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2008年10月27日 (月)

Collateral Damage (その2)

先週金曜日のブログ記事の追加です。

ウルフソン教授が、

『ポールソン財務長官には、B か B- の成績(評価)しか与えられない』

と言ったのは、

ポールソンがリーマン破綻の“コラテラル・ダメージ” を miscalculate(誤算)したからです。

ポールソン氏は資本主義のロジック(筋)を通してリーマンに引導を渡しました。しかしこのことのコラテラル・ダメージ(付帯的な被害)を考えると、実はことの重要性は資本主義のロジックに固執するとかしないとか、そんなレベルを既に超えてしまっていたのです。

今回の危機に関してドイツのシュタインブリュック財務相はこう述べました。

『マルクス理論の一部はそれほど悪いものではないと認めざるをえない』。

いま急速な勢いでリーマンを破綻させたことの影響が世界に広がっています。

日本では『アメリカの時代は終わった』、『これからは日本の時代だ』、『絶好の買い場だ』といった議論が多くなっていますが、世界が危機に瀕している状況を鑑みるに違和感を感じぜざるをえません。

1914年、オーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公夫妻がサラエボ視察中にセルビア人の青年によって暗殺されたサラエボ事件。

この事件が起きたときは、これがまさか第一次世界大戦につながっていくとは殆どの人が思っていませんでした。

あたかも94年前にセルビア人が引いた銃の引き金が世界の大波乱に繋がってしまったように、リーマンの破綻が世界の金融恐慌の引き金となってしまう・・・そういった事態に至らないように切に願います。

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2008年10月26日 (日)

『水俣から、未来へ』 

熊本日日新聞社編  『水俣から、未来へ』 (岩波書店)。

本屋さんで目に留まり思わず買ってしまいました(2,520円とチョッと高めの定価なので少し迷いましたが・・)。

私は1992年から5年間、日本興業銀行(本店営業第3部課長)で水俣病の原因企業であるチッソ㈱を担当していました。

当時の興銀では新任の課長が着任し引継ぎなどが一通り終わった頃合いを見計らってチッソの人がレクチャーに来てくれました。3~4年の人事異動で替わってしまう銀行の課長に比べてチッソの幹部の方たちは長い期間担当していますのでいろいろな問題を熟知しているのです。

『水俣病認定の問題は政治問題化してしまい、政治的に新規の患者を掘り起こそうといった動きが広まってしまったのです。』

『水俣の近くでゴルフをしているとキャディーさんが、私もそろそろ疲れたから仕事を辞めて水俣病にでもなろうかしら、といった話をしているのが聞こえてきます。』

もちろん我々銀行員は馬鹿ではありませんので、こういったチッソの話を全て鵜呑みにする訳にはいきません。

私は水俣病と題する本や雑誌、新聞を片っ端から読み、役所の方たちとも意見交換をし、政治家の方たちの訪問も受けました。

当時の興銀営業第3部(第3班)では熊本日日新聞と西日本新聞を定期購読していて私は毎日両紙を読んでいました。

また興銀はチッソに対して金融支援をしていましたので、当然のこととしてチッソからの接待の誘いは全てお断りし、逆にチッソが全国に持っていたゴルフ会員権の一覧表を求めたり、これらの売却を促したりと、私はかなり厳しくチッソに接しました。

『今度の課長は厳しくて扱いづらい』

チッソの上層部から興銀の部長にこのようなクレームがなされた―。そういった情報も伝わってきました。

自分としては精一杯努力したつもりなのですが、それでもいまこうやって上記の本を読んでみますと、やはり私は当時偏った情報しか得ていなかったのだと悔やまれます。

いったい私は何人の患者の方たちの話を直接聞いたのでしょうか。

ゼロです。

この本の編者である熊本日日新聞社の山口和也さんは次のように書いています。

『水俣病を発生させ、被害を拡大させたことは悲しむべきことですが、人類がそこからいつまでも教訓を得ないなら、もっと悲しむべき事態と思います。』

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2008年10月24日 (金)

