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2007年5月31日 (木)

マイノリティ出資

先日、ドコモは、ファミリーマートにマイナー(約3%)出資すると発表しました。

狙いは、業務面での提携強化にあるようで、ドコモの提供する「おサイフケータイ」やケータイクレジット「iD」を、ファミリーマート(全国7000店舗)で利用しやすくするところにあるのでしょう。

ドコモはこの種のマイナー出資をこれまでにも積極的に行なってきておりますが、果たして、この出資にどれだけの意味があるのでしょうか。

もちろんドコモのような会社ですから、このマイナー出資に際しても、おそらくは投資銀行をアドバイザーにつけて理論武装をきちんと固めているのだと思います。

更に付け加えますと、海外でも、この種のことは行なわれています。すなわち、何らかの資本関係を構築して、業務上の提携をより強固なものに固めようする(cement するいう表現をよく使います)試みです。

にもかかわらず、私は次のような疑問を感じざるを得ません。

①ドコモとファミリーマートとの業務提携が本当に両社の為に望ましいものなら、業務提携だけで足りるはず。(セメントは必要ありません。結び付こうとする力が十分強いですから。)

②『ドコモがファミマの株式3%を買って、何とか提携できる程度』 の関係というのであれば、そもそもドコモがファミマにオファーしている業務上の提携内容が今ひとつ魅力に乏しいものなのでしょう。

たとえは悪いですが、持参金を持って、漸く結婚してもらえる「性格の悪い金持ち女性」と、「持参金目当てに結婚する男性」とのカップルのように思えます。(持参金付きで漸く結婚出来たからといって本当に幸せになれるのでしょうか。)

③ファミマとしても、ドコモは3%の株式を持つ株主に過ぎず、ファミマの経営者は他の97%の株主のことを考えて経営せざるを得ない。

例えば、au と提携することがファミマの利益になるのにもかかわらず、ドコモに 3%持たれているがゆえに au とは提携できないという判断は本来できない筈。

だとすればドコモによるマイナー出資にどの程度の意味があるのでしょうか。

④ドコモの株主としての立場からしても、移動体通信の事業を行なう会社の株式を買ったのであって、コンビニ・チェーン店のリスクなど取りたくない。

余分の金があれば、本業に投資するか、本業での投資対象がもはや無くなってきているのであれば自己株消却をするとか、増配をして、余った金は株式市場に返して欲しい。

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2007年5月29日 (火)

時計の会社

他の時計の会社はいつ頃設立されたのかなと思って調べてみました。

Patek Philippe は、1839年に二人の移民(ポーランドから)によって設立されたとのことです。Jaeger-LeCoultre に遅れること6年ですね。 Rolex の設立は 1905年。

日本の服部時計店の設立は、1881年。

創業者の服部金太郎さんは、

『雨が降ってお客が来なくても、時計屋は建物の中で時計の修理という仕事が出来る。だから時計屋というのはいいんだ。』

と言ったと伝えられているそうです。

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2007年5月28日 (月)

ブランドの意味するところ

先日、ある外資系金融機関に招待されて、Jaeger-LeCoultre というスイスの時計メーカーの展示会に参加しました。

機械式時計については、私は、これまであまり多くの知識を持ち合わせていなかったのですが、非常に奥が深いのに驚かされます。

帰りがけにお土産として頂いた会社紹介のパンフレット(と言っても 240 ページもありました!)を見ていましたら、会社が設立されたのが、1833年。

しかも、そもそもの発祥は、1559年に宗教戦争を逃れたフランスのユグノー、ピエール・ルクルトがスイスのジュウ渓谷に移り住んだところまで遡るとあります。

昔からの原点を守り、機械式時計を究めてきた時計メーカー(展示会では世界で5つしかないという時計も展示されていました)と、クォーツ(水晶発振)という科学技術の粋を究めた日本のメーカー。

何を変えて、何を変えずに守るのか。

いろいろと難しいことを考えさせられて展示会場を後にしました。

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2007年5月24日 (木)

