« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

2009年2月26日 (木)

磁浮

上海の出張から昨夜帰国しました。

上海浦東国際空港から磁浮列車(Maglev Train)と称されるリニアモーターカーに乗ると約7分で市内の地下鉄2号線、龍陽路駅に着きます。

Maglev_train1

最高速度、時速431キロ。

仮に成田空港から同じスピードで走れば約11分で東京駅に到着する計算になります。出発直後や到着間近の減速を考慮したとしても約20分といったところでしょうか・・。

上海磁浮列車の場合、乗車料金も50元ですので、日本円に換算すると750円。

Maglev_train2

さて上海の印象ですが、世界同時不況の影響を受けているとは言え、相変わらず活気に溢れていました。人々はタフで、逆境にもめげない生活力、たくましさが感じられます。

テレビではクリントン国務長官が中国を来訪していた時のスピーチを放映していました。

先日クリントン国務長官が日本を訪れた時は、

「日米関係は米国にとっても重要な Cornerstone だ」と日本を持ち上げていましたが、

中国での発言は:

「今回の世界不況の解決の為には、米国と中国の2ヶ国が世界でリーダーシップを発揮していくことが不可欠だ。」

確かに、世界最大の債権国となり、減速したとはいえ、プラスの経済成長を続けている中国。

この中国が対GDP比で13%にも上る4兆元の景気刺激策を実施中とあれば、クリントン長官をして「米国と中国の2ヶ国が世界でリーダーシップを発揮」と言わしめるだけのことはあるように思えてきます。

麻生総理は「世界で一番先に不況を脱するのは日本だ」と力説していたはずなのですが、さていったいどうなるのでしょうか。

| | コメント (0)

2009年2月22日 (日)

豚は太らせて食え

トヨタ、ホンダ、キヤノン、日産の4社の平成20年3月末決算(キヤノンは平19年12月末)における税引前利益は次の通りです。

トヨタ   24,372億円

ホンダ   8,958億円

キヤノン 7,684億円

日産   7,680億円

議論の単純化のため法人税の実効税率(法人税、法人住民税、法人事業税)を40%として計算すると、4社の税金は

48,694億円×0.4=19,478億円。

一方、平成21年3月期(キヤノンについては平成21年12月期)に各社が予想する税引前利益は、

トヨタ     ▲5,000億円

ホンダ      1,350億円

キヤノン    1,600億円

日産    ▲1,900億円

4社から見込まれる税収は、上記と同じ単純化したベースではトヨタ、日産はゼロとなり、ホンダ、キヤノンの合計で、

2,950億円×0.4=1,180億円。

4社だけで

1,180億円-19,478億円= ▲18,298億円となります。

今、騒がれている定額給付金の負担は約2兆円ですので、

4社からの税収減だけで、定額給付金を実行するのにほぼ等しいだけの税金が失われることになります。

更に加えて、例えば自動車会社の場合、彼らに原材料を供給している新日鐵、JFEなどの鉄鋼メーカー、あるいは自動車部品メーカー、プラスチック・メーカー、半導体メーカー、販売会社、輸送会社、船会社なども、自動車会社業況悪化の影響を受けてしまい、これらの会社からの税収減にもつながっていくという「負の波及効果」も無視出来ません。

ところで政府が昨年12月に策定した平成21年度予算では、一般会計の税収減を7.5兆円と見込んでいます。

しかし昨年12月以降に明らかになった企業の減益拡大も多く、はたして7.5兆円の税収減で本当に収まるのかどうかが懸念されます。

このままでは税金を納める側の法人や個人がやせ細ってしまい、財政再建がますます遠のいてしまうことになりかねません。

「豚は太らせて食え。税金を取る際もこの発想が重要だ」との話を聞いたことがあります。

オバマの景気対策で米国の今年度の財政赤字は1.6兆ドルの規模に膨らみ、対GDP比で11%程度に達する見込みであると言います。

日本の平成21年度予算の財政赤字は対GDP比4.0%。

日本の場合、純債務残高(単年度の赤字ではなくこれまでの累積)の対GDP比が諸外国より高く、米国のような思い切った対策は打ちづらい状況にありますが、現在政府が考えている対応策では、豚はますますやせ細ってしまうことが懸念されます。