Collateral Damage

私がスタンフォードのビジネス・スクールに行って最初に受けた授業(1978年)がアカウンティング(会計学)。

教えてくれたのはマーク・ウルフソン教授(現在ではOak Hill Capital ManagementのManaging Partnerも兼務)。

当時スタンフォードのビジネススクールではバーナンキFRB議長も教えていました。

私はバーナンキの授業を取りませんでした(多分・・。たとえ取っていたとしても記憶に残っていません)が、ウルフソン教授によると

『バーナンキは大学で パネル・ディスカッションやスピーチなどを求められた際に、よく彼が研究していた大恐慌について話していた』

とのことです。

スタンフォードの先生としてはバーナンキよりも少しだけ先輩のウルフソン教授。

彼が、バーナンキとポールソン(財務長官)の仕事ぶりに成績をつけるとしたら、

『バーナンキは A。 間違いなく A ("Solid A") だ。一方、ポールソンには、B か B- しか与えられない』

というのがウルフソン教授の評価。

『なぜなら彼は “コラテラル・ダメージ” を miscalculate(誤算)したからだ。』

コラテラル・ダメージ。

そう言えば、アーノルド・シュワルツネッガーの映画に 『コラテラル・ダメージ』 というのがありましたね。

確かにポールソン氏には今後そういった評価が付いて回るかもしれません。

汚名挽回の為にもこれから先、がんばって欲しいと思います。

まだまだそのチャンスはあるのですから。

ところで、ウルフソン教授の上記のコメントは10月10日ー12日に行われたスタンフォード大学の Fall Reunions & Alumni Weekend でのもの。

以下の5人のパネリスト達が現在の金融危機について語っています。

Panelists
Dennis Lockhart, President and Chief Executive Officer of the Federal Reserve Bank in Atlanta.

John Taylor, Senior Fellow at the Hoover Institution. He is also a former SIEPR director and current Senior Fellow.

Mark Wolfson, consulting professor in accounting and finance at the Graduate School of Business, Managing Partner of Oak Hill Capital Management, and SIEPR Board member.

Anne Casscells, Managing Director and Co-President and Chief Investment Officer of absolute return strategies, Aetos Capital.

Darrell Duffie, Dean Witter Distinguished Professor of Finance at the Graduate School of Business and President-Elect of the American Finance Association.

司会は:

Moderator
John B. Shoven, the Charles R. Schwab Professor of Economics, the Wallace R. Hawley Director of the Stanford Institute for Economic Policy Research (SIEPR), and a Senior Fellow by courtesy of the Hoover Institution

このパネルの様子はon-lineでも見ることが出来ます。

約30分間の英語なのですが、これだけの人たちの興味深い分析を一度に聞ける(しかも無料で!)機会はちょっとないと思います。

ご興味のある方は下記をクリックしてみてください。

http://siepr.stanford.edu/news/stanalumniShort.wmv.

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82軒に1軒が競売(差し押さえ)物件

Foreclosure(競売;抵当流れ;差し押さえ)物件が一番多いネバダ州の数字です。

全米でみると475軒に1軒の割合。

因みに1位:ネバダ(ラスベガスのある州ですね)

2位:フロリダ(岩村選手が活躍するタンパがある州)

3位:カリフォルニア(ロスやサンフランシスコなどの都市がある州)

Foreclosures_4

地図で赤いところがForeclosureの多いところです。

詳しくは 『こちら』 をどうぞ。10月23日にリリースされたばかりの9月のデータが載っています。

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2008年10月23日 (木)

投資銀行業務は無くならない(その2)

一昨日の続きです。

投資銀行が引き受けた公債・社債・株式は投資家に対して販売しなくてはなりません。

この販売を円滑に行う為、投資銀行は自らが引き受けた公債・社債・株式を販売するだけでなく、他社が引き受けたものの購入・販売(セカンダリー市場での売買)にも積極的に関与してきました。

いわゆるセールス&トレーディング業務(販売業務と『売った、買った』のトレーディング)です。

従って投資銀行の、①投資銀行本部、、②債券本部、③株式本部の三つの部門では顧客の顔ぶれが明確に異なってきます。

①の投資銀行本部の顧客は公債・社債・株式の発行体であるところの国家や企業です。

一方、②の債券本部や③の株式本部の顧客(販売の相手先)は、これらの公債・社債・株式を購入することになる投資家(機関投資家)が主たる顧客層なのです。

ところで、2008年の春まで存在したアメリカの5大投資銀行はそれぞれ異なった歴史・沿革を有し、結果、得意とする業務も微妙に違っていました。

非常に大胆な形で色分けをすることが許されるとすれば、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーは①の投資銀行本部がおこなう業務が強く、メリルリンチは③の株式本部が強力でした(【注】この辺については『いや、違う。当社こそ○○に強い』というご指摘もあるかもしれません。あくまでも私の個人的感触です。)

そしてリーマンブラザーズやベアスターンズが強いとされてきたのが②の債券本部であったのです。

実際リーマンでは最高経営責任者(CEO)兼会長のファルド氏を初め、投資銀行本部長からCOO(最高執行責任者)となったブラッド・ジャック氏など、社の上層部の多くが債券本部の出身でした。

