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2008年4月30日 (水)

メドゥーサ(その3)

1990年代および2000年代の金融の世界では、Private Equity Funds や Hedge Funds が注目を浴びました。

Private Equity Funds とは未公開株への投資(買収した結果、未公開になるケースを含む)を主とするファンドのことです。

すなわちPrivate Equity Funds が行う投資は、

(1)企業の創業段階への投資である『ベンチャー・キャピタル投資』と、

(2)成熟企業などの事業再編に伴う企業支配権の買収等への投資である『バイアウト投資』

に大別することが出来ます。

アメリカでは既に1976年にKKRが誕生。

その後も数多くのPrivate Equity Funds (略してPEと言うことあります)が生れてきました(注:KKRがPEの第一号という訳ではありません)。

日本でも1992年に『日の丸PEの代表格』の一つであるアドバンテッジパートナーズが設立され、1998年にはユニゾン・キャピタルが誕生しています。

一方、Hedge Funds とは、通常は私募によって機関投資家や富裕層等から私的に大規模な資金を集め、金融派生商品等を活用した様々な手法で運用するファンドのことです。

一般の投資信託等がTOPIXやS&P500等のベンチマークを上回る運用成績を目標としているのに対し、

ヘッジファンドは多くの場合、絶対的収益(absolute return)の追求を目標としているのが特徴です。

ノーベル賞学者達が参画するヘッジファンドとして注目を浴びたLong-Term Capital Management は、1994年に設立されています。

このように これまで金融の世界では Private Equity Funds や Hedge Funds が注目を集めてきました。

ここで例えば、野村證券のホームページで同社の組織図を見てみます。

企業金融一部から九部まで並んでいますが、その直ぐ下の方にファイナンシャル・スポンサー部という部が目につきます。

これこそがPrivate Equity Funds などのファンドを相手にする部です(少なくとも欧米の投資銀行の場合、そういった体制になっています。詳しくは拙著『プロジェクト・コード』をご参照下さい。)

さてこれらのPrivate Equity Funds や Hedge Funds に対して、前回ご紹介したSoverign Wealth Funds。

これは政府が出資する投資ファンドのことで、政府系ファンドとも言っています。

石油や天然ガスによる収入、外貨準備高を原資とすることが多いのが特徴で、

近年、世界的な資源価格急騰により資源供給国の割合が増えつつあります。

前回ご紹介したリーマンのAzar氏も述べていましたが、このSoverign Wealth Funds の額は、いまや 3.5 兆ドル(350兆円)を超えると推定されています。

(注:日本の国家予算83兆円の4倍、日本のGDP527兆円の3分の2)

この3.5 兆ドルというSoverign Wealth Funds の大きさは、既に、Private Equity Funds と Hedge Funds を合計したものを超えたものになってしまっています。

だからこそ、リーマンブラザーズのみならず、Morgan Stanley やBarclays などの各社も、社内に、Soverign Wealth Funds を専門にカバーする(営業活動を行う)部隊を新たにスタートさせたのです。

これから2~3年のうちには、野村證券などの日本の金融機関の組織図にも Soverign Wealth Funds グループといった名の部が見受けられるようになるかもしれません。

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