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2008年9月30日 (火)

一人あたり25万円の負担

一口に75兆円と言いますが、米国民一人あたり25万円の負担。一家庭3人で計算しても、一家庭あたり75万円。

これではとても国民を説得しきれないと議員たちが判断したのでしょう。

米政府による Bailout Planは懸念されていた通り議会を通過しませんでした。

さてこれからどうなっていくのか・・。

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2008年9月29日 (月)

リーマンブラザーズ破綻の背景(8)

各社がそれぞれ資本勘定の何倍の総資産を持つか比較してみましょう。

高い方がレバレッジが高いということになります。

[2007年11月末もしくは12月末の数字。カッコ内左側が総資産。右側が資本。どちらも10億ドル単位]

ベア・スターンズ  36倍(395、11)

リーマン       31倍(691、22)

モルスタ             33倍(1,045、31)

メリル                 32倍(1,020、32)

ゴールドマン        26倍(1,120、43)

バンカメ              12倍(1,716、147)

JPモルガン         13倍(1,562、123)

改めて並べてみると米国政府が、『生き残った投資銀行を銀行持ち株会社化して、これまでのSECによる規制から、FRB等による規制に変更させることにしたこと』の背景が良く分かってきます。

ベア、リーマン、モルスタ、メリルの4人組はいずれも資本の 30数倍の資産を有していた。

かろうじてゴールドマンが26倍。

これに比して商業銀行(銀行持ち株会社;バンカメ、JPモルガン)は12~13倍だった訳ですから、投資銀行が如何にhighly leveraged であったかが分かります。 

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2008年9月28日 (日)

リーマンブラザーズ破綻の背景(7)

昨日の続きです。

投資銀行は急速に資産を拡大してきました。

資産というのは果実(利益)を産む木のようなものです。しかし資産には必ずこれに見合う負債か資本が必要となります。

会計的にはバランスシートの左側に資産があるとすると、それに見合う負債もしくは資本(あるいはその合計)がバランスシートの右側になければ、左と右がバランスしません。

負債や資本はコストです。借金をすれば負債となり、この為の金利支払が生じ元本を返済していかなければなりません。

資本家から投資を受け入れれば資本が増えますが、配当金を支払うとか企業価値を上げて投資家に報いることが必要となってきます。

昨日見てきたように投資銀行はここ数年急速に資産を拡大してきました。

リーマンブラザーズを例にとると、2003年から2007年の4年間で同社の総資産は、3,121億ドルから6,911億ドルへと2.2倍も増加。年率平均22%で資産を拡大させてきたのです。

(特に2006年から2007年にかけての1年間で総資産は37%も増加。)

ここから先はちょっとしたファイナンスの知識が必要となってきますが、資産の増加を可能にさせる負債もしくは資本の増加のうち、負債の方がコストは低く資本の方がコストが高いのです。

(詳しくは『サバイバルとしての金融』をお読みください。)

すなわち

資本コスト>負債コスト

です。

よって投資銀行はどこもコストの安い負債を使って(カネを産み出す木であるところの)資産を拡大してきました。

その方が株価も上がるからです。

リーマンブラザーズを例にとると2003年には2269%(23倍)あった負債比率(負債÷資本)が2007年には2973%(30倍)にまで上昇しています。

すなわち資本勘定の30倍以上にまで資産を膨らませてしまった。

その結果レバレッジ効果(テコの原理)により株価は上がりましたが、ご存知の通りあまり無理をするとテコは折れやすくなります。

リスクがその分高くなりテコが折れてしまった。

今回の金融危機の背景にあるのは極めて単純なことのように思えてなりません。

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2008年9月27日 (土)

リーマンブラザーズ破綻の背景(6)

昨日は米系投資銀行の日本での住宅ローンビジネスについて書きました。

それだけではありません。

破綻したリーマンブラザーズを例に見てみましょう。

サンライズファイナンス。

1998年に設立されたリーマンのグループ会社です。

金融機関からの債権買取、事業資金貸付を手がけていました。

負債総額3,639億円で民事再生法申請。

東京新聞の記事から引用(抜粋)します(詳しくは『こちら』)。

2008年9月18日 夕刊

米大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)の余波が、東京・高輪の老舗ホテル「京品ホテル」に及んでいる。