そしてこの債券本部こそがサブプライムローンを証券化して世界の機関投資家に販売するという業務に従事していたのです。

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2008年10月22日 (水)

希望(ギリシャ語)を意味するエルピーダ

エルピーダ(Elpida)とはギリシャ語の希望を語源とする言葉(詳しくは『こちら』)。

10月14日に 2009年3月期第2四半期(2008年4月1日~2008年9月30日)の連結業績の見込みを発表、併せて新株予約権付社債の発行を決議したエルピーダメモリ。

株価は5日連続でストップ安を記録し、6日目の本日漸く寄り付きました。

Elpida

10月14日 1,383円(終値)

10月22日  607円(終値)

CBの当初転換価額は10月15日-17日の3取引日の終値の平均値(但し3取引日ともストップ安で引けています)。

下限転換価額は当初転換価額として決まった 1,017 円の 50%である 509 円。

新株予約権付社債の割当先は Nomura Asia Limited。

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2008年10月21日 (火)

投資銀行業務は無くならない(その1)

リーマンが破綻し、ベアやメリルは吸収合併され、ゴールドマン、モルスタは銀行持ち株会社へ。

しかし投資銀行業務が無くなるわけではありません。

投資銀行の本源的業務は、第一に国家や企業の資金調達の相談に乗ることです。

アドバイス(助言)を提供することからアドバイザリー・ビジネス(助言提供業務)とも言われています。

最近ではM&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務も多くあります。

そして第二の本源的業務はアドバイスを提供するだけでなく、公債、社債、株式を引き受けることによって実際に資金を用立てることです。

アドバイスと引き受け。

これが投資銀行の本源的業務です。

投資銀行は伝統的に、①投資銀行本部、②債券本部、③株式本部の三つの部門から成り立ってきています。

このうち、①の投資銀行本部がアドバイスの提供と引き受けの業務に従事しています。(引受業務を②、③の部門で行うところもあります。)

投資銀行の中にあって、あえて「投資銀行本部」と呼ぶのは、これらの業務こそが投資銀行としての本源的業務であることの所以であるといえましょう。

1815年、ナポレオン一世率いるフランスと、イギリス・オランダ連合軍およびプロイセン軍との間で行なわれたワーテルローの戦い。

この戦いに敗れ巨大な賠償金を課せられたフランスに対して、これを支払う為の資金を用立てたのは、当時ロスチャイルド商会と肩を並べていたベアリング商会です。

この当時フランスの政治家リシュリュー公爵をして「ヨーロッパには6大列強がいる。英国、フランス、プロイセン、オーストリア、ロシア、それにベアリング・ブラザーズ(商会)だ」と言わしめたといいます。

また1870年代、すでにJ・ピアポント・モルガン(JPモルガン商会社主)は

「自分を企業に対する単なる資金提供者ではなくそれ以上のもっと重要な存在として位置づけ始めた。つまり企業の法律顧問、最高指導者、相談相手になることを望んだ」(ロン・チャーナウ著『モルガン家』)

といいます。

そして1901年のカーネギーの鉄鋼会社とフェデラル製鋼との合併によるUSスチール設立に際し主導的役割を果していくのです。

今で言うM&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務の草分け的なディールでした。

このように投資銀行本部がアドバイスを提供し、公債、社債、株式を引き受けます。

そしてこれらの引き受けた公債、社債を投資家(今では生命保険、損害保険、年金基金、信託銀行などの機関投資家)に販売するのが、②の債券本部であり、一方、引き受けた株式を販売するのが、③の株式本部という体制を形作ってきたのです。

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2008年10月19日 (日)

アルコール、飲むほどに脳が縮小(・・?)

ネットの世界で話題(詳しくは『こちら』)になっていたので、ご存知の方も多いと思いますが、10月14日配信のロイター電(詳しくは『こちら』)です。

2008年 10月 14日 12:12 JST

[ワシントン 13日 ロイター] アルコールを飲めば飲むほど脳が縮小するという研究結果が13日、明らかになった。米マサチューセッツ州のウェルズリー大学のキャロル・アン・ポール氏が率いる研究チームが、神経学の専門誌「Archives of Neurology」で発表した。

