22年かけても進歩しないもの
昨日に続いて映画ネタです。
春分の日の3連休に見たDVDが1987年の映画『ウォール街』。
80年代に名を轟かせたイワン・ボウスキーやサー・ジェームス・ゴールドスミスなどのウォール街の実在の人物がモデルになっていると言われています。
私はこの映画をこれまでにも幾度となく見てきたのですが、リーマン破綻後の世界金融恐慌の最中にある今、改めてこの映画を見てみますと、そこで語られていることの多くが、今日でもそのまま当てはまることに驚かされます。
人間は22年間かけても実は余り進歩せず、22年前も今も相変わらず同じようなことを議論している面があります。
「欲」についてマイケル・ダグラスが演じるゴードン・ゲッコーが語る場面。
『みなさん、言葉は悪いかもしれませんが、“欲”(greed)は善です・・。“欲”は物事を明確にし、道を開き、発展の精神を磨き上げます。“欲”にはいろいろあります。生命欲、金銭欲、愛欲、知識欲。人類進歩の推進力です。』
これに対して、チャーリー・シーンが演じるバド・フォックスが疑問を投げかけます。
『いったいヨットを何隻持てば気が済むのか。(あなたの)欲にはキリがないのか。』
ゲッコー(マイケル・ダグラス)は答えます。
『この国では人口の1%の金持ちが国中の富の半分を所有しているんだ。』
さて今日の日本。
これまでの構造改革に対する批判が強くなり、「最近のアメリカは貧富の差が激しくなりすぎた」とか「ウォール街が強欲になりすぎた」とか言って、懺悔したり転向したりする「識者」が出てきています。
しかしこの映画が上映された、今から22年前の時点で、(映画の中のゲッコーの発言のように)既にアメリカには大きすぎる貧富の差がありました。そして欲についても、これをコントロールすべきかどうか、コントロールするとしたら、どうコントロールするかについての議論もあったのです。
ところで、今回DVDの「特典」のところを見ていたら、オリバー・ストーン監督とダリル・ハンナの意見が合わず、撮影現場で結構やりあっていたといった話が出ていました。
監督自身、インタビューで「彼女はなぜこの役を引き受けたんだろう」とコメント。
たしかに最初この映画を見たときダリル・ハンナが演ずるダリアンが、浮いているというか、なんとなくしっくりきませんでした。
今回オリバー・ストーン監督のインタビューを聞いていて、監督はダリアンをもう少し(さらに徹底的に)悪女に描きたかったのだということを知りました。
しかしダリル・ハンナは単純な「悪女」を演ずることなく、(男性や金に左右されつつも)ある種の「自立した、そして、それなりの魂を持った女性」を演じました。(プラトーンに続くアカデミー賞を狙ったオリバー・ストーン監督にとっては残念な結果に終わりました・・。)
もっとも私にとっては、22年後の今、改めて映画を見てみますと、昔の「しっくりいかない」感が消えてなくなり、ダリル・ハンナの演技でも今となっては良かったと思えてきます。
なおマイケル・ダグラスはこの映画でアカデミー賞(主演男優賞)を受賞しています。
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コメント
毎回楽しみに拝見しております。
確かに、日進月歩の技術の進歩や知識の探求ですら、人間の欲のコントロールにはそれほど影響は及ぼさないのかもしれません。欲の映画つながりで、[SEVEN]でもキリストの7つの大罪で取り上げられています。もしかしたら、22年前どころかキリストの時代からも変わっていないのかもしれません。
[enron]や[ダーウィンの悪夢]で描かれている本質も同じですね。
蛇足ですが、バンカーつながりで[american psycho]も中々楽しめました。
投稿: fullmetaljackt | 2009年3月26日 (木) 10時49分