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2008年2月28日 (木)

FT.com (ダルフールに対する政府のスタンス)

毎日見ているという方も多いかと思いますが、私もフィナンシャルタイムス紙のFT.comというサイトをよく見ます。

今日見つけた記事が『これ』です。日本の経済力が諸外国に比しだんだんと後退している様が書かれていますが、FTの記者が高村外務大臣にインタビューした際のやりとりも載っています。

『日本政府としてスーダンに a peacekeeping force を派遣することを検討しているが、ダルフールには送らない。』

これに対するFTのコラムニストの反応は?(詳しくは記事をお読みになって下さい。)

総じてFTの記事は読みやすく、諸外国の人たちの様々な視点を知る上でも有用です。

あまりこのサイトを見たことがないという人たちにはお勧めです。

(ところで海外の人たちと話していますと時折ダルフール問題について話が及ぶことがあります。日本ではあまり報道されておらず、私は今まで断片的にしか知ることがありませんでしたが、この記事がきっかけとなってダルフールに関する記事やサイトを幾つか読み、少し理解を深めました。)

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2008年2月27日 (水)

k.o 7 と k.o 8

2月13日のブログでご紹介したスポーツカー「k.o7」(ケイオーセブン)と「k.o8」(ケイオーエイト)。

いよいよ来週開幕のジュネーブモーターショーでその全貌を明らかにします。

ところで日本でも有名なフェラーリという会社。この会社は実は設立されてからまだ61年しか経っていません。

アルファ・ロメオのレーシングドライバーであった創業者のエンツォ・フェラーリが、当初はレーシングチーム運営のための会社として創立したものです。

そして自分たちが理想とするクルマを創り始めて現在のような会社になりました。

その創業者の名前をつけることを許された唯一のクルマがエンツォ・フェラーリ

これをデザインしたのが実は日本人の奥山さんでした。

そしていま奥山さんも『自分が乗りたいクルマを創りたい』との思いで、「k.o7」(ケイオーセブン)と「k.o8」(ケイオーエイト)を発表します。

61年前にイタリアで起きたことが今度は日本の山形や岩手(一関)で起きつつある。そう思うとワクワクしてきます。

「k.o7」(ケイオーセブン)というクルマの姿を見たい―そう思われる方は現在発売中のNAVI 4月号をご覧頂ければスクープ写真を見ることが出来ます。

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2008年2月24日 (日)

最近のビジネススクール事情

最近スタンフォードから送られてきた雑誌から記事を2つほどご紹介します。

【1】2007年度の卒業生の主な就職先は次の3業種とのことです。

(%表示は卒業生の何%がこの業種に進んだかという表示。カッコ内は初任給(基本給プラス賞与)の平均値;1ドル110円にて円換算)

1. Consulting           29%   (17.8百万円)

2. Private Equity/LBO      12%   (27.8百万円)

3. Investment Management  10%   (20.6百万円)

因みに投資銀行は就職先としては7位でした。

7. Investment Banking       5%   (25.9百万円)

【2】雑誌のQuotable というコラムに載っていたJennifer Aaker教授の言葉と Bill Amelio CEO(Lenovo)の言葉。

"A brand is a promise to a customer. A successful brand delivers on that promise." (Jennifer Aaker)

"Nobody has to work for you.  They all have a choice.  It's our assignment to energize them and influence them so that they all want to be around us." (Bill Amelio)

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2008年2月20日 (水)

病める国

アメリカでは今徴兵制が敷かれていない。

ではどういう人が志願してイラクに行くのだろうか。

アメリカを守るという使命感を持つ人?

自由主義陣営がテロとの戦いに勝利する為?