 研究チームでは、適量のアルコールにより加齢によって進む脳容積の減少を食い止めることが可能かを検証しようとしたが、結果は不可能だったという。

 同研究によると、生涯にわたって酒を飲まなかった人々が最も脳容積の減少が少なかった。続いて、過去に飲酒していたが今は飲まない人々、現在適度な飲酒をする人々、現在大量に飲酒する人々の順で、脳容量の減少の割合が少なかった。

 これまで、多くの研究によって適度の飲酒は心臓に良いとされてきた。

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2008年10月15日 (水)

いまそこにある危機

Clear and present danger (いまそこにある危機)。

人類共通の危機を前にして、如何にして人類が協調しながらこれ以上の悲劇を回避するか ― 主要国の金融当局はいま必死の対応をしているところです。

一つの事象がより大きな別の危機を予感させます。

水産業中心のアイスランドが金融立国を目指しその結果いま破局の瀬戸際に瀕しています。

それではかつて酪農中心であった金融中心の別の国はどうなのでしょうか。

あるいは、リーマンで起きたことが他の金融機関(大手商業銀行)でも起きたら・・?

そういった悲劇的状況に陥らないように現在各国が英知を集め協調してこれに対処しているわけです。

仕事で付き合いのある何人かの方々から

『(株式投資を行う上で)いまこそ絶好の買い時でしょうか』

といった質問を頂戴しました。

同じ質問に何度かお答えしていくうちに、(その設問自体に)正直やや違和感を感じるようになりました。

私の答えは少しずつ変化していき、『結果的に(振り返ってみると)絶好の買い場であったという状況になって欲しい』と願望のような答え(?)になってしまいました。

考えてみますと、158年間も続いたリーマンブラザーズが破綻するというのは大恐慌の時にも無かったことです。

そして大恐慌の際、これを機に(逆に)ひと儲けしようと狙っていたユダヤ人も、そうしなかったユダヤ人も、ヒトラーによって一様に私有財産は全部没収され多くは命までも取られてしまいました。

こういった起きてはならないような悲劇が今日の世界で、形を変えた、別の起きてはならない悲劇となって現われることだけは避けなければなりません。

ポールソン財務長官は "government owning a stake in any private U.S. company is objectionable to most Americans," と言いましたが、同時に、もう一つの選択肢である "leaving businesses and consumers without access to financing " は  "totally unacceptable" であると力説しました。

『いまそこにある危機』-我々は協調してこれに対処していかなければなりません。

『絶好の買い場』かどうかを気にしているうちに、もっと大きなどうしようもない悲劇に飲み込まれてしまうかもしれません。そしてこれだけは何としても避けなければならないのです。

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2008年10月14日 (火)

救世主

三菱UFJが約束通りモルスタに出資したことも一助となって買いが広がり、ダウは11%高。

ヨーロッパFTSE100は8%高。DAX11%高。 アジアのハンセン 10%高。

東京も今日は大幅高が見込まれます。

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夢を売る人

『我々は夢を売っているんだ。私はこのことをマラネロ (Maranello) で働く当社社員にいつも繰り返し話している。』

フェラーリ社の社長である Luca di Montezemolo の言葉です。

有名な跳ね馬 (Prancing Horse) の Symbol。

実は年代とともに微妙に変わってきています。

一番左が1920年代。次が1930年代。現在は一番右です。 

   Evolution_2

些細なところにも伝統とこだわり、そして進化を感じさせられます。

夢を売る。デザイン、性能、サービス全てが完璧であって初めて可能になることです。しかもそれに加えて何かがある。

これこそが伝統に裏打ちされた『ブランド』なのだと思います。

夢を売る。

この一言にブランドの真髄を感じ、(中国など新興国に追われる立場にある)日本企業が将来行くべき道を見る気がします。

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2008年10月13日 (月)

CFO

表参道を歩いていましたら、青山ブックセンターの回りを取り囲むように何百(千?)という人の列が・・!?

何事かと思って覘いてみましたら堀北真希握手会。

これだけ沢山のファン(それも何時間も列になって待ち続けている!)の人たちと握手するんじゃ女優さんも大変ですね。

さて話は変わりますが、米国自動車会社3社の中では財務的に良い方と言われているフォード。

6月末時点で382億ドル(3兆8200億円)の『現金と信用枠(借入れが出来る枠)』を保持していたとのことです(詳しくは『こちら』)。

3社の中で“best positioned” と言われる状況にフォードをもっていったのがCFOのDon Leclair氏。

フォードに32年間勤務してきた56歳のLeclair氏は来月1日に“retire”することになったのですが、

『何でこのsensitiveな時期に・・』と話題になっています。

後任はマツダの社長を務めたこともあるLewis Booth氏(59歳)。

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2008年10月12日 (日)

