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2008年5月19日 (月)

メドゥーサ(その13)

何がコーランが禁止している『リバー』に値するのか。

例えば、金融派生商品(デリバティブ)のような商品は認められるのか。

こうした点については、イスラム金融の世界では、シャリア』学を修めた学者たちの間で研究されています。

『シャリア』(Shariah)とは「人が従うべき道」を意味しますが、憲法よりも上位にあるイスラム教の戒律です。

『シャリア』(Shariah) が禁止するものとしては例えば、

① 金銭の使用に対して利息(リバー:Riba)を課すことを禁止

② 豚肉、酒類、武器などの禁制品(ハラーム:Haram)を使用・取引することを禁止

③ 契約中の不確実性(ガラール:Gharar)の排除

④ 投機行為(マイシール:Maisir)の禁止

などです(前田匡史『「詳細」イスラム金融)。

但し、このリバーの禁止についてですが、前回のブログで見ましたように、

『ムラバハ』(商品の買い手と売り手の間に銀行が介在してマージンを取る)や、

『ムダラバ』(出資者の資金を投資・運用することで上げた利潤を配当で還流)など、

取引実態があるものについては、『リバー』に当らないとして認められています。

しからば、いったいどこが境界線となるのか。

私はふと住友グループの社是(住友家の家訓)である『浮利を追わず』を思い出しました。

我営業ハ確実ヲ旨トシ、時勢ノ変遷、理財ノ得失ヲ計リテ之を興廃シ、

苟クモ 浮利ニ趨リ、軽進ス可ラザル事

(『住友家法』第1款家憲の第3条)

イスラム金融というと特殊な世界を思い浮かべがちですが、

その教えとするところは意外と身近なものなのかもしれません。

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コメント

以前はイスラム社会は保険契約を禁じていたようですね。金銭のやりとりがある商契約行為では、できるだけ不確定要素を排除することが義務づけられていますから、保険契約のような、起こるか起こらないかわからないことを前提としたものは馴染まない。保険の買い手は金銭を受け取れるかどうか、わかりませんから。
また、生命保険であれ、損害保険であれ、死亡や損害が発生すれば保険契約者は保険会社からそれまで支払った金額を超える金銭を受け取るわけですが、このことがイスラム法が禁じている「利子取得行為」に当たるのだそうです。
そして、死亡も損害も起きなければ、支払い金額は保険会社のものになる。契約の際に、保険会社が金を取るのか、契約者が金を取るのか確定できていないわけですから、これはまた、イスラム法で禁じられている「賭博行為」に当たるそうです。
そのこと以上に、イスラム法では不確定事項を人間が取り扱うこと自体が神に対する冒涜行為。生命保険はその最たるものだそうですね。

投稿: 神保町 | 2008年5月20日 (火) 11時14分

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