バフェット
今週号の日経ヴェリタスはバフェットを特集しています。
バフェットと私の接点はスタンフォードのビジネススクール。
バフェット自身はコロンビア大学のビジネススクール出身ですが、私が留学していた当時のスタンフォード・ビジネススクール学長、アージェイ・ミラー氏の大の親友でした。(ミラー氏はフォード自動車社長を経て学長に就任。)
1976年、ミラー学長はバフェットをスタンフォードのマクドナルド教授に紹介。
バフェットとマクドナルド教授はすぐに非常に打ち解け合うようになります。
投資に対する考え方が似ていたからです。
当時、スタンフォードには2人のファイナンスの看板教授がいました。
1人はシャープ教授でポートフォリオ理論を発展させ1990年にノーベル賞を受賞。
もう1人がマクドナルド教授でした。
私は授業はマクドナルド教授を取り、2年になってゼミはシャープ教授を取りましたが、どちらの教授とも仲良くして頂き、自宅に招かれたりしました。
さてシャープ教授は株式市場は効率的であるとの考え。サルがダーツを新聞の経済欄に向かって投げて、当った銘柄を買っても、一流のファンドマネージャーが推薦する銘柄を買っても、パフォーマンスは同じだとする考えです。
多くの実証研究がこれを支持しています。(「ウォール街のランダム・ウォーカー」バートン・マルキール著ほか参照)。
ノーベル賞を取ったのは、シャープ、マーコビッツなど、市場は効率的との仮説に基づき、理論を発展させていった学者が多いのですが、マクドナルド教授はダーツを投げるサルに勝てるとの信念を持っていました。
バフェットも全く同じ考えで、バフェットのパフォーマンスこそが、その生き証人というか、サルに勝てた証左ともいえます。
バフェットの投資会社、バークシャーの年次報告書には、毎年、バークシャーのリターンとS&P 500 のリターンが対比されて載っていますが、1965年から2007年にかけて、バークシャー21.1%の年率のリターンに比して、S&Pは10.3%。
年率ベースのこの差は、単純倍率(1964-2007年)にすると、バークシャー 400,863%対S&P 6,840%となります。
マクドナルド教授いわく、
「バフェットは毎年のように私のクラスに(ゲスト・スピーカーとして)来てくれたが、最初に彼が来た時、1976年だったと思うが、バークシャーの株価は60ドルだった。
学生達は言ったもんだ。バークシャーの株は高くなりすぎているってね。」(「サバイバルとしての金融」28頁)
現在、バークシャーの株は、98,390ドル。当時10万円でバークシャーの株を買っていれば、今は1億6千万円を超えています(注:為替レートの影響は捨象して考えています)。
バフェットは決して今回の金融危機を甘く見ているわけではありません。
バークシャーのポートフォリオの中身は、P&G、クラフト・フーズ、ジョンソン&ジョンソンなど不況抵抗力のある会社、ブランド力、価格支配力がある会社が中心であり、仮に金融危機が深刻化しても、マーケットの平均よりは好ポジションにあると言えます。
バフェットの投資スタンスは長期保有が中心ですが、実践的かつ柔軟性もあります。2002年に中国ペトロチャイナの株を買い、2007年には売り抜けていることなどはその好例でしょう。
安全性のマージン(margin of safety)を重視する考えで、十分に安くなってから買いに入る投資哲学。
「5年後、10年後を考えて投資しなさい」
「あなたにとって重要なことまでもリスクにさらしてまで、リスクを取ってはいけない。そんな価値はないから・・」
これらのバフェットの言葉は、仮にこれから先、金融危機がますます深刻化するとしても有用なアドバイスだと思います。
もう一つ、バフェットの言葉。
金について。
「アフリカとか、そういった地域で地面が掘られ、金鉱石が採掘され、溶かされて金になる。その間、人々はガードを雇って、これらが盗まれないようにする。しかし金にはそれほどの価値はない。(It has no utility.)
火星人がいて、火星から地球を見た場合、かれらは頭をかきながら地球人は不思議なことをすると思うに違いない。」
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