2001年の9.11同時多発テロによる死者は2,973人。イラク駐留米兵の死者は既に2006年12月の時点でこの数字を上回り、昨年12月の時点で、3,900人に達したという。

私は高校時代の1年間をAFS留学生としてアメリカ人家族の一員として過ごした。

3人の子どもがいる家族だったが、一番上の兄は志願してカリフォルニア州の湾岸警備隊(Coast Guard)に参加していた。

徴兵されてベトナムに行かされるのを避ける為だ。

今のアメリカで若者たちを軍に志願させ兵としてイラクに送らせているのは『格差』という名の社会システムだ。(以下青字部分は岩波新書『ルポ貧困大国アメリカ』(堤未果著)より抜粋。一部表現を変えたところがある。)

若者たちの入隊希望理由の8~9割は大学の学費を国防総省が負担するという『学費免除』だ。

社会の底辺から這い上がるには学歴がものをいうと考えている若者は多い。(しかし実際に入隊後に学費を受け取る兵士は全体の35%であり、その額は大学を卒業するには圧倒的に不足する金額でしかない。)

入隊希望の第2の理由は『医療保険』だ。

アメリカ国内で医療保険に加入していない国民は4,700万人いるが、貧困地域の高校生たちは家族そろって無保険のため、入隊すれば本人も家族も兵士用の病院で治療が受けられるという条件は非常に魅力的だという。

そして入隊希望の第3の理由がアメリカ人の国籍取得。国内に約75万人いるとされる不法移民をターゲットに軍のリクルーティングが推進されていく。

私はアメリカに通算で8年間住み今でも少なくとも年1回はアメリカに行っているが特にブッシュ政権下のアメリカはますます混迷の度合いを強めていると思う。

『自由社会が貧しい多くの人々を救えないなら、それは富める少数の人々も救えない。』

47年前ケネディ大統領は就任演説でこう述べた。

アメリカという国の現状を知れば知るほどこの言葉は重さを増す。

(ところで岩波新書『ルポ貧困大国アメリカ』(堤未果著)。まだお読みになっていない方には是非一読されることをお勧めしたい。)

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2008年2月13日 (水)

地方を元気にするには・・

私たちが目にするイタリア製のクルマや高級ブランドのなかにはイタリアの地方都市で生み出されているものも少なくありません。

カーデザイナーの奥山清行さんは、『イタリアの地方の中小企業は元気であり、「文化的背景が非常にはっきりしたもの」を作っている。彼らはローマなどの大都市を経由せずに、海外と直接取引を行っている』と述べています。(奥山清行著『伝統の逆襲』祥伝社)

ここに日本の地方を元気にする上での知恵が隠されているのではないでしょうか。

ところで本日の日本経済新聞(朝刊11面)に、奥山さんが東北の試作車メーカー『モディー』(岩手県一関市)と開発していたスポーツカー「k.o7」(ケイオーセブン)が完成し、3月4日開幕のジュネーブモーターショーでお披露目するとの『記事』が掲載されていました。

20080207i_motorshow_2

[奥山氏(左)とモディー社の村上社長(右)]

奥山さんが代表取締役を務めるKen Okuyama Design 社は本社を山形に構えています。

この山形の会社が岩手のモディー社と組んで来月のジュネーブのモーターショーに出展する ― 何が何でも東京を経由する必要は無い。地方活性化の新しいスタイルです。

ところで日経新聞に載ったスポーツカーは国内では今秋発売予定。新聞記事によれば『公道を走れる和製スーパーカーとして話題を集めそうだ』とのことです。

以下は新聞記事より抜粋:『英ロータスからエンジンと車台の供給を受け、エンジンは排気量約2000cc。炭素繊維とアルミのボディーで重量を軽自動車並みの約750キログラムに抑えた。価格は約1500万円。クーペタイプもあり、合計年100台を販売する。』

 

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2008年2月11日 (月)