秋晴れ

今日は気持ちいい秋晴れですね。

昨日私は大阪経済大学での講義に行ってきました。

三連休の初日ということもあって朝の東京駅は行楽地に向かう人々でかなり混雑していました。

新幹線のホームに上るエスカレーターで、すぐ後ろから50代とおぼしきご婦人二人の会話が聞こえてきます。

『大変ねえ。仕事なのかしら?』

『あら、土曜日にやっている会社もまだあるのよ。』

これはヒョッとして・・

スーツ姿の私のことを言っているのだ!・・と気づきました。

日本のバブル崩壊の時期、東京四谷の「とあるバー」でたまたま一緒になった当時日銀の局長だったAさんとの会話を思い出します。

『大変だ、大変だって騒いでいるのはマスコミと金融界。人々が街でパンを求めて行列を作っているわけではない。』

通貨の番人としての言葉だったのだと思います。

確かに東京駅の中を闊歩する“上から目線のオバサンたち”(失礼!)の姿は非常に逞しく見えました。

しかし・・・

世界の株式市場は9月からの1ヶ月余りで既に(日本全体の個人金融資産にほぼ等しい)1400兆円の時価総額を失っています。

沈みゆくタイタニック号の乗客だったといった事態にならぬよう、人類の英知を結集させ英断をもって迅速に対応する。そういった局面に来ているように思います。  

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2008年10月10日 (金)

恐怖の連鎖が支配する世界

GMの株価が4ドル76セントとなり、1950年以来の最安値となってしまいました。

マーケットがGMの倒産確率をどう見ているかについては7月14日のブログに書いていますので、『こちら』をどうぞ。

昨日のダウ平均株価は675ドル下落し、8500ドル台に。

Dow5

さて私は、昨日書きましたように今週オフィスに殆ど居ることもなくオーストリアやチェコの人たちを連れて日本の関係先を回っています。

朝から晩まで彼らと一緒にいるといろいろな点に話が及びます。

例えばおれおれ詐欺(振込み詐欺)について私が『日本ではこんな犯罪がある』と話をすると彼らいわく

『ヨーロッパでもおれおれ詐欺は流行っている。』

『孫をよそおってGrandpaとか Grandmaに電話をかけて送金させる。多くの高齢者が被害にあっている。』

分かっていても引っかかってしまう。

人間の心理というのは世界共通ということなのでしょうか。

そう言えばマーケットの方も『恐怖の世界的な連鎖』が支配しているように感じられます。

全員が売り浴びせていて、

買っているのは、

(優良企業のGEとゴールドマンの株を大量に購入した) 『バフェットだけ』

といったような状況になってきました。

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2008年10月 9日 (木)

『混乱は直ぐには終わらない』

ポールソン財務長官自身が

『混乱は直ぐには終わらない。我々の前には依然として大きな挑戦が取り残されている(立ちはだかっている)

("the turmoil will not end quickly and significant challenges remain ahead.")』

と言っています。

昨日のダウも最終的には下落しました。

Dow4

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押し寄せる津波

各国中央銀行(6行)の協調利下げもニューヨーク市場オープン後2時間の状況を見る限り不発に終わっています。

押し寄せる津波の前には無力―といった感じなのでしょうか。

私は今週オーストリアやチェコの人たちと朝から晩まで一緒に過ごし、日本の関係先をぐるぐる回っています。

『ソ連軍が自国に攻め込んできたことを今でも覚えている』というチェコの方の言葉を聞くと改めて我々日本は長い間続いた平和・平穏に慣れてしまったのだなと思います。

世界的金融危機が進む中、一緒に乗り込んだタクシーの中での彼らの会話は『アイスランドは一体どうなるのだろうか』というもの。

日本人同士の会話とは『さすがに少し視点が違うな・・』と思いましたが、アイスランドの問題が欧州全域に大きな影響を及ぼす可能性も否定できません。

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2008年10月 8日 (水)