例えば今論争の的となっている定額給付金。

多くの国民が疑問に思う(あるいは反対する)のは下記のポイントです。

①お金をかけて集めたお金(税金)を、またお金をかけて配るのは、コストがかかるだけ

②10年前に商品券(地域振興券)を貰った時も大したことがなかった

③1人1万2千円では効果がない

④数年後に増税となるのであれば意味が無い

⑤人々は使うのではなく貯蓄(もしくは借金の返済)に回すだろう

⑥やるなら定額減税や消費税減税の形でやって欲しい

要は、何のためにこれをやるのかが国民には分かりづらいということでしょう。

今必要なのは進みつつある「不況から恐慌への負のスパイラル」を止めることです。

その為には、①平成20年度予算1次補正、②2次補正、③平成21年度予算、さらに④追加の1次補正・・といった具合に対策を小出しに出すのではなく、大胆な対策を一気に講じてネガティブな空気を一掃させる必要があります。

例えば具体的な数字についてはいろいろ議論があるでしょうが、一つの案として、平成21年度予算に限ってのみ仮に対GDP比9%くらいの赤字を覚悟するとします(それでも米国の11%よりはずっと低い。)

すると現在の予算案に追加する形で、GDPの5%分、すなわち26兆円の支出(もしくは減税)が可能となります。(もちろん長期金利が上がってしまうといった弊害や、これだけの国債を消化させる方策について、別途考慮する必要が出てきますが。)

26兆円の対策をベースとすると、例えば消費税は全てゼロとすることが出来ます(平成21年度予算案における消費税収入見込みは10兆円)。

平成21年度に限って消費税をゼロとすれば(注:手続き的には大変なのでしょうが)、この機会にマンションを購入したりクルマを買う人も出てくるでしょう。

さらに26兆円-10兆円で、まだ16兆円ありますので、国民1人あたり約13万円。4人家族で約53万円。

これだけの金が実弾として所得税減税(もしくは負の所得税、給付金)の形で国民に行き渡れば、「恐慌への負のスパイラルに歯止めをかける」上で効果を上げるようになると思われます。

(もちろんセーフティ・ネットを充実させるとか年金問題解決への道筋を示すとかして、国民が持つ将来への不安を除去していくことも重要です。そうでないと消費が適切に喚起されません。)

繰り返しますが、税金を納める側にある企業や個人がどんどんやせ細っていく現状を変えない限り、財政再建への道のりさえもますます遠のいてしまいます。

「金融政策の方が効果的だろう」とか、「大きな政府にしてしまっていいのか」という問題は確かにあります。(私は基本的には小さくて賢い政府が良いと思っています。)

しかし今年に限っては、このままではいけない。「何とかしなくては」という現実が目の前に広がり、しかもどんどんと深刻化していっているのです。

| | コメント (0)

2009年2月14日 (土)

中小企業緊急雇用安定助成金

最近「危機はチャンス」といった論調をよく目にするが、今何が起きているか分かっていない学者や評論家の言葉であることが多い。

日本の経済を下支えしている中堅・中小企業の現場で起きているのは、倒産が目の前に迫って経営者の頭の中に「自殺」という言葉さえよぎるという、壮絶な現実だ。

私は職業柄、経営コンサルタントとして中堅・中小の経営者と日常接している。また最近の金融危機に関し本を書いたこともあって、中小企業の経営者たちが集まる「少人数の勉強会」に呼ばれて意見を交換する機会も多い。

聴衆が100名を超えるような講演会での講師は会話が一方的になるだけなので、私としては講演をお断りしているが、参加者5~6名の勉強会は参加者全員が本音をぶつけ合うので、誘われればスケジュールの都合がつく限り参加している。

守秘義務に反しないように注意しながら1~2社の例を書いてみたい。

いま日本の製造業の現場で何が起きているか、マスコミがあまり報じていないからだ(日経新聞は大企業と役所の話が多く、朝日は派遣切りされた人を社会部の視点で報じることが多い)。

