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2009年1月19日 (月)

大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清

高橋是清は歴代日銀総裁のなかで唯一その肖像が日本銀行券(お札)に使用された人物です。

彼は1854年、川村庄右衛門(47歳)ときん(16歳)の子として生れます。16歳の母、きんは魚屋の娘で川村家に子守奉公にきていた女中でした。私生児として生れた是清は生後まもなく養子に出されます。

その後、是清はアメリカに留学するのですが、渡米中に騙されて奴隷契約書にサインさせられた挙げ句、奴隷生活を送る羽目にまで陥ってしまいました。

このように戦前6度も蔵相を務めた高橋是清については意外な一面が幾つもあります(その触りのところは、『こちら』でも十分知ることが出来ます)。

そんな高橋是清という人物を軸に、第二次世界大戦前のわが国の財政の歩みを、読みやすく綴ったのが、『大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清』 。(ただし内容的には高橋是清の人物伝というよりも明治から第二次大戦に至るまでの財政史の色彩を呈しています。)

アマゾンの書評にも書きましたが、明治政府の財政状況は、日露戦争後に大きな対外債務を負うことになりました。

しかし『それまでのわが国では、様々な困難に対して、政府と国民は概ね一体となって立ち向かっていったのに対して、日露戦争後は、国民が「勝ち戦」と思っている状況の中で、政府が一人で財政的な「負け戦」の処理を行わ』ねばならなかったとのことです。

そしてそのような「負け戦」に取り組まなければならなかった政府は、『自らは増税を回避し、増税のツケを地方に回』しました。

高橋是清が『駆け抜けた』のはそういった時代でした。

そして今。はたして現在、財政当局が見ている「風景」と国民が見ている「風景」とは、(実は同じ風景なのでしょうが)、日露戦争後のように違う見方がされているのでしょうか。

だとしたら、そのツケは誰が、どういう形で支払うことになるのでしょうか。

読んでいてそんなことが気になりました。

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