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2007年11月27日 (火)

Giving Back

もう2年以上前になりますが、卒業25周年記念ということで、スタンフォード大学のビジネス・スクールの卒業生たちが集まる会合に出席した時の話です。

約300人の同級の卒業生のうちほぼ半数がこの同窓会に出席。出席者の大よそ3分の2が現役、3分の1がすでに実質的には退職している人たちであったと記憶しています。そして出席者の大半がすでにFinancial Freedom(残りの人生を働かなくても良いだけ稼ぎ経済的に自由な身)を獲得している人たちのように思えました。

同窓会といってもキャンパスに何日か泊りがけで講師を呼んだりパネル・ディスカッションを行ったりするものですが、この時の会の統一テーマが「Giving Back」。 

自分たちがこれまでに獲得してきたもの、培ってきたものを、今度はどうやって社会に返して(還元して)いくかを考えようというものです。 

『これから先の人生をどう過ごすかを考えていくとこの言葉にぶつかる』というのが出席者全員の共通認識でした。

「なるほど若いうちから自分のキャリアをどう積み上げていくかを客観的に分析してきた人たちは、人生のどの段階になっても、これに意味合いを持たせる方法に長けているんだ」-こう感心したのを私は今でも覚えています。

ところで日本でも防衛省の事務次官を経験された方など、役所のキャリアや大企業の重役の方たちなどは(年金制度が手厚いこともあって)、実はすでにFinancial Freedomを獲得されている方たちです。

そういった方たちが残りの人生を如何に意義深く過ごすかをもう少し客観的に分析することが出来るようになれば、村社会のボスがいつまでもはびこるといった組織の老害は減り、社会はもう少し変わっていくのかもしれません。

若い頃からキャリア・コンサルティング(や人によっては精神分析医までも!)を利用し、常に自分のキャリアを客観的に見ることに慣れている米国のエリートたち。

一方で組織の中での競争に揉まれながら、その中で頂点を極めることを中心に考えてきた日本のエリートたち。

気がついたら、いつまでもボスでい続けること、そして国からもらえる勲章とゴルフのことしか頭の中に残っていなかった、というのでは余りにも寂しい気がします。

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2007年11月22日 (木)

孔子の『天国と地獄』

私はカレーライスが好きなのでお昼には近くのカレー屋さんによく行きます。

このお店でご飯にカレーをよそってくれるのは中国出身の方です。

コンビニで買い物をしてもレジで応対してくれるのは中国の方。

実は、都会のコンビニで売られているお弁当や惣菜を東京近郊の工場で作っているのも中国の方であることが多く、また、日本の農家で牛の乳を機械で絞って牛乳を作っているのも中国出身の方であることが多いと聞きます。

こうした日本での中国人社会を記述したのが『司法通訳だけが知っている日本の中国人社会』という本です。

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我々のすぐ身近で我々の知らない社会がある。我々はもはやこうした社会を「知らない」ではすまされないのだと思います。

この本の最後に孔子の『天国と地獄』の話が出てきます。

以下に引用します。

地獄に行って来た人の話だ。「その人は、宴会場へと誘われた。ご馳走を前に1メートルもの長い箸を持って料理をつついている。だが誰も長い箸を使いこなせず、せっかくの美味しい料理を口にすることなく、死に絶えた」

次に天国に行って来た人の話だ。「その人は、宴会場へ行った。皆が1メートルもの長い箸を持って料理を堪能している。見ると、料理をつまんだ箸をお互いの口に入れあって満腹そうに喜びで満ちていた」

孔子が説く、長い箸でお互い料理を食べさせ合う光景は、お互いが不足しているところを補って助け合って生きる姿だ。私たちに「共生」とは何かを、孔子は教えてくれている。

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2007年11月19日 (月)

ミシュラン

ミシュランはフランスのタイヤ・メーカーで、私のクルマも(フランス車ではないのですが)、ミシュランのタイヤを履いています。

F1で今年ルノーが思ったほど活躍できなかったのも、(私は詳しくは知らないのですが)ルールが変更になり、ミシェランのタイヤを履けなかったからだとの話を聞いたこともあります(間違っていたらすみません)。

さてそのミシュランが発表しているレストラン・ガイドの内容が今日発表されました。東京では

三つ星:8

二つ星:25

一つ星:117

で、東京は、『世界で最も星つきレストランの多い美食の都』となったとのことです。

選ばれたレストランのうち60%以上は日本料理とか・・

この辺の宣伝の上手さは如何にもフランス的です。

そして、ついついのせられてしまうのも如何にも日本的。

ミシュランに選ばれたという上記の、三つ星、二つ星、一つ星のレストランのリストは、『こちら』に発表になっています。ご関心のある方はクリックしてみて下さい。

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2007年11月15日 (木)

