏の逮捕を、前もって予測できた人は、余りいなかったに違いありません。
過去3回にわたって掲載してきた『円キャリートレード』の最終回として、2つのシナリオを想定してみました。
どちらもこうなって欲しくない(そして、多分こうはならない)という、『不都合な真実』(12月31日付けの私のブログを参照)ならぬ、『不都合なシナリオ』です。
(1)シナリオ①:円キャリーバブルの崩壊
2007年4月 (いまから3~4ヵ月後)、ユーロなどに対する米ドルの一層の低落を回避する目的で、主要国が極秘裏に会合を持つ。
円キャリーについても、討議が行われ、これを機に、円キャリーバブルは崩壊への道を辿る。
円キャリーバブルの影響は予想されていたよりも実は大きく、その結果、この崩壊も経済に対して大きなインパクトをもたらすこととなった。
1カ月間で、円は対US$でも、120円から一気に98円まで高騰。
3月に9200円をつけたトヨタの株価は急激な円高の影響で5月の連休明けには4500円まで下落。
輸出関連株急落の影響を受け、日経平均も12,000円台まで低落。
景気の悪化は特に地方経済に深刻な影響を及ぼし、破綻が懸念される地方銀行が出現してくる。
(2)シナリオ②:円キャリーの継続・拡張
米ドルと円だけが他の通貨に比べて安いという状況が継続。
日本人旅行客は、ヨーロッパに旅行しても、シンガポールや香港に旅しても、現地の物価が恐ろしく高く感じられ、まともな買い物が出来ない。
一方、中国や他のアジア諸国、欧州からは、日本の表参道や銀座に買い物客が押し寄せるようになる。
ヨーロッパ企業や中国企業による日本企業の買収が活発化。
ヨーロッパでは、日本製品の価格安が政治問題化し、日本製品に対して一定の輸入枠を導入する動きが出てくる。
先進国首脳が集まり、日銀の低金利政策が、世界中の流動性を供給している現状について討議が行われ始めた。
しかし、団塊世代を中心に、グロスオブなどの外貨建て債券を運用対象とする投信はますます人気化し、円キャリーはますます膨らんでいく。
円を売って外貨に換えて運用した人たちだけが、年50%を超えるリターンを上げ、地道に円預金をしている人の投資利回りは1%以下という、不自然な状況が継続する。
ますます多くの日本人が円での運用に対して、馬鹿らしく思うようになり、外債投資、外貨建て投信への投資が活発化していく。
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コメント
なんとなくシナリオ1よりも2の方がありそうな気はします。
そこまで極端なのはなくても、外貨運用者だけが得を見る、というオチはありそうですね。
投稿: てらぽん | 2007年1月 8日 (月) 21時26分
岩崎先生、3年間お邪魔させていただいておりましたが、
はじめて投稿させていただきます。
2008年11月現在、まさに1のシナリオの状況が起こったわけですが、
これは始まりに過ぎないのでしょうか。。。
先進国はこのようなことの繰り返しをしていては、いずれ国力は衰退してしまうのではないでしょうか
投稿: エンジニア | 2008年11月18日 (火) 09時15分
エンジニア様
シナリオ1もサブプライムの問題がここまでひどくなるとは予想していなかったわけで、今後どうなるかは非常に難しい問題だと思います。
個人的にはもっと事態が悪化する可能性が2割くらいはあると覚悟しています。
25日に発売予定の『リーマン恐慌』にいろいろ書きました。
投稿: 岩崎 | 2008年11月18日 (火) 15時31分