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2008年2月20日 (水)

病める国

アメリカでは今徴兵制が敷かれていない。

ではどういう人が志願してイラクに行くのだろうか。

アメリカを守るという使命感を持つ人?

自由主義陣営がテロとの戦いに勝利する為?

2001年の9.11同時多発テロによる死者は2,973人。イラク駐留米兵の死者は既に2006年12月の時点でこの数字を上回り、昨年12月の時点で、3,900人に達したという。

私は高校時代の1年間をAFS留学生としてアメリカ人家族の一員として過ごした。

3人の子どもがいる家族だったが、一番上の兄は志願してカリフォルニア州の湾岸警備隊(Coast Guard)に参加していた。

徴兵されてベトナムに行かされるのを避ける為だ。

今のアメリカで若者たちを軍に志願させ兵としてイラクに送らせているのは『格差』という名の社会システムだ。(以下青字部分は岩波新書『ルポ貧困大国アメリカ』(堤未果著)より抜粋。一部表現を変えたところがある。)

若者たちの入隊希望理由の8~9割は大学の学費を国防総省が負担するという『学費免除』だ。

社会の底辺から這い上がるには学歴がものをいうと考えている若者は多い。(しかし実際に入隊後に学費を受け取る兵士は全体の35%であり、その額は大学を卒業するには圧倒的に不足する金額でしかない。)

入隊希望の第2の理由は『医療保険』だ。

アメリカ国内で医療保険に加入していない国民は4,700万人いるが、貧困地域の高校生たちは家族そろって無保険のため、入隊すれば本人も家族も兵士用の病院で治療が受けられるという条件は非常に魅力的だという。

そして入隊希望の第3の理由がアメリカ人の国籍取得。国内に約75万人いるとされる不法移民をターゲットに軍のリクルーティングが推進されていく。

私はアメリカに通算で8年間住み今でも少なくとも年1回はアメリカに行っているが特にブッシュ政権下のアメリカはますます混迷の度合いを強めていると思う。

『自由社会が貧しい多くの人々を救えないなら、それは富める少数の人々も救えない。』

47年前ケネディ大統領は就任演説でこう述べた。

アメリカという国の現状を知れば知るほどこの言葉は重さを増す。

(ところで岩波新書『ルポ貧困大国アメリカ』(堤未果著)。まだお読みになっていない方には是非一読されることをお勧めしたい。)

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コメント

新兵を集めるリクルーターがノルマを上げるために、「イラクでは戦争はもう終わっているよ」とめちゃくちゃなことを言って勧誘しているそうです。新兵勧誘のリクルーターも「民営化」ですから、こういう信じられないことが起こるようですね。

投稿: 神保町 | 2008年2月20日 (水) 11時06分

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