上場とIPO

『結局のところ、日本には資本主義が根付かないのだ』

残念ながら最近このように発言する(外資の)市場関係者が増えてきています。

先日ある外資系投資銀行大手のアジア・太平洋地域のCEOが東京から香港に移り住むことになりそうだとの話を耳にしました。

従来の『ニューヨーク・ロンドン・東京』の3極体制から、中国を視野に入れた『ニューヨーク・ロンドン・香港』の3極体制への動きが少しずつ水面下で進行しつつあります。

背景にあるのは世界第2位の経済力(生産・消費力)を持つ日本が金融面ではなかなかそれに見合った力を発揮できずにいることに対する失望かもしれません。

最近株式トレーダーを『バカで浮気で無責任』と批判する経済産業省次官の発言がニュースになりましたが、トレーダーや外国人投資家を排除しようとする動きは東京市場を異質なものとして世界で孤立化させ、上述のようなジャパン・パッシング(Japan Passing)の動きを加速させることにつながります。

そう言えば、IPOのことを日本では『上場』と言いますが、何か『下』から『上』に行くような意味合いがこの言葉にはあるように感じられます。

政府高官が再就職することを『天下り』というように、政府関係者は『上』、上場企業も『上』といった意識が一部の日本人にあるのでしょうか。

言うまでもなく、IPOとは initial public offering の略。

上場するとは『公け』になるということです。

世間・公けに向かって、『どうか我々の株を買って下さい。我々はこのようなビジネス・モデルを持っていますので、我々に投資してくれればその価値は将来高まりますよ』と言っているわけです。

『買って下さい』と言っている会社が、日本空港ビルデングやJ-Power(電源開発)のように『外資が買ってくるのは嫌だ』と言うのでしたら、『上場会社であることを止めて非公開会社(private company)になること』を検討すべきだと思います。

(ちなみに日本空港ビルデングの有価証券報告書(最近時)によれば14人の役員(除く社外取締役)のうち2人が運輸省(旧)および開銀(旧)からの天下り。同じくJ-Powerの有価証券報告書によれば13人の役員のうち2人が通産省(旧)からの天下り。)

日本だけに通用する日本独自の資本主義のロジック。これは既得権者の利益になっていても大多数の一般投資家の犠牲の上に成り立っているように思えてなりません。

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2008年2月 7日 (木)

自立を助ける

JPモルガン証券のチーフエコノミストの菅野さんが昨日の日経新聞夕刊9面の十字路というコラムに、『日本株は本当に割安か』との表題で記事を書いていました。

以下エッセンスを少し引用しますと・・

『・・昨年夏は、まさに日本の改革路線が後退し始めた時期でもあった。外国人投資家が日本経済の将来に失望したのが日本株大幅下落の背景だ。

・・一方、・・何故日本人投資家が日本株を買わないのか。それは、基本的に日本人が日本の将来に希望を見だせないからだ。日本人が買えない日本株の購入を外国人投資家に期待するほうがそもそも無理だ。』

ところで私は昨日、静岡に出張してきました。東京から新幹線で1時間ですが、静岡では現在国際空港の建設が進められており、建設予定地の近くの道路はどんどん拡張整備されています。

一方で農家の方とお話しする機会もありました。例えば農家で出荷するお茶の葉の値段がここ数年下落し続けているとのこと。

都会の人々が値段の高いお茶を敬遠し始めている(高いお茶が以前に比べて売れなくなっている)といった事情が背景にあるのでしょうが、農業を営む上での環境が年々厳しくなっているといった現実を目の当たりにしました。

旧来の建設主導型の再生モデルが本当に地方の再生に役立っているのかどうか。

日本のお茶文化は世界に誇れるものです。そして欧米で注目され始めてもいます。(『オーシャンズ13』という映画でアメリカ人たちが『センチャ』とか『マッチャ』といった英語を話していたのを耳にした方も多いと思います。)

同じ予算を使うのであれば、日本のお茶を世界に輸出しやすくする為のノウハウの提供やインフラ整備(①海外でのトレードショーの開催、②お湯の温度に気をつけるといった正しいお茶の入れ方に関する教育など)に使うといった方法もあると思います。

従来と同じ発想ではなく新しい発想で将来の絵を描いていく。

そうしないことには、『日本人が日本の将来に希望を見だせない』といった状況が続いてしまうようにも思えてきます。

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2008年2月 3日 (日)