経営者が十月の廃業と解雇を従業員に通告。

これに反対する従業員側が交渉を求めてきたのが、ホテルの債権を持つリーマン日本法人系列のファンド会社だったからだ。

本体の破綻で、このファンド会社も民事再生法の適用を申請。交渉の糸口を失った従業員側は不安を隠せない。

JR品川駅高輪口の真ん前にある京品ホテルは、一八七一(明治四)年に旅館として創業。

レトロな建物は一九三〇(昭和五)年築で、ホテルでは都内でも有数の古さだ。

ホテルと直営の飲食店を合わせ、パートも含めて約百三十人が働く。

しかし、バブル期の多角経営に失敗して借金がかさみ、ホテルを経営する京品実業の小林誠社長が五月初旬、十月二十日の廃業と全員の解雇を告げた。

これに先立ち、従業員は労働組合を結成。

京品実業が昨年の決算で約八千万円の営業利益を出していることなどを訴え、ホテルの営業継続と解雇撤回を求めている。

交渉の中で、リーマン系のサンライズファイナンス(港区)が債権を握っていることが判明。

七月からは、サンライズ社にも交渉を要求してきた。

サンライズ社は交渉を拒絶したが、組合側は「団交拒否は不当」だとして都労働委員会に不当労働行為の救済命令を申し立てた。

その審査が続く中でリーマンが破綻した。

サンライズ社も九月十六日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。

サンライズと同じ日に民事再生法の適用申請をしたリーマンブラザーズ・コマーシャル・モーゲージ。

こちらは不動産担保融資を手がけ負債総額3,844億円。

以下はリーマンのホームページからの抜粋([注]一部鍵括弧をつけて読みやすくしました。オリジナルは『こちら』)。

リーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージ株式会社(旧ニュー・センチュリー・ファイナンス株式会社)は、リーマン・ブラザーズ・ホールディングズ・インクを中核の持ち株会社とするリーマン・ブラザーズグループによる100%出資会社で、不動産担保融資を専門とする金融会社です。

2001年の設立以来、特に賃貸アパート・マンションや大型のオフィスビル等の商業不動産向けのノンリコースローン(責任財産限定型)など、不動産担保の中でも新しい形態のローン商品を積極的に取り扱っており、貸し付けたローン債権を定期的に証券化することでお客様に対して恒常的かつ安定的に融資商品を提供し続けることを企図しております。

なお、2006年度には、年間累計約2,680億円の不動産担保融資を実行しております。

【アパートローン・グループ】

2001年にノンリコース特約付きアパートローンを国内初の標準定型商品として商品化して以来、日本全国の賃貸アパート・マンションを対象に最長30年のノンリコースローンを提供しております。

個人のお客様にも(特別目的会社を設立いただかずに)直接融資できる商品なども用意しており、実績も多数あります。

【コマーシャルローン・グループ】

ノンリコースローンを中心に、1億円規模の個人向け小規模ローンから1,000億円規模の大型ローンまで幅広く取り扱っております。

オフィスビル、商業施設、賃貸マンション、倉庫、ホテル等の収益物件向けのローンの他、更地へのブリッジローンなど、様々なファイナンス・ニーズに対応しております。

テレビのCMで有名なウィークリーマンション。

これを買収して傘下に収めたのもリーマンブラザーズでした。

詳しくは『こちら』

以下その抜粋。

再建への道のりは厳しかった。不動産物件を1つ、また1つと手放しながら営業を続けたが、巨額の負債は容易には減らない。

99年に外資系のリーマン・ブラザーズから買収の話をもちかけられると、川又代表は大切に育てた事業を手放す覚悟を決めた。

10棟の物件と合わせて営業権も売却するという内容で、「ウィークリーマンション」の名称も、知名度抜群のコマーシャルソングも使えなくなる。

それでも川又代表はこの買収話を朗報と捉えた。

「170人いた社員のうち140人を引き取ってもらい、借金も800億円ほどに圧縮できました。まさに助け舟だと思いましたね。社員が路頭に迷うことなく事業を整理でき、私自身も再びスタート地点に立てることから、感謝の気持ちでいっぱいでした」(川又代表)

ところでこのような形で積極的に不動産関連事業を自ら主体となって展開していたのは何もリーマンだけではありません。

モルスタによる全日空ホテル買収、ゴールドマンによる銀座ティファニービル買収などなど。

投資銀行はどこも積極的に資産を積み上げていったのです。

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2008年9月26日 (金)

リーマンブラザーズ破綻の背景(5)

日本橋住宅ローン

ジパング住宅ローン

リベルタス住宅ローン

これらは米系の投資銀行が2006年から2007年にかけて日本でこぞって設立した住宅ローン会社。

上から順にメリルリンチ、モルスタ、リーマンの住宅ローン会社です。

こちら(↓)はリーマンブラザーズの2006年のアニュアル・レポート。

Leh2_2

2006年11月にリベルタスが日本で住宅ローンの証券化(112億円)を行ったことを華々しく謳い上げていました。

上図の左側の写真は六本木ヒルズの住居棟に似ていますが、さてどうなんでしょうか。

2006年12月22日の『J-CAST ニュース』(詳しくは『こちら』)を以下引用してみます。

外資系証券の証券化住宅ローン:結局リスクは地銀に“付け回し”?