バンカメ、HSBC、ベアなどが新たに損失を発表(サブプライム問題:その9)

米国時間で13日~14日にかけて、Bank of America(4,290億円)、HSBC(3,740億円)、Bear Stearns(1,320億円)ほか数社が新たに損失を報告しました。

これまで報告されたものも含めて、ロイターの記事(『こちら』)がコンパクトにまとめています。

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2007年11月13日 (火)

残りの11兆円はどこにある?(サブプライムローン問題:その8)

サブプライムローンの問題について、このブログで最初に取り上げたのが6月26日。

『サブプライムローン問題の再燃』 という記事をこの時に載せました。

以降、折に触れてこの問題を取り上げてきましたが、今回で第8回目になります。

まずこの問題の大きさについて、だんだんと明らかになってきました。

 ・ 米国の住宅ローン残高 10兆ドル(1,100兆円)

  うち サブプライム・ローン 1.3兆ドル(143兆円)

     金融機関の予想損失額 (全体の12%) 

                                      1,500億ドル(16.5兆円)  

     (以上FRB バーナンキ議長)

  ・ 一方、IMFの方は、最大損失額をもう少し多く、1,700億ドル~2,000億ドルと予想しています。

 ・ 一部の業界関係者のブログによれば、この問題はサブプライム問題というよりも、CDOの問題なのだから最大で10,000億ドル(1兆ドル; 110兆円)の損失もありうるとの見方(憶測?)も示されています。

ここではもっとも楽観的な (というよりも固めの数字を議会で述べた?) FRBバーナンキの見方、最大損失額 1,500億ドル(16.5兆円)をベースに議論を進めましょう。 

損失16.5兆円の内訳として既に各金融機関などがプレス・リリースで発表しているものを拾っていきます($1=110円で計算)。

  ① 欧米大手13社(判明分) 5.5兆円(全体の33%)

     うち シティ  19,250億円(最大推定値)

        メリル   8,690億円

         モルスタ  5,060億円

          UBS   4,150億円

          ドイチェ  3,630億円

         バンカメ  2,969億円

          JPM   2,421億円

        その他6社 8,830億円

   ② 日本(判明分) 3,408億円(全体の2%)

     うち 野村   1,450億円

        みずほ   500億円(推定;朝日新聞)

        農中    400億円強

        三井住友 320億円

        三菱UFJ 250億円

        あいおい  252億円

        新生     118億円

        滝野川信金  73億円

        あおぞら   45億円

以上の数字は各種新聞報道やプレス・リーリスから拾ったものですが、損失が予想される16.5兆円のうち、上述の通り、とりあえず35%ほどが明らかになってきました。

問題は、残りの65%(金額にして10.7兆円)はどこにあるのかということです。

欧米大手13社の中でも、シティとメリルだけが損失額が大きく、他はこの2社に比べればさほどでもない。他社の中でも、シティやメリルに近い損失をこれから計上するところが出てくるのではないかという疑問です。

更にもう一つ。

CDO(collateralized debt obligation)となって証券化されたサブプライムローンを含む金融商品は、欧州や日本の機関投資家にも多く販売されたとの報道もあります。

とすると、日本の損失分が全体の2%というのは、少なすぎないかという疑問も湧いてきます。

上述の滝野川信金でさえ73億円の損失があるという。

他の信金、地銀は大丈夫なのだろうかと・・ 

あるいはメガバンクは? 生損保は本当に、あいおいだけなのか?

昨日の日本の株式市場の下げの裏側にはこうした疑心暗鬼があります。

繰り返しますが楽観的にみてもこれだけはあると予想される『残りの10.7兆円の損失』。

これは、いったいどこにあるのかという問題です。

2時間ほど前にクローズした月曜のニューヨークマーケットも、『HSBCが更に1,100億円の損失を計上するらしいとのロンドンのTimes紙の記事』などがきっかけとなって、下げています。

日本の金融関係者が金融専門誌(後述)などでインタビューに答えて発言しているのが、『AAA格の債券に投資しているのだから大丈夫』だとか『バーゼルⅡの規制が上手く機能している』といった趣旨のコメントです。

こうした発言は我々のような投資家を逆に不安にさせます。

AAA格だからといって会計的処理をしないで損失計上していないのだとしたら、まだまだ日本の金融機関から今後も損失が計上されてくるのではないかという不安です。

メリルリンチが何ゆえ8,700億円もの損失を計上したのか?

