メドゥーサ(その16)
原油価格高騰の背景にあるのは中国、インドなどの諸国の経済発展とそれに伴う原油に対する需要増と言われています。
と同時に一つの書物が何がしかの影響を与えたことも否定できません。
2005年に発刊された『TWILIGHT IN THE DESERT: The Coming Saudi Oil Shock and the World Economy』。
日本語でも『サウジ石油の真実』となって昨年翻訳本が出版されています。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の石井彰さんが、日本語版の本書に解説を載せていますが、以下はその解説文からの抜粋です。
『・・(本書は)ロシアと並ぶ世界最大の原油生産国にして、OPEC(石油輸出国機構)の盟主であるサウジアラビアの原油生産力が
近い将来、ないし既に限界に達していて急落するために、
世界の現行石油供給量を維持できず、
必然的に世界経済は大混乱に巻き込まれる可能性が高いと言うショッキングな内容である。
・・・原油価格高騰の背景の一つに、広範な石油業者や投機家、投資家の将来認識に与えた本書の影響があるとも言われている。・・』
本書のベースになっているのは、Society of Petroleum Engineers (SPE) (石油技術者協会)発行の膨大な論文の数々です。
著者のシモンズ氏はこれらを丹念に読みこなし、それをもとに本書の議論を展開しています。
これに対してサウジアラビア政府は
『サウジの原油生産が近く減退に向かうとの見方は間違いである』と反発しています。
そして石井さんの解説によりますと、専門家たちの間では、サウジの見解を支持する意見が多いようです。
とは言うものの、本書を読むと、
我々の経済的繁栄は必ずしも磐石な上に成り立っているわけではないことを実感させられます。
この本が書かれた2005年。
原油価格は50ドルでした。
そのとき著者のシモンズ氏は、
『いま、一から油田の開発を行い(投資家が求める利益を上げるとすれば)・・石油価格は・・100ドルとか200ドルになるだろう。
しかし、掘削、パイプライン・・といった資産に今後・・どれだけの費用が必要かはわからないし、・・200ドルでも低すぎるということも(今後10年から20年の間には)あるかもしれない』
と述べていました。
既に原油価格135ドルが現実となってしまった今。
我々はこれまでの生活様式を変えることさえ求められるようになってきています。
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コメント
岩崎先生、こんばんわ。
ガソリン価格の上昇、盛んにニュースで報道されていますね。
僕は先天的に運転技術に恵まれず、それ故にクルマに乗らないし、毎日の通勤の足にバスも利用しないので、生活への影響は実感しません。
むしろ、クルマの交通量が減り、排気ガスによる大気汚染や交通事故のリスクが少なくなったので、喜んでいます。
投稿: まさくん | 2008年5月29日 (木) 22時03分