2006/12/22  モルガン・スタンレー証券やメリルリンチ証券が、地方銀行と提携して「住宅ローン」市場に参入する。

ターゲットは地銀の審査基準から外れた信用力の低い顧客で、長期的に安定した収入が見込みづらい自営業者や派遣社員などを想定している。

そのため、適用金利は変動金利で年2~5%程度と通常の住宅ローンよりも割高に設定する。

マイホームを手にしたいのに、ローンの申し込みを断られ続けた顧客にとってはありがたい話だが、従来はその地銀ですら「リスクが高い」と手を出さなかった顧客層である。

メリルリンチ日本証券は2006年12月14日、福岡市に本店を置く地方銀行の西日本シティ銀行と提携して、日本で住宅ローンビジネスを展開する、と発表した。

07年3月の発売を予定している。

同グループが出資するローン子会社を設立し、提携した銀行が実行した住宅ローンの債権を買い取る。

「顧客へのサービス部分は提携銀行にお願いすることになる」(メリルリンチ日本証券広報部)とし、ローン子会社が譲り受けた住宅ローン債権は証券化して機関投資家などに販売する計画で、そのために「20~30行程度の地銀と提携したい」と話している。

モルガン・スタンレー証券も住宅ローン進出

住宅ローン債権を証券化して機関投資家に販売する、その考え方は先のモルガン・スタンレー証券もまた同じで、これより先の06年11月20日に、八十二銀行(長野市)や親和銀行(長崎県佐世保市)などと提携して債権を証券化する手法を活用した住宅ローンを共同開発。

07年1月29日からの販売を発表している。

やはり、今後数年間で提携先を20行程度見込んでいる。

いずれにしても、メリルリンチ日本証券とモルガン・スタンレー証券による地銀の囲い込み合戦が今後激しくなることは間違いない。

外資系金融機関のリテール業務だが、実際のところはシティバンクのように自前で店舗展開するわけではない。

地銀の“ひさし”を借りての展開であるから、この囲い込みしだいで成否が決まるともいえる。

一方、住宅ローン市場が飽和状態になりつつあるなかで、「リスクの高い顧客層を狙う作戦がどこまで通用するのか、見ものではある」(大手地銀の幹部)と、洞ヶ峠をきめ込む地銀もある。

また、別の地銀幹部は、「競争が激しいこと、また借り換え需要も一巡して住宅ローン市場も先細り観がある。なにか新たな手を打たなければ、という焦りがある」と説明する。

住宅ローン債権を購入するのもまた地銀?

この商品は、提携している地銀にとっては貸し倒れリスクを気にすることなく、信用力の低い顧客にも住宅ローンを提供することができるメリットがある。

一方、外資系証券のメリットは地銀のネットワークを使って自社が組成する住宅ローン商品の販売が可能になるほか、住宅ローン債権を証券化し販売することで機関投資家から手数料を得られることにある。

ただし、外資系証券は銀行でさえ引き受けるのを避ける、貸し倒れリスクの高い債権を許容できる機関投資家をさがしてこなければならない。

もっとも、「デフォルト・リスクは低いものの、住宅ローン債権を購入するのもまた地銀あたりになる」(地銀関係者)というから、ある地銀で売った住宅ローンの債権が結果的に、廻り廻って他の地銀の手に渡ることになる。

地銀業界でリスクを分かち合うといえば美しいが、リスクの付け回しというと、誰がジョーカーを引くか、の争いでもある。

これを読むと何だか日本でもある種のサブプライム・ローンのビジネスに関与しようとしていた投資銀行の姿が見え隠れしてきます。 

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2008年9月25日 (木)

リーマンブラザーズ破綻の背景(4)

朝日新聞に『池上彰の新聞ななめ読み』というコラムがあります。

池上さんはNHK『週刊こどもニュース』でニュースを子供向けに分かりやすく説明する番組をお父さん役として担当していたこともあり、大人にとって難しい内容のことでも非常に分かりやすく説明してくれます。

