サブプライムローンの問題について、このブログで最初に取り上げたのが6月26日。
『サブプライムローン問題の再燃』 という記事をこの時に載せました。
以降、折に触れてこの問題を取り上げてきましたが、今回で第8回目になります。
まずこの問題の大きさについて、だんだんと明らかになってきました。
・ 米国の住宅ローン残高 10兆ドル(1,100兆円)
うち サブプライム・ローン 1.3兆ドル(143兆円)
金融機関の予想損失額 (全体の12%)
1,500億ドル(16.5兆円)
(以上FRB バーナンキ議長)
・ 一方、IMFの方は、最大損失額をもう少し多く、1,700億ドル~2,000億ドルと予想しています。
・ 一部の業界関係者のブログによれば、この問題はサブプライム問題というよりも、CDOの問題なのだから最大で10,000億ドル(1兆ドル; 110兆円)の損失もありうるとの見方(憶測?)も示されています。
ここではもっとも楽観的な (というよりも固めの数字を議会で述べた?) FRBバーナンキの見方、最大損失額 1,500億ドル(16.5兆円)をベースに議論を進めましょう。
損失16.5兆円の内訳として既に各金融機関などがプレス・リリースで発表しているものを拾っていきます($1=110円で計算)。
① 欧米大手13社(判明分) 5.5兆円(全体の33%)
うち シティ 19,250億円(最大推定値)
メリル 8,690億円
モルスタ 5,060億円
UBS 4,150億円
ドイチェ 3,630億円
バンカメ 2,969億円
JPM 2,421億円
その他6社 8,830億円
② 日本(判明分) 3,408億円(全体の2%)
うち 野村 1,450億円
みずほ 500億円(推定;朝日新聞)
農中 400億円強
三井住友 320億円
三菱UFJ 250億円
あいおい 252億円
新生 118億円
滝野川信金 73億円
あおぞら 45億円
以上の数字は各種新聞報道やプレス・リーリスから拾ったものですが、損失が予想される16.5兆円のうち、上述の通り、とりあえず35%ほどが明らかになってきました。
問題は、残りの65%(金額にして10.7兆円)はどこにあるのかということです。
欧米大手13社の中でも、シティとメリルだけが損失額が大きく、他はこの2社に比べればさほどでもない。他社の中でも、シティやメリルに近い損失をこれから計上するところが出てくるのではないかという疑問です。
更にもう一つ。
CDO(collateralized debt obligation)となって証券化されたサブプライムローンを含む金融商品は、欧州や日本の機関投資家にも多く販売されたとの報道もあります。
とすると、日本の損失分が全体の2%というのは、少なすぎないかという疑問も湧いてきます。
上述の滝野川信金でさえ73億円の損失があるという。
他の信金、地銀は大丈夫なのだろうかと・・
あるいはメガバンクは? 生損保は本当に、あいおいだけなのか?
昨日の日本の株式市場の下げの裏側にはこうした疑心暗鬼があります。
繰り返しますが楽観的にみてもこれだけはあると予想される『残りの10.7兆円の損失』。
これは、いったいどこにあるのかという問題です。
2時間ほど前にクローズした月曜のニューヨークマーケットも、『HSBCが更に1,100億円の損失を計上するらしいとのロンドンのTimes紙の記事』などがきっかけとなって、下げています。
日本の金融関係者が金融専門誌(後述)などでインタビューに答えて発言しているのが、『AAA格の債券に投資しているのだから大丈夫』だとか『バーゼルⅡの規制が上手く機能している』といった趣旨のコメントです。
こうした発言は我々のような投資家を逆に不安にさせます。
AAA格だからといって会計的処理をしないで損失計上していないのだとしたら、まだまだ日本の金融機関から今後も損失が計上されてくるのではないかという不安です。
メリルリンチが何ゆえ8,700億円もの損失を計上したのか?
AAA格と格付けされたsuper senior CDOの約18%をwrite down せざるをなかったからです。
この部分はメリルが第3四半期決算を発表した際、表にしてまとめていますので、右記(「merrill_lynch_3rd_qtr.doc」をダウンロード )をクリックしてみて下さい。(これはメリルのプレス・リリースの第4頁目の表の部分のみを私がアップロードしたものです。詳しくはメリルのプレスリリースをご覧になって下さい)。
AAA格というのは倒産確率を表現したものにすぎず、流動性は考慮にいれていません。時価が額面の82%しかないなら、毀損された18%は損失処理をするというスタンスの金融機関と、
『AAA格だから平気だし、満期まで保有するのだから・・』として、この種のCDOの的確な評価を避けている金融機関が
もしも混在しているのだとしたら、
まだ表面化していない10.7兆円の損失は後者の金融機関から今後出てくることになります。
それはいったいどこなのか?
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さて上述の金融専門誌とはこちら。
しっかりとこの問題を捉えている方と必ずしもそうでない方。いろいろな方が寄稿したりインタビューに応じているのが興味深いところです。