変わるビジネス・スクール

スタンフォード大学の Donor Appreciation Event では、学長の Robert Joss とも話をする機会に恵まれました。

『幸いにも我々のビジネス・スクールは、全米でナンバーワンの評価を受けている。

それは、我々が過去を否定して変わることを恐れなかったからだ。

今のビジネス・スクールは、あなたが通っていた当時とかなり違った内容になっている。

そして、これからのビジネス・スクールはもっと変わったものになる。

一言で言うと、個人の学生のニーズに合った、テイラー・メイド的なものに変えていこうという試みだ。

例えば入学してくる学生の中には既に会計事務所でや投資銀行で働いた経験のある学生もいる。

そうした学生に対して会計学の基礎を教える意味はなく、Advanced Accounting のコースからスタートさせるべきだ。

カリキュラムをテイラー・メイド的なものに変えれば、一つのクラスのサイズは少人数になり、学校側としてのコスト的な負担は増すが、我々としては、より良い教育を提供しようと変わり続けることこそが、ナンバーワンの地位を維持することにつながるものだと考えている。』

ところで Joss 学長は、スタンフォード大学のビジネス・スクールを3回卒業しています。(スローン、MBA、Ph.Dの各コース)。

私に向かって、

「あなたは何年の卒業か」

と聞くので

「1980年です」

と答えました。

「80年は、いい年度だったよ」と Joss 学長は懐かしそうな顔で答えていました。

80年当時の学長は Joss 氏ではありませんでしたが、長い間、スタンフォードのビジネス・スクールに係わっていて各卒業年度の様子が頭に浮かぶのでしょう。

過去を懐かしむだけでなく、常に変わり続けようと努力する。

競争の中でナンバーワンを維持して行こうとする組織のリーダーの気概のようなものを感じました。

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2007年5月21日 (月)

Market without religion

みなさん、今晩は。

今日、夕方、米国から帰ってきました。

インターネットの時代で、日本にいても、世界中どこの情報にもアクセスすることが可能ですが、やはり直接、人と会って話を交わすことに優るものはありません。

ということで、今回の出張では、出来るだけ、いろいろな方たちと会って意見を交換するようにしました。

まず、スタンフォード大学ビジネススクールの Donor Appreciation Event というのに招かれて参加しましたが、この会の key-note speaker である Hayagreeva Rao 教授が、パーティーの席で私に話しかけてきました。

『Infinity Corporation の業況は最近どんな感じですか。』

Donor Appreciation Event には、世界中から約100人の同窓生たちが招かれていましたが、一人一人がどこの会社の人なのか、恐らく教授は事前にリストを事務局から渡されていたのだと思います。

とはいえ、私の顔を見て、(リストのメンバー表を思い出して)『Infinity Corporation は・・・』と、教授の方から話しかけてくるあたりは、『さすが』としか言いようがありません。(教授とはこの時が初対面でしたので、私はびっくりしました。)

Rao 教授は、Organizational Behavior と、Human Resources の権威ですが、教授が『4月に中国に行ってきた』というので、最近の中国マーケットの動向について話が及びました。

『中国経済の成長ぶりには、まさに目をみはるものがある。』

との教授のコメントに対して、私は、

『日本では中国市場が過熱していると心配する向きもあるが・・・』

と質問してみました。

これに対する教授の答えは以下のようなものでした。

『私は中国の専門家でもないし、マーケットの専門家でもないので詳しいことは分からない。中国の驚異的な成長は素晴らしいものだ。

しかし市場主義は万全ではなく、市場への参加者にはモラルが求められる。欧米では宗教がはたす役割が大きいが、宗教の無い市場(Market without religion)というのは、いったいどうなるのだろうかと疑問に思う。』

もちろん中国の方の多くには仏教や儒教などの教えが根付いているのでしょうが、(そして、おそらくはインド生れの Rao 教授は、当然そのことを知った上での、日本人の私への発言なのでしょうが)、教授が懸念するところも、何となく分かるような気がしました。

 

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2007年5月15日 (火)

ユビキタス時代の覇者は?