また『新聞ななめ読み』では読者の立場にたちながら先輩ジャーナリストとして現在の新聞を時として暖かく批判しています。

この朝日のコラムを私は結構気に入ってよく読んでいます。

さて池上さんのサブプライムの説明を見てみましょう(9月22日の朝日新聞夕刊から)。

* * * * *  

『サブプライム問題は、米国の低所得者向け住宅ローンの債権(貸した金を返してもらう権利)を買った証券会社が、債権を担保に小分けの証券を発行し、他の金融機関に売ったところから始まりました。

それを買った別の証券会社が、複数の証券を合わせて担保にし、別の証券に仕立て上げて、さらに転売を繰り返す手法が広がりました。

ところが、住宅バブルがはじけて債権の価値が低下。

債権を担保にした証券の価値も下がったものですから、いくつもの証券を合せた別の証券の価値も下がりました。

しかし、いろいろな証券を合せて作った証券なので、損害額がすぐに算定できません。

金融機関に疑心暗鬼が広がりました。

他の金融機関が、実は大損害を受けて経営が危ないのではないかと思うと、うっかり資金を貸せません。

金融機関同士の資金の融通がストップしてしまい、金融不安が広がったのです。』

* * * * *  

さすがに分かりやすい説明ですね。

サブプライムについては幾度と無く説明記事を読まされていますが、改めて納得させられます。

ただここで一つだけ疑問が湧きます。

リーマンやモルスタなどの投資銀行は日本で言えば証券会社。

サブプライムローンの証券化においては、彼らはこの種のローンを集めて証券化して機関投資家に販売するのが仕事です。

つまり『作って、売る』です。

そしてこのような証券化商品を『買って、持つ』のは通常、機関投資家。

それが一昨日見てきたように投資銀行が自ら巨額の証券、金融商品を抱えてしまっていた。

これはいったいどうしてでしょうか。

もちろん中には売れ残って抱えていた分や、トレーディングの一環でポジションとして持っていたもの、あるいは作りかけ、もしくは販売の途中であったものもあるでしょう。

しかしそれだけだったのでしょうか。

自らが機関投資家のようにこの種の金融商品を積極的に持つことはなかったのでしょうか。

次回はこの辺を見ていきます。

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2008年9月23日 (火)

リーマンブラザーズ破綻の背景(3)

昨日見たリーマンのLevel 3 の Asset。

実は Mortgage and Asset-Backed Securities 252億ドルだけでなく他にもあって、全体で(Mortgage and Asset-Backed Securities も含めて) 420億ドルです(2007年11月末)。

これを他社と比べてみます([注]メリルのみ決算期が違い2007年12月末の数字)。

【Level 3 の Asset の額(単位:億ドル)】

GS     692

メリル        414

モルスタ     737

リーマン     420

ところでここで本当の意味で問題とされるべきは、各社が Level 3 の Asset を如何に厳密に(もしくは如何に甘く)評価していたかです。(残念ながら、これはチョッと簡単には分かりません。)

つまり上記のように Level 3 の金額のみを単純に比較しても実のところ余り意味はないのかもしれません。

しかし 『評価に際して経営陣の恣意性が若干ながらも含まれる資産』 が各社ともこれだけあったことはやはり注目に値するでしょう。

これを見ると、『なんだ、リーマンよりゴールドマンやモルスタの方が多かったのか』と思われる方があるかもしれません。

しかし資本勘定(Shareholders' Equity)の厚さが違いました。

【資本勘定の金額(単位:億ドル)】

GS     428

メリル        319

モルスタ     313

リーマン     225

各社のLevel 3 の Asset の金額がそれぞれ資本勘定の何倍であったかを見てみると、

GS     1.6 倍

メリル        1.3 倍

モルスタ     2.4 倍

リーマン     1.9 倍

となります。

ちなみにJP Morgan に救済合併されたBear Stearns の場合、資本勘定は 111 億ドルでLevel 3 の Asset の金額は、280億ドルを超えていました。資本勘定の 2.5倍強です。

要するに、各社とも資本の効率を高めようとレバレッジを高めた経営を行ってきた。これは株価を上げるには好都合だったのですが、今回のような危機に際しては脆弱さが一気に露呈することとなってしまった。

いわばハイリスク、ハイリターン型の経営であったのです。

今回の金融危機に際してポールソン財務長官やバーナンキFRB議長が再三再四にわたり各社に資本の充実(増資)を呼びかけましたが、現実は危機が起きてからの増資が如何に難しいかを証明するだけに終わりました。