Chisso accountable to public

『Chisso accountable to public, not shareholders』 と題する記事が昨日のヘラルド朝日(International Herald Tribune/The Asahi Shimbun) 並びにインターネット上の asahi.com に掲載されました(下記)。

1月23日の朝日新聞の『私の視点』欄に掲載された投稿記事を朝日新聞の方で英訳して上記メディアに載せたものです。

人災によってもたらされた『ミナマタ』の悲劇。再発防止の為にもこの問題に関する理解が浸透することを願います。

POINT OF VIEW/ Hidetoshi Iwasaki: Chisso accountable to public, not shareholders

02/02/2008

THE ASAHI SHIMBUN

Chisso Corp., the chemical maker responsible for the outbreak of Minamata disease in the 1950s, has rejected the financial relief package put together by the ruling coalition for unrecognized patients of the disease, a neurological syndrome caused by mercury compounds the company dumped into Minamata Bay in Kumamoto Prefecture.

In explaining the reasons for rejecting the measure, Chisso said the 1995 political settlement with unrecognized patients of the disease was supposed to be a "total and final" resolution of the compensation issue. The company also said it would not be able to give a convincing justification for the fresh payments to its shareholders, employees, financial institutions and business partners.

But Chisso's argument about its accountability is unsound. Its management should be held accountable to the nation's public, not the 36,000 shareholders of the company.

Under a capitalist system, the chief executives of shareholder-owned companies are selected by the directors, who are appointed by shareholders meetings. The chief executives are expected to run the companies for the long-term interests of shareholders. This is the basic structure of corporate governance.

But what exactly are the interests of shareholders of Chisso, a company whose liabilities have exceeded its assets by more than 100 billion yen for 20 years?

Chisso's shareholders must be well aware that the net economic value of their stakes in the company (including claims to the firm's remaining assets) is in the minus territory.

The company with a negative net worth of over 100 billion yen has been kept alive by joint financial aid from the state, Kumamoto Prefecture and creditor banks.

In reality, these creditors supporting Chisso--the central and prefectural governments and the financial institutions--are the true owners and stockholders of the company.

Under the life-support system for Chisso, Kumamoto Prefecture issues bonds and lends the money raised to the firm. Most of the bonds are bought by the central government under the arrangement, which is backed by a Cabinet decision to prevent this effort from imposing a burden on the prefecture's finances.

In other words, the central government is Chisso's largest creditor, providing massive financial support to the company. And it is taxpayers' money.

Instead of worrying about their accountability to the "nominal" shareholders who are fully aware that the firm has only negative shareholder value, Chisso's top executives should focus their management attention on the creditors, which have provided a total of 177 billion yen in long-term and short-term loans. And they should realize that the state is the largest creditor.

These creditors should play a higher-profile role for the company's management. They should take steps to turn themselves into actual shareholders, such as converting the bonds into stocks or using convertible preferred stock under the financial support program, to enhance their control over the Chisso management team.

If these creditors, which should be regarded as the firm's hidden but real owners, are hesitating to exercise greater control and oversight of the company's management because of fears of being linked to the company responsible for the environmental disaster, the financial support plan will lose support among the public.

* * *

The author is a management consultant.(IHT/Asahi: February 2,2008)

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2008年2月 1日 (金)

その後のブルドック

昨年の6月19日に『スティール対ブルドック問題の本質』と題する記事を載せました。

それでその後ブルドックはどうなったのか。

『目は口ほどにものを言う』と言いますが、あれこれ書くよりも株価チャートをご覧頂くと良いと思います。

Photo_3

(注:上のグラフは新株予約権発行に伴う株数増加の影響(株式分割と同じ効果)を調整済みのものです。)

現在の株価は253円。時価総額177億円。

ブルドックの株主たちは昨年の株主総会で『半年後にはこうなる』と分かっていて経営者提案に賛同したのかどうか。

何れにせよ、日本的資本主義なるものが世界に相手にされるかどうかを考えさせられた事案でした。

(詳しくは上述の『スティール対ブルドック問題の本質』と題する記事をお読み頂ければ幸いです。)

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