得した人、損した人

昨日のニューヨークは500ドル以上の下落。

Dow3

さて、やや週刊誌的な話題で恐縮ですが今回の金融危機で得した人と損した人。

ニューズウィーク誌などにも載っていますが、まずは損した経営者。

ジェームス・ケイン。ベアスターンズのCEOだった人。

彼は、ベアの株(2007年には1株170ドルにも達した)を580万株保有していました。

これを彼は1株10ドル強の6300万ドル(66億円)で売り、損失額(得し損なった金額)は8億5000万ドル(893億円)に達したとのことです。

同じくリーマンのファルド会長。

所有するリーマンの株1080万株の『4分の1』に当る株数を1株25セントで売却。

保有分も合わせ損失額は8億8000万ドル(924億円)。

以上は日本版ニューズウィーク10月8日号からです(詳しくは雑誌をご覧になってください)。

同じ投資銀行でもゴールドマンのポールソン前会長(現財務長官)になると話は違ってきます。

2006年7月に財務長官に就任した際、彼は保有するゴールドマンの持ち株を(就任前に)全株売却せざるを得ませんでした。(公職に就く者が特定の企業の株を持っているのは問題とされるためです。)

このときポールソン氏が売却したゴールドマンの株は額にして5億ドル(525億円)。

しかも公職就任(Federal Appointee)の理由による売却の為、税金(キャピタル・ゲイン・タックス)を全て免除されています。

ちなみに2006年7月のゴールドマンの株価は140ドル前後。現在は115ドル前後ですのでタイミング的にも(2007年には250ドルを付けたことはありますが)、まずまずであったというべきでしょう。

それにしても1000億円近く損した人(しかし66億円の現金は手にしている)と、500億円以上の現金を手にした人。

いずれにしても『ウォール街は greed (欲)が渦巻く特殊な街だった』ということですね。

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2008年10月 7日 (火)

史上最大の下げの後・・

昨日(10月6日)のニューヨーク(ダウ平均株価)。

Dow2

史上最大の下げ(800ドル)を記録した後、急回復する形で終わっています。

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2008年10月 6日 (月)

長期投資

サブプライムの激動が続きます。

ところで過去10年間、今日まで同じ株を持ち続けたとしたらどうなっていたのでしょうか。

トヨタ 2,645円→4,080円

キヤノン 2,050円→3,840円

日経平均 12,879円→10,938円

これらの数値を、年率何%で増加したか(下落したか)の『年率平均』の形に置きなおしてグラフ化したのが下図です。

現在の1年もの定期預金 0.35%を参考までに右に示しました。

一番右のグラフはバフェットのポートフォリオのパフォーマンス。42年間で年率平均21%の増加には脱帽させられます。

年率平均21%がどういう数字かというと、バフェットのアニュアル・レポートに出てきますが、1964年から2007年にかけて(43年間かけて) 400,863%増加したしたということです。

仮にあなたがバフェットに1964年に100万円預けたとします。

この間、ベトナム戦争、ブラックマンデー、イラク戦争、サブプライムといろいろありましたが、あなたの100万円は40億円になっています。

バフェットがファンドを始めた1956年まで遡れば、100万円は320億円になっています。

10

さて次のグラフ。

これは仮にあなたが日本のバブルのピーク(1989年12月29日)に100万円を投じて株を買ったら先週末(10月10日現在)どうなっていたかを示したものです。

キヤノンを買っていれば210万円になっていましたが、NECなら78万円の損失になっていました。

Photo_2

このように過去を語るのは簡単ですが、問題は今後の10年をどう読むかですね。

はたしていま138,500ドル(1500万円)を投じてバフェットのバークシャーの株を買うのが良いかどうか。

ちなみに1年前(2007年10月10日)のバークシャーの株価は、124,700ドル。

サブプライムの中でも、1年間で11%ほど株価を上げています。

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2008年10月 5日 (日)

メドレーリレー

メドレーリレーは競泳の種目の一つで4人が同じ距離ずつ、背泳ぎ→平泳ぎ→バタフライ→自由形の順でリレーしながら泳ぎます。

メドレーリレーと言うと、やはり何といっても、北京オリンピック、競泳男子400メートルメドレーリレーでの日本チームの健闘ぶりが思い起こされますね。

ところで、このメドレーリレーに似たのが大阪経済大学の講義『投資戦略論』。

4人の講師が4コマづつそれぞれの得意分野を講義していきます(全部で90分×4講座×4人)。

講師は順番に、三原→岩崎→高田→熊谷

と続きます。

最初の4講座は経済評論家の三原淳雄さん。テレビやラジオでも活躍されていますので皆さんご存知かと思います(詳しくは『こちら』)。

三原さんは4人の講師陣のキャプテン格。競泳男子400メートルメドレーリレーで言えば、さしずめ北島選手といったところでしょうか。

今年から新しく講師陣に加わる高田創さんはみずほ証券投資戦略部長、チーフ・ストラジスト。

そしてアンカーが大和総研の熊谷亮丸シニアエコノミスト。

たまたまの偶然なのでしょうか、三原さん以外の三人が全員興銀出身となってしまいました。

世界経済がTurmoil の渦の中にある、このタイミングでの『投資戦略論』。

講義をする方にとっても相当チャレンジングです。

場所は大阪経済大学北浜キャンパス社会人大学院。私自身は昨年に続き今年が二度目になります。関西ご在住で受講にご関心のある方は大学事務局にコンタクトされてみては如何でしょう。