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2008年9月22日 (月)

リーマンブラザーズ破綻の背景(2)

リーマンのアニュアルレポートより 2007年11月末現在の数字を見てみます。(ゴールドマン、モルガンスタンレー、リーマンなどは11月末決算。)

総資産 6,911億ドル。

うち Financial Instruments and Other Inventory Positions Owned が、3,131億ドル。

このなかに Mortgage and Asset-Backed Securities が 891億ドル含まれています。

これらは会計上、Fair Value で評価されています。

Fair Value とは、"The price at which an asset could be exchanged in a current transaction between knowledgeable, willing parties" と定義されます。

更に米国の会計基準(FASB;Financial Accounting Stadard Board)によるStatement(SFAS;Statements of Financial Accounting Standards 157) に基づき、これらの資産は (Fair Value の評価の仕方によって)、Level 1 から Level 3 まで分類分けされています。

Level 1 は国債、上場株式のように市場価格のあるもの。

Level 3 になると、Management's best estimate と、客観性が(Level 1に比し)落ちてきます。

リーマンの場合、 Mortgage and Asset-Backed Securities  891億ドルのうち、Level 3 が252 億ドル含まれていました。

この辺について次回もう少し詳しく見ていきます。

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2008年9月21日 (日)

リーマンブラザーズ破綻の背景(1)

サブプライム・ローンの問題が生じ一斉に格付機関に批判が生じました。昨年のことです。

さて破綻したリーマンを今回格付機関はどう格付けしていたのでしょうか。

S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)はリーマンが破綻する一週間前(9月8日)までリーマンを長期債:A、短期:A-1と格付していました。投資適格の格付けです。

リーマンがS&PによってCredit Watchに置かれたのが9月9日(まだ格付自体はそのまま。要は『格下げするかもしれませんので投資家の皆さん注意して下さい』というのがCredit Watchです。)

この時のリーマンの株価は$7.79。

リーマンの社債を買っていた機関投資家の話:『8月くらいからヤバイと思って売ろうとしていたが売るに売れなかった。』

つまり機関投資家の方が8月から危険を察知していたのに、格付機関の方は、リーマンが破綻する一週間前であっても A、A-1と格付していた。

格付に詳しくない方の為に申し上げますと、新日鐵や日立のS&Pによる長期債格付はAマイナス。

要はS&Pはリーマンが破綻する一週間前であっても、新日鐵や日立よりもリーマンの方が安全だと高く評価していたわけです。

こうなるとやはり格付機関による格付の信憑性が問われてくることになります。

機関投資家が格付機関の格付けを信じなくなると格付機関は存立基盤を失います。

さて次回のブログではリーマンがどれくらいのモーゲージ関連商品(社債、ローン)を抱えていたかを見てみることにしましょう。

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2008年9月20日 (土)

タグ・ホイヤー

残念ながら土、日と仕事で忙しく(そうです、Nさん、真面目に原稿書いてます!)、私は行けそうにありませんが、表参道で、「K.O 7」タグ・ホイヤースペシャルカーが展示されています。

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詳しくは『こちら』をどうぞ。

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ゴルフアカデミー目白倶楽部

目白にオープンしたゴルフアカデミー目白倶楽部を覘いてきました。

学習院大学向かいの目白通り沿い。

目白駅から歩いて6分。最近出来た地下鉄副都心線雑司ヶ谷駅から2分。

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ここは高校時代の友人のM君がスタートしたゴルフスクールですが、とにかく彼は理論派のゴルフ好き。パー・プレイヤーです。

数々のハイテク、ローテク練習機器を取り揃え有能なレッスンプロが丁寧に指導。

私のようなヘボ・ゴルファーでも『一年間、真面目に通えば絶対シングルでは回れるようになるよ』と保証してくれました。

台風が通り過ぎれば一気に秋になるでしょうし、確かにこれからはゴルフに良い季節!

健全な精神は健全な肉体に宿る(A sound mind in a sound body.)

詳しくは『こちら』をどうぞ。

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2008年9月18日 (木)

モルガンスタンレーはワコビアと・・?

