イービットだぁ~
このブログでは、昨年から、日産自動車について、やや厳しめに書いてきています(2006年7月21日付けブログ、7月29日付けブログなど参照)。
今月に入って(2月2日)、日産自動車が今年度業績見通しを下方修正したことを受け、同社株価は下落基調に推移してきています。
もっとも私には、日産の問題は、マスコミ各社が報道している『営業利益見通しの下方修正(8800億円→7750億円)』だけではないように思えます。
そもそも営業利益の額は、設備投資を控えることにより、減価償却費を減らせば、短期的には増加します。
会社四季報から、トヨタと日産の減価償却費と設備投資額の水準を拾ってみましょう。
- まずは減価償却費の水準。
トヨタ:減価償却費(売上高の4.2%)
日産:減価償却費(売上高の3.3%)
- 次に設備投資です。
トヨタ:設備投資額(売上高の7.3%)
日産:設備投資額(売上高の5.0%)
もしも日産自動車が営業利益の額に執着するあまり、必要な投資を怠っているとしたら、現在の決算数字は良くなっても、その『つけ』は、ボディーブローのようになって、将来にわたって効いてきます。
そもそも日産の『リバイバルプラン』とか、『日産180』、『バリューアップ』といった(営業利益率を中核とする)『目標』の設定自体が適切なものだったのでしょうか。
たとえば、日産のハイブリット車の開発状況はどうなんでしょうか。
2月12日の日経新聞は日系自動車各社のインドでの生産計画を報じていましたが、スズキ、ホンダ、トヨタに比し、日産は遅れをとっているのではないでしょうか。
投資銀行で企業価値を評価する時、EBITDAという数値をよく使います。
(注:欧米人は『イービットだぁ~』と発音します。)
Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization の略です。(詳しくは『こちら』をご覧下さい。)
会社が発表する営業利益や営業利益率の数字を鵜呑みにせず、時として、こうしたEBITDAのような数字を使って、同業他社比較を行ってみますと、その企業の実力がより一層的確に見えてきます。
もしも将来の成長を犠牲にしてまで、現時点で良い数値を上げようとしている企業経営者がいるとしたら、私はそういった経営者が経営している会社には投資をしたくありません。
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コメント
岩崎先生、こんばんわ。
EBITDAは、バリュエーションを解説した本に、紹介されているようですね。
EBITDAで、(僕がかつて株を保有していた)国内代表ハイテク企業を分析すると、深刻な結果が出そうです。
四季報CD-ROMのスクリーニングで、EBITDAが使えるようなので、今度の四季報は、CD-ROM版を購入した方が良いのかな?などと考えています。
企業の将来性を計る指標は、研究開発費が重要かな?と思っていましたが、このような分析方法が有るのですね。
ところで僕は、今年早々、風邪で体調を崩してしまい、それがキッカケとなって新たに製薬会社の株を保有しました。
ダーツ・サルのノリで買ったのが幸いしたのか、今日も株価は順調に上げていますが、企業分析を怠った点は、反省しております。
投稿: まさくん | 2007年2月15日 (木) 21時25分
いつも楽しみに拝見しています。
日産ですが、ゴーン氏就任当初は
「元気を出す為に、まずは利益だそうよ」から始まって、実際に(償却方法の変更したけど)達成して、「やればできるじゃん」という気にはなったんだと思います。
だけど、その後がいけない。
投資を減らした結果、新分野での出遅れは否めないですね。
実務上はFCFにしても利益から計算スタートする間接法がメインですし、管理上も計算上も営業利益ってすべての基本だからものすごく大事だけど、その中身はもっと大事ですね。
投稿: でんたく | 2007年2月18日 (日) 00時44分