一流か二流か
時間的制約がある為、マスコミの方からの取材依頼にはなかなかお応え出来ないのですが、昔からお付き合いのある方とは極力お会いしてお話するようにしています。
(記者)ヨーロッパ系の投資銀行の方に取材しましたら、リーマンは『キワモノ』好きで危ない橋を渡るから潰れたって言っていました。
(私)リーマンブラザーズでの私の経験から話しますと、リーマンで案件を通す(案件を取り上げてもらう)にはニューヨークのコンプライアンス・コミティーやエンゲージメント・コミティーを通さなければなりませんでした。
これらのコミティーのチェックは相当厳しいものでなかなか案件が通らないことも多かったのを覚えています。
米系の名のあるところはどこでもそうだと思いますが、リーマンでもどこを取引先とするか厳重なチェックが行われていて、例えば少しでも反社会的な勢力との繋がりが噂される先との取引は、リーマンとして取り上げることが出来ません。
ところで先般破綻したアーバン・コーポレーションとの間では欧州系の金融機関2社の名前が上がっていました。
1社は株式デリバティブを使った取引、もう1社はこれに更にVWAPスワップ契約まで絡めていました。
リーマンの友人と話しましたら、これらについては欧州系では出来てもリーマンでは決裁を取ることが出来ないと言っていました。
金融庁や東証のホームページを見ると当局から指導を受けた金融機関の名前が(指導の内容とともに)載っています。
こういった事実関係をきちんと調査・取材した上で記事を書いた方が良いと思います。
(記者)ゴールドマンに勤める若手に取材しましたら、リーマンは二流なので自分としては意識したことがないと言っていました。
(私)投資銀行に勤めていると自分の会社だけでなく他社の人たちとも付き合う機会が多くなります。ニューヨークやシカゴに駐在している日本企業の人たちが競合他社であっても家族ぐるみの付き合いをしているのと同じかもしれません。
東京で外人幹部の家でのパーティーに呼ばれるとゴールドマンやモルスタの人たちとも知り合うことになります。
私は今でもこうした人たちと付き合っており、例えば来週欧州からオーストリア人とチェコ人が来て1週間一緒に日本の関係先を回りますが、彼らとの付き合いも、元はと言えばモルスタのロンドン幹部からの紹介です。
こうした付き合いを通して言えることですが、グローバルの舞台では「リーマンは二流だ」と考える人はいないと思われます。
そもそもまともな投資銀行家は「自分たちは一流で他社は二流だ」といった意識を持っていません。
投資銀行の出発点は(例えばロスチャイルド家を例にとれば)ユダヤ人であるがゆえに差別され、ゲットーにしか住むことを許されず、投票権すら持たなかったのです。
ヒットラーの時代には個人資産さえ全て没収されました。
「自分たちは一流」と言っている日本のゴールドマンの若手は、(就職先として)役所に行くかゴールドマンに行くか、迷った人なのでしょうが、世界で活躍している人たちの間では、日本での受験勉強的な価値観は余り通用しないと思います。
要はその人物がどういう歴史観、世界観を持ち、何をしたいのか、使命感が問われるのだと思います。
「自分たちは一流だから・・」などと言っていないで、一人でも多くの日本の若い人が世界の舞台で活躍していくことを期待したいと思います。
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