昨日オフィスにやってきた記者との会話。

*  *  *  *  *

(記者) 『やはりリーマンは業界4位ということで焦って無理無謀な経営をしたのでしょうか。』

(私)『“業界4位ということで焦って無理無謀な経営をした”と書けば、マスコミ的にはもっともらしい解説記事になるでしょうが、それは多分違うでしょう。

そもそも記者さんのご質問の前提には、「ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーは、今後生き延びられるだろう」という勝手な憶測があると思います。

「必ず生き延びられる」と断定出来るほど今回のサブプライムの問題は甘いものではないと思います。

ゴールドマンやモルガンにしたって一寸先は闇なのかもしれない。

リーマンブラザーズだって一年前にこんな事態になるとは誰が想像したでしょうか。

仮にリーマンが“業界4位だから焦って無謀な経営をして倒産した”と言うのであれば、全米第1位の保険会社であるAIGが破綻の危機に瀕し米国政府の支援を受けたことについてはどうお考えですか。

2位、3位の保険会社は少なくともいま現在そういった状況には陥っていない。

これは何故でしょうか。』

*  *  *  *  *

こんな会話を交わしていたのですが、アメリカでは早くもモルガンスタンレーやゴールドマンに関する記事が出始めました・・。

詳しくは『こちら』『こちら』をどうぞ

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2008年9月17日 (水)

AIG(続)

先ほど入ったニュースです。

米政府による8兆5千億円に上る救済プランの受け入れをAIG取締役会は承認。

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AIG

昨日のニューヨーク。

AIGは21%下落し 3.755ドルで終えましたが、その後の Bloomberg 報道によりAfter Hour Trading で更に値を下げ現在 2.20ドル前後。

ところでダウ平均株価に採用されている銘柄はたった30銘柄。

AIGはその一つで、AIGの大幅な下落はダウに直接的影響を及ぼします。

しかし昨日はHPなどが値を上げ、ダウは全体として値を戻しました。

30銘柄の個々の動きを一覧するには『こちら』をどうぞ。

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コンラッド

普段はあまり使われることのないコンラッド・ヒルトンの地下三階駐車場。

ここで日本で最初のk.o7 と k.o8 の発表会が行われました。

NextNinjaが製作したというホームページも新しくアップされています。

詳しくは『こちら』をどうぞ。

           Img_ko7_overview_07_s

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2008年9月16日 (火)

The sky is falling...

リーマンの破綻を受け、株式市場に激震が走っています。更に加えてドルは下落(一時104円50銭)、そして原油も下落($96)。

The sky is falling....とは下記のビデオプログラムでの出演者の発言。

いずれゴールドマン、モルガンスタンレーも消え株式市場は2割くらい下落するかもしれないというニューヨーク大学Stern SchoolのNouriel Roubini氏の発言はかなり衝撃的です。

詳しくは『こちら』

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2008年9月15日 (月)

リーマン破綻、メリルはBOAが買収

リーマンは連邦破産法11条申請。

フランクフルトの市場ではリーマンの株価は84%下落し、57セントに。

一方BOAが買収することになったメリルはフランクフルト市場で40%上昇し24ドルに。

明暗が分かれた対応になりました。

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敬老の日

今日は敬老の日。 日本では75歳以上が人口の1割超を占め、65歳以上が22%を占めます(詳しくは『こちら』。) 平均余命は、男性79・19歳、女性85・99歳。

しかし1950年日本人男子の平均余命は58歳。 東京オリンピックが行われた1964年でさえ日本人男子の平均余命は68歳未満。

         1_4

(上図の黒い線が日本。出所:『社会実情データ図録』。詳しくは『こちら』。) ちなみに今でもロシア人男子の平均余命は58.9歳です。(詳しくは『こちら』。)      

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2008年9月14日 (日)

シジフォス

私が興銀から外資系投資銀行に転職(1998年)して最初に実感したのは手数料商売の厳しさでした。

投資銀行の投資銀行部門はM&A、株式や社債の引受などで手数料を得ることが主業務です。

毎年目標があって一年間必死で働き何とか目標を達成。

すると次の年はまたゼロからの出発です。

そして年の初めからまた少しづつ手数料収入を積み上げていく。

ギリシャ神話に登場するシジフォスは尖った山の頂に岩を上げるようゼウスに命じられますが、上げても上げても岩は下に転げ落ちる。

               2_2 

手数料ビジネスにはこれと似たようなところがあります。(常に翌年はゼロからスタートして、また手数料収入を積み上げて行かなければなりません。)

一方、興銀の場合は商業銀行でした。

貸出資産(貸付金)と預金(債券)との金利差で収益が上がります。これは一年が終わっても資産(と負債)が相当部分残っていますのでゼロから出発するのとは根本的に違います。