『スーツの内ポケットに iPod と ケータイ』 という時代は過去のものになりつつあります。

『iPod は iPhone へ』と、そして他方 『ケータイは iPod の機能を取り入れよう』 と、両者は、それぞれ両サイドからアプローチを進めています。

しばらくすれば、進化したケータイなり iPod で、video-on-deman 形式のようなやり方で、好きなハリウッドの映画を見るのが一般的になっていくでしょう。(一部については既に始まっていますね。)

ケータイや iPod (のメモリ末端など)を、テレビやスピーカーに差し込めば、大画面や音響効果の優れた環境で、ケータイや iPod に取り込んだ映画や音楽を楽しむことも出来るようになるでしょう。(これも一部については既に始まっていますね。)

フェラーリのデザインをしていた奥山さんの著書 「フェラーリと鉄瓶」 には、現在カーデザイナーが開発に係っているクルマでダッシュボードにCDを搭載しているものは(奥山さんが係った50以上のプロジェクトでは)一つもないといった記述が出てきます。

代わりにMP3プレーヤーなどを接続する部分があるだけだとのことです。

「今度の 904i はすごい」といったキャッチ・コピーのように、今まではドコモなどの電話会社が中心となってケータイ機器の仕様を決めてきていますが、こういうビジネス・モデルはやがて終焉していくのではないかと思います。

消費者が一番気に入ったケータイ機器を買えば、その機器の画面上で、その時々に ドコモ、au、ソフトバンクなどの各電話会社を選ぶことが出来る ― 例えば A さんが この機器を使って B さんに電話をかける時は、ドコモの通信網を使い、C さんにかける時は au の通信ルートを使う。

その時に電話をする相手の状況によって最も安い料金の電波をケータイ機器の方で勝手に選んでくれる。

そんな時代が消費者には望ましいのではないでしょうか。

その時マーケットにいる企業で存在感を示しているのはどこでしょうか。

アップルでしょうか、それとも任天堂でしょうか。

ユビキタス時代の覇者は消費者であるべきだ。

この、『あたり前』 のことを忘れた企業は脱落していくでしょう。

ところで、私事で恐縮ですが、明日から(短い日程ですが)、米国シリコンバレーに行ってきます。

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2007年5月 8日 (火)

杞憂か (EPS Dilutive なディールをどう見るか)

杞憂とは、『昔、中国の杞の国の人が天地が崩れて落ちていくのを憂えた』という故事に基づく言葉です。

広辞苑によりますと、将来のことについてあれこれと無用の心配をすること。杞人の憂い。

三角合併について、いろいろ騒がれてきましたが、実は、杞憂と思われるものも少なくありません。

これを説明する前に、まず、『三角合併とは何ぞや?』について簡単に説明しましょう。

日本の英字新聞を読みますと、時折、 triangle mergers なる言葉が出てきますが、これだけでは通じにくいのでしょう。英字紙では、クォーテーション・マークを付けて、この言葉を紹介し、必ず次に説明書きを付けています。

確かに triangle mergers というのは、海外では余り使われていない言葉のように思えます。

ただここ一ヶ月くらいの間、日本のマスコミを随分と賑わせてきた言葉でした。

一言で言うと、三角合併とは、『海外企業との間で株式交換を使って合併すること』 を言います。

なぜ三角なのか?

たとえば、海外の会社が日本企業との間で合併する場合、海外の会社の在日子会社を(日本企業の)直接の合併相手とするため、この関係を絵に描くと三角形のように図示されるからのようです。

ところで、三角合併については 

①日本企業が吸収合併される場合、株主総会の同意が必要だとか

②Flow-back(海外企業の株をもらった日本企業の株主がこの海外企業の株をマーケットで売ること)の問題があるといった理由で、

『余り使われないだろう』とか、特に、『敵対的買収には使われないだろう』 といったことが言われています。(このほかに税の問題もよく取り上げられています。)

ただもっと基本的な問題として、例えば日本企業を米国企業が株式交換で買収する場合、

殆どのディールが、EPS Dilutive になってしまうといった、より本質的な問題があります。

(これは多くの場合、日本企業の一株当たりの収益性を株価で割ったもの(EPS÷Price per Share)が米国企業に比して小さいといった事情によります。)