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2008年10月 3日 (金)

Bailout or Rescue

日本のマスコミでは丁寧に『米国の金融安定化法案』とか『金融関連法案』といった呼び方をしています。

アメリカでも正式には 『Emergency Economic Stabilization Act of 2008』です。

ただアメリカのメディアではずっと Bailout Plan と言ってきました。

これに対して共和党からの大統領候補のマケインがCNNのインタビューでこう言い出しました。

“The first thing I'd do is say, let's not call it a bailout, let's call it a rescue because it is a rescue. It's a rescue of Main Street America..”

Bailout と Rescue の違い。

アメリカのマスコミでも話題になって何人かの記者の方が記事を書いています。

ミルウォーキーのJS Online (Kathy Schenck記者)から:

『辞書を見れば両者に大差はない。

Bailout: To help a person or organization that is in difficulty, usually by giving or lending them money.

Rescue: To help someone or something out of a dangerous, harmful or unpleasant situation.

しかし Rescue の方がもっと noble な行為だ。燃えているビルから子供を吸い出すのはrescue だ。

一方で Bailout には 歴史的にもネガティブな意味合いを含んでいる気がする。特に政府が納税者の金を使って企業を help する際にこの言葉が使われる時にはなお更さらその傾向が強い。』

テレビでこう発言する解説者(Fred Barnes 氏)も:

『“Bailout” sounds terrible. Who is for a bailout? A lot of people are for a rescue..』

ウィスコンシン・ルセラン大学のJacobsen 教授は次のようにコメント:

"The word bailout itself suggests to me that the government is going to step in and actually compensate the banks or people on Wall Street for any losses they may have incurred. "

最近のインタビューではブッシュ大統領も Rescue Plan と言っていました。

要はウォール街の連中を助けるのか、それともアメリカ国民を助けるのかで、Bailout になるのか Rescue になるのか違ってくるということでしょう。

しかし多くのアメリカ国民は自分たちがいまこの瞬間に Rescue されるような困難に直面しているとは感じていない。

1~2ヶ月前にブッシュ大統領は全米国民の前でこう演説しました。

『Our econmy is just fine...』

それをいきなり Rescue と言ったって・・この法案は、やはり ウォール街の連中のBailoutだろう。多くのアメリカ人はこんな風に感じているのでしょうね。

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2008年10月 2日 (木)

一流か二流か

時間的制約がある為、マスコミの方からの取材依頼にはなかなかお応え出来ないのですが、昔からお付き合いのある方とは極力お会いしてお話するようにしています。

(記者)ヨーロッパ系の投資銀行の方に取材しましたら、リーマンは『キワモノ』好きで危ない橋を渡るから潰れたって言っていました。

(私)リーマンブラザーズでの私の経験から話しますと、リーマンで案件を通す(案件を取り上げてもらう)にはニューヨークのコンプライアンス・コミティーやエンゲージメント・コミティーを通さなければなりませんでした。

これらのコミティーのチェックは相当厳しいものでなかなか案件が通らないことも多かったのを覚えています。

米系の名のあるところはどこでもそうだと思いますが、リーマンでもどこを取引先とするか厳重なチェックが行われていて、例えば少しでも反社会的な勢力との繋がりが噂される先との取引は、リーマンとして取り上げることが出来ません。

ところで先般破綻したアーバン・コーポレーションとの間では欧州系の金融機関2社の名前が上がっていました。

1社は株式デリバティブを使った取引、もう1社はこれに更にVWAPスワップ契約まで絡めていました。

リーマンの友人と話しましたら、これらについては欧州系では出来てもリーマンでは決裁を取ることが出来ないと言っていました。

金融庁や東証のホームページを見ると当局から指導を受けた金融機関の名前が(指導の内容とともに)載っています。

こういった事実関係をきちんと調査・取材した上で記事を書いた方が良いと思います。

(記者)ゴールドマンに勤める若手に取材しましたら、リーマンは二流なので自分としては意識したことがないと言っていました。

(私)投資銀行に勤めていると自分の会社だけでなく他社の人たちとも付き合う機会が多くなります。ニューヨークやシカゴに駐在している日本企業の人たちが競合他社であっても家族ぐるみの付き合いをしているのと同じかもしれません。