手数料ビジネスとアセット(資産)ビジネスの違いです。

このように見ていくと投資銀行がアセット(資産)を持ちたがるのは自明の理であったのかもしれません。

シジフォスのように手数料収入を積み上げてもまた翌年からゼロでスタートする必要が無くなるからです。

しかもそのアセットを自らの資本ではなくて負債で見合わせる ― すなわちレバレッジを掛ければ、大きな収益が上がる。

その結果、多くの投資銀行はショッピングセンターを持ったり、ウィークリーマンションやゴルフ場を保有して経営するようになりました。

苦しくてもアセット(資産)に頼ることなくして手数料ビジネスに特化していれば名門リーマンブラザーズが破綻の危機に瀕するようになることはありませんでした。

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2008年9月13日 (土)

Live or die by the free market

対処するための十分な時間も無いまま資金ショートに陥ったベアスターンズに比して、リーマンブラザーズにはこれまで十分な時間もあったし、現に『今』でさえFRBから必要な資金を調達できる。

したがってベアの時のように政府が支援することに対しては米国では否定的な意見が多いようです。

"Live or die by the free market" といった意見です。

リーマンがどうなるかについては、早ければ今週末には決着するかもしれず、買収候補先としては、Bank of America、 Deutsche、 Barclays などの名前が上がっています。

日本の野村や三菱がそんなに早く決断できる可能性は殆ど無いと見られています。

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2008年9月11日 (木)

リーマンブラザーズ

2001年9月11日。

7年前の今日。リーマンの社員だった私は米国サンフランシスコにいました。

テクノロジー関連の世界の主要な企業の経営陣と数多くの機関投資家を招いて、サンフランシスコのホテルを半ば貸し切る形でインベスター・コンフェランスを開催していたのです。

9.11 後、それまで 31ドル(その後のストック・スプリット調整後の値段)あったリーマンの株価は 23ドルに急落。

CEOのDick Fuld が幹部社員を集め腕を捲り上げたワイシャツ姿で「この危機を乗り越えよう」と訴えていました。

その後、リーマンの株価は85ドル80セントをつけます(2007年2月)が、昨日は6ドル90セント(After hours trading)まで下落。

私はリーマン退職時にリーマンの株を貰い、「記念に持っておこう」とそのままキープしていましたが、2007年2月の高値に比し、92%も下落。

「記念に持っておこう」と売らないでいたのは「甘かった」と、損をしてみて改めて反省させられます。

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2008年9月10日 (水)

ハイパーインフレ

先週から今週にかけてドルの信認について幾つかのグラフをみてきました。

ところで、通貨に対する信認が喪失し、その喪失が極限にまで達するとハイパーインフレとなって人々の生活に襲いかかってきます。

現在の米国や欧州、日本でこのような事態が生じることは考えられません。

したがって過度な心配は無用です。(逆にこうした危機を煽っておかしな投資話が持ち込まれることがありますので注意が必要です。)

ただ過去にこういったことがあったのだ、あるいは現在でも一部の国ではこういったことが起こっていることを知っておくことは必要でしょう。

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これ(↑)は第一次世界大戦後のドイツの写真。

ハイパーインフレのため通貨の価値が紙切れ同様となり主婦が薪代わりに紙幣を燃やしているところです。

下の2枚の写真は今日のジンバブエ。

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2008年7月17日ジンバブエ政府は同国のインフレ率が220万%に達したと報じました。

ユーロ圏のメンバーとなった今でも、ドイツがインフレに関して神経質なのは過去の苦い経験が影響しているものと思われます。

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2008年9月 9日 (火)

Good Bank, Bad Bank

米国のメディアによるとリーマンブラザーズは自らをGood Bank と、Bad Bank の2つに分けることを考えているようです。

かつてリーマンの投資銀行部隊が不良債権を抱えた金融機関にアドバイスした手法。

それを今度は自らに適用することを検討するようになるとはよもや思いませんでした。

Good Bank と、Bad Bank の2つに分けるというのはある種の大手術。

成功すればこの問題に一気にけりをつけることが出来るのでしょうが、大手術特有の危険と痛み(例:株価が一時的に急落するかもしれない)を伴うかもしれません。

以下は一部の記事からの抜粋です。

There also have been reports that Fuld will split the company into two separately listed firms -- creating what analysts call a "good bank" and a "bad bank." The investment bank's $32 billion portfolio of risky mortgage securities would be allocated to a new company supported by new debt and equity.

That would free up the fixed-income and investment banking side of Lehman Brothers to operate without the problems caused by the mortgage portfolio. The split would also be funded through a major equity investment, most likely from a Korean or Japanese bank, according to several media reports.