やはり買収する方としては、EPS Accretive な方 (買収側のEPSを上昇させる企業買収)が、(買収する側の)株主に対して説得しやすいというわけです。

この辺は、ファイナンスをかじったことのない方には少し理解しづらいかもしれません(すみません)。

私が書いた『投資銀行』という本の90頁 『GEはなぜソニーを買収しないか』というタイトルの下に、この辺を論じていますので、ご関心のある方はご覧になってみて下さい。

いずれにしても三角合併を巡る議論で、外資がどんどん日本企業を買収するというのは、こと相手が米国企業の場合には、杞憂である可能性が高いと思います。

もっともこれが、時価総額が高くて、しかも、必ずしも米国的な考え方に捉われないインドや韓国をオリジンとする会社だったらどうでしょうか?

(『全てのM&Aは実は、経営者の野心から発していて、株価に関する理論は投資銀行が後付で行っているに過ぎない』と言った米国の投資銀行家がいました。)

(また現実の世界ではEPS Accretive なディールだけでなく、EPS Dilutive なディールも行われていますし、

『EPS Dilutive なディールを行った企業の方が、一般的に信じられている理論に反して、実は、後で株価を上げている』といった実証研究も米国では発表されています。)

更にまた、規模による利益の拡大の効果が、一時的な EPS のDilution を打ち消して、なおかつ余りあるメリット(EPS増の効果)があると見通せるとしたらどうでしょうか。

(昨晩のNHKスペシャル『敵対的買収を防げ。新日鉄トップの決断』をご覧になった方も多いかと思います。)

ちなみにArcelor Mittal の時価総額は今や約10兆円(新日鉄は6兆円)、サムスン電子の時価総額は約11兆円(日立3兆、ソニー6兆)です。

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2007年5月 5日 (土)

マイクロソフトがヤフーを買うかもしれない

マイクロソフトがヤフーを買うかもしれないというニュースで昨日の米国市場は上げています。詳しくは『こちら』。

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2007年5月 3日 (木)

プラダを着た悪魔

『 プラダを着た悪魔 』 (原題 『 The devil wears Prada 』 ) という映画。

この中で、メリル・ストリープが演じる辣腕編集長のミランダが、自分の (恐らくは2回目の) 離婚について

『これからゴシップ記事が書かれるんでしょうね』

とコメントした後、次のように発言します。

『Rupert Murdoch should cut me a check for all the papers I sell for him.』

(『新聞が売れるわ。マードックにギャラを請求すべきね。』)

Rupert Murdoch とは、もちろん実在の人物で、オーストラリア生れのメディア王として有名です。

News Corporation の会長兼CEOで、同社の29%をマードックが所有。

News Corporation は傘下に、20世紀FOX(映画)、Fox Broadcasting Company (テレビ)、New York Post (新聞) などのメディアを所有しています。

『 プラダを着た悪魔 』 は20世紀FOXの映画なので、脚本家はウィットたっぷりに、敢えて、自分が関係する映画会社の究極のボスの名前をここで出したのかもしれません。

さて、そのマードック氏が米国経済紙 Wall Street Journal を発行しているダウ・ジョーンズ社に買収の提案を行ったことから、全米は騒然としてきました。

ダウ・ジョーンズ社を実質的にコントロールしているBancroft 家はどう対応するのでしょうか。

ところで、マードック氏。オーストラリア人でしたが、1985年にアメリカ人になっています。

米国のテレビ局を所有出来るのは米国人に限るとの法規制の要求を満たす必要があったためです。

彼が実質所有する News Corporation 社も元々は、オーストラリアの会社でしたが、2004年11月に米国でre-incorporated されています。

5月1日の三角合併解禁を受け、日本では海外企業による日本企業の吸収合併のリスクが騒がれていますが、オーストラリア人だと思っていた人が、米国人になり、オーストラリア企業だと思っていた会社が米国企業になるという現実が、日本の外では起きています。

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