「日本は‘もの作り’が大切だ」と説いている評論家の方にも、いま現場で実際に起きていることを知って頂きたいと思う。以下のA社は世界に誇れる技術をもった会社だ。

(1)中小企業A社社長の話。

「うちの会社の売上は昨年度は前年の21.2億円から15.8億円へと約25%も減少したが、今年度の売上は9億円に届かないかもしれない。売上が従来比6割減となる可能性が高い。

こんなことは、もちろん今までに一度も経験したことが無かった。

昨年11月より単月ベースで、売上利益が赤字となった。

経費削減を徹底的に進め、損益分岐点を月次ベース売上1.2億円から半分の6千万円までに落とすことができたが、売上減少のペースの方が速く、今月の売上は4千万円にも届かない見通し。

従業員数は1年前は103名だったが今は69名。派遣社員は契約期限が満了するたびに更改出来なかったので、今では派遣社員はゼロ。

正社員についても、このまま給料を払い続けることはもはや出来なくなることから、中小企業緊急雇用安定助成金の申請を考えている。

ハローワークに行って詳細を聞いてきた。

提出しなければならない資料は膨大だが、会社として生き残る為には、そんなことは言っていられない。

ハローワークで話を聞いてみると、国としても、この制度の運用については随分柔軟に対応してくれそうなので何とかこれを利用出来そうだ。

ただ申請の殺到が見込まれていて、今すぐ申請してもいつ資金が受給出来るようになるか分からない。場合によっては半年先になるかもしれないとの噂も耳にした。」

(2)中堅企業B社社長の話。

「うちは売上50億円、経常利益1.2億円でやってきた。銀行借り入れは3行から2億弱づつ合計5億円。何れも期間1年の借入れだが、従来は毎月約定弁済を進め、期限に返し終わると、銀行は同額を貸してくれていた。

それが昨年の春頃から銀行の対応が一変した。

借り換えを一切認めてくれなくなった。

経常利益1.2億円の会社である当社が半分税金を払って借金返済に回せるのは年間6千万円。借り換え・折り返しゼロと言われると一気に資金が回らなくなる。

なんとか資金繰りに奔走してきたが昨年秋以降、本業も悪化してきて売上も減り始めた。

銀行はリーマンショックを見越して昨年春先から厳しくなったのだろうか。銀行からの借金は麻薬みたいなものだ。そもそも、うちは無借金でも十分やっていけた。それがいつの間にか銀行に勧められるまま借金をし、必ずしも必要でなかったシステム投資を行い、借金を前提とした資金繰りへと変わってしまった。

メガバンクから借金できるというのは一種のステータスだと、巧みな言葉に乗せられてしまった自分がいけなかった。全て自分の責任だ。悔やんでも悔やみきれない。」

| | コメント (1)

2009年2月11日 (水)

大量生産

昨日(2月10日)のニューヨークは今年最大の下げ(▲381ドル)を記録。

ところで昨日、私は榊原英資さんの講演を聞いてきました。1時間半に及ぶ講演でしたが、基本的には日ごろ榊原さんがテレビや著書などで述べられている内容でした。

趣旨は:

(1)アメリカ型の大量生産・大量消費はもう終わるのではないか。特に自動車、スーパーマーケット、ファースト・フードといったアメリカ的なものは、いま起きつつあるパラダイム・シフトについていけなくなるのではないか。

テレビなんかもブラウン管で十分だし、きちんと映ればいい。自動車も目的地に行ければいいので凝ったものにする必要はない。3~4年で新車に買い換える必要もない。

もっと「もの」を大切に使ったらどうだろうか。

(2)国の政策としては「もの作り」よりも、これからは農業に注力すべき。日本の食料自給率は低すぎる。民主党が政権を取れば、私(榊原氏)も民主党に近い者として、この点を積極的に提言していきたい。

というものでした。

民主党が政権を取った場合、財務大臣に就くと噂されている榊原さんですので、(2)の主張を述べるあたりでは、「国がやる気になれば必ず出来ます」との発言を繰り返され、一瞬、政治家の方の演説を聞いているような錯覚に襲われました。

