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2008年5月18日 (日)

メドゥーサ(その12)

トヨタが約320億円のイスラム債の発行枠を設定し、月内にも発行を始めることがニュースになっていました(5月12日付け日経新聞第一面、詳しくは『こちら』)。

『スクーク』と言われるイスラム債は、イスラム法が禁じる利子の概念をどうやって乗り越えているのでしょうか。

原典にあたってみましょう。

岩波文庫から井筒俊彦訳の『コーラン』が出版されていますが、ネット上の『イスラーム文化のホームページ』でも、日本ムスリム協会発行「日亜対訳・注解 聖クルアーン(第6刷)」を読むことが出来ます。

その第二 雌牛(アル・バカラ)章の275節。

275.利息を貪る者は、悪魔にとりつかれて倒れたものがするような起き方しか出来ないであろう。それはかれらが「商売は利息をとるようなものだ。」と言うからである。しかしアッラーは、商売を許し、利息(高利)を禁じておられる。それで主から訓戒が下った後、止める者は、過去のことは許されよう。かれのことは、アッラー(の御手の中)にある。だが(その非を)繰り返す者は、業火の住人で、かれらは永遠にその中に住むのである。

コーランにはこのほかにも利子・利息について記されているところがあります(276~281節など)。

何れを読んでも明らかなようにコーランは『リバー』利子・利息)を禁止しています。

このためイスラム金融の世界では、『リバー』利子・利息)に当らない仕組み・スキームが利用されています。

例えば、『ムラバハ』(商品の買い手と売り手の間に銀行が介在してマージンを取る)や、

『ムダラバ』(出資者の資金を投資・運用することで上げた利潤を配当で還流)などの仕組みです。

『スクーク』も基本的にはこれらと同じで、証券の背後に商品取引や投資にともなう収益の概念を組み入れることで、『リバー』の概念を回避したものになっています。

こうしたイスラム金融の資産規模は今や年率15~20%のペースで拡大しており、すでに1兆ドルを超えていると見られています(糠谷英輝『世界を席巻するイスラム金融』吉田悦章『イスラム金融入門』)。

円にして、約100兆円。

日本の個人の金融資産1500兆円の15分の1ということになります。

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コメント

いつも楽しく読ませていただいています。日本の個人金融資産と比較されたのはなぜですか? その意味を教えていただければと思います。

投稿: motosumin | 2008年5月24日 (土) 14時57分

特に深い意味は無く、100兆円という言われているイスラム金融の資産規模の大きさを出来るだけ分かりやすく示したかったからです。

平成20年度末の日本の国債発行残高(普通国債。建設国債等を含まない)見込み553兆円の5分の1のレベルでもあります。

投稿: 岩崎 | 2008年5月24日 (土) 21時47分

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