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2007年8月28日 (火)

重粒子線セミナー

昨日は、重粒子線セミナーに行って来ました。

重粒子線とは、放射線の中でヘリウム原子よりも重いもののことを言います。

いま、これを利用したがん治療が、がんの革新的治療法と位置づけられて、注目されています。

従来の放射線治療とどう違うのでしょうか。

重粒子線は、体の奥深くにあるがん組織の部分で、その線量を、最大にすることが出来ます。

すなわち、がん部位だけに、集中してダメージを与えることが出来るわけです。

この為、従来の放射線治療に比べて、がんの手前や奥の正常組織への影響が少なくてすみます。

また一般の放射線が効かないとされていた骨肉種などのがんに対しても優れた効果を発揮します。

更に加えて、今までの放射線治療で使われていたX線や陽子線と比べて、がんを治す効果が高い為、照射回数も少なくて済みます(最短1日)。

まさに「切らずに」治すがん治療として注目されているのです。

問題は、重粒子線照射施設の建設コストがかかることです。

重粒子(炭素イオン)を最大で光の70%のスピードに加速して体の外から照射し、体の深部のがんを殺傷するというものですから、この為の線形加速器やシンクロトロン加速器は大きなものになり、千葉市にある放射線医学総合研究所の治療設備は120m×65mの巨大なものになっています(建設費330億円)。

(現在建設が進められている群馬大学のものは、60m×50mへと小型化が図られ、建設コストも125億円程度とのこと。)

重粒子線治療については日本が先駆的な地位にありましたが、最近では、ドイツのハイデルブルグ大学などでも「日本に追いつけ、追い越せ」と、官民一体となってこのプロジェクトを推進させているとのことです。

1981年以来、日本人の死因のトップを占めている「がん」。

がんとの戦いはこれからも続きます。

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2007年8月25日 (土)

職の蒸発 (サブプライムローン問題;その7)

サブプライム・ローン問題の結果、米国では『今月だけで25,000人以上の人の職が蒸発(evaporate)した』と報じられています(MarketWatch)。

サブプライムローンを扱う部門(ローンの供与、証券化、証券化された商品の販売など)の閉鎖などに伴う人員削減です。

下記の表はその内訳ですが、ベアスターンズ、リーマンブラザーズなどの投資銀行の名前も見受けられます。

問題が生じたらすぐに行動に移す速さが米国の企業にはあります。

人員削減の対象になった方やその家族にとっては辛いことでしょうが、そもそも人材の流動性が高い国ですので、日本とはやや事情が違うようには思いますが・・。

Mortgage jobs evaporate
Struggling lenders have cut more than 25,000
this month on top of thousands earlier this year.
Company Job cuts
American Home Mortgage 7,000
Accredited Home Lenders 1,600
Ameriquest 3,800
Bear Stearns 240
Capital One 3,900
Countrywide 500
Delta Financial 300
Fifth Third 650
First Magnus 5,950
First National Bank Holding Co. 351
HSBC 600
IndyMac 400
Lehman Bros. 1,200
Mortgage Lenders Network 900
Nationpoint 60
New Century 5,200
Novastar 500
ResCap (GMAC) 1,000
SunTrust 2,400
Washington Mutual 10,000
WMC Mortgage (GE) 771

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2007年8月23日 (木)

Quality of Life (生活の質)

外資(特に米系)の投資銀行では若い人は徹底的に働かされます。

これは日本だけでなく世界中どこのオフィスでも共通に見られる現象です。

『私はこのような生活には疑問を感じるようになりました。これからは、Quality of life (生活の質)を高めたいと思います。』

そう言って投資銀行を辞めて、日系の大手銀行・証券会社、あるいはバイ・サイドと称される機関投資家、ファンドなどに転職していく若い人たちを何人も見てきました。

当時の私は、『長い人生の中で、ある一時点は、Quality of life (生活の質)を忘れて、仕事に没頭した方が、その人の能力も急速に高まるし、自分が誇れるような良い仕事も出来る』などと言って慰留に努めましたが、殆どの場合、慰留には成功しませんでした。

ところで、話は変わりますが、多くの個人投資家にとって、『投資』というのは本業ではなく、会社勤めとか個人事業とか、別途本業を持った方が行っている場合が多いと思います。

そのような方たちにとっては、Quality of life (生活の質)を意識した上で、株式投資に従事した方が良いように思えます。

例えば、先週のような、Bloody Week (血まみれの、むごたらしい一週間)では、自分の持っている株式の値段が気になって、Quality of life (生活の質)が犠牲になってしまった方もおられるかもしれません。しかし、本業でもない株式投資によってQuality of life (生活の質)が翻弄されるというのは如何なものでしょうか。

プロのトレーダーやポジション・テイカーは、まさしくこれこそが本業なので、胃に穴が開くような思いをしながら、あれこれ考え、かつ実践して、先週のような一週間を過ごすのでしょうが、一般の方にとっては、

『株式投資を行うことが Quality of life (生活の質)の低下に繋がらないように留意する』

とのスタンスが重要かと思います。

ウォーレン・バフェットと親交の深いマクドナルド教授(スタンフォード大)がかつて我々学生に『読むように』と推薦してくれた本のタイトルは:

『Conservative investors sleep well.』

というものでした。

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2007年8月20日 (月)

ミュシャの逮捕

チェコの プラハに行っていて、今日、東京に戻りました。

チェコと言えば、画家のミュシャ、作家のカフカ、そして作曲家のスメタナなどが有名です。

ミュシャは1860年の生まれ。

Mucha004s_3

父親は裁判所用務員で、ミュシャは11歳の時に聖歌隊員になりますが、15歳の時に声変わりの為、声楽の勉強を諦めます。

そして故郷に戻り役場の書記となり、独学で素描の習作をするようになります。

17歳でプラハの造形美術アカデミーの入学試験を受けますが、失敗。

19歳でウィーンの舞台装飾会社のアシスタントの職を得ますが、22歳の時にウィーンのリング劇場が焼失しミュシャは解雇されてしまいます。

このように若い頃のミュシャは苦労を重ねますが、34歳の時に女優サラ・ベルナールが演じる『ジスモンダ』のポスターを描いてから有名になっていきます。

48歳の時にスメタナの『モルダウ』に深い感銘を受け、以降、自分の芸術をスラブの文化発展のために捧げようと決意します。

プラハ市庁舎の議会ホールの装飾(ミュシャ50歳)、プラハ聖ヴィタ大聖堂礼拝堂のステンドグラスのデザイン(ミュシャ71歳)などを手がけます。

1939年、ヒットラーがプラハを占領した時、ミュシャは真っ先に逮捕された人の一人でした。

これが原因となって同年7月、ミュシャは肺炎となって他界します。79歳でした。

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2007年8月 6日 (月)

原爆の日

今日は62回目の原爆の日でした。

私は大学で国際政治学を専攻していましたので、パワーポリティックスの考え方とか、ナショナル・インタレストの理論などを一通り学んだ身です。

そういった学問として学んだことを踏まえた上でも、なおかつ、戦争は避けなければなりませんし、特に核兵器の使用は根絶しなければならないと考えています。

その為に我々一人一人に出来ることは(たとえ限られていても)、何でも実行に移していくべきだと思います。

戦争の残虐さ、悲惨さから目を背けず、これを次の世代に伝えていくことも重要です。

先日、出版社に勤めるAさんとお会いしたときに渡されたのが、手塚治虫「戦争漫画」傑作選。新書版で漫画を出すというのは恐らくは初めての試みでしょう(文庫版は結構ポピュラーですよね。)

手塚治虫という天才の語り部によって、少しでも戦争の姿を伝えたい-この本の製作に係った方たちの心意気を感じました。

何よりも安倍晋三さんや漫画好きの麻生太郎さんに読んで頂きたいと思います。

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2007年8月 5日 (日)

最近の円高(円安修正)とサブプライムローン (サブプライムローン問題;その6)

The Street.comというサイトにLiz Rappaport氏が記事を載せています。

最近ニッケルや銅などの金属の価格が下落し、円は高くなった。

裏にサブプライムローンの問題があるというもの。

下記はそのエッセンス部分です。

"People are liquidating and prices are declining," notes T.J. Marta, fixed income strategist at RBC Capital Markets. Such behavior was visible not only perhaps in Friday's stock market decline, but in more than 2% drops that day in metals, like nickel and copper, that had been popular among speculators.

Also, the Japanese yen continues to appreciate as traders unwind the "carry trade," in which investors borrowed money in low-interest yen to invest in higher yielding currencies. But, as credit markets seize up, investors must liquidate positions to meet margin calls.

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2007年8月 4日 (土)

コンファランス・コール (サブプライムローン問題;その5)

最近では日本企業でも機関投資家やアナリストを相手に社長や財務担当役員が電話で業況などを説明するコンファランス・コールを行うところが出てきていますが、今回はこのコンファランス・コールでの話です。(サブ・プライム・ローン問題の続きです。)

先ほど、スタンダード・プアーズ社がベア・スターンズの社債格付け(シングルAプラス)を『安定』から『ネガティブ』に変えました(要は方向性としては、『シングルAプラス』から『シングルA』に落ちる可能性が増しましたよ、ということです。)

そこで、ベア・スターンズのCEO(Jimmy Cayne;73歳) と CFO (Sam Molinaro) がコンファランス・コールを今から数時間前に行いました。

CEO(会長)に向けられた投資家からの質問に途中からCEOが答えなくなったことから、CEOは最後まで電話口にいなかったのではないかなどとマーケットでは噂されています。

一方、CFO(財務担当役員)のMolinaroの方は、コンフェランス・コールで最後まで投資家やアナリストの質問に答えていました。

彼自身もマーケットで20年以上の経験があり、今回の危機に関して、1987年のブラック・マンデーや97年からのロシア・アジア危機、00年のITバブル崩壊に言及しながら下記のように述べたと報じられています。

“These times are pretty significant.” (これらの時は非常にひどかった)

“It's as bad as I've ever seen.”(今回もそれらと同じようにひどい)

モーゲッジ・ボンド(住宅ローンの証券化)のビジネスで活発だったベア・スターンズやリーマン・ブラザーズなどは今年の高値に比し、ここ数週間で36%前後株価を下げています(金曜日だけで6~7%の下落)。

こういった状況をどう捉えるか。そして今後は?

マーケットの見方としては、Molinaroの短いコメントに凝縮されているように思えます。(とりあえずは、ニューヨークでこれだけ下げたので、月曜日の東京も、週末余程のことが無い限り相当下がるんだと思います。)

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