AAA格と格付けされたsuper senior CDOの約18%をwrite down せざるをなかったからです。

この部分はメリルが第3四半期決算を発表した際、表にしてまとめていますので、右記(「merrill_lynch_3rd_qtr.doc」をダウンロード )をクリックしてみて下さい。(これはメリルのプレス・リリースの第4頁目の表の部分のみを私がアップロードしたものです。詳しくはメリルのプレスリリースをご覧になって下さい)。

AAA格というのは倒産確率を表現したものにすぎず、流動性は考慮にいれていません。時価が額面の82%しかないなら、毀損された18%は損失処理をするというスタンスの金融機関と、

『AAA格だから平気だし、満期まで保有するのだから・・』として、この種のCDOの的確な評価を避けている金融機関が

もしも混在しているのだとしたら、

まだ表面化していない10.7兆円の損失は後者の金融機関から今後出てくることになります。

それはいったいどこなのか?

* * *

* * *

さて上述の金融専門誌とはこちら。

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しっかりとこの問題を捉えている方と必ずしもそうでない方。いろいろな方が寄稿したりインタビューに応じているのが興味深いところです。

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2007年11月10日 (土)

東京モーターショー

現在開催中の第40回東京モーターショーもいよいよ明日で終わります。

11月3日には一日で12万人もの来客があったとのこと。

一昨年のモーターショーではファミリータイプのワン・ボックスカーなどが目に付いたのですが、今回は、1~2人乗りの小さく個性的なクルマやエコ・カーが多かったですね。

そして何よりもスポーツカーが目を引きました。

Lfa_2

レクサスLF-A:日本車ばなれしたスタイリング。私としてはフロント・エンジンなのがちょっと残念。エンジンが背中の真後ろにあってその振動を肌で感じると共にグーンと押されるような加速感を感じたいところですが、さて・・。

日産GTR:私がモーターショーに行ったのは開催初日でしたが、日産は係りの人が結構厳しかったのが印象的でした。(一方通行の日産のブースの中で少しでも違った動きをすると、すぐに注意を受けました。)

Gtr_2

GTRの購入サイトを見ると、購入に際しての他メーカーとの比較のページがあります。

真っ先に出てくるのが、ポルシェ911との比較。値段は911ターボ 1,879万円に比し、GTR 777万円。

こう見ると確かにGTRはお買い得なのでしょうが、911を購入しようと思っている人が、はたしてGTRに行くかのかどうか。GTRにはスカイライン時代からの独特のファン層があり、ポルシェとはちょっと違うと思います。

* * * *

ところで、人によってスポーツカーに期待するものはそれぞれ違うと思うのですが、私にとって印象的なのは、シルベスター・スタローン演じるロッキー4の一場面。

ソ連のボクサー、ドラゴに親友アポロをリング上で殺され、今度は自分がドラゴとの対戦を決意するに至ったロッキー。

彼が万感の思いを込めて生命を賭したドラゴとの戦いを決断する際に行ったのが、自分の愛車のスポーツカー(たしかランボルギニだったと思います)をただひたすら運転するということ。

夜の道を運転しながら、自分が貧しかった頃やエイドリアンとの出会い、アポロとのトレーニングなどを思い出していく場面です。

自分とクルマとが一体になる。

そうすることで人は落ち着き、自分自身に静かに向き合えるようになります。

悲しみに沈むようなことがあってもエンジンの轟音がかえって運転する人の心の中に静寂さをもたらしてくれる。

多くの人はスポーツカーに対して、数字上のスペックには現れない『何か』を求めるのだと思います。

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2007年11月 9日 (金)

Tomte

トムテ (Tomte) とは妖精です。

Tomte_2

私は知らなかったのですが、ヨーロッパでは、サンタクロースと比肩するクリスマスの主役とされているようです。

以下は、本年10月5日に『ニッキン』という金融関係の新聞(日本金融通信社刊)に掲載された記事です。

トムテは北欧地方伝承の妖精、農家の屋根裏に潜み、夜になると活動を開始します。

家畜の世話を焼き、庭先を掃除し、鶏を盗みにくる狐を追い払ったりと活躍します。

誰もトムテを見たことがありません。

でも、朝、雪の上にたくさんの小さな足跡が残されています。

農家を守るトムテの足跡です。

欧州にて、トムテはサンタクロースと比肩するクリスマスの主役です。

様々な姿かたちのトムテ人形がヨーロッパの年末を彩ります。

中でも、マニアの間で抜群の人気を誇るのが、スウェーデンの寒村に生活するアサおばさんの「手作りトムテ」です。

彼女のトムテは赤い細長い恒子を目深に被り、潤沢な髯を蓄えています。』

既に先週末から銀座ハンズで、そして来週あたりからBeamsの店頭にTomteが並ぶとのこと。

銀座ハンズのクリスマス・フリーペーパーでは、リリーフランキーさんなどがTomteを抱いて登場するとの噂も伝わってきています。

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2007年11月 8日 (木)