講演を聞き終えて考えさせらてしまったのが大量生産の問題。

確かに地球環境への負荷という問題を考えれば、「今までのようなやり方でいいのか」という問いかけは必要でしょう。

榊原さんが問題提起しようとしたのも、無理やりに消費者の需要を作り出そうとしている現在の企業の姿勢にあったのかもしれません。

そういった榊原さんの問題意識とは若干ずれてしまいますが、私が考えさせられてしまったのは、現在の企業は本当に消費者が望むものを消費者が望む価格で作り出しているかという点です。

そもそも大量生産というのは、少しでも安く製品を作り出し、出来るだけ多くの人に買ってもらうために考え出された生産方式です。

1908年当時、自動車の価格が1,000~4,000ドルであった時代にヘンリー・フォードが売り出したT型フォードは850ドルでした。

あれから100年経った今。

100年が経過するうちに、私には自動車メーカーが大量生産の原点を忘れ、あまりに多種多様なものを作り出してしまっているように思えます。

自動車の走行速度を一定に保つクルーズ・コントロール。バックする時にはモニターで後方を映し出してくれる車も登場しました。至れり尽くせりの内容です。

これらのオプションを選択するかしないかはもちろん消費者の自由ですが、そういったオプションを提示すること、それ自体に(たとえそのオプションを購入しなくとも)コストがかかっています。

大量生産でなく多品種生産によるコスト高に陥っているとしたら、はたしてそれが消費者が望んでいるものなのかどうか。

消費者に媚びるのではなく、作り手が自信を持って「これだ」といって(消費者にあまり選択肢を与えずに)製品を出してみる。

そういった発想も必要になってくるのではないでしょうか。

作り手が極めた製品。自信をもって世に出した製品には消費者は率直に反応すると思います。

見直されるべきは大量生産ではなく、むしろ多品種生産なのではないか― 講演を聴き終わって、私はそんなことを考えてしまいました。

| | コメント (0)

2009年2月 6日 (金)

P2P Lending

本日は日本で最初に P2P Lending (ソーシャルレンディング)のサイトを立ち上げた maneo の senoo (妹尾)さんの講演を聴いてきました。

P2P Lending について、詳しくは『こちら』をどうぞ。

英語でなく日本語でざっくり知っておきたいという方は『こちら

P2P Lending を行うサイト(会社)は世界で30社を超え、融資残高は 685百万ドルに上るといいます。

驚異的なのは、その成長スピードで、来年には58億ドルに達すると予想されているとのこと。

これでは高い金利を払って消費者金融からお金を借りる個人は減っていってしまうのではないでしょうか・・。

「お金が余っている(運用したい)人」と、「お金が必要な人」とを結び付ける。

そんな金融の原点に立ち返ったP2P Lending をインターネットがビジネスとして可能としました。

私の説明を読むよりも、なによりもまず maneo のサイトを覘いてみると面白いと思います。

『こちら』です。

| | コメント (1)

2009年2月 3日 (火)

犬死に

以下は、ある講演会で日本の外務省の方が話されていたものです。

大統領選挙中のオバマ氏が地方でスピーチをしていた時の話。

オバマがイラク戦争の問題点を挙げ、自分が大統領になればイラクから撤退すると話していた時、聴衆の一人の婦人が思わず立ち上がって、涙を浮かべながら、こう訴えかけました。

『オバマさん、あなたは私の息子がイラクで犬死にしたと言うんですか。』

会場は静まり返り、しーんと凍りついたようになります。

はたしてオバマは何とコメントするのだろうか・・

すると、オバマは壇上から降りて、そのご婦人のところに歩み寄ります。

そして彼女を抱擁して、こう言います。

『I am proud of your son.』

ご婦人はオバマの腕の中でボロボロと涙を流し、泣き崩れました。

ハーバードのロー・スクールを優秀な成績で卒業した後、シカゴで社会奉仕活動をしていたオバマ。

シカゴに5年間住んだ私は、彼が活動したであろうシカゴの地区(貧困層が多く住む地区)を知っているだけに親近感が湧いてきます。アメリカ人がオバマに期待するのは、彼が弱者の心の痛みを理解しているからです。

| | コメント (1)

« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »