大株主が上場会社を支配することの問題
NECは子会社NECエレクトロニクスを上場させ、引き続き65%の株式を所有し続けています。
これに対し、NECエレクトロニクスの海外株主2社が、NECの持分割合を5割未満にするように要求したとの報道がなされています。
NECの側に立てば、『もともとNECが5割超の株式を持っているのを分かった上で、NECエレクトロニクスの株を買ったじゃないか。何を今さら・・』 ということなのでしょう。
しかし、海外株主の側に立てば、『上場した以上は、Public Company でしょう。少数株主の利益も考えて行動して下さい。本当にNECが5割超を持ったままで、少数株主の利益もきちんと考えてくれるフェアな経営が期待できるのですか』 ということになります。
こういった問題は、何も親子上場に限った問題ではありません。
東証第一部上場の保土谷化学工業の場合。
昨年3月の時点では、東ソー㈱が同社の株式24%を所有していました。
保土谷化学は、日本ポリウレタン工業の株式を65%所有していて、保土谷の企業価値のうちのかなりの部分を(保土谷の)連結子会社である日本ポリウレタン工業 (以下 “日ポリ” ) が占めていました。(日ポリは非上場です。)
要は、
東ソーは保土谷の24%を所有。 保土谷は日ポリの65%を所有。
という関係です。
さて昨年4月に何が起きたか。
東ソーは保土谷から日ポリの株を一部買取、一方、保土谷に対して第三者割当増資に応じる形で出資比率を増加させます。
詳しくは保土谷が発表した プレスリリース (←こちらをクリック) をご覧下さい。
その結果、こうなりました。
東ソーは保土谷の33.34%を所有。 保土谷は日ポリの48%を所有。(日ポリの52%は東ソーが保有。)
日ポリという価値あるものが、保土谷から東ソーに移転してしまった。少なくとも、株式市場はそう解釈したようで、それまでは600円台~800円台のレンジにあった保土谷の株価は以降300円台~400円台のレンジで推移するようになってしまいました。
過去2年間の保土谷の株価推移がこのことを如実に物語っています。
(機関投資家ではなくて)事業会社(この場合は東ソー)が大株主になっている会社の株を買う場合は、本当に少数株主の利益が守られることになるのか、投資家としてよく考えてから投資を決めることが必要です。
(いわんや親子上場における上場子会社の株式を購入する場合には、この種のリスクを見極めなくてはなりません。)
実は、私自身、そこまでは考えが及ばず、一昨年の5月に保土谷の株を買いました(購入株価550円)。その後、上図のとおり株価は一時 823円を付けたりしたのですが、昨年4月以降ずっと含み損を抱えたままの状態になっています。
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コメント
岩崎先生、こんばんわ。
含み損といえば、僕は危ういところだったのですが、GW前に全株を利確した日本板硝子がストップ安になり、住友白水会グループの企業でも、当てにはできないなあと思ったものです。
企業の包括している価値の一部が毀損したり、あるいは他に移転した場合は、容赦なく株価が下落することを、実感しました。
日本板硝子はいったんの利確後、買戻しの機会を伺っていたのですが、皮肉にも、僕の優柔不断な性格が、結果としては防波堤になりました。
ところで、今、僕は大手の製薬会社の株式を集めています。
集めている理由は、「1)不況に左右されにくい,2)高齢化社会において有望である、3)配当利回りが高い」というものです。
しかし、製薬会社には新薬の開発中止、あるいは、新薬の思いも寄らない副作用の発現というリスクも存在するので、製薬会社の株式の保有をメインに据えるのに躊躇っています。
そして、大して深い考えもなしに保有した、NECの対極の某コンピュータ会社の株価が上がったことには、複雑な気分です。
株価の予見は、本当に至難なことだと思いました。
投稿: まさくん | 2007年6月 6日 (水) 22時05分
岩崎先生、こんばんわ。
味の素がカルピスを完全子会社にすることが、正式に決定したようですね。
カルピスのHPを見ると、味の素はカルピスの乳酸菌・微生物活用技術の取り込みを狙っているようです。
乳酸飲料といえば、カルピスの他には、ヤクルトやカゴメ、そして日清ヨーク等が僕には馴染み深いです。
しかし、実際にスーパーに並んでいる乳酸菌飲料は、安値販売が常態化しているようです。
味の素がカルピスを完全子会社化するメリットは、さほど、大きいものではないのでは?と思いました。
僕は最近、配当が高くキャッシュが潤沢な製薬会社の株を集めています。
投稿: まさくん | 2007年6月11日 (月) 20時49分