東京で外人幹部の家でのパーティーに呼ばれるとゴールドマンやモルスタの人たちとも知り合うことになります。

私は今でもこうした人たちと付き合っており、例えば来週欧州からオーストリア人とチェコ人が来て1週間一緒に日本の関係先を回りますが、彼らとの付き合いも、元はと言えばモルスタのロンドン幹部からの紹介です。

こうした付き合いを通して言えることですが、グローバルの舞台では「リーマンは二流だ」と考える人はいないと思われます。

そもそもまともな投資銀行家は「自分たちは一流で他社は二流だ」といった意識を持っていません。

投資銀行の出発点は(例えばロスチャイルド家を例にとれば)ユダヤ人であるがゆえに差別され、ゲットーにしか住むことを許されず、投票権すら持たなかったのです。

ヒットラーの時代には個人資産さえ全て没収されました。

「自分たちは一流」と言っている日本のゴールドマンの若手は、(就職先として)役所に行くかゴールドマンに行くか、迷った人なのでしょうが、世界で活躍している人たちの間では、日本での受験勉強的な価値観は余り通用しないと思います。

要はその人物がどういう歴史観世界観を持ち、何をしたいのか、使命感が問われるのだと思います。

「自分たちは一流だから・・」などと言っていないで、一人でも多くの日本の若い人が世界の舞台で活躍していくことを期待したいと思います。

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2008年10月 1日 (水)

アメリカという国

9月30日はユダヤの祝日(Rosh Hashanah Day)です。

「主 はモーセに仰せになった。

イスラエルの人に告げなさい。

第七の月の一日は安息の日(安息日ではない)として守り、角笛を吹き鳴らして記念し、聖なる集会の日としなさい。あなたたちはいかなる仕事もしてはならない。

燃やして主にささげる献げ物を携えなさい。

主はモーセに仰せになった。

第七の月の十日は贖罪日である。聖なる集会を開きなさい。

あなたたちは苦行をし、燃やして主にささげる献げ物を携えなさい。

この日にはいかなる仕事もしてはならない。

この日は贖罪日であり、あなたたちの神、主の御前においてあなたたちのために罪の贖いの儀式を行う日である。…」

(レビ記23:23~28)

さて9月30日のニューヨーク株式市場。

ユダヤ人のトレーダーたちは休んでいる人も多く、取引量はそんなに多くならないかもしれません。

日本時間10月1日 0時20分現在、ニューヨーク市場(9月30日)は230ドルほど反発。

これから先、政府のBailout Planが修正されて議会を通るのかどうか。。。

ところで、かつて米系の投資銀行に勤務していた関係上、私自身ニューヨークには何度も行っていますが、『ニューヨーク = アメリカ』 と考えると、時として我々は間違ってしまいます。

私はアメリカには中西部(シカゴ)に5年間、カリフォルニアに3年間住みましたが、中西部の人たちの間では、

『ニューヨークは異質なところ』、

『話している英語が良く分からない』、

『タクシーに乗っても運転しているのはアメリカ人じゃない』、

『ウォール街の連中の金銭感覚は異常だ』

といった意見の人たちが多くいます。

ちなみに、中西部の人たちにとってはカリフォルニアも異質(あまりに進歩的、前衛的)であり、ワシントンDC(政治家やロビイストたちが闊歩)や、テキサス、アラスカなども典型的なアメリカとはちょっと違うと考えている向きがあります。

[注] そもそも「典型的アメリカなんてあるのか」という指摘もあるでしょう。ただ中西部で耳にしたジョークに次のようなものがあります。

知っているかい?テキサスの連中が言うには:『Texas is so big, it's bigger than United States of America.』だってさ。

ということで、9月29日のBailout Planの否決。

『ウォール街の連中が犯した失敗のツケを何で我々が面倒みなくちゃいけないのかい』といった中西部の友人たちの声が聞こえてきそうです。

アメリカには新聞も全国紙がなく([注]USA Today紙はありますが)、シカゴの連中はChicago Tribune、ロスはLA Times など、読む新聞がみなそれぞれ異なります。

各紙は共和党系、民主党系といった具合に自社の意見を持っていて、なおかつそれを隠そうとしません。

そしてつ一つ一つの法案に自分たちが選出した議員がどういう投票をしたのかをチェックしてすぐ報道しています。

日本と比べて政府が議会(や国民)をコントロールするのが比較的難しい状況下にあります。

Bailout Planが否決された背景にはこういった事情も影響しているように思います。

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