Asset Management を業務とするNeuberger(かつてLehmanが買収で傘下に収めたもの)の売却で何とかするだろうとの見方もあります。

Brad Hintz, a former Lehman Brothers chief financial officer who is now an analyst at Sanford C. Bernstein, said he believes the company should spin off Neuberger and sell some of its real estate businesses. He also projects the company will write down $4 billion to $5 billion in risky mortgage securities when it posts results later this month, and those losses could be offset by the Neuberger deal.

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2008年9月 8日 (月)

野村によるリーマン・ブラザーズへの出資検討

野村の渡部賢一社長が読売新聞のインタビューで明らかにしたコメントがウォールストリート・ジャーナルやロイターなど海外のマスコミを賑わしています。

野村の渡部社長は、欧米金融機関への出資や買収のための資金として「2000億円以上を使える」としたうえで、リーマンは「複数ある出資先候補の一つだ」と述べたとのこと。

リーマンへの出資に関心を示している先としては、これまでにもKKR、韓国産業銀行、三菱UFJフィナンシャルグループなどの名前が挙げられてきていますが、野村もこれに加わり、いよいよもってその帰趨が注目されることとなってきました。

リーマンの第3四半期決算では「4000億円にも上る償却が必要になる」との観測もあり、今月中旬(昨年は9月18日)に発表される決算がどうなるか、今週から来週にかけてサブプライム問題も一つの山場を迎えることになります。

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2008年9月 7日 (日)

財政赤字

前回アメリカの貿易収支について見ました。

さてアメリカの双子の赤字のもう一方の財政赤字。

1981年度以降2009年度(08年10月-09年9月)までの財政収支(但し08、09年度は推計)をプロットしたのが下のグラフです(クリックすると大きくなります。)

Photo_6

1998年度から2001年度まで(クリントン政権後期とほぼ重なります)、米国は財政黒字でしたが、2003年度、米国は建国以来初めて3000億ドルを超える規模の財政赤字に陥りました。

イラク戦争です。(2003年3月19日イラク戦争開始。)

そして2009年度には財政赤字は4800億ドルを超えると予想されるに至っています。

前回見た貿易赤字と相俟ってだんだんとドルの価値に陰りが見えるようになってきた背景がこの辺にあります。

(といってもアメリカの財政赤字はGDPの3.2%。日本は既に対GDP比で4.8%の財政赤字となっています。)

          

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2008年9月 1日 (月)

未体験ゾーン

福田首相の辞任表明で揺れる日本の政局。

経済の世界でもこれまで経験したことのないような事態が続きます。

* * * * *

数年前は20ドルだった原油が100ドルを超えるようになる。

これまでは先進国10億人が原油を燃やして便利な生活を享受していたが、もはや10億ではなく、これにBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の28億人を加えた38億人が石油をエネルギーとして消費するようになっってきた。

原料価格は上がるが製品価格は下がる。

スタグフレーションかと思えば、賃金は上がらない。

* * * * *

このように世界各地でこれまで経験したことが無いようなことが起きてきていますが、一見関連性の無いような一連の出来事の裏には何か共通の原因があるのではないでしょうか?

Photo_2

上図はアメリカの貿易収支と経常収支を1981年以降2007年までグラフ化したものです。

実はこのグラフは1981年よりもずっと昔まで遡って描くことも出来ます。

建国以来1997年までアメリカの貿易収支、経常収支はずっと

2000億ドル以下でした。

それが1998年頃から加速度的に赤字が膨らみ、貿易収支の赤字はついに8000億ドルを超えてしまった。

これだけの赤字の裏側にあるのは中国などによる対アメリカへの輸出増です。

(1) 『8000億ドルを超える貿易収支赤字』は、(4000億ドルを超える財政赤字と相俟って)通貨としてのドルの価値を下げた(原材料の価格上昇)

(2) 『8000億ドルを超える貿易収支赤字』は、BRICsにとっては輸出増加であり新興諸国の経済を発展させることにつながった(原油などの需要増)。

まさに風船が膨らむように過大となったアメリカ人の消費が世界景気拡大に役立ってきた様が見て取れるグラフです。

今後アメリカの貿易収支、経常収支が縮小に向かえば、ドルの復権には繋がるでしょうが、一方で新興諸国にとっては、これまでのように経済を急ペースで発展させることが難しくなることを意味します。

良くも悪くもアメリカ人の過大とも言える消費がBRICsの成長を牽引してきた。

そんな時代がそろそろ終焉をむかえつつあるのかもしれません。

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