投資銀行業務は無くならない(その1)
リーマンが破綻し、ベアやメリルは吸収合併され、ゴールドマン、モルスタは銀行持ち株会社へ。
しかし投資銀行業務が無くなるわけではありません。
投資銀行の本源的業務は、第一に国家や企業の資金調達の相談に乗ることです。
アドバイス(助言)を提供することからアドバイザリー・ビジネス(助言提供業務)とも言われています。
最近ではM&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務も多くあります。
そして第二の本源的業務はアドバイスを提供するだけでなく、公債、社債、株式を引き受けることによって実際に資金を用立てることです。
アドバイスと引き受け。
これが投資銀行の本源的業務です。
投資銀行は伝統的に、①投資銀行本部、②債券本部、③株式本部の三つの部門から成り立ってきています。
このうち、①の投資銀行本部がアドバイスの提供と引き受けの業務に従事しています。(引受業務を②、③の部門で行うところもあります。)
投資銀行の中にあって、あえて「投資銀行本部」と呼ぶのは、これらの業務こそが投資銀行としての本源的業務であることの所以であるといえましょう。
1815年、ナポレオン一世率いるフランスと、イギリス・オランダ連合軍およびプロイセン軍との間で行なわれたワーテルローの戦い。
この戦いに敗れ巨大な賠償金を課せられたフランスに対して、これを支払う為の資金を用立てたのは、当時ロスチャイルド商会と肩を並べていたベアリング商会です。
この当時フランスの政治家リシュリュー公爵をして「ヨーロッパには6大列強がいる。英国、フランス、プロイセン、オーストリア、ロシア、それにベアリング・ブラザーズ(商会)だ」と言わしめたといいます。
また1870年代、すでにJ・ピアポント・モルガン(JPモルガン商会社主)は
「自分を企業に対する単なる資金提供者ではなくそれ以上のもっと重要な存在として位置づけ始めた。つまり企業の法律顧問、最高指導者、相談相手になることを望んだ」(ロン・チャーナウ著『モルガン家』)
といいます。
そして1901年のカーネギーの鉄鋼会社とフェデラル製鋼との合併によるUSスチール設立に際し主導的役割を果していくのです。
今で言うM&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務の草分け的なディールでした。
このように投資銀行本部がアドバイスを提供し、公債、社債、株式を引き受けます。
そしてこれらの引き受けた公債、社債を投資家(今では生命保険、損害保険、年金基金、信託銀行などの機関投資家)に販売するのが、②の債券本部であり、一方、引き受けた株式を販売するのが、③の株式本部という体制を形作ってきたのです。
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