重粒子線セミナー
昨日は、重粒子線セミナーに行って来ました。
重粒子線とは、放射線の中でヘリウム原子よりも重いもののことを言います。
いま、これを利用したがん治療が、がんの革新的治療法と位置づけられて、注目されています。
従来の放射線治療とどう違うのでしょうか。
重粒子線は、体の奥深くにあるがん組織の部分で、その線量を、最大にすることが出来ます。
すなわち、がん部位だけに、集中してダメージを与えることが出来るわけです。
この為、従来の放射線治療に比べて、がんの手前や奥の正常組織への影響が少なくてすみます。
また一般の放射線が効かないとされていた骨肉種などのがんに対しても優れた効果を発揮します。
更に加えて、今までの放射線治療で使われていたX線や陽子線と比べて、がんを治す効果が高い為、照射回数も少なくて済みます(最短1日)。
まさに「切らずに」治すがん治療として注目されているのです。
問題は、重粒子線照射施設の建設コストがかかることです。
重粒子(炭素イオン)を最大で光の70%のスピードに加速して体の外から照射し、体の深部のがんを殺傷するというものですから、この為の線形加速器やシンクロトロン加速器は大きなものになり、千葉市にある放射線医学総合研究所の治療設備は120m×65mの巨大なものになっています(建設費330億円)。
(現在建設が進められている群馬大学のものは、60m×50mへと小型化が図られ、建設コストも125億円程度とのこと。)
重粒子線治療については日本が先駆的な地位にありましたが、最近では、ドイツのハイデルブルグ大学などでも「日本に追いつけ、追い越せ」と、官民一体となってこのプロジェクトを推進させているとのことです。
1981年以来、日本人の死因のトップを占めている「がん」。
がんとの戦いはこれからも続きます。