ウォール街のボーナス

時期的なこともあるんでしょうが、今年のボーナスに関しての記事が随分目につくようになりました。

  • ここ5年間で最初のdeclineになるだろう(Options Groupの予測)
  • 前年並みじゃないか(Johnson Associates)
  • 相当落ち込む(New York Times)

例年以上に、今年は、どの投資銀行にいるか、そしてどの分野で働いているか(投資銀行部か、トレーダーか、何を扱うトレーダーか)で大きな差がつきそうだとの 記事 (WSJ)が多いようです。

『ゴールドマンサックスはすでに従業員への給与・賞与分として第3四半期決算にて、$16.9 billion (約2兆円)を用意(set aside) した。これはBear Stearnsの時価総額よりも大きい。』などという 記事 (Bloomberg )も出てきました。

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2007年11月 3日 (土)

脳の構造

脳科学者と言われる方々をテレビや雑誌などでよく見かけますが、時折人間の頭の構造はどうなっているのだろうと思うことがあります。

例えば音について。

私は耳で聞いた音に関してはかなり正確にこれを把握し、かつなかなか忘れないのですが、

一方でこれを自分の声で再生することに関しては、どこか回路がずれってしまっています(メチャメチャ不得手です)。

したがってカラオケで自分で歌いながら、自分の耳と脳は、音程を外しまくっている自分自身に呆れるという悲しい状況に陥ります。

ものを書くというのも同様な気がします。

ビジネスの場面で書く文章。

22年間、興銀でサラリーマンをしてきましたが、求められるのは正確性、論理性です。

『重要な結論を先に書く』というのがポイントです。

一方で、小説を書くというのは、頭の中でも、全く違う部分を使うのだと思うのです(詳しくは知りませんが、右脳と左脳ぐらいの違いはあるように思えます。)

これまで何十年間か生きてきて、ほとんど使うことの無かった脳の『ある部分』を使う。

私の経験からすると、日常のビジネスの局面とは隔離された空間・環境に自分自身を置き、エンジンをウォームアップするがごとく、テンションを高め気分をハイに持っていく(コーヒーを沢山飲みました)。

そして集中力を高めて一気に書く。

『プロジェクト・コード』という小説は 36 の章から成り立っていますが、その1つ1つの章がこうやって苦労して、恐らくは今まであまり使うことのなかった脳の『ある部分』を使って書き上げたものです。

『PHP研究所のサイト』では以下のように紹介されています。

最先端の経済エンターテインメント! 日本に衝撃を与える合併や、買収劇の裏側には必ず『投資銀行』というプロ集団の存在がある。

この投資銀行に、「リストラ候補生」として採用された二流私大出の新米・工藤大助は、尊敬する敏腕マネージング・ダイレクターとともに、崩壊しかけた上場企業を再建するプロジェクトを託されたのだが……。

ライバル投資銀行によるオプション取引の誘惑、株価操作、優越的地位を濫用するメインバンクの揺さぶり、意外な人物が仕組んだ社長交代劇など、次々と危機が襲いかかってくる! 

本当は誰が会社を食い物にする「鬼」なのか、誰が会社を救い出す「ヒーロー」になるのか? 最先端のビジネス知識にもとづいた経済小説の登場である!

装丁は鈴木正道さん。宮部みゆきさんの『楽園』を装丁された方です。

書店でお手にとってご覧頂ければ幸いです。

Amz_3

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2007年11月 1日 (木)

ネット時代の勝ち組

11月です。

アメリカからのニュースを2つ。

1つは大方の予想通り、FEDが0.25%の金利引き下げ

5.25%→4.75%(9月18日)→4.5%(10月31日)となりました。

2つ目はグーグルの株価がとうとう 700ドルを突破したこと。

下は公募価格が既に高すぎたと言われた上場時の株価(初値100ドル)と

それ以降の株価の推移(グラフではまだ最近時の700ドル突破が織り込まれていません)。

700

ネット時代の覇者が、グーグル、アップル、アマゾン、任天堂の4人組である姿がますます